直木三十五のおすすめ本5選!直木賞の由来となった人物。代表作は?

更新:2021.12.21

直木賞、芥川賞というけれど、直木賞の直木って、誰?と感じている方は多くいます。また、直木三十五のことを知りつつも、作品を読んだことがない、という方もいるでしょう。今回は知られざる素顔と作品をご紹介したいと思います。

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直木賞の由来となった作家直木三十五

直木三十五は1891年生まれ、明治時代から昭和に生き、活躍した人物です。小説家であるとともに、脚本を書き、映画監督も務めるなど、日本の芸術を発展させました。

本名は植村宗一で、植、の文字を分解してペンネームをつけました。年齢を重ねるごとに名前を三十三、三十四、と数を増やしていくという独特な名づけを行っています。

代表作は『南国太平記』です。時代小説から現代小説、大衆文学を主に作っていました。友人であった菊池寛が、43歳という若さで亡くなった彼を称え、「直木三十五賞」を設定したそうです。

実際にあった事件を基にしたお家騒動

江戸末期、つまり幕末に起こった、いわゆる「お由羅騒動」を題材として著されました。お由良は、島津斉興の妾です。斉興には世子である斉彬の存在がいましたが、お由良にも子どもがいました。

お由良の子、久光につく上士階級と、斉彬を支援する武士階級が対立し、争いを起こしていきます。
 

著者
直木 三十五
出版日

「高い、梢の若葉は、早朝の微風と、和やかな陽光とを、健康そうに喜んでいたが、鬱々とした大木、老樹の下蔭は、薄暗くて、密生した灌木と、雑草とが、未だ濡れていた。」(『南国太平記』より引用)

この作品は、こんな文章で始まります。二つの派閥の対決を描く小説とは思えないくらい爽やかで、とても読みやすく構成されているのです。

お由良は自分の息子を跡継ぎにしたいと考えています。しかし、正式な跡継ぎは斉彬と決まっていました。また、斉彬が跡を継ぐことによって、立場が危うくなる人物も大勢いたのです。

派閥の争いは、武士道や人情、呪術も含んで大騒動になっていきます。史実に基づいて描かれた本作は、大げさに描かれているぶんも相まってスリルのある物語となっているでしょう。

この作品には多くの人物が登場していきます。その中には斉彬を嫌うもの、擁護する者から、少しのシーンで出てくるものもいるのです。この騒動には、多くの人物が関わっていることを感じることでしょう。誰が跡を継ぐか、ということが、周囲の人にどれだけ影響を与え、人生を左右したのか、という部分を感じ取れます。

歴史小説と聞いて、読むには難しいと感じる人もたくさんいるのではないでしょうか。しかし、作者のリズムの良い文体で史実を描くことで、すべての場面をスムーズに読むことができるでしょう。

直木三十五の代表作を、ぜひ読んでみて下さいね。

剣豪たちの武士道

直木三十五が、山岡鉄舟、宮本武蔵などのいわゆる「剣豪」の技や心意気を説いた伝記風物語です。作者が考える武術の心得や剣法についても収録されています。

剣は、人を殺すためだけに極めるものではないと気づかされる1冊です。
 

著者
直木 三十五
出版日

「武士道」が確立した戦国期から明治初期にかけて活躍した人物を紹介しています。山岡鉄舟、宮本武蔵などの時代や流派が異なる人物ばかりなので、幅広い知識を得ることができるでしょう。

剣は人を殺すもの、戦うものと感じている方は多いと思います。確かに現在は生身の刀を振るう者はいません。

しかし、当時活躍していた剣豪は自分の目指すところを明確にし、ストイックに剣術を行なっていたことが分かります。

今作は、そんな武士の精神や技術を、会話も交えて紹介しているのです。大衆文学を多く書いてきた直木ならではの視点で、大衆にも分かりやすく解説していることも特徴といえます。

紹介される人物たちは、普段、時代劇やドラマなどでわき役に回る人物が多いかもしれません。しかし、シビアに自分の力を極める彼らの生き様を、今作では感じることが出来ます。

また、この作品には、伝記の他にも「剣法雑話」「武勇博雑話」という章がつけられています。こちらでは、作者が考える剣術や武勇が紹介されています。「発達当初の剣法」から、「武士階級の確立と憲法の堕落」という内容や、「武勇とは?」という内容もあるのです。現代では身近で知ることのできない精神を感じることができるでしょう。

これ1冊で、昔の剣豪の精神だけではなく、それを分析し、解説する直木の考えも知ることが出来るといえます。
 

時代小説作家の集大成

宮本武蔵、佐々木小次郎などの剣豪たちは、命を争いながらも技を磨いていきました。本作は、そんな剣豪たちの精神を小説にした短編集です。アンソロジーであり、直木三十五をはじめとする時代小説家が小説を寄せています。

直木は、この小説の中の「宮本武蔵」を執筆しています。
 

著者
["池波 正太郎", "直木 三十五", "綱淵 謙錠", "津本 陽", "五味 康祐"]
出版日
2006-09-28

宮本武蔵という人物は、無敵の名人という伝説を持っていました。それに異を唱えたのは、直木三十五だったのです。それに反論したのは、同じく歴史小説家であった吉川英治でした。また、直木賞を設定した菊池寛とも、宮本武蔵の伝説について争ったことがあるそうです。

直木の「宮本武蔵」は、吉川英治が、代表作「宮本武蔵」を描いたきっかけともなりました。

直木は、時代考証を綿密に行い、より真実に近い歴史小説を描くことでも定評があります。今回もまた、直木が史実を分析し、考察しながら「武蔵の実像」に迫りました。宮本武蔵がしてきたことや、周りに影響を与えたことを語りながら、実際の武蔵はどんな剣豪だったのか、という部分を追跡していきます。

戦国時代末期となると、剣は人を殺すためのものではなくなりました。より平和な世の中になるために、人間の精神の修行や教養に使われたそうです。それに伴い、考え方の違いから流派が発生していきました。

この作品では、前回紹介した『日本剣豪列伝』とは異なり、他の作者も剣豪についての伝記を記したものも収録されています。流派や技術が異なる武士たちを、様々な観点から分析し、物語としてまとめたものです。

直木の視点と共に、様々な作者から見た剣豪たちの姿を知ることが出来るでしょう。
 

直木三十五とは?素顔を垣間見れる1冊。

直木賞の名前の由来となった人物とは、いったいどのような人柄だったのでしょうか。この作品では、あまり知られることのない作家である直木三十五を徹底的に解明していきます。

作品では感じることのできない姿を垣間見ることができるかもしれません。
 

著者
山崎 國紀
出版日
2014-07-10

有名で名誉な文学賞と言ったら、芥川賞と直木賞はセットで思い浮かびます。しかし芥川龍之介のほうは分かるけれども、直木って誰?という方は多いのではないでしょうか。この作品では、まさに「知られざる」文豪である直木三十五について詳しく評したものです。

まずは直木の出生についてから、昔どんな子供であったかという部分を説明していきます。小さいころから本が好きで、近所の図書館で本を読み漁っていたそうです。

名前について、なぜ三十五、という名前にしたのか、という疑問が浮かびます。そして、作品の中で年を取るごとに増えていったというエピソードを詳しく知ることが出来るのです。なんだかおもしろい人物なのではないか、と思える要素なのではないでしょうか。

また、直木は妻の他に妾がおりましたが、その他にも女の影が見え隠れするほどの女好きとしても有名でした。編集者の仕事を終えた後に、ふらふらと夜の街に出かけていっていたそうです。

それ以外にも身の丈に合わない浪費家としても有名でした。

浪費家で女好き、とい要素だけでも、なんともあきれた性格であります。意外と思われた方もいらっしゃるでしょうか。小説のイメージから受けない印象を持つことでしょう。

直木は小説だけではなく脚本や映画も手掛けています。様々な日本のエンターテイメントを確立したことは、直木賞の名称に使われた理由でもあるのではないでしょうか。

まさに日本の芸術を前進させた人物であることを感じられる作品です。
 

甥が描く叔父直木三十五の姿

直木三十五の実の甥が描いた物語です。直木三十五の性格や行動を、身内の視点で解説していきます。

700篇以上の作品を執筆したのにもかかわらず、借金をずっと背負っていたという直木とは、どういう人物だったのでしょうか。その素顔に迫ります。
 

著者
植村 鞆音
出版日
2008-06-10

この作品を執筆したのは、直木三十五の甥であり、テレビ関連の仕事に携わっていた植木鞆音です。直木は、多くの作品を執筆しましたが、その多くは入手困難な作品となっています。したがって、直木の作品を読んだことがある人は少ないです。

直木賞、という名前の大きさの割に知名度の無い直木ですが、人間らしい魅力が沢山溢れています。『直木三十五伝』では、直木の知られざる人柄が紹介されているのです。

直木は、大衆小説の執筆の他にも編集者や、映画の監督も仕事としていました。甥である鞆音は、直木の仕事ぶりを「プランメイカー」と評します。しかし、仕事の傍ら、直木は女遊びに時間とお金を投じ、作品数とは裏腹に借金を負う人生を過ごしました。

天才肌なのに呆れるような一面もあるのが、この直木三十五なのです。

芸能にも携わっていたという直木ですが、甥の植木もテレビ関係の仕事をしていました。長年の夢であったのは、この『直木三十五伝』を執筆することで、定年したのちにこの作品を執筆し、まとめたそうです。

直木が生きてきた人生こそが、彼が執筆したどの物語よりもドラマチックだったと感じている、と、植木は語ります。作品中に現れる直木のエピソードは、すべて身内である直木ならではの、当事者から聞いた話です。

直木について描かれているどの小説よりも濃く、信ぴょう性が高いものとなっているでしょう。

直木賞の名称の由来である人物について、少しでも興味を持っていただけたでしょうか。直木は大衆小説を多く描いている為、時代小説である紹介した小説たちも多くが読みやすく構成されています。直木の人柄を感じるとともに、作品の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

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