ポプラ社が出版している絵本おすすめ10選!名作から隠れた傑作まで

更新:2021.12.21

数多くのヒット作品やロングセラー絵本を出版しているポプラ社。そこから出版されている絵本には隠れた傑作が数多く存在します。こんな絵本があるなんて知らなかった。そんなうれしい驚きをすべての絵本ファンに、ポプラ社が出版している名作絵本を紹介します。

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長年愛されるポプラ社の名作絵本『ねずみくんのチョッキ』

表紙のねずみくんは、赤いチョッキを着て自慢げに立っています。お母さんに編んでもらった自慢のチョッキで、ねずみくんの体にぴったりとフィットしているのですが……通りがかったアヒルくんが素敵なそのチョッキを見て、ちょっと着せてよと頼むのです。

友達が素敵なものを持っていると、ついついマネをしたくなることがあります。ねずみくんのチョッキはアヒルくんにわたり、アヒルくんからサルくんにわたり、次第に体の大きな動物へとわたるうち、とっても大きく伸びてしまうのです。

とうとうゾウくんが袖を通してしまったねずみくんのチョッキ。伸びきってしまったチョッキを見てショックを受けるねずみくんでしたが、すぐに気を取り直して、伸びたチョッキをブランコにして遊び始めるのでした。

著者
なかえ よしを
出版日
2004-03-01

登場する動物たちの表情が何とも言えず魅力的です。どう見てもねずみくん以外にはサイズがあわないのに、動物たちは無理をしてチョッキに袖を通しています。彼らの表情からその気持ちを想像してみると笑ってしまうかもしれませんね。

子どもが好きな繰り返しのストーリーと、控えめながらも互いの気持ちを表現しあう動物たちがとても愛らしく描かれているこの絵本。幼稚園や保育園でのお遊戯会の演目にもおすすめです。

テンポの良さも、チョッキがあられもない姿に変わっていく残念な展開も、子どもたちを笑わせる伏線として最高のものです。親子で一緒に大笑いしたいときはぜひこの絵本を手に取ってみてください。

谷川俊太郎訳の楽しい絵本『まるまるまるのほん』

表紙には、信号機を縦にしたようなまるが並んでいます。さて、いったい何が始まるのでしょうか。ページをめくると、絵本が読み手にさまざまな指示を出してきます。指示通りに左のまるをこすってみると、次のページでは、そのこすったまるの色が変わっているのです!驚きですね!

赤・青・黄のまるがずらりと並ぶ中から、黄色のまるだけを指でクリックしてページをめくると、次のページは真っ暗な中に、黄色いまるだけがお月様のように浮かんでいます。まるで自分の指が絵本に魔法をかけたみたいでワクワクしますね。

著者
エルヴェ・テュレ
出版日
2010-11-19

この絵本に登場するのは、赤・青・黄・水色など、はっきりして覚えやすい色ばかりです。短くて簡単な文章は、幼い子どもにも伝わりやすく、夢中になって絵本の指示を聞いているうちに色や言葉を覚えていくのではないでしょうか。

ようちえん絵本大賞特別賞を受賞しているこの作品。読み手の動きによって絵本の中のまるが姿かたちを変えていく様は斬新で、子どもだけでなく大人までも夢中になってしまうことでしょう。絵本をゆすってみたり、絵本の中身を息で吹き飛ばしてみたり傾けてみたりして、親子で一緒に遊びながら読みたい絵本ですね。

予想外の展開が面白い、ポプラ社の傑作絵本『おばけのてんぷら』

食べることが大好きなうさこは、山でお友達のこねこ君に出会います。こねこ君がおいしそうに天ぷらを食べているのを見て、うさこも天ぷらを食べたくなるのです。こねこ君は母さん猫にお料理の本を借りて、うさこに貸してあげます。

うさこはお小遣いを全部はたいて天ぷらの材料を買いました。お料理の本の通りに丁寧に天ぷらを作ると、とっても上手な仕上がりでうさこも大満足。うさこの家からいい匂いが山の上にまで漂ってきて、匂いにつられてきたオバケがうさこの家に忍び込みます。

忍び込んだオバケは小さくなって、うさこに気づかれないようこっそりと盗み食いを始めます。すると、うっかりしていたオバケは衣のなかにぼちゃんと落ちてしまうのです。

著者
せな けいこ
出版日

食いしん坊でマイペースなうさこと、いたずらっ子でおっちょこちょいのオバケ。キャラクターがそれぞれ可愛らしくて、最後はドキドキするシーンも楽しめます。天ぷらの作り方が丁寧に順序立てて説明されているので、絵本を読んだ後はお母さん子どもで一緒に作ってみるのも楽しいですね。

ちぎった紙を貼り合わせて描かれた温かみのあるイラストと、うさことオバケのとぼけたような表情は子どもたちの心をつかみ、何度でも繰り返し読みたくなるのではないでしょうか。お母さんが子どもに絵本を読み聞かせる幸せな時間をぜひこの絵本と一緒に過ごしてみてはいかがでしょう。

優しい気持ちをはぐくむ名作絵本『おにたのぼうし』

この物語は、節分の日の鬼のお話です。物置小屋の天井に住んでいる鬼太という黒鬼の子どもは、心優しい鬼でした。鬼太はその家のお父さんの靴をピカピカに光らせたことや、失くし物を見つけてあげたこともあります。でも、節分の日に豆をまかれて困った鬼太は雪の中、その物置小屋から出ていくことにするのです。

鬼太は角を隠すための麦わら帽子をかぶって冷たい雪の中を歩き、ある家にたどり着きます。そこは貧しくて節分の準備ができない家でした。豆まきをされることも、鬼の苦手な柊の葉もない家です。鬼太は家の様子をうかがって、病気の母親と少女がつつましく暮らしていることを知り、少女のために節分のごちそうを集めてあげますが……。

著者
あまん きみこ
出版日

鬼太が人を思いやる気持ちがとても美しくて切ない物語です。鬼太がなぜ真冬に麦わら帽子をかぶらなくてはいけないのか、読み終わった後に子どもに問いかけてみましょう。子どもは鬼太の本当の気持ちに気づいてくれるのではないでしょうか。

本当は帽子なんかかぶらずに、友達と遊びたい。鬼太はそう思っているかもしれません。姿かたちや生まれついた国、信じる宗教などで、人はほかの人との関わり方を変える場合があります。相手にも自分と同じように心がある、そういった当たり前のことを子どもにも想像してほしい、そんな気持ちで送りたい一冊です。

子どもと一緒に声を出して読もう『とりかえっこ』

小さなヒヨコが1匹で遊びに出かけると、ネズミに出会いました。ヒヨコはネズミの鳴き声を聞くと、鳴き声をとりかえっこしようと言い出します。そしてネズミはピヨピヨ言いながら去っていき、ヒヨコはチュウチュウ言いながら散歩を続けるのです。

それからヒヨコはコブタに出会い、コブタと鳴き声をとりかえっこすることに。その後もヒヨコは出会う動物たちの鳴き声をとりかえっこして楽しく散歩を続けますが、ふいに猫が現れて襲われそうになってしまいます!しかし、ヒヨコはその直前に犬と鳴き声をとりかえっこしていたので、ヒヨコがワンと吠えると猫はびっくりして逃げて行ってしまいました。

著者
さとう わきこ
出版日

この作品は、絵本にっぽん賞を受賞しています。ピヨピヨという鳴き声がどんどん変化していく様はユニークで、ついマネしたくなるものです。

この絵本はぜひ、鳴き声の部分を子どもに読んでもらいましょう。みんなで一緒になって読み進めれば、わきあいあいとした時間が流れることでしょう。絵本の読み聞かせ会などでも大盛り上がりする作品です。

それぞれのページはシンプルなように見えて、セリフのないキャラクターたちも生き生きとしています。チュウチュウ言い出したコブタを驚きの表情で見守るブタの親子や、ブウと言い出したカエルに驚いて水の中からたくさんのカエルが飛び出す様子など、ページの隅々まで楽しむことができるでしょう。

親子とは何かを考えさせられる、ポプラ社の名作絵本『おまえうまそうだな』

広い平原にぽつんと取り残された卵から、アンキロサウルスの赤ちゃんが生まれました。お母さんもお父さんも兄弟もいなくて心細かった赤ちゃんが泣いていると、ティラノサウルスが現れて言うのです。

「おまえ うまそうだな」(作中より引用)

よだれをたらして赤ちゃんを食べようとしたティラノサウルスは、きょとんとしてしまいます。赤ちゃんはティラノサウルスがお父さんだと思い込んで、足にしがみついて喜んだからです。

赤ちゃんは自分の名前がウマソウという名前なんだと勘違いしていました。食べようとしていた相手が思いもよらず愛情をぶつけてきたのでとまどったティラノサウルスは、その赤ちゃんを守るために戦うことに……。

著者
宮西 達也
出版日

食うか食われるかの世界にいて、アンキロサウルスの赤ちゃんの純真無垢な愛は、ティラノサウルスの心を温かくほぐしていきます。

小さな子どもは、最後に赤ちゃんが本当のお父さんお母さんに出会うシーンで混乱してしまうかもしれません。でも、その混乱する気持ちすら愛という感情を知るために味わって欲しいと思います。ティラノサウルスのお父さんがただ強くて優しくて見習いたくなる、子どもだけでなく大人にも読んでほしい一冊です。

多くの子どもに知ってほしい名作『ほうれんそうは ないています』

おじいさんとおばあさんにたくさん声をかけてもらって、おいしくなあれと言われて愛情たっぷりに育てられたほうれんそう。そのほうれんそうが、ある日を境に誰にも食べてもらえなくなりました。

2011年3月11日に東日本で発生した災害と、それに伴う事故により傷ついた全ての生きとし生けるものの声がこの絵本には詰まっています。

お米も、牛乳も、カレイも、地震の後にふってきた放射能で自然が汚れてしまったことで、活躍の場を失いました。せっかくこの世に生まれたのに、食べてもらうこともなく朽ち果てていく食べ物達の悲しみが、子どもにも分かりやすく描かれています。

著者
鎌田 實
出版日
2014-03-10

これからの日本を担う子どもに、ぜひ一度読んでほしい一冊です。2011年の3月11日に大きな地震が発生したことを知っている、または経験した子どもはいるかもしれませんが、原発事故による二次被害に関して深い情報を知る子どもは少ないことでしょう。

それは歴史の中の遠い出来事ではなくて、未来の日本にもつながっていく大事な問題です。原発事故で実際に失われた農作物はただの野菜や魚介類ではなく、誰かが大切に育て世話をして愛情を注いだものだと知ることは大切なことですね。

ショッキングな内容かもしれませんが、いつか大人になっていく子どもたちへ、大人からプレゼントしたい力強い内容になっています。

不思議な世界へといざなう物語『カミナリこぞうがふってきた』

突然の雨が降り出して、一本杉の下で雨宿りを始めたタケシ君。そこへ雷がドーン!と落ちてきたかと思うと、落ちてきたのはかみなり小僧でした。

タケシ君の頭は雷が落ちたのかと疑うほどモジャモジャになり、太鼓が壊れたと泣き出すかみなり小僧はタケシ君の後をついてくるからさあ大変。タケシ君にしか見えないかみなり小僧と、地上と空の上の世界を行き来する、不思議な冒険ファンタジーです。

著者
シゲリカツヒコ
出版日
2010-06-12

雨が続く憂鬱な梅雨の時期にぜひ読んでほしい一冊です。ハチャメチャなストーリーに一喜一憂して、読んでいるうちに日常世界から絵本の中に引きずり込まれてしまいます。

頭の上で雷の音がゴロゴロとなりだしたら、空の上にはかみなり小僧がいるのかもしれない。子どもは本気でそう信じてしまうかもしれません。それほどまでに現実世界と空の上の不思議な世界が絶妙に混じり合っています。

挿絵の美しさも目を引くこの絵本、一度読んだら忘れられない作品です。

違う視点で世界を見てみよう『ありとすいか』

アリがスイカに群がっている、それだけのお話ではありません。この絵本に登場するアリたちはまるで人間のように考え、力を合わせてスイカを有効に使おうと努力します。

アリはスイカに出会い、その美味しさを確認してから、巣で待つ他の仲間たちにも分けてあげようと思い立ちます。それから仲間を集めたアリたちは綱引きをしたり、シャベルを使ったり。残ったスイカは頑張って働いたアリたちがその場でおなか一杯食べるのです。

美味しい部分をすっかり平らげて皮だけになったスイカも、滑り台のようにして遊ぶアリたち。食べ物を粗末にしない姿は見習いたいものですね。

著者
たむら しげる
出版日

アリの生態がよくわかるようにできているこの絵本には、アリの巣の内部が大きく描かれるページがあります。チョコやビスケットを蓄えている部屋や、きのこを栽培する部屋など、見ているだけでワクワクすることでしょう。

小さなアリから見た世界は迫力があり、子どもたちにさまざまな視点でものを見ることの興味深さを教えてくれます。この絵本を読む前と後では、外で見つけたアリを見る目が変わるかもしれませんね。

ポプラ社の良質な科学絵本『ライフタイム いきものたちの一生と数字』

この作品は水辺やサバンナにジャングルなど、様々な場所で暮らす動物たちのありとあらゆる数字が解説されている絵本です。

クモは一生に1度しか卵を包む袋を作らない。トナカイの角は、一生に10回生え変わる、キツツキが一生のうちに開ける穴は30個。気にしていなければ知ることのない動物を取り巻く数字には、驚かされたり、感心したり。この絵本を読むことで動物に興味を持つきっかけになるかもしれませんね。

著者
ローラ・M. シェーファー
出版日
2015-06-10

子どもの知りたいという気持ちを満たしてくれるこの一冊。カンガルーが一生のうちに産む子どもの数は予想以上に多くて、誰もが驚くことでしょう。

キリンの模様の数が200個あるという事実も、知っているのと知らないのでは動物園でキリンを見つけた時の喜びに大きな差が出るのではないでしょうか。初めての科学絵本を子どもに与えたいと思っている人にとてもおすすめの絵本です。

ポプラ社の中でも、隠れた名作や長きにわたって愛される傑作ばかり10作品を紹介させていただきました。お気に入りの一冊は見つかりましたか? どれもこれも読んだことがあるという絵本大好きな人もいるかもしれませんが、名作というのは、何度読んでも新しい発見があったり感動を味わえるものです。

大勢の子どもを前に読み聞かせるにも、子どもを膝に抱えて一緒に読むにも楽しい絵本ばかりでした。絵本を読む全ての人の時間がきらめきだす、そんな瞬間が訪れることを願っています。

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