文芸

笹本稜平のおすすめ文庫小説5選!映画『春を背負って』の原作者

更新:2017.6.12 作成:2017.6.12

笹本稜平は、山、海を題材にした冒険小説を得意とする作家です。どの作品もリアリティがあり、まるで一緒に自然の中にいるような描写が特徴といえるでしょう。今回は、そんな冒険小説を含むおすすめ5作品を紹介したいと思います。

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冒険小説の第一人者笹本稜平

笹本稜平は1951年、千葉県にて生まれました。大学を卒業後、出版社に勤めた後にフリーライターとして活躍します。

最初は、ペンネームとして「阿由葉稜」という名を使って作品を発表していました。その時執筆した小説は、後に本名で改訂され、発売されました。

シリーズ作品を多く描いており、調査員、捜査官などの事件物を多く手掛けています。代表作は、サントリーミステリー大賞を受賞した『時の渚』です。

主にミステリー、警察小説を手掛けるほか、自然を題材にした小説を手掛けるようになりました。また、山の他にも海を題材とした作品が多く見られます。状況や自然の風景の細かい描写は、まるで肌で感じるようなリアリティを持っていることでも有名です。海や山で起こる事件や冒険に、探求心をくすぐられるでしょう。

彼にとっての山とは

主人公の翔平は、恋人とのエベレスト登山中にちょっとした事故に遭遇します。その際に、恋人である聖美は命を落としてしまいました。

事故から4年たってもなお、その当時のことを悔やむ翔平でしたが、アマチュアの登山ツアーのガイドとして再びヒマラヤへ赴くことになりました。
著者
笹本 稜平
出版日
2011-06-10
笹本得意の山岳小説で、大変ボリュームのある作品となっています。ミステリーとしても読めますし、山岳ものとしても読める1作です。

山登りの用語が多いため、分野の知識に乏しい方は最初抵抗があると考えられますが、それを忘れるほどの面白さについ夢中になってしまうことでしょう。

翔平は、自身の登山に自信を持っていました。難壁にいくつも挑戦し、世界レベルのクライマーとなっていました。そんなときに起こった彼女の死を受け入れることが出来ません。自分の責任を問い、絶望の中生きていました。

これまでは、自分と周囲の身だけ無事であればいいと思っていた翔平でしたが、ツアーを率いると言ってはそうはいきません。アマチュアである彼らを守らなければいけないという責任を担って、再び山を登ります。

そんな翔平の揺れ動く心情を、笹本稜平は見事に描きました。周りの人の温かい気持ちから、翔平が山に向かう姿勢を変化させるところまで、読んでいくと感動が伝わってくることでしょう。

山登りを通じて、自身を見つめ直していく作品です。

山登りをしたことがない方でも、思わず上りたくなってしまうような描写と彼らの熱い気持ちが伝わって来ることでしょう。

山を見つめて人生を見つめる

主人公、長嶺亨は、もともとエンジニアをしていました。しかし、父親の死をきっかけに、父親が経営していた山小屋をついでオーナーとなるのです。

山小屋には、OLやおじいさん、小さい女の子、ホームレスなど、様々な人物が集まってきます。悩みを抱えた人たちが、山で癒されて帰って行くという、心が温まる物語です。
著者
笹本 稜平
出版日
2014-03-07
長嶺亨もまた、傷ついた人間の1人です。山小屋を運営するまで、彼はエンジニアを職としていました。しかし、やっとの思いで完成させたプログラムを評価されず、見合った報酬がもらえなかったことで、自分の仕事に自信を失いかけていたのです。

そんな時、父親の死によって山小屋との出会いをしました。

山小屋には様々な人が訪れます。亨はうつ病を抱え悩む女の人や、亨の父親を慕っていた人物たちに出会いました。出会う人々は、山と向き合うことで自然と生きる希望が湧いてきます。

この作品を読むと、生きるとはなんなのか?という疑問が解消されるような気持ちにさせられるのです。生きがいを持つことができる仕事とは何なのか?といった部分も、盛り込まれているといえるでしょう。

そしてこの作品のもう一つの魅力として挙げられるのは、山の自然溢れる描写です。読んでいるだけで思わず深呼吸をしたくなるような、青々しい風景を感じることができます。

登山に興味がない方も、思わず登山をしているような気持ちになることでしょう。

最後の舟を守る海の男

主人公、紬木静一郎は、40年近く船に乗る職についていました。その最後を飾る船として、不定期貨物船の「パシフィック・ローズ」を選びます。

パシフィック・ローズはスマトラ島を出発し、横浜を目指しました。しかし、火事にあったことを皮切りにシージャック事件へと巻き込まれていきます。
著者
笹本 稜平
出版日
2014-02-06
紬木は、テロ組織からパシフィックローズを奪還すべく、陸で国際海事機関に勤務する自身の娘と協力していきます。なんとも壮大な物語に、ハラハラドキドキしながらも思わず引き込まれてしまうことでしょう。

この作品1番の魅力は、次々と船を襲う事故や事件の臨場感です。火事が起き、嵐が襲い、シージャックに船を奪われます。これらの単語を聞くだけでもワクワクする方もいるのではないでしょうか。

色々な人物の野望が交錯し、事件が大きくなっていくことも印象的です。物語が持つ壮大なスケールに魅了されることでしょう。

そして、紬木の持つ海への熱い思いが伝わってきます。最後の舟を守ろうと必死になる紬木からは、まさにヒーローの風格が醸し出されていることを感じられるのです。

最初は絶望的な戦況でしたが、それすら男のプライドで覆していく姿にしびれるばかり。敵うはずもない大国を相手に諦めない紬木の姿を見れば、感動すること間違いなしです。

時をさかのぼり推理する探偵

私立探偵である茜沢は、とある老人から昔生き別れになった息子を探してほしいと依頼されます。老人の息子を探す中で、彼はとある事件を思い出します。

その事件とは、自分の家族を失ったひき逃げ事件でした。相違点があるのではないかと考え始めた茜沢は、事件の真相に迫っていきます。
著者
笹本 稜平
出版日
2004-04-07
この作品は、笹本稜平のデビュー作であり、サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞した作品でもあります。

老人の息子捜索と、自身の家族を殺した犯人追跡、という一見関係ない2つの事件ですが、推理を重ねていく毎にリンクしていくのです。証拠が揃いだして、段々と結末に迫っていく様子を臨場感たっぷりに描いていきます。

2つの事件に関係する人物として挙げられたのは、「駒井」という人物でした。駒井は、茜沢の家族が亡くなったひき逃げ事件の容疑者です。駒井を深く掘り下げるうちに、わからなかった部分が明確になっていきました。

また、事件を解決するにあたって様々な人物に出会います。人と人とのつながりは、謎の解決を導きました。相関図を頭に思い浮かべながらでないと分からなくなってしまうほど、人の関係が複雑なことも特徴です。はたしてどの人物とのつながりが、謎解きに必要なのでしょうか。

この作品の魅力の1つとして、家族への愛の描写があげられます。茜沢の、死んだ家族への思いをはじめとして、老人から息子への愛、そして駒井も、関係していくのです。

駒井はどんな人物なのでしょうか、どういう人生を歩んできたのでしょうか。

個性的なキャラクター達を楽しみながら、ぜひ読んでみて下さい。

エベレストで起きたとある事件

主人公は、登山家の真木郷司です。エベレスト登頂中に、なんとアメリカの人工衛星が墜落します。その影響で起きた雪崩に巻き込まれた真木は、何とか生き延びました。しかし、一緒に行動していた友人のフランス人が行方不明になってしまったのです。

真木は友人を探すため、衛星を回収しようと試みます。
著者
笹本 稜平
出版日
2004-07-14
人工衛星は、アメリカが隠していた秘密の衛星でした。その中には多くのデータが収録されており、そのデータを狙う犯罪集団が我先にと人工衛星に向かいます。

しかし、そんなことを知らない真木はただひたすら親友を探すために衛星へと向かうのです。この後、自分が大きな事件に巻き込まれるとは彼はまだ知りません。

まず目につくのは、エベレストという山で作業をすることの過酷さでしょう。標高8000メートルという、想像もできないような高さの山では無情にもつらい生活が待っています。読んでいるだけでも息苦しくなるような描写です。

そして、あまりにリアルに目に浮かべられる風景は、笹本の細かい下調べによるものなのでしょう。読んでいくと、ここまでかというほどの細かい描写が目につきます。リアリティを求めた笹本の熱い思いが伝わってくるでしょうか。

エベレストにたまたま登頂していて事件に巻き込まれたため、思いがけないところで事件は進退を見せます。真木は一般人ですが、なんと事件はアメリカ対テロ組織の戦いへもつれ込み、真木自身も巻き込まれてしまうのです。

真木は分からないなりに、自分で問題を解決しようと奮闘していきました。

果たして、親友は助かるのでしょうか。そして、テロリストから衛星を守れるのでしょうか。必見です。

いかがでしたでしょうか。様々な分野から、冒険小説を描いた笹本の魅力が伝わったかと思います。登山や船に詳しくない方でも、雄大な自然を感じることができる作品ばかりです。ぜひお手に取ってみて下さいね。