泣く子も笑いだす絵本として大ヒットしている「だるまさん」シリーズは、絵本作家・かがくいひろしの代表作です。ここではその3部作の魅力をたっぷりとご紹介します!
かがくいひろしは1955年東京生まれの絵本作家です。特別支援学校で教師として勤務をするうち、授業の一環として行っていた人形劇や紙を使った造形作品を制作するようになります。
2005年に絵本作家としてデビューした作品『おもちのきもち』では、講談社絵本新人賞を受賞しますが、その時すでに50歳。絵本作家としては遅咲きでしたが、独特な個性を持つ絵本のキャラクターたちとストーリーのユーモア性が話題となりました。しかしながら2009年に病気のため急逝し、惜しまれつつその短い作家活動を終えたのです。
かがくいひろしの作品は、特別支援学校で教師をしていた経験を生かした「音」と「動き」を取り入れたものが多く、愉快な擬音語が満載です。そのため、小さな子どもたちやハンディを持つ子どもたちにもわかりやすい絵本に仕上がっています。さらに、登場するキャラクターたちはかなり個性的です。
中でも今回紹介する「だるまさん が・の・と」シリーズでは、個性が光るだるまさんが主人公。なんと、だるまなのに足や手が生えていて、おまけにコミカルな動きをするのです。普段見かけるダルマとは全く別物の姿をしており、その親しみやすさが小さい子どもから大人にまで愛されている理由でしょう。
「だるまさんが」とくれば、「転んだ!」と続くのかと想像できるでしょう。しかし、かがくいひろしの人並み外れた発想力は、「転んだ」とは続きません。誰もがお馴染みで規則正しい「だ、る、ま、さ、ん、が」の後には、だるまさんのおかしな顔や予想外のしぐさに、意表をつかれ驚かされるのです。
声に出して読むと一層楽しい雰囲気となり、幼児にも大ウケ間違いありません。赤いだるまさんのシンプルな絵と、楽しい音がたくさんの絵本なので、赤ちゃんへの読み聞かせにもおすすめです。
- 著者
- かがくい ひろし
- 出版日
まず、表紙のだるまさんからして不思議だとは思いませんか?だるまなのに、短い手足がぴょこっと生えています。本来のだるまには手足はありませんし、いかつい顔をしているものが一般的です。どことなくひょうきんな顔のだるまさんの表紙が、お話も楽しいに違いないと期待させ、つい手にとってしまうような魅力をもっています。
さて、中を開けるとだるまさんがヨタヨタとしています。遊びのときのあのフレーズ「だ、る、ま、さ、ん、が」に合わせて声に出して読むと揺れている姿がちょうどよく、面白みを増すのです。期待をしてページをめくると、さあそこには!
だるまさんが転んでいます。でも書いてある文字は「どてっ」これだけです。真ん丸目玉でパチクリしたような顔のだるまさんが横倒しになっています。次は「ぷしゅーっ」と空気が抜けたようなだるまさん。その次にはなんと「ぷっ」とオナラをするだるまさん!どれも普段のだるまではあり得ない姿です。
「だ、る、ま、さ、ん、が」というリズミカルなページの後に、次々と続く面白い擬音とだるまさんの姿に、誰もが笑わずにはいられません。小さな子どもたちも、そのリズムとイラストを大いに楽しんで、お気に入りの1冊になることは間違いないでしょう。
1作目で愉快な動きをしていただるまさんが、今度は何を見せてくれるの?と読む前からワクワクする本作。手足が付いたひょうきんな顔のだるまさんが、「だ、る、ま、さ、ん、の」と左右にヨタヨタ体を揺らすと、次のページではまたもや子どもたちの大爆笑!一度読むだけでは止まらずに、何度も読みたくなってきます。
今度の『だるまさんの』では体の一部を見せてくれます。大きな目玉や可愛い手をバーンと見せるのですが、その表情の面白いこと。小さな子供たちが体の部位を覚えるにも役に立ちそうな絵本です。
- 著者
- かがくい ひろし
- 出版日
メガネをはずして大きな目玉を飛び出したページでは、文字は「め」だけ。なんとシンプルでしょう!手袋を脱ぐと、そこにはぷっくりしている手がでてきます。爪には一つずつだるまさんの顔付きで、笑わずにはいられません。帽子を脱いだだるまさんのピョーンとたった1本の毛には、みんな大笑いです。
最後のページには、なんとだるまさんの「お(尾)」がでてきます。だるまさんにシッポなんてあったっけー?と子どもたちは楽しく大騒ぎをするでしょう。かがくいひろしらしい展開です。
子どもたちは1、2ページ読み進むだけで、リズミカルな音のパターンと愉快な動きのだるまさんに魅了されます。きっと得意になってだるまさんの真似をするに違いありません。保育園や幼稚園の読み聞かせ絵本として活用すれば、クラス中が大いに盛り上がるでしょう。
今度の表紙はだるまさんと一緒にイチゴが手をつないで並んでいます。今までの展開を知っている子どもたちなら、「だ、る、ま、さ、ん、と」と続くのかな?と思うのですが、その期待はまんまと裏切られるのです。
なんと、ヨタヨタとしているのはいつものだるまさんではありません!だるまさんが「い、ち、ご、さ、ん、と」「バ、ナ、ナ、さ、ん、と」「メ、ロ、ン、さ、ん、と」に変わっているのです。意表をついた展開と、面白いイラストに子どもも大人も吹き出してしまう絵本です。
- 著者
- かがくい ひろし
- 出版日
- 2008-12-01
いつもと同じ「だるまさんが転んだ」のフレーズで親しみやすいのですが、今度のだるまさんはフルーツたちと一緒です。ヨタヨタ左右に揺れているのがイチゴやバナナ、メロンだとは表紙を開くまで思いもせず、とても新鮮に感じます。そしてやっぱりだるまさんも、ヨタヨタと登場するのです。
相変わらずリズミカルで「ぺこっ」「ぽにん」「ぎゅっ」なんていう楽しい音と一緒にお話は進みます。ページをめくるたびに、フルーツとだるまさんの挨拶やしぐさが楽しくて、子どもたちは何度も「読んで」と夢中になるでしょう。だるま、メロン、バナナ、イチゴの合体には思わず唖然とし、読んでいるうちに一緒に遊びたくなってきます。
だるまさんをはじめ、どのフルーツもひょうひょうとした、おかしな顔をしています。そこにシンプルだけれどユニークな「音」が加わり、イラストと相成って更に面白味を加えるのです。最後にみんながポーズを決めるところでは、子どもたちも満面の笑みになっていますよ。
『だるまさんが』のシリーズはどれも文字が少なくて、イラストと音が愉快なので赤ちゃんから楽しむことができます。短いお話だからこそ、繰り返し読んでも飽きずにいつでも子どもたちはケラケラと笑えるのです。
この「だるまさん」シリーズをはじめ、かがくいひろしの新作は残念ながらもう増えることはないでしょうけれど、これから何十年経っても親子に読み継がれ、笑い継がれていく良質な絵本としていつまでも心に残ります。『だるまさんが』で笑った子どもたちが、いつか成長して自分たちが親になったときに、もう一度手に取って親子で楽しんでほしい絵本です。