2017年12月から映画版が全国公開される人気少女漫画『未成年だけどコドモじゃない』、通称「みせコド」。綺麗な絵とアクが強い主役というギャップが楽しめる作品です。今回は本作の魅力的なキャラクター、ストーリの見所をご紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。
- 著者
- 水波 風南
- 出版日
- 2013-04-26
お金持ちのお嬢様・香琳と学校でもみんなの憧れの的の先輩・尚が政略結婚をすることになるというストーリーの『未成年だけどコドモじゃない』。映画化もされ、通称「みせコド」と略されています。主役の規格外の性格の悪さと絵の綺麗さが魅力的で、全5巻完結作品です。
ありえないくらいのお金持ち、そして今時高校生で政略結婚という非現実的ではあるものの王道設定の本作。しかし『未成年だけどコドモじゃない』が他と異なるゆえんはとにかくカップルがふたりとも性格が悪いこと。
漫画では人のいい人物が主役になることが多いですが、本作は性格の悪さがなかなか治りません。しかもヒロイン、ヒーローともに性格が悪いというなかなかアクの強い作品となっています。
しかし時間をかけてふたりのどうしようもないところを見ているうちに徐々にそこすら可愛く見えてくるから不思議なもの。そして好感を持ったところで彼らの成長が見られるのですんなりとストーリーに感情移入ができるのです。
また、『未成年だけどコドモじゃない』の作者・水波風南は少女漫画にしてはきわどいシーンでも知られていますが、本作ではそのような場面はほとんどありません。なのでそんな作品が苦手な方にもぜひおすすめです。
高校生の香琳は美少女で社長令嬢というハイスペックな女の子。しかしワガママ放題で育ってきたからか、夢見がちで鼻持ちならない一面があります。
そんな彼女が16歳になった時に告げられたのは許嫁の存在。彼女は当初自分の決めた人でないと結婚しないと言い張りましたが、相手の写真を見てころりと態度を変えます。
実はその相手は同じ高校で香琳が憧れていた尚という先輩だったのです。
そしてすぐに結婚式、始まるふたりの甘い生活……かと思いきや、何とふたりっきりになった途端、尚はこの結婚を「愛のない結婚」だと吐き捨てるのでした。
それまで香琳を可愛い可愛いと褒めてきたのに、ここにきていきなりの「折山さん」呼び、距離を感じる態度。
実は尚がこの結婚を決めたのにはある理由があって……。
利害関係から始まった結婚に、さまざまな人物による思惑。しかし香琳のまっすぐな思い、それに感化された尚の一途な気持ちで乗り越えていくふたりのピュアなラブストーリーです。
- 著者
- 水波 風南
- 出版日
- 2013-07-26
出典:『未成年だけどコドモじゃない』1巻
両親がお金持ちで、父親が溺愛していることから家でも学校でもかなりのわがままっぷりを発揮する香琳。彼女は巻数でいうと終盤の4巻くらいまで読者と尚をイライラさせます。
常に発言が上からで、食事に嫌いなものが入っているからと食べず、当初は決められた結婚相手が嫌だと自殺をほのめかして両親を脅します。
ところがそれが自分が片思いしていた相手だと知ると態度が一変。嬉しいくせに「結婚してあげてもよくてよ?」と偉そうに言うのです。
しばらくしたらこのツンデレぶりも可愛く思えてくるのですが、序盤はとにかく鼻につく。しかし香琳を面倒くさいと思うほどに、後半になって彼女が尚のために一途に努力する姿が愛らしく感じられます。
なんだかんだやっぱり愛されキャラのヒロインが香琳なのです。
出典:『未成年だけどコドモじゃない』1巻
こんな甘い言葉を素面ではけちゃうイケメン・尚。彼は学校でも一番の人気を誇るイケメン男子ですが、裏の顔を持っている人物です。
実は彼、かなりの腹黒さ。学校で香琳に「大事な花嫁がケガしたら大変だから」と耳打ちしながらも、同じ部活の友達には「結婚??妄想の話とかじゃねぇの?」とケロッとした顔でのたまうのです。
尚がこの結婚で望んでいたのは香琳の家の財力。両親と離れて暮らすことができ、大学進学や生活費用を負担、彼女の父から経営学を学ぶことができるなどのメリットありきの結婚だったのです。
なので式を挙げてからは香琳にひどい扱い。ひとりで登校するのは当たり前、いきなり別居を始めたり、挙げ句の果てに大嫌いと本人に突きつけたりするのです。
そして香琳と同じくしばらくこの性悪さが続くので、読んでいるとやきもきしてしまいます。しかし当の香琳はまったくくじけません。そしてそのまっすぐさに徐々に尚も惹かれていきます。
序盤にもやっとさせられた分、こちらも成長の様子に心が動かされる二面性を持ったヒーローです。
- 著者
- 水波 風南
- 出版日
- 2013-11-26
香琳の幼馴染であり、同級生のお金持ちの少年が五十鈴。彼はことあるごとに彼女にちょっかいをかけ、まるで仲のいい兄弟のようです。
しかしそう思っているのは香琳だけで、実は五十鈴は幼い頃から彼女に思いを寄せています。しかしその思いをうまく表現することができず、裏で彼女の下校を黒塗りの車で尾行したり、そのまま勝手に鍵を開けて尚と住む家に乗り込んできたりと、なかなかはちゃめちゃな行動をしてしまいます。
お金持ちのイケメンだから許されることですが、普通だったら通報ものです。
しかしそんな強すぎる五十鈴の思い、強行突破的な行動が尚に香琳への思いを自覚させることになり、ますます三角関係がヒートアップしていくのです。
ふたりのハネムーンに現れるのが尚の元カノだという沙綾。彼女は今彼がプレゼントしてくれた旅行だというのに、尚と香琳の仲を掻き乱そうと何やら企みます。
実は尚は彼女とのお付き合いにあるトラウマがあるよう。それはこの物語の始まりで語られていた尚の家庭事情や、沙綾の彼がお金持ちそうな男性であることに関わっています。
即物的で腹黒いというかなりひん曲がった性格なのですが、それがストーリーで良い効果をもたらすのです。その様子はぜひ作品でお確かめください!
- 著者
- 水波 風南
- 出版日
- 2014-06-26
結婚の話がトントン拍子に進み、ついに一緒に暮らすことになった香琳と尚。しかし連れて行かれたのが今まで香琳が住んでいた豪邸とは真逆のボロアパートでした。もちろん嫌だとごねる彼女ですが、尚の説得があり、愛があればどんなことでも乗り越えられるわ、と考えを変えます。
しかしついにふたりだけの生活がスタートした途端、尚の態度が豹変するのです。それは今まで香琳が見てきた王子様のようなものとは全く異なり、自分たちの関係を「愛のない政略結婚」と切り捨てるのです。
しかもあろうことかもともと香琳が片思いしていたことを知らない彼は、彼女自身のことも見た目が良ければ結婚しちゃう「浅はかな女」だと言ってきます。
理想の姿とはかけ離れ、しかも自分に対して敵意をむき出しにしてくる尚に、香琳はショックを受け、その場にへたり込みました。
しかし翌日、お嬢様育ちで何もできない彼女の様子を見て少しはフォローするよと微笑んだ尚に自分の好きだった面を見出し、これから自分のことを好きになってもらえばいいのだ、と心機一転。真っ直ぐすぎる勢いで努力し始めるのです。
「見ててセンパイ
見直すどころか好きにさせてみせるから!」
以外にもタフな香琳。最初は嫌な女としか思えませんが、この後なんども尚にあしらわれ、トラブルがあったとしてもチャレンジし続け、そんな姿を見ているとどんどん彼女がいじらしく見えてくるから不思議です。
香琳の幼馴染で、三角関係のお相手となるのが海老名五十鈴です。彼は香琳と「リンリン」、「カーリー」と呼び合う仲で、見た目は美少女のようですが、香琳を守ってあげようとする男らしさのあるキャラクターです。
そんな五十鈴がある日、香琳と尚との政略結婚のことを知ってしまいます。彼女が利用されていると知った彼はふたりを離婚させようと、香琳を自分の家に閉じ込めてしまいました。
そして家に来た尚に向かって離婚しても戸籍には残らないようにすることも出来ると持ちかけるのです。そしてバツもつかず、もともと愛のない結婚ならば離婚しない理由が無いだろうと詰め寄るのです。
それに対して親とのこともあるから考えさせてくれと答える尚。その晩、家に帰ってひとりの家の静けさを感じます。そして彼の出した答えは……。
少しずつ優しくなってきた尚が試されるエピソードです。もともとは腹黒い面があった彼ですが、香琳のまっすぐさに感化されて変化してきています。ふたりの絆に胸が熱くなること間違いなしのエピソードですのでぜひ作品でご確認ください!
- 著者
- 水波 風南
- 出版日
- 2016-04-26
主役のふたりがかなり性格が悪いという驚きの少女漫画『未成年だけどコドモじゃない』。イライラさせられつつも綺麗な絵と波乱万丈なストーリーに惹かれて読んでいるうちに、徐々にふたりの魅力にも気づかされる作品です。
王道だけど独特のこの恋愛漫画の魅力をぜひ作品でお楽しみください。ふたりが可愛く見えてくること間違いなしです!