クレヨンハウスが出版する絵本おすすめ5選!

更新:2021.12.2

木製おもちゃやオーガニック食材を取り扱う店としても知られるクレヨンハウス。その出版する絵本は、洗練されたセンスと面白さで子どもだけでなく大人心を惹きつけるものも多数。今回は読み聞かせにぴったりで大人も大満足の厳選5作品をご紹介します。

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ぼうしをめぐる物語。最後にあの子は「どこいったん?」

くまの大切なぼうしがなくなりました。彼は動物たちに「どこいったん?」と聞いてまわりますが、きつねも、かえるも、うさぎも、かめも、へびも、しかも、だれに聞いてもみんな「しらんなぁ」とか「このへんでは みてへんわ」と知らない様子。悲しくなってごろんと天を仰ぐくま。

そのとき彼の脳裏にある動物の姿がよぎります。そういえっばさっき「ぼうしなんてみたこともないで」と話していたあの子の頭にのっていたのは……!?はんなりした雰囲気から背景が真っ赤に転じて、衝撃の結末が待ちうけているお話です。
 

著者
ジョン・クラッセン
出版日
2011-11-25

作者はカナダ出身のジョン・クラッセン。個性の光るフォルムとシックな色使い、ひねりの効いたストーリーで、2011年にニューヨークタイムズ誌の絵本Best10に選ばれた作品です。一見無表情にも見える動物たちが味わい深く、のんびりした雰囲気が漂いますが、もちろん原書は英語です。

大阪弁の訳をほどこしたのは絵本作家の長谷川義史。英語の絵本に大阪弁をあてるなんて斬新すぎる印象ですが、手に取ればすぐに、絵とベストマッチのおおらかな響きであることが納得できるでしょう。そして結末を知ったとたん、大人にはタイトルの「真の意味」が沁みてくるくることと思います。

ぼうしの行方など知らないと答えていたのに、頭のうえにぼうしをのせていたあの子。気づいた瞬間に、真っ赤に染まるくまの世界。みつめ合う二人、高まる緊張――。さっきまでとぼけた表情にみえていたくまですが、そのとらえどころのない視線が今や不穏きわまりないものに感じます。ラストではぼうしはくまの頭にもどっていますが、かわりにぼうしをかぶっていたあの子の姿はみあたりません。さて、あの子「どこいったん?」。

子どもにとっては、親しみやすい画風とはんなりした大阪弁の響きが心地よく、いろいろな動物への「どこいったん?」のくり返しが面白い作品です。2歳頃から楽しむことができるでしょう。結末の意味がわかる小学校高学年生くらいからは、子ども同士の話題になるかもしれません。大人にとっても静かにお酒を飲みながらだれかにちょっと話してみたくなる魅力のある作品です。
 

いつでも、だれでも、どんなときでも!ハグで幸せになれる絵本

森に大きなくまさんがいました。出会う相手は誰でも抱きしめてしまう、ハグくまさんです。ふつうのくまなら食べたくなるようなまるまる太ったウサギも、おそろしく大きなツノのヘラジカも、くさいスカンクも、みんなみんなぎゅーっと抱きしめてしまうのです。なかでも好きなのは木を抱きしめること。小さな木も大きな木も、リンゴや梨や桃の木も、ぎゅーっとハグするのが大好き。

ところがある日、人間の男が森にやってきます。いつものようにハグを満喫中のくまさんの目の前で、男はいちばん立派な木にオノを振り上げたではありませんか……!困ったくまさん、さあ、どうする?
 

著者
ニコラス・オールドランド
出版日
2011-12-05

作者は人気ブランドを手がける商業デザイナーとして活躍中のカナダ人、ニコラス・オールドランド。肩書きからはお洒落でクールな絵本が想像されますが、『ハグくまさん』はユーモラスなタッチで描かれたじつに温かい作品です。シンプルな画風ながら、大自然の雄大さや、さまざまな生き物の個性が親しみやすく表現されています。

抱きしめられる動物たちの表情も見どころ。もしも巨大なくまが両手を広げてせまってきたら……、想像するだけで気絶しそうですね。動物たちの大きく見開かれた目や魂の抜けそうな様子と、くまさんのひたすらなハグの対比が愉快です。

そんな不思議なくまさんの前に、大好きな木を傷つけようとする男があらわれます。くまですから、解決法として自他ともに思い浮かべるのは、ふつうは鋭いツメや強力なキバですね。日ごろ平和的なハグくまさんとはいえ、嫌なことをする人間相手なら手がでようというものです。ところが彼のとった行動は――?

ハグは、さまざまな脳内ホルモンを分泌させることが知られています。幸福感が得られ、リラックス効果があり、たった30秒で1日のストレスの1/3を解消する力があるともいわれるハグ。でもこの絵本は、むずかしいことは抜きにして、だれかをぎゅーっと抱きしめたくなるお話です。大好きな家族や友人はもちろん、友好関係にはなかった相手も心のなかでハグしてみれば、明日はもっと希望で輝くかもしれませんね。2歳頃から大人まで楽しめる絵本です。
 

こどものツボを押さえたカラフルな「パ行」の絵本

色鮮やかで、ころころ・まるるんとしたフォルムが踊る、不思議きわまりない絵本です。じーっと見ていると、その謎の形が動いているように思えてくるだけでなく、なにやら鳴き声か話し声のようなものまで聞こえてくるではありませんか。

「ぱぱぺ ぱぷぽぴ ぽぱぷぽぴ ぱぺぽ ぷぺ? ぴぴぴー ぴぴーぷ ぷーぺ ぴぷぺぺぺ ぱぱぱぽぽぴぺぱ ぺぴぺぴぺぺ!」(『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』より引用)

さてさてこれは、宇宙人?妖精?赤ちゃんも大人もなぜか笑顔になってしまう、不思議で楽しい作品です。
 

著者
谷川 俊太郎
出版日
2009-04-01

読み聞かせるとなぜか子どもはニコニコゲラゲラ大笑い。1歳未満の子も色鮮やかな絵に目をうばわれるようですが、どうやらある程度言葉の発達した3歳以上のほうが、この意味不明な「パ行」に心をつかまれるようです。不機嫌スイッチの入っていた子も、となりでこの本を開かれたら、気になってしかたない様子。読んでいる大人のほうは発音に四苦八苦ですが、気づけばなんだか楽しい気持ちに包まれているから不思議です。

絵をかいたのはおかざきけんじろう。多彩な表現活動をしている造形作家で、武蔵野美術大学客員教授もつとめています。そこに言葉をのせたのが谷川俊太郎。日本を代表する詩人で、翻訳家、絵本作家、脚本家といった顔も持っています。肩書きを並べてみるとどんな格式高い作品ができるのだろうと緊張すら覚えますが、出来上がったのがこの『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』。拍子抜けしそうですが、子どもの反応をみれば、なるほど納得ですね。

絵と言葉が素晴らしいセッションを奏で、無邪気で奔放な、美しさと可笑しさが絶妙にからみあった作品。この絵本の主人公はだれか?いったいどんなストーリーなのか?その答えはきっと、子どもだけが知っているのでしょう。
 

素敵な「おやすみ」を繰り返しながら眠りの世界に導いてくれる絵本

「おやすみ、ぼくのあしさん きょうも うーんと はしったね」(『おやすみ、ぼく』
より引用)

子どもはベッドに入っても、眠りにつくまでは時間がかかるもの。主人公のオランウータンの子どもが、今日の出来事を振り返りながら、自分のあし、ひざ、もも、おなか、おしり、むね、ゆび、うで、くび、みみ、はな……と、体中に素敵なおやすみを言っていく物語です。さて、最後におやすみをする相手は、いったい誰でしょう?
 

著者
アンドリュー ダッド
出版日
2009-04-20

作者のアンドリュー・ダッドはオーストラリア人。作家であり俳優でもある彼が、自身の3人の子どもたちのために作ったベッドタイムストーリーがこの物語の原型です。チンパンジーの可愛らしい子どもを主人公に絵を描いたのは、イギリス出身でオーストラリア在住のエマ・クエイ。優しい色合いと柔らかなタッチで描かれ、主人公の無邪気で安心しきった表情を眺めているだけで、ほっとした気持ちになってきます。

訳者の落合恵子は出版元であるクレヨンハウスの主催者。彼女は物語のはじまりに、「世界中の眠たい子と まだまだ眠くない子と 眠りたくない子へ」という言葉を載せています。子どもは眠いのになかなかうまく眠りの世界へ入っていけなかったり、眠気のかけらも感じないほどにお目々ぱっちりだったり、とにかく眠りたくない気分だったり……。日々寝かしつけに頭を悩ませている大人は、訳者のこの言葉に一本とられたような可笑しさを感じるのではないでしょうか。

「おやすみ、ぼくの〇〇さん」、と体のあちこちにご挨拶していく言葉が繰り返しのリズムになって、子どもはだんだんと心地よい気持ちになってくることでしょう。おやすみを言う場所にタッチしながら読んであげれば、とても素敵なスキンシップタイムになりますね。少しずつ少しずつ心穏やかな眠りへ導いてくれる、入眠儀式のツールになる絵本です。

自分自身をいたわることをついつい忘れがちな大人にも、ぜひおすすめしたいと思います。今日も一日頑張ってくれた足や、ささえてくれた膝に思いを馳せて、優しい癒しに包まれてはいかがでしょう。
 

ご隠居 vs おばけ――軽妙で愉快な落語の絵本

大店のご隠居さんが奉公人を引き連れて、古いお屋敷に引っ越してきました。お化け屋敷というもっぱらのうわさですが、彼は全然気にしません。しかし奉公人は違います。人使いの荒いのは我慢できるが化け物は嫌だと、いとまごいして去ってしまいます。身の回りの世話をしてくれる人がいなくなって、困ってしまうご隠居さん。

するとその夜、なんだか背中がぞくぞくすると思ったら、庭の障子が音もなく開いて一つ目小僧があらわれたではありませんか。普通なら腰のひとつも抜かすところ、なんとご隠居は助かったとばかりに言うのです。飯を炊け、鯵を焼け、味噌汁をつくって漬物を切ったら残った飯でおにぎりをこしらえて、茶を入れて片付けを済ませたら、つぎは布団を敷いて肩でもたたけ……と、それはもう人使い、いえ化け物使いの荒いこと荒いこと。

豪胆なご隠居さんと、こき使われる化け物たちを描いたお話です。
 

著者
川端 誠
出版日
1994-11-01

落語「化け物使い」を川端誠が絵本にしました。くっきりした線と色合いで描かれており、化け物たちがとぼけた表情の親しみやすいキャラクターに仕上がっています。落語が出典とあって、小気味よいリズムのある言葉で語られているので、声に出して読むのが気持ち良い作品です。

なんといっても格別なのは化け物たちの使われよう。一つ目小僧は丁稚(でっち)の小僧のようにこき使われ、ろくろっ首は女性の器用さをみこまれたのか裁縫や着物の片付けを命じられ、三つ目の大入道はその巨体を活かした力仕事をつぎつぎと課せられます。こきつかわれる化け物たちのなんとも必死で情けないような様子が、子どもの笑いを誘うことでしょう。

対して、人材の特性を見抜いて各人に適した作業をテキパキと割り振るあたり、さすがは大店のご隠居というべきでしょうか?そのしれっとした豪胆な様は、半端ではありません。自分は座布団から一歩も動かず、偉そうにキセルをふかしながら、さんざん化け物に命令するのです。さて最後に軍配があがるのは、ご隠居のほうでしょうか、それとも化け物たちのほうでしょうか?

オチがしっかり理解できるのは小学校低学年くらいからですが、滑稽な雰囲気は3歳頃から楽しめるでしょう。そして元が落語だからでしょうか、男性の声で読むとひときわ面白みが増すように思います。絵本というとメルヘンチックな印象で敬遠しているお父さんやおじいさんが読んでくれたら、寄席のように家族みんなで楽しめそうですね。読み聞かせる大人もしっかり楽しめる、日本らしさの詰まった絵本です。読み終えて本を閉じたとき、裏表紙にもお楽しみが描かれていたことに気づかされますよ。
 

いかがでしたでしょうか。センスの良さが光るクレヨンハウスの絵本は、くり返し読みたくなることうけあいです。小さな子へのプレゼントとしても、大人から大人へのプレゼントとしても、自分へのプレゼントとしても、さりげなく素敵なものばかりですよ。

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