戦後間もなく「月刊ひかりのくに」という絵本雑誌を発行している出版社・ひかりのくに。未就学児童向けの絵本で定評のある出版社です。今回は、そんなひかりのくにの絵本をご紹介します。
ひかりのくには、戦後間も無い復興期に、保育という観点から子どもたちの育成を支える事業に乗り出した、幼児向け書籍の出版などを行う出版社です。
絵本雑誌の「月刊ひかりのくに」、保育従事者向けの月刊情報誌「保育」の創刊に始まり、徹底して保育事業のサポートに従事してきました。できる限り子どもたちに触れてもらえるよう、低価格で大量に印刷できる雑誌という形で絵本を届け続けています。
絵本雑誌の方は、幼稚園や保育園、書店経由で定期購読する以外に手に入りませんが、そこから派生して出版された絵本も数多く、書店の棚を見れば、ひかりのくにの絵本がかなり多いことに驚かされるでしょう。
今回は、子どもへの愛がいっぱい詰まった絵本をご紹介します。
中川ひろたかと村上康成のコンビで送る、赤ちゃんにおすすめのにらめっこ絵本です。
「にらめっこしましょ あっぷっぷ!」と大きなページをめくるたび、次々出てくる面白い顔。赤ちゃんもお母さんも、揃って楽しめる一冊です。
- 著者
- 中川 ひろたか
- 出版日
- 2003-05-01
0~2歳児向けの赤ちゃん絵本なので、内容も至ってシンプル。「にらめっこしましょ あっぷっぷ!」と、次々とにらめっこをしていきます。
繰り返しの展開ですが、縦横共に20cm超という、赤ちゃん向けとしては特大サイズの絵本なので、「あっぷっぷ!」の顔も大迫力なのです。
内容がシンプルな分、構成にはしっかり気を遣っているので、にらめっこのルールが分からない赤ちゃんに読んでみせても、声を上げて喜んでくれること間違いありません。
絵本の読み聞かせの入門に、ぜひおすすめしたい一冊です。
「ごめんなさい」って謝るのは、意外と勇気が要ります。わざとやったわけでないなら、なおさら言い出しにくいものです。しかし、謝らなければ仲直りはできません。
本作は、可愛いお野菜たちが、「ごめんなさい」と「野菜」をかけた魔法の言葉「ごめんやさい」で仲直りするお話です。
- 著者
- 出版日
- 2013-09-02
子どもが素直に謝るのは、なかなか勇気がいることでしょう。「なんですぐに『ごめんなさい』が出ないの!?」とお子さんを叱った記憶、皆さんもお持ちではないでしょうか。
本作は、わたなべあやの「おやさい」シリーズの一冊です。シリーズに登場するいつもの可愛いお野菜さんたちが、間違ってやってしまったことを、勇気を持って「ごめんやさい」して、「いーいーよー」と許してもらいます。
繰り返しが続くシンプルな流れですが、温かみのある絵と優しく微笑ましいお話が、なんだかほっこりさせてくれるのです。
単純だけど、大切なやりとりを教えてくれる、幼児向けの優しい絵本です。
武鹿悦子の「くすのきだんち」シリーズの一冊目です。
地上10階、地下1階の大きな団地になっているくすのきには、様々な動物が住んでいます。各階一世帯ずつ住んでいるのですが、7、8階だけは現在空室です。
ある日、8階にかけすが引っ越してきて、結婚して卵が生まれます。幸せいっぱいのかけす一家ですが、へびが7階に入居したいとやってきて……。
- 著者
- 武鹿 悦子
- 出版日
- 2007-02-01
「くすのきだんち」シリーズは、もともと月刊絵本として販売されていたため、幼稚園や保育園経由での定期購読以外に購入手段がありませんでした。
問い合わせが多かったことから市販化され、普通の書店で気軽に買えるようになったという経緯があります。月刊絵本の時から、それだけ「面白い」と評判だったということですね。
確かに、登場する住人の動物たちは、くすのきだんちがみんな大好きで、自然とお互いを助け合い、支え合える、気持ちの良い人たちばかり。悪い下心を持ってやってきたへびを追い返したのも、住人たちのとっさの連係プレーです。
住人たちのさりげない善意のやりとりが、心をポカポカさせてくれます。
優しいお話をお求めの方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
ある日、かんたろうがトイレでしたうんこが、突然話し始めます。言ってることはごもっともですが、相手はうんこです。思わず同意しても、哀れんでみても、何がどうあっても臭いものは臭いし、正直好きにはなれません。
それでも、うんこはうんこちゃんとして、あくまで女の子らしい悲哀を語りかけてくるのです。愛されたくて、可愛がってもらいたくて、好きといって欲しくて、肩にのったりしてみて、かんたろうを困らせます。
果たして、うんこちゃんの想いは、かんたろうに届くのでしょうか?
- 著者
- のぶみ
- 出版日
- 2015-07-10
そろそろ一人でおトイレできるように、トイレトレーニングの絵本をお探しのお母さん、違います。この作品は、そういう内容の絵本ではありません。このお話は、あくまでかんたろうと女の子の人格を持ったうんこちゃんの心の交流を描いたお話です。
他のシリーズや作品でもそうなのですが、著者のぶみの切り口は毎回斬新で、普通の作家と擬人化の方向性も違うことが多くあります。そんな中でも強烈な臭いを放つ……もとい、異彩を放つのが本作です。
普通の作家が単純な擬人化で終えそうなところを、誰もが眉をひそめて敬遠する排泄物のアイデンティティはそのままに、夢見る乙女のごとき人格を与えてしまうところがのぶみの真骨頂といえるでしょう。
正直、(主要登場人物の名前なので仕方ありませんが、)「うんこ」と連発させられるので、これを図書館や児童館で「これ読んで~」とせがまれたら、恥ずかしいのは当然。しかし、読んでみると、意外と切ないお話であることに気づくはずです。生い立ちのせいで忌み嫌われる「うんこちゃん」の悲哀には、ついつい同情したくなります。
最後には、本当に切ないお別れと、それを台無しつつも笑いへと転化させてくれる最高のオチが待っています。
オチはぜひ、皆さん自身でご確認下さい。
独り寂しく暮らすことで、何もする気力が起きなくなっていたおじいさんのところへ、ある日、お友達のおばあさんから届いたプレゼントの中身は、なんと10ぴきのおばけ。それから、おじいさんと10ぴきのおばけの楽しい生活が始まります。
にしかわおさむの描く、おじいさんと10ぴきのおばけたちのほのぼのストーリー。「10ぴきのおばけ」シリーズの第一作です。
- 著者
- にしかわ おさむ
- 出版日
- 2002-05-01
本作に登場するおばけは、みんな可愛くて働き者。物語のはじめ、お腹を空かせていたおばけのためにホットケーキを焼いてあげるおじいさん。おばけたちも、そのお礼とばかりに家中を掃除してあげます。
ある夜、風邪で寝込んでしまうおじいさんですが、おばけの看病のおかげで前より元気になり、おばけたちとの暮らしを楽しんでいるようです。現実世界でも、ペットを飼うことで元気になったり、孫と一緒に住むことで行動的になったりというのは、よく聞く話でしょう。
おばけとおじいさんの心温まる交流が描かれた、読んでいるだけで幸せな気分になれる絵本です。
いかがでしたか?優しく豊かな心を育てるなら、優しく楽しいお話を、親が一緒に楽しんで読んであげるのが一番の近道です。心を大きく揺さぶられる絵本も良いですが、普段の心穏やかな時間を共にする絵本として、何冊か用意しておきたいですね。