長嶋有のおすすめ文庫作品5選!多彩な作者による小説、エッセイ

更新:2017.6.22

長嶋有は、俳句や小説、漫画まで描く多才な作家です。今回は、小説を中心に5冊紹介したいと思います。あなたの普段の日常に彩りを添えることができるかもしれません。

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日常を多く描いた作者、長嶋有

長嶋有は1972年、埼玉県草加市にて生まれました。その後北海道にて学生時代まで過ごします。

小説家ではありますが、最初は俳句の同人誌で活躍していました。短編の文学賞に応募し続けた後に、作品が賞を取るようになっていったため、会社を辞めて作家としての人生を歩むようになりました。その後、フリーライターとして活躍していきます。

雑誌『文學界』に応募した作品が新人賞を受賞し、小説家デビューを果たしました。そして、『猛スピードで母は』という作品で芥川賞を受賞します。

作風としては、日常で起きる小さなことを繊細に描くものが多いです。大人があそぶだけの『ねたあとに』や、「それはなんでしょう」という遊びを行う『問の無い答え』など、普段ただ生きている風景を独特な感性のもとに作品にしています。

夏の間の大人のあそび

この作品の舞台は、山荘です。山荘には大人たちが集まり、思い思いの遊びをしていました。遊びというのは、競馬、将棋など様々ですが、大人が遊ぶものばかりです。

ただ遊ぶ様子を描いたこの作品の魅力とは一体何なのでしょうか。

著者
長嶋 有
出版日
2012-02-07

朝日新聞で連載されていた作品です。夏の間だけ大人たちは集まり、独自に決められた遊びをルールに基づいて遊んでいきます。ただ、それだけです。

大人たちが遊んでいるだけなのに、なぜかその光景をずっと見ていたいような気持ちになります。まるで生物を観察しているような内容なのです。

今作の面白いところは、遊びの内容にとてもこだわっているところでしょう。その遊びは、山荘の主人が小さい時から考え出したもので、それぞれがルールに従って楽しんでいくのです。

何と言ってもこの遊びがオリジナルで惹かれるものとなっています。ワクワクしながら遊ぶ登場人物たちの様子を想像すると、こちらまでたのしくなってしまうでしょう。

この作品は、何も起こりません。ただ見守るだけです。しかし、考えてみると人の物語というのは、毎回毎回何かとんでもないことが起こるというわけではありません。この作品では、日常がまるで非日常のように描かれているのです。何も起こらない日々を過ごすのもなかなか楽しいのではないかと感じます。

山荘で行われている遊びに、ワクワクすることまちがいないでしょう。

長嶋有が抱く、いろんなきもち

デビュー10周年になった長嶋有の初のエッセイ集です。作品を書き、悩み、日常を送っていく作者の姿が描かれ、どんな人物なのかを感じることができます。

どんな些細なことでも見逃さず、思いを巡らす感性から、多くの作品が描かれているのでしょう。独特の世界観を持つ作者の視界とは、一体どんなものなのでしょうか。

著者
長嶋 有
出版日
2011-10-06

エッセイの中には短いものから長いものまで様々ですが、どれも軽く読めるものばかりです。長嶋有が作品を執筆しているときの思いや、日常のこと、他の小説家との交流も描かれています。

本作で感じられる、言葉を大切にしている姿勢も印象的です。言葉の芸術を多く生み出す長嶋にとって、言葉1つ1つは表現の面でとても大切なことが分かります。その他にも、思わず笑ってしまうものや、深く考えさせられるエッセイも収録されているのです。

長嶋は、小説を書くだけでなく、漫画や俳句の世界でも活躍しています。その幅広い作品制作を活かして他作品への批評も収録されています。エッセイというよりは書論のような章があるため、また面白く感じられるのです。

長嶋が普段どんなことを感じて作品を執筆しているのかという部分や、どんな作品に影響されているのか分かるのです。好きなものが同じ方は親近感を覚えるでしょう。また、見てみよう、読んでみようと思う方もいると思います。

これこそがエッセイの醍醐味で、好きな作者が好きなものを読むことで、感性はどのように作り上げられたのか、感じることができるかもしれません。

長嶋有の「いろんなきもち」を知りたい方は是非お手に取ってみて下さい。

主人公を取り巻く日常を描いた作品

主人公は、古道具を扱うお店「フラココ屋」の2階に住んでいる男性。彼がどんな人なのか、というよりも、この作品のメインは主人公の周りの人物です。近所の人たちの様子を、主人公が淡々と語っていきます。

著者
長嶋 有
出版日
2009-04-15

雑誌「新潮」にて掲載された連続短編集です。大江健三郎賞を獲得しました。

主人公はフラココ屋の住み込みアルバイトをしています。フラココ屋の周りには、変人と自覚していないような変わった人物たちがフラフラしているのです。

大家さんの孫娘、相撲好きな外国人、居候の人物など、ここでしか出会えない人たちがたくさん出てきます。

みんなどこか不安定で、ゆるゆる生きていました。仲良くしようと思っているわけではないけれど、身近にいることで自然と仲が深まります。

しかし、そんな生活はずっと続くわけではありませんでした。主人公の周りの人物たちは巣立っていきます。彼らはゆるい環境の「フラココ屋」の周辺に、このままいたいような気もしますが、1人ひとり人生のために旅立っていかなければならなくなるのです。

この作品では、大きな事件が起こるわけでもない、日常を淡々と追っていくお話となっています。また、主人公についての詳細な記載はありません。彼は、周りを観察し、記していくだけ。

人と人とのつながりや、思いやり、離れていってしまう寂しさなどが描かれているのです。なんでもない日常にも、必ずストーリーがあります。そんな部分を感じ取ることができる作品と言えるでしょう。

読めばきっと、心が温かくなります。

長嶋有の妄想をたくさん詰め込んだ作品

『安全な妄想』という題名の通り、長嶋の妄想がたくさん詰まったエッセイです。賞をいただいた大江健三郎のことや、日常で感じることを綴ります。

前回のエッセイよりもさらに妄想が詰まった作品です。

著者
長嶋有
出版日
2014-11-05

66篇のエッセイが詰まった内容です。

長嶋有が日常の中で感じたこと、考えたことをより深く追求していきます。といっても難しい話ばかりではなく、中には笑ってしまうような作品もあるのです。

特におすすめしたいのは、「愛しのジャパネット」。ジャパネット通販の番組を見ながら長嶋有は考えを巡らせます。商品のこと、出演者のこと、それからその場の雰囲気まで妄想するのです。題名の通り、ジャパネットという番組が好きだからこそ、深く考察する姿が非常に面白く感じられます。

普段何気なく見ているものも、長嶋有の手にかかれば物語になってしまうのでしょう。

彼は、他の作品でもなんでもない日常を多く描きます。小説の数々は、彼の何気ない「妄想」からくるものなのかもしれません。一般人ではそこまで考えつかないだろう、という感性にあっと驚かされることでしょう。

読みやすく、長嶋有の姿が身近に感じられることでしょうが、芥川賞を受賞した人物らしい風格も垣間見える作品です。決して親近感を感じさせず、かといって敷居が高いわけでもない。そんな微妙なバランスを保てるのは、彼の実力ゆえなのではないでしょうか。

ぜひ読んで見てください。

それはなんでしょう?答えがない遊び。

主人公のネムオは、「それはなんでしょう」というゲームをTwitter上で開催しました。

参加者は、お題に沿って自分の答えを発表します。そして、答えが発表されたのちに考察や解釈を披露するのです。

Twitter上では、この遊びを中心として様々な事情を抱えた、年齢も趣味も異なる人たちが交流を深めていきました。

著者
長嶋 有
出版日
2016-07-08

「それはなんでしょう」というのは、質問に対して答えるというシンプルな遊びです。しかし、その質問は、何を聞いているものなのか、明らかではありません。そのため、自分でも何を答えたらいいかわからず、無理やり回答するのです。

この遊びは、前に紹介した『ねたあとに』でもあそばれていました。いわゆる「言葉遊び」で、正解はありません。ただ、自分が考えついたことを話していくのです。

作品の舞台となる時代は、3.11が起こった直後でした。TwitterなどのSNSが流行り始めた時、初めて人命救助の意味を持ってSNSが使われた時でもあります。

SNSでの人と人との繋がりは、詐欺や犯罪の可能性もあり、あまり良しとしない意見も見られることでしょう。しかし、SNSの良いところは、知らない土地で違う生活をしている人と繋がることができる、という点にあります。

その部分を改めて気づかされる作品なのではないでしょうか。

知らない人たちでも、論じ、考えを共有することの大切さや、世界にはまだ出会ったことのない人がいる面白さに気づくことでしょう。

いかがだったでしょうか。長嶋有の作品は、日常を描きながらも人々の繋がりや温かみを感じることができるものが多くあります。エッセイにおいても、どんな視点から普段作品を描いているのか明らかになることでしょう。ぜひ読んで見てくださいね。