深緑野分の3作品をご紹介!直木賞&本屋大賞の候補作も!

更新:2017.6.23 作成:2017.6.23

深緑野分という作者を知っていますでしょうか。いまだ目立った活動はないものの、あと一歩で直木賞を受賞するまでの実力を持った作家です。これから期待の人物の作品を、今回は3作品紹介したいと思います。

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次世代ミステリー作家、深緑野分とは

深緑野分は、1983年、神奈川県にて生まれました。高校を卒業後、パートで書店員をしていましたが、作家に転向します。

2010年、『オーブランの少女』でミステリーズ!新人賞佳作を受賞し、同作品で作家デビューします。その後『戦場のコックたち』で直木賞の候補へノミネートされました。

主にミステリーを描く作家です。そのほかにも、雰囲気作りが独特なのが印象的。『オーブランの少女』では、周りの世界から隔離されたオーブラン庭園の不思議な雰囲気を、とても幻想的に描いています。

『戦場のコックたち』では、日本側からではなく外国側からの戦争についての気持ちや視線を見事に描きました。

どの作品にも共通して言えることは、物語を取り巻く雰囲気が不思議で、幻想的なことです。女性の繊細な視線から見た世界観から描かれているのかもしれません。

これからの活躍に期待が高まる作家です。

少女たちの周りの事件

美しい庭園として有名なオーブランの庭園で、殺人事件が起こりました。その謎を解くために調べていくと、そこには隠されていた秘密の過去があったのです。

それは昔、重度の障害を持つ少女たちがオーブランに集められ、殺されていたというものでした。

オーブランに隠されたその秘密は、一体なんなのでしょうか。

表題作「オーブランの少女」を含む短編5作を収録しています。
 

著者
深緑 野分
出版日
2016-03-22

この作品は、深緑野分のデビュー作です。表題作「オーブランの少女」以外にも「仮面」「大雨のトマト」などが収録されている短編集となっています。

いずれの作品も、少女が登場します。国籍も年齢も違う彼女たちの周りでは、様々なミステリーが起きていくのです。それを解き明かしながらも、不思議な雰囲気に飲み込まれていきます。

「オーブランの少女」は、庭園を舞台にしたファンタジーに近い作品です。少女たちには花の名前がつけられています。そして、他の世界から隔離されている美しい世界の中で、彼女たちの事件は起こっていました。

その設定だけでもワクワクしてしまう、という方もいらっしゃると思います。ミステリーなので謎解きにはなっていますが、謎が解かれてもなお存在する美しい雰囲気に圧倒されることでしょう。

「氷の皇国」は、短編にもかかわらず90ページに及ぶ大作となっています。詩人によって語られたという構成で送るこの作品は、残酷な皇帝の物語です。なんでも処刑されてしまう世界の中で、首なし死体が発見されます。果たしてその正体とはいったい何なのでしょうか。

残酷で美しい物語、という表現は中々伝わりづらいかもしれませんが、残酷な作品だからこそ、美しさが際立つものが多く存在します。この作品も、そのうちの1つです。

少女たちが繰り広げる謎解きには、美しさと悲しさが混在しています。そのバランスもとても見事に描かれているのです。

そのほかの作品も、国籍や時代が異なる少女たちが登場します。テイストがすべて異なるため、作品数分の世界の魅力を感じることが出来るでしょう。

1冊通してぜひご覧ください。
 

敵のコックから見た第二次世界大戦

主人公は新兵のティムです。ティムは、戦場で料理を作るコックでした。

彼は仲間とともに戦場で生き抜いていく中で、いくつかの謎に直面します。卵が行方不明になったり、幽霊が出たり……そんな小さな事件を解決していくのです。

著者
深緑 野分
出版日
2015-08-29

戦争がテーマとなっているため、作戦や戦闘シーンも多く出てきます。その中でティムたちは仲間とともに謎を解決していくのです。

小さい謎が重なっていき、それを解いていくと全てが繋がっていく物語となっています。伏線の張り方や謎解きが、非常にうまく構成されているといえるでしょう。

日本から見る第二次世界大戦の作品は多いですが、敵側から見る戦争の物語はなかなか少ないです。外国人にとっても、戦争というのは重く心に傷が生まれるものだったと感じます。

コックの目から見ても、戦争とは悲惨なものだったのだと感じられたのでしょう。コックが主人公だからと言って、決して軽い物語ではありません。戦争への作者の思いが感じられる一作となっています。

戦争とは、なんのために行うのだろう……と再び自分に問いたくなるような物語です。

この作品は、日本兵側ではなくアメリカ兵側からの視線で戦争が描かれています。日本人では想像がつかないような捉え方もあったかと推測されますが、深緑はその部分を詳細に描いているのです。

きっと、たくさんの資料を参考にしているのでしょう。それくらい、熱のこもった作品となっています。

直木賞にノミネートされたことで、一躍有名になりましたが、本作品を読むと、まだまだこれからの勢いを感じさせられることでしょう。そんな、深緑の活躍が期待できる作品でもあります。
 

深緑野分が描く、SF青春小説

ノストラダムスの大予言の年、1999年が舞台です。

主人公のあさぎの初恋の相手、基は2年前に亡くなりました。2年後、基の遺書のような日記を手に入れたあさぎは、クラスメイトの八女とともに、基が死なずに済んだ方法を考え始めます。

一方、あさぎたちが住む町では、謎の宗教団体の信者が死ぬという事件が起きるのです。

著者
深緑 野分
出版日
2016-09-21

2年前の事件が「起こらない方法」を探る、という、救いのないような調査をしだす2人のお話です。宗教団体の死者の話とはかなり異なる事件のようですが、物語の後半で、2人は巻き込まれていきます。

初恋の相手である基は、もう2度と生き返ることはありません。しかし、パラレルワールドを探し続けるあさぎの姿は、とても若々しく感じられます。

あさぎに付き合う八女もまた同じです。

あさぎは、街で次々に起こる事件から八女によって守られていきます。昔の好きな人のことを、今の気になる人と探るのです。非常にもどかしい関係性を描いていると言えるでしょう。

また、この物語にひと味添えているのが、ノストラダムスの大予言です。もしかしたら世界が今年で終わるかもしれない、という「期限」があさぎたちを焦らせています。

最後に出した結論とは、一体何なのでしょうか。
 

深緑野分の作品はまだとても少ないですが、次世代ミステリー作家といっても過言ではありません。まだ粗削りな部分も見られますが、なんといっても直木賞にノミネートされたのです。これから注目の作家を、ぜひお見逃しなく。