柔らかで優しいタッチの絵が魅力的な黒井健。代表作に童話絵本『手ぶくろを買いに』などがあります。ここでは彼が手掛ける絵本を紹介していきたいと思います。
黒井健は新潟県出身の絵本作家、イラストレーターです。学習研究者幼児絵本編集部で活躍後、フリーになりました。過去には、サンリオ美術賞受賞、赤い鳥さし絵賞を受賞しています。
特徴的なふんわりとした優しいタッチは、色鉛筆から生み出されているそうです。2003年、山梨県清里にアトリエを併設した「黒井健絵本ハウス」が開館。原画などが展示されているので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
寒い冬を迎えた子狐は、生まれて初めて見る雪に興味津々。雪の上を楽しく駆け回っていましたが、洞穴に帰ってくる頃にはすっかり手が冷えきってしまいました。
そこで、母さん狐は「かわいい坊やのお手々にしもやけができてはかわいそう」と、町まで行って毛糸の手袋を買ってあげることに。
でも、母さん狐は人間が怖くてどうしても町に行く気になれません。そこで、子狐の手を人間の子どもの手に変え、お金を渡して手袋を買いに行かせます。
果たして、子狐は無事に毛糸の手袋を買うことができるのでしょうか?
- 著者
- 新美 南吉
- 出版日
新美南吉の名作童話に、黒井健の幻想的な絵がとてもよく合っている絵本です。とても有名な作品なので、学級文庫や図書館などで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
子どもの頃は子狐の視点になって読める物語ですが、大人になってからは子を見守る母さん狐に共感するようなるでしょう。子どもの頃に読んだ時とは、また違った物語の魅力を再発見できるはずです。子を思う親の気持ちは、人間も動物も一緒ですね。
母さん狐が片手を人間の子どもの手に変えてくれたのに、うっかり間違えて狐の手を差し出してしまう子狐。しかし、優しい帽子屋さんは何も言わずに手袋を売ってくれます。
それを知った母さん狐がつぶやく言葉がとても印象的です。
「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら。」(『手ぶくろを買いに』から引用)
あなたはこの母さん狐の言葉を聞いてどう感じるでしょうか?
ごんは一人ぼっちの子狐。夜でも昼でも村に行ってはいたずらをして、人々を困らせていました。
そんなある日、ごんは川でうなぎを捕まえている百姓の兵十を見つけます。ちょっと困らせてやろうと、うなぎを逃したごん。しかしそのうなぎは、兵十が病気の母親のために捕まえていたうなぎだったのです……。
うなぎを食べられないまま亡くなってしまった兵十の母親。兵十は他に家族もおらず、一人ぼっちになってしまいます。
罪悪感を感じたごんは、兵十のためにこっそり栗や松茸を届けることに。しかし兵十にその姿を見られてしまい、物語は思いがけない最後を迎えます。
- 著者
- 新美 南吉
- 出版日
- 1986-10-01
国語の教科書でもおなじみのこちらの作品。小学生の時に授業でやった記憶が……という人もいるはず。『手ぶくろを買いに』と同じく、新美南吉の名作童話に黒井健が絵を手掛けたものです。幻想的な絵が、物語の世界観を美しく表現しています。
『手ぶくろを買いに』が心あたたまる親子狐の物語だったのに対し、この物語に出てくる狐のごんは悲しい最後を迎えてしまいます。その最後はとても涙なしでは読めないでしょう。
世の中の出来事は決してハッピーエンドばかりではない。そういったことを学べる絵本。ぜひ、親子一緒に読んで感想を話し合ってみてください。
神様から「生まれていいよ」と言われて、ママを探している男の子。
くま君、ごりら君、ぶた君にふくろう君、みんなに「ママを知らない?」って聞いてみたけど、誰も男の子のママの居場所を知らなくて……。そして満月の夜、ついにママを見つけます。
男の子がママに出会うまでの、心あたたまる物語。
- 著者
- にしもとよう
- 出版日
- 2011-04-15
我が子が生まれた時、この絵本のタイトルのように「うまれてきてくれてありがとう」と誰もが思ったはず。
でも、成長にするにつれて言うことを聞かなくなっていく子どもたち。育児に疲れて、つい子どもにきつく当たってしまうことありませんか?
そんな時にぜひ読んで欲しいのがこの絵本です。ママに会いたくて、一生懸命探し回る男の子の姿が我が子に重なるでしょう。
読み終わる頃にはきっと、「うまれてきてくれてありがとう」という想いでいっぱいになっているはず。
これから出産を迎える人への贈り物にもぴったりな絵本です。
あなたが生まれた日、12の贈り物が授けられました。それは、「力」「美しさ」「勇気」「信じる心」「希望」「よろこび」「才能」「想像力」「敬う心」「知恵」「愛」「誠実」……。
12の贈り物に関する言葉と共に、黒井健の柔らかく優しい絵が描かれています。
少し落ち込んでいる時、勇気が欲しい時、何かを始めようと思っている時にぴったりな絵本です。
- 著者
- シャーリーン・コスタンゾ
- 出版日
- 2003-11-14
このお話は、著者のシャーリーン・コスタンゾが自分の子のために書いたものです。アメリカで出版されてからは、数多くの人々に読まれました。
そして、学校や病院、刑務所などで多くの人々を励ました本としてベストセラーに。シンプルですが、どれも心に響くメッセージばかりです。
例えば「希望」では、「晴れの日も、雨の日も、人生はすばらしい。そう信じることのできる心が、あなたにはさずけられています。」と書かれています。
なんだかうまくいかないな……そんな時、この絵本を読めばきっと前向きな気持ちになれるはずです。
雨の日、「怖いハクションが来るから今日は外に出てはいけません」とお母さんに言われたけど、家でじっとしているのはつまらない!と感じている犬のころわん。
お母さんに内緒でこっそり外に出かけたころわんは、かえる君と一緒にぴょんぴょん飛び跳ねたり、かたつむりさんの真似をしてゆっくりゆっくり歩いてみたり……。
しかし、家に帰る途中で出会ってしまうのです。そう、お母さんが言っていた「ハクション」に……。さあ、ころわんは無事にお母さんの元に帰ることができるのでしょうか?
- 著者
- 間所 ひさこ
- 出版日
- 1986-05-01
ころころでふわふわ、黒井健が描く子犬のころわんがたまらなく可愛らしい本作。間所ひさこと黒井健の描く「ころわん」は、ひさかたチャイルドから出版されている人気シリーズです。
お母さんの言うことを聞かないでどこかに行ってしまうのは、人間の子どもと同じでしょう。雨の中楽しいことを見つけて遊ぶころわんを見ていると、「雨の日も悪くないな」と思わせてくれます。
梅雨の時期の読み聞かせにぴったりな一冊。無邪気でかわいいころわんの物語を、ぜひ親子で楽しんでください。
黒井健が手掛ける絵本、いかがでしたか?優しいタッチで描かれる絵は、どれも私たちの心を癒してくれます。なんだか最近疲れてるな……と感じたら、ぜひこちらで紹介した絵本を読んでみてください。きっと、疲れた心をふんわりと包み込んでくれますよ!