「耳袋秘帖」シリーズで歴史時代作家クラブシリーズ賞を受賞して話題となった時代小説を描く風野真知雄。老若男女を問わず多くのファンから支持されており、今でも多くのファンを魅了する彼の執筆作品から人気の高い作品をご紹介しましょう。
風野真知雄は『黒牛と妖怪』で歴史文学賞を受賞したことが契機となり、デビューしました。その後、彼の名を一躍有名にした「耳袋秘帖」シリーズを三ヶ月連続発刊したことでも話題を呼びます。
そして大きな反響を呼んだ『妻は、くノ一』がテレビドラマ化、コミック化され、歴史作家として大きく躍進を果たしました。勢いのある風野真知雄の、歴史と娯楽を兼ね備えた読み応えある小説をご紹介していきたいと思います。
1590年、豊臣秀吉の関東征伐が始まり、石田三成率いる豊臣の大軍も関東征伐を始めました。
三成の率いる軍勢が押し寄せてきたことで、北条家の忍城は危機感を募らせます。しかし城主・成田長親だけはのんびり豊臣軍を待ち受けるのでした……。
- 著者
- 風野 真知雄
- 出版日
- 2008-04-11
戦国武将といえば、勇猛で強そうなイメージを持たれることでしょう。しかし本作品に登場する成田長親は、これといった特徴が無く、皆に慕われる穏やかな人物として描かれています。そんな彼の生活は、豊臣軍がやってきたことによって一変することになるのです。
長親は忍城を城主となって籠城を指揮することになりますが、彼の元には農民、商人などをかき集めてたった3千人しかいません。それに対し、豊臣軍からは石田三成率いる2万の軍勢がやってきます。どう見ても危機一髪な状況ですが、ツンデレの甲斐姫や成田氏長の奥さん・お菊など、個性豊かなキャラクターが登場することで籠城戦の暗いイメージを払拭してくれるのです。
三成は文官で戦下手のイメージが強いですが、本作品の三成は忍城へ攻め込む前に城を楽々と陥落させており、豊臣家の秀才というイメージで描かれています。
城主としての能力も、軍の規模でも大きく優っているのですから、勝敗はすぐにでもつきそうなものですが、なぜだか長親が籠城する忍城を中々攻略することができません。三成が思い通りにいかない戦況に混乱し、精神的に追い詰められていく不思議な様子を読者は目にすることでしょう。
時は江戸時代後期、星と海にしか興味を持たない平戸藩の藩士雙星彦馬の元に、美人で気立ての良い妻・織江が嫁いできました。
二人は仲睦まじい生活を送っていくのですが、一ヶ月後突然織江が失踪。彦馬は織江を探しに江戸へ向かいます。しかし江戸の街に潜む謎と、次々と襲い来る刺客達との激しい戦いの後に、二人は再会を果たす事になるのでした……。
- 著者
- 風野 真知雄
- 出版日
- 2008-12-25
本作品は彦馬と織江の純愛をテーマにしておりますが、歴史背景もきちんと小説に練りこんでいます。また彦馬が織江探しと並行して謎を解決するミステリー要素や、迫力満点なアクションなど、様々な魅力が各所に散りばめられた作品です。
この小説の一番の見どころは、もちろん彦馬と織江の純愛ストーリと言えます。しかし、個性あふれるキャラクター達も、本作品の忘れてはいけない魅力です。
平戸藩・藩主松浦静山は彦馬の師匠的な立場で知識も有り、懐も広い寛容な人物で、主人公である彦馬のアドバイザーとしてとても頼りになります。また彦馬が去った後の雙星を継いだ親族・雁二郎は、実年齢13歳なのに見た目は40歳を超えているような老け顔、という個性際立つキャラクターです。しかし、そんな彼には驚くべき秘密があり、静山と一緒にこの物語のキーパーソンと言えるでしょう。
本作品は10巻程のシリーズ作品となっていますが飽きを感じることなくスラスラと読めます。歴史小説ファンのみならず、恋愛ストーリーが好きな方や、ミステリー小説好きにも気軽に読むことができる作品と言えるでしょう。
愛すべき登場人物たちに助けられながら、彦馬と織江が結ばれる純愛物語を、是非読んで見てください。
徳川家に名を連ねる主人公・徳川竜之助は、突如同心になりたいと言って様々な難事件を解決していくことになりますが、彼が習得した葵新陰流を狙って、打倒しようとする刺客が次々と彼に襲いかかってくることになるのです……。
- 著者
- 風野 真知雄
- 出版日
- 2007-09-13
徳川家に名を連ねる主人公・徳川竜之助は、庶民と交流を深め、徳川家に伝わっている伝説の剣術を用い、悪を懲らしめたいという思いから、同心へ転職することになります。正義感にあふれた好青年でありながら、時折見せる常識はずれな行動には笑いを誘われることも。
また正義感にあふれていることから、義理や人情に欠けている事件に真っ向から立ち向かい、謎を解いていく姿には爽快感を感じる読者も多いでしょう。またミステリー要素のある時代小説ですが、竜之助が刺客と戦う場面は手に汗握るアクションが展開されて、ハラハラドキドキが止まりません。
更に幕末の歴史で登場する坂本龍馬や、中村半次郎等の剣豪たち。徳川幕府を支えた若き秀才小栗上野介などの人物達も加わって作品を盛り上げている、という点も見どころです。
南町奉行所の名奉行根岸静衛は、幽霊や怪談などが嫌いな椀田豪蔵と、イケメンで手裏剣の名人ですが女性の好みに癖のある宮尾玄四郎の二人を使い、巷で起きた様々な殺人事件の捜査に乗り出します。殺人事件の現場には「かのち」と呼ばれるメッセージが残っていたのですが、はたしてメッセージが指す意味とは……。
- 著者
- 風野 真知雄
- 出版日
- 2010-01-08
本作品は、江戸時代に登場している根岸静衛が庶民の間で広まっていた噂話や奇譚、怪談話をまとめた「耳袋」を元に作られている作品です。この「耳袋」に作者・風野真知雄の想像力をプラスすることで、怪談と事件とを織り交ぜたリアリティのあるストーリーとなっています。
怪談とミステリーを盛り込んだ時代小説というのは、非常に斬新で魅力的です。
何より注目したいのは、猫。どこの、どんな猫かと言うと、絶対前を向かず後ろに座っている根岸家の猫「うしろう」です。このうしろうが大切な所にビシッと出現して物語を盛り上げてくれます。
また殺人事件の犯人に迫まる根岸や椀田、宮尾達の活躍を通し、江戸時代の生活模様や詳細な歴史背景にも詳触れることができ、読み終えた後にはちょっとした歴史通にもなれそうです。
王子稲荷の近くで、祝言を前にした花嫁が失踪してしまいました。そして失踪事件の後、別の女性が顔に狐面をつけ、花嫁衣裳で殺害されているのが発見されます。この事件を皮切りに、狐面を着けた死体が次々と見つかる事件が連続して発生。南町奉行所の名奉行であった根岸鎮衛は、部下の栗田と坂巻と共に調査を開始するのでした。
- 著者
- 風野 真知雄
- 出版日
- 2011-05-10
大人気「耳袋秘帖」シリーズの続編となっている本書ですが、今回の事件は狐が鍵となります。メインストーリーとなっている連続殺人事件の合間に「耳袋」の作者である根岸が、鋭い勘と洞察力で他の事件を解決しながら、メインの事件の謎に迫っていくのです。
本作品には「耳袋秘帖」の殺人事件シリーズで好評を呼んだ剣豪の栗田と、おっとりな性格が気に入られて根岸の家臣となった坂巻のコンビが再登場します。「耳袋秘帖」シリーズの愛読者には待望の作品でしょう。
もちろん初めて「耳袋秘帖」シリーズを読む方も、風野節のミステリーにハマること間違いなしの作品です。栗田と坂巻のコンビと根岸の名推理ぶりに魅了されることになります。
そしてこの事件の犯人は哀しい過去を背負っており、事件の動機は犯人の持つ悲しい過去に起因していたのです。今ままでの「耳袋秘帖」シリーズとは違うラストに、ホロリと涙が流れるかもしれません。
歴史小説や時代ミステリー小説を執筆している風野真知雄のおすすめ作品を5つ厳選してお届けさせて頂きましたが、どのシリーズの小説も読み応え充分で読み終わった後、読者は充足感や爽快感など多くの感情を感じることができるでしょう。お時間がある時に風野作品の世界に飛び込んで見てはいかがですか。読者を魅了すること間違えない作品となっております。