城山三郎のおすすめ作品5選!『総会屋錦城』で直木賞受賞の作家

更新:2017.6.25 作成:2017.6.25

戦後、日本経済は大きく変化していきました。事実をもとにして、日本の経済を小説化したのは城山三郎という作家。今回は、城山の作品から5作紹介したいと思います。

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経済小説の第一人者・城山三郎

城山三郎は、1927年に愛知県にて生まれました。本名は杉浦英一です。

専門学校を卒業後、大日本帝国海軍に志願し入隊します。特攻隊に配属されたのち、訓練中に終戦を迎えました。その後大学を卒業し、帰郷します。就職先は地元の大学でした。

月1回の読書会である「クレトス」をはじめ、「近代批評」の同人に加わったのが作家活動のきっかけとなりました。神奈川県に転居した後に作家業に専念します。

主に経済小説、伝記、歴史小説を手掛けました。日本の社会問題や、政治問題へ切り込んでいく作品が多く、普段知ることが出来ない国の内情を描くことでも有名です。

女を書くのが苦手だろう、と評されたこともある通り、男たちが多く描かれます。しかしどの男性もとても勇ましく、カッコいいことが印象的です。

その他にも、妻との思い出を描いた「そうか、もう君はいないのか」はドラマ化も果たした作品です。

城山三郎の直木賞受賞作!戦後の男たちを描く短編集

終戦後、日本社会では、男たちが幅広い業界で自分の能力を生かして働いていました。商社マン、社長になりたいという野望を抱く男、輸出業に命を注ぐ男など、彼らは仕事に人生を捧げながらも、社会の厳しさに直面していました。

『総会屋錦城』はそんな社会問題を描いた7作品短編集です。
 

著者
城山 三郎
出版日
1963-11-05

総会屋、という言葉は知っているでしょうか。総会屋とは、企業の株主総会において、株主の権利を濫用して、自分が株を持つ企業から不当な利益を得ようとする人物のことを指します。

この短編は、株主総会で自分の利益になるよう振る舞う者たちの姿を世に知らしめた物語です。普段、私たちの知らないところで会社を操作し、世の中まで操作しているような総会屋の存在に驚くことでしょう。

周りの悪行を正し、合法的に総会を進めていく様子は胸のすく思いがします。

他におすすめの作品が、「事故専務」。主人公は、あるタクシー会社に勤める男です。彼はタイトル通り、社員の交通事故をはじめとする「事故」へ謝りに行く担当の専務として活躍しています。それはただ、見た目が真摯な人物に見えるからという理由からでした。

設定としてはとても面白く、こんな人がいてもいいかもしれないと思いますが、それに反して彼はあまりいい気持ちを持っていないようです。体よく使われているような仕事に、嫌気がさすのでしょう。

紹介した2つの短編の他に、あと5つの作品が収められています。社長になりたい男を描く「社長室」や、昔の日本製品の粗悪さを描く「メイド・イン・ジャパン」もなかなかの面白さです。

まさに昭和のサラリーマンの姿を描いているこの1冊だといえます。その当時の経済状況や会社の在り方についても知ることが出来るでしょう。
 

戦時中の元総理、広田の一生とは

第二次世界大戦後、戦争の責任を問う東京裁判が行われました。その中で、7人の人物がA級戦犯として罰せられます。元総理である、広田弘毅は、その中の1人でした。

広田は、戦争防止に努めたのち、軍人とともに罰せられたのです。
 

著者
城山 三郎
出版日
1986-11-27

広田元総理は、戦争の拡大を防止しようと心がけ、多くの犠牲を出さないよう策を考えた人物です。しかし、一方で軍はそれに反発し、なんとしてでも日本を勝利に導こうとしていました。

A級戦犯とされたのは、そんな軍人たちです。そして、広田はなぜか同じ立ち位置にさらされてしまいました。

もちろん反発しても良かったはずなのに、広田は一切文句を言わず判決を受け入れたそうです。

この本を読むまでは、広田のことを知る人は少ないかもしれません。それくらい、東京裁判についての知識というのは当時の人と比べて薄れているのでしょう。

広田は戦争に加担したわけではありませんが、立場上、そうと捉えることもできてしまったのです。総理、という立場の責任の重さを感じることでしょう。守らなければいけないものの多さに、自分を犠牲にしなければならなかったのです。

もし彼が東京裁判で生き延びていたら、この国は今は変わっていたかもしれない、と感じるような作品です。
 

城山三郎と妻との、絆を綴ったエッセイ

城山三郎の遺稿となったエッセイ集です。妻・容子との思い出や、彼女への想いが綴られています。

重厚な時代小説を描いてきた城山の、妻との絆はどのようなものだったのでしょうか。
 

著者
城山 三郎
出版日
2010-07-28

城山が亡くなったあとに見つかった遺稿を、次女が本として出版したものです。

これまで紹介してきた2作は、日本経済に切り込むような作品だったため、作者は頑固な性格の方なのではないかと思っている人はたくさんいると思います。しかし、今回の1冊を読むと、城山の温厚な性格が伝わってくることでしょう。

まず、夫婦の仲良しな様子が描かれます。出会いや馴れ初めから、どのように絆が生まれていったのか感じられるのです。なんとも温かな雰囲気で、幸せを分けてもらった気持ちになります。

しかし、奥さんが亡くなってしまいました。この気持ちはきっと、同じ境遇の人しか共感することはできないのでしょう。

ご飯を食べていてふと、独り言を言ってふと、感じる喪失感を描いています。「そうか、もう君はいないのか」と、ふと気付く感覚に胸がいっぱいになるはずです。

いつもそばにいた人がいない寂しさが伝わってくる、とても切ない作品になっています。
 

金解禁をめぐる2人のタッグ

日本の経済状況を好転させるために行われた「金解禁」を制定した男たちの物語です。

第二次世界大戦後、日本は不況の中にいました。なんとか状況を打開すべく、浜口雄幸と井上準之助は奮闘します。性格は真逆、けれども1つの政策にまっしぐらな姿を描いた作品です。
 

著者
城山 三郎
出版日
1983-11-25

金解禁、という言葉をご存知でしょうか。世界的に、金を輸出することを許可する政策を金解禁と言います。

他の国が金解禁政策を打つ中で、日本は遅れていました。しかし、第二次世界大戦後の不況により、金解禁による経済状況改善の声が高まり、ついに制定されたのです。

制定したのは、当時の首相である浜口雄幸と、元大蔵大臣の井上準之助でした。

井上準之助は、元日本銀行の総裁でもあります。当時金解禁を唱えていたのは井上の方で、それを浜口が引き抜いたのです。

静の浜口、動の井上、と例えられたように、2人の性格は真逆でした。積極的に行動するのはいつも井上で、権力を持って井上の手助けをするのは浜口です。

正反対な2人ですが、同じ目標に向かって走り抜けていく部分がなんとも清々しいです。現代の日本はきっと、この2人の努力が無ければ成し得なかったのではないでしょうか。

現代の政治家の良くないイメージを抱く人も少なくない今こそ読んでほしい作品です。この作品を読むと、こんなに日本の未来に命をかけていた人物たちがいたのかと、きっと驚くことでしょう。
 

ミスター通産省の暑い夏

主人公、風越信吾は、通産省の大臣でした。財政界の思惑に左右されることなく、日本経済の発展のために貢献することを大切にし、「ミスター通産省」と呼ばれる人物です。

エリート街道を走りながらも、自分の信念を貫く風越の人生を描きます。
 

著者
城山 三郎
出版日
1980-11-25

風越が生きていた時代は、高度経済成長期によって日本が大きな発展を遂げる時代でした。官僚たちが腕を振るって政策を打ち出し、日本を良くしていこうという想いのもと、一生懸命駆け抜けていきます。

そんな中で男たちは戦っていきました。

一般の国民にしてみると、官僚たちが何をしているのか、ニュースでしか知ることが出来ません。そんな中、風越のような、日本のために命を懸ける政治家の姿は、胸を打つものがあることでしょう。

政治家同士の対立や、激務によってもたらされるものなどの様子を細かく描いています。政治小説を多く描いてきた城山だからこそ執筆できる作品です。

また、適材適所という言葉がありますが、人事の大切さが身に沁みます。風越が目をかけてきた後輩たちが、命を懸けて仕事をする様子も描くのです。こんなに働いていたのかと思うほどの激務で、昔っぽさが現れている部分でもあります。

ぜひ読んでいただきたい、おすすめの1冊です。

いかがでしたでしょうか。政治や経済を題材とした作品が多く、手に取りづらいかもしれません。しかし、当時の様子や政治家の思いを感じることができる、歴史小説としてとても重要な作品が多くあります。また、エッセイもおすすめです。ぜひ読んでみて下さい。