シャルル・ペローおすすめ作品4選!大人向けの絵本「シンデレラ」など

更新:2021.12.22

民衆の間で語り継がれている口承の昔話を宮廷の女性たちのために読みやすく削除したり脚色して完成したシャルル・ペローの作品は、グリム童話よりも前に発表されたヨーロッパの昔話です。一般的な物語と異なるペローならではの大人向け物語をぜひ堪能下さい。

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エスプリの効いた童話を送り出したシャルル・ペロー

シャルル・ペローは1628年生まれのフランス詩人です。裕福な家庭に生まれたペローは弁護士職などを経て、太陽王とも呼ばれたルイ14世に大家臣として仕えました。

ペローは当初、詩を書いていましたが、名声を手に入れると散文を経て物語を書くようになり、1697年には『過ぎし日の物語または昔話集・教訓付き』を出版します。民間伝承を集めたこの作品の中には『シンデレラ』『長靴をはいた猫』など現代でもお馴染みの物語が多数収録されており、ペロー童話として親しまれています。

グリム童話やマザーグースなどよりも先に発表され、時に強烈で残酷な結末を向かえるペローの童話は、教訓がたくさん詰まった大人向けの童話として研究者の中でも無視できない作品です。

品の良さという教訓を説く『シンデレラ』

昔、とある貴族が2度目の結婚をしました。その新しい奥さんは高慢ちきでとても傲慢な人物。その連れ子となる2人の娘も母親そっくりの性格です。一方、貴族の連れ子は実母似の優しくて気立てのよい娘でした。

惨めな仕事をすべて押しつけられ、シンデレラ(灰っ子さん)と呼ばれる娘。舞踏会の晩、泣きながら留守番しているシンデレラの元に名付け親(仙女)が現れます。仙女の言う事を聞いて、美しく変身したシンデレラが舞踏会に向かったら……。

著者
シャルル ペロー
出版日

ペローの描く『シンデレラ』の教訓は"品の良さ"です。品の良さは美しさにも増して価値があります。シンデレラは元々とても美しい容姿の女性でしたが、見た目だけでは王子様の心を捉えることはできなかったでしょう。

シンデレラは美しい姿に変身し、舞踏会で王子様にエスコートをされた際、自分に意地悪をしていたお姉さまたちを見かけて親切にいろいろなことをしてあげます。王子様との結婚が決まると宮殿に一緒に住まわせて、二人の廷臣と結婚までさせてあげるのです。この心の美しさ、品の良さの上にシンデレラの成功があったことは言うまでもありませんね。

「上品な物腰は まことの仙女の贈り物 これさえあれば すべて意のまま これがなくては なにもできぬ」(『シンデレラ』教訓より引用)

上品な物腰、あなたには備わっているでしょうか?大人女子にぜひ読んでほしい、挿絵の美しい1冊です。

策略家の執事ねこを描く『長ぐつをはいたねこ』

ハンス・フィッシャーが絵と注釈を仕立てた、シャルル・ペロー原作の物語です。

粉屋の3兄弟は父の死で遺産を分けることになりました。長男は風車、次男はロバ、三男は残った猫。猫などをもらってがっかりの三男。しかし、彼を慰めたのはほかでもないその猫でした。

その猫は他の猫と比べ物にならないくらい賢い猫でした。三男に長靴を1足あしらえてもらうと主人のためにとんでもない策略を立てはじめて……。

著者
シャルル ペロー
出版日
1980-05-20

聡明で策略家のねこは、長靴一足でご主人様である三男をお姫様と結婚させることに成功します。少しばかりずる賢い部分はありますが、知恵と努力(長靴を履いて二本足で歩くなどは並大抵の努力ではなかったようですよ)によって、ご主人様をのし上がらせていく長靴をはいたねこの姿には学ぶべきところがたくさんあるでしょう。

一方、猫に騙されて城を取られてしまう大男はどうでしょう。大金持ちでいじわるな大男は自分の魔法と能力を過信し過ぎたあまり、長靴をはいたねこの策略にも気づかず、自身のかけた魔法によって自身を破滅へと導いてしまいます。

人間は得てして地位にアグラを掻いてしまう生き物です。この物語を教訓として、心当たりのある方は長靴をはいたねこに足元をすくわれないように気を付けて下さいね。

優しいタッチで描かれた挿絵が更に大人の想像力を掻き立てる1冊です。

シャルル・ペローが説く、危険に対する教訓『ペローの赤ずきん 』

昔、ある村にとてもとても可愛い女の子が居ました。母さんは目に入れても痛くないほど可愛がり、おばあさんはなおのこと。赤い頭巾が似合った女の子は赤ずきんと呼ばれるようになります。

ある日、母さんは赤ずきんにおばあさんのお見舞いにパンケーキとバターの壷を持って行くよう頼みます。道中おおかみと出会った赤ずきん。その怖さを知らない赤ずきんは素直におおかみの言う事に耳を傾けてしまい……。

著者
シャルル ペロー
出版日
2001-08-30

幼い子供でも良く知っている童話の赤ずきん。現代の日本で一般的に語り継がれているのはグリム童話でしょう。悪者(おおかみ)は最終的にとことんひどい目に合い、良い者は最終的にはハッピーエンドを迎えるグリム童話の赤ずきんはとても情緒ある作品です。

一方、ペローの赤ずきんでは、おばあさんも赤ずきんもおおかみに食べられて死んでしまいます。そのあまりにもショッキングな結末に、続きがあるのではないか、落丁しているのではないかと思わず何度も頁を繰ってしまうことでしょう。

ペローの赤ずきんには家の外で起こる危険に対する教訓が描かれています。

「でも、まさにそういう、とびきりやさしく声をかけてくるおおかみが、いちばんあぶないんだってこと、これはよく知られたことなのだ」(『ペローの赤ずきん 』教訓より引用)

ぜひ、大人になった女の子たちに読んでいただきたい1冊です。

シャルル・ペローの文とクラークの絵『ペロー童話集』

ペロー童話集の中でも有名な「赤ずきん」「仙女」「青ひげ」「眠れる森の美女」など10作品に加え、アイルランドの挿絵画家ハリー・クラークの入手困難な詩集「ときは春」を併載した、装丁豪華な大型本です。

ペローの童話を大人目線でじっくりと味わいたい方におすすめの1冊。

著者
シャルル・ペロー
出版日
2010-12-03

ハリー・クラークはアイルランドのステンドグラス作家であり、挿絵画家です。奇想的な挿絵を描くことで有名で『アンデルセン童話』の挿絵も担当しました。

このクラークの美しい挿絵はペローの物語を随所で引き立ててくれます。ペローの童話の醍醐味とも言えるシュールな結末に華を添えるようなルビのない大人向けの文章で綴られていますので、大人の目線でじっくりと童話を読み返したい方には特におすすめです。

またこの本はペロー童話だけでなく、クラークの挿絵本のうち、最も入手が難しいとされている詩集も掲載されています。この本を手に取ったことにより、ペローの童話を通して更なる芸術に足を踏み入れることとなるでしょう。

ヨーロッパの民間伝承を集めた童話を書いた作家シャルル・ペローの作品をご紹介しました。どの物語も幼いころから身近に存在していたものばかりですが、ペローの作品は現実を見据え教訓めいた結末を迎えるものばかりです。子どもの頃に親しんでいた結末に違和感を感じる方はぜひペローの本を手に取ってみてください。大人になったからこそ楽しめる童話が堪能できますよ。

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