ページをめくるたび、様々な仕掛けが現われる絵本。お話を追うだけでなく、見て、触れて楽しめるのが仕掛け絵本の魅力と言えるでしょう。今回は、4歳ごろから楽しめる作品をご紹介します。
本というと、ついつい「読むもの」と思い込みがちでしょう。しかし、五感をフル回転させ、脳を刺激し続けている子どもたちにとって、絵本はただ物語を追うための表現媒体ではありません。
子どもたちの視覚と聴覚以外の五感をあの手この手で刺激してやろうと大人たちが試行錯誤した結果が「仕掛け絵本」なのです。
一言に「仕掛け絵本」と言っても様々な物があるのです。幼児向けでは、本の後ろから指人形に指を入れて動かしながら読んであげるといったものから、子どもが一人で触れて楽しめるシンプルな作品もあります。
子どもに触れさせてあげたくなるような、魅力がたっぷり詰まった仕掛け絵本。今回は、その中からおすすめの作品をご紹介します。
これは、小さな妖精達のお話です。お城の舞踏会に招待されなかった4人の妖精が、何とか大広間にもぐりこもうと奮闘します。
絵本を開くと、そのお話で描かれる4つのシーンが次々と立体的に展開し、絵本全体がメリーゴーラウンドのようになるのです。
- 著者
- マギー ベイトソン
- 出版日
- 2007-02-01
これはもう、絵本の形をしたドールハウスと言っても過言ではない絵本です。非常に細かく丁寧に無数の仕掛けが施されたこの絵本は、開いただけでお城の広間や台所の細部に至るまでが、まるで魔法のように立体的に浮き上がります。
さらに女の子にとって嬉しいのが、妖精達の切り抜き人形が付いているところ。人形を使って遊べば、この絵本はまさにちょっとしたドールハウスです。
描かれているシーンは4つだけですが、緻密な細工となっているので、眺めるたびに新たな発見があり、いつまでも何度でも、また様々な角度から見たくなる絵本です。
これぞ仕掛け絵本といえる素晴らしい完成度ですが、紙製のため当然壊れやすいという弱点は否めません。それでも、多少壊される覚悟をしてでも与えたくなるほど、子どもの頃に思い描いた夢の世界が絵本を飛び越えて出てきます。
お子様と一緒に、メルヘンチックな世界をお楽しみください。
「好き」という気持ちを表現するのは、意外と難しいことです。人によって尺度は違いますから、自分がどれほど相手を好きか伝えるなんて、なおさら難しくなるでしょう。
小さいウサギと大きいウサギが「きみのことが、こんなに好き」と伝え合う『どんなにきみがすきだかあててごらん』。そんな微笑ましい2匹が登場する、名作絵本の仕掛け絵本版です。
お話は通常版と変わりありませんが、内容が同じ分、仕掛けによって加わった新たな魅力がいっそう際立ち、仕掛け絵本の表現力がよく分かります。
- 著者
- サム マクブラットニィ
- 出版日
- 2011-08-01
この絵本の仕掛けは、元の絵をただ立体的に浮き立たせるだけではありません。例えば、通常版では狭いページの中に納まっていたウサギたちが、ページからはみ出るほど大きく伸びをするのです。
こういうダイナミックな仕掛けは、本来「迫力がある」と表現すべきでしょうが、本作でダイナミックに強調されたのは、お互いにどれだけ好きかを伝え合うウサギたちの愛らしさ。
可愛いしぐさの一つ一つが、ページから飛び出すことでより一層可愛く感じられるのです。絵本の仕掛けによって、そういう穏やかな感覚までもが強調されるというのは、なかなかできない体験ではないでしょうか。
ぜひ、親子で楽しんでいただきたい一冊です。
この絵本は仕掛け絵本ですが飛び出しません。穴が開いていることも、ページに埋め込まれたものに触れることも、何かをめくることもありません。この仕掛け絵本は、あくまで平面に仕掛けが施してあります。
ページを開くと、なんと動物のシルエットが動き出すのです。しかも、まるで映像を見ているかのような滑らか。ページの中でしなやかに走るウマ、イヌ、ネコや、ひょこひょこと歩くニワトリが登場します。この感動は、ぜひ実際に手にとって感じていただきたいものです。
- 著者
- ルーファス・バトラー セダー
- 出版日
何度も何度も、いつまでも見ていたくなるくらい滑らかに動くシルエット。この驚きの仕掛けは、「スキャニメーション」といいます。他にも呼び方が色々とあるのですが、日本で一番馴染みのある呼び方は「スリットアニメーション」でしょうか。
これは、目の錯覚、脳の働きを応用したもので、この仕組みを絵本のページの中に仕込んでいるのが本作。ページを開く動作で、隣のページに繋がったコマの描かれたフィルムが引っ張られ、スリットの間から覗くコマが切り替わるようになっているのです。
仕組みを解説されるとその単純さに驚きますが、それでも、あのページの中で絵が滑らかに動き出す感動は、なかなか他の絵本では味わえません。
2007年にこの絵本が海外で刊行されて以降、著者ルーファス・バトラー・セダーだけでなく、ディズニーなどからもスキャニメーション絵本が発売されています。元祖スキャニメーション作品はやはりこの絵本です。
ぜひ、スキャニメーションの原点であるこの絵本で、驚きを体感してください。
パーティーに持って行くごちそうを探すプーさん。見つけたのは、はちみつがたっぷり入ったつぼ8つ。プーさんは、そのはちみつをパーティーに持って行くことにします。
ところが、次々と仲間たちがはちみつを分けて欲しいと現れて……。1つ減り、2つ減り、ページをめくるたびに減っていくはちみつのつぼ。最後はどうなってしまうのでしょう?
- 著者
- サラ ミラー
- 出版日
仕掛けは単純明快、いたってシンプルな穴あき絵本になっています。
ページに穴が開いていて、穴の奥に半立体のミニチュアが埋まっている構成は、仕掛け絵本の中ではポピュラーな仕組みです。頑丈で壊れにくいので親も安心して与えられますし、指先でミニチュアに触れることで体感しながら数を数えて楽しめるこの仕掛けは、子どもたちにも大人気です。
仕掛け絵本の入門には、もってこいの一冊ではないでしょうか。
ページを開くと、左右のページを繋ぐように伸びる一本のリボン。絵が描かれたリボンは、ページをめくるごとに増えていき、本を開ききるとリボンも伸びきって、一枚の絵が完成します。
まずは1から10まで、順番に白いページを読んでいきましょう。10まで読んだら本を回転させて、上下逆さまにして、今度は黒いページに書かれたお話を……。
一冊で2度美味しい、一風変わった綺麗な仕掛け絵本です。
- 著者
- ベティ・アン シュワルツ
- 出版日
この絵本に関して特筆すべきは、やはりリボンを使った仕掛けでしょう。
子どもが読みやすいよう、ページに取っ手のような穴が開いていたり、白と黒のリボンがしっかりとした縫製で繋いであるところなど、細部にわたって非常に丁寧に作られており、子どものためによく考えられた絵本だと関心すること間違いなしです。
飛び出す仕掛けやスキャニメーションの仕掛け自体は再現しやすい方で、ネットで検索すれば製作法やサンプルキット的なものが見つかります。
ですが、このリボンの仕掛けのように、丁寧な仕事を幾重にも重ねて、やっと形になるようなものというのは、派手な仕掛けではありませんが、なかなか素人の手で再現できるものではありません。
仕掛け絵本を通じて創り手の発想力にも触れさせたいのなら、本作も触れさせておきたい一冊です。
多くの仕掛け絵本を手掛け世界中で絶賛されている作家、ロバート・サブダが作り出した傑作です。
ルイス・キャロルが描く原作に忠実なストーリーの中で、圧倒的な迫力と造形の美しさ、見る者を魅了する仕掛けの数々は見事としか言いようがありません。
初めのページをめくるとまず飛び出して来るのは大きな木。アリスや白うさぎも登場します。そして、物語のストーリーが描かれた部分を開くとアリスが水の中を泳ぐような仕掛けが現れたり、帯で止められた仕掛けを伸ばして小さな穴を覗くとアリスが落ちて行く場面が立体的に描かれていたりと、1ページ目から細かい所にもこだわった仕掛けに驚かされます。
そして、不思議の国に迷いこんだアリス。身体が大きくなってしまったアリスが家から飛び出してしまう様子、帽子屋と美月うさぎとのお茶会に白いバラを赤く染めるトランプ兵、クリケットをするアリスなど全ての物語が立体的で複雑な仕掛けで創りあげられています。
そして最後のシーンはトランプに追いかけられるアリスの様子。たくさんのトランプが飛び出す場面は圧巻です。
- 著者
- ロバート・サブダ
- 出版日
- 2004-11-16
全てのページが見どころと言っても良いほど、完成された仕掛け絵本です。
メインの仕掛けはもちろんのこと、ページの隅々まで施された不思議な仕掛けが絵本の魅力を更に引き立てます。何度開いてもため息が出るほど美しく、オブジェとして飾っておきたくなるほど。しかし、ストーリーは原作に忠実なので読み応えがありますよ。
言葉で言い表せない、迫力の仕掛けをぜひ実際に見て感じてみてくださいね。まるで絵本の世界に迷い込んだような、不思議な気持ちを感じることができるはずです。
絵本に施された仕掛けは、驚きや感動だけでなく、物語を演出したり、時に読む者の心まで増幅してくれます。五感のすべてで楽しめる仕掛け絵本の世界、皆さんもこの機会にぜひ、自分なりの一冊を探していただけたらと思います。