文芸

越谷オサムのおすすめ作品6選!映画化された『陽だまりの彼女』の著者

更新:2020.11.27 作成:2017.6.28

青春の戦いと、まっすぐな恋と、優しさと、成長痛。映画化された『陽だまりの彼女』や漫画化された『階段途中のビッグ・ノイズ』など、数々のジュブナイル小説を生み出し続ける越谷オサム。おすすめの作品をネタバレしつつご紹介します。

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越谷オサムとは

2013年に映画化された『陽だまりの彼女』。原作者である越谷オサムは爽やかな青春小説を得意とする作家です。

2004年に日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した越谷オサム。2011年には『陽だまりの彼女』でおすすめ文庫大賞を受賞し、ミリオンセラーを達成します。

身近なのにちょっぴりファンタジー。そんな作品の中からおすすめの作品を5つご紹介します。

初恋は最後の恋。『陽だまりの彼女』

主人公の浩介には、中学生のころ好きな女の子がいました。それが、分数が出来ないほどバカでいじめられっ子で変な噂のある同級生、真緒です。

しかし二人は浩介の引越しにより離れ離れに。二度と会えなくなった……はずでした。

十年後、ひょんなことから再会した二人。真緒は仕事もバリバリこなす美女へと変貌していました。

再び恋に落ちる二人と、結婚への障害。駆け落ち同然に結婚したものの、真緒にはある異変が。

突然消えた真緒の秘密とは――。
著者
越谷 オサム
出版日
2011-05-28
いじめっこのヒロインを助け出す主人公、秘密の共有、そしてファーストキスをした相手との結婚。『陽だまりの彼女』では、胸が苦しくなるほどに甘酸っぱいストーリーが展開されます。

しかし、ただ甘く輝くだけの小説ではありません。真緒が12歳のころ養父に保護されるまでの記憶が一切ないことや、保護されたときに裸で夜道を歩いていたことなど、謎がどんどん追加されていきます。

しかも真緒の謎は結婚後も増える一方。真緒のドレッサーから出所不明の現金の束が発見されたり、急激に痩せていっているのに病院の検査では異常なしとされたり、そんな状況なのにマンションの三階から落ちても怪我一つないなど、奇妙な点ばかり増えていきます。

そして極めつけは、真緒の突然の失踪と、周りの人間が真緒についての一切の記憶を失ってしまったこと。まるで夢でも見ているかのような状況に、主人公の浩介だけでなく読者も翻弄されます。

真緒とはいったい、何者だったのか――。

ミステリーとしても読める『陽だまりの彼女』。謎のヒントは、タイトルにあります。

生き直す少女と優しい大人の物語『魔法使いと副店長』

単身赴任を始めて1年半。主人公は41歳、スーパーマーケットの副店長の太郎。そんな太郎の家に、一人の少女が悲鳴を上げながら窓ガラスを割って飛び込んできます。

大きな箒に、デコレーションケーキのように派手な色づかいの服。かたわらには、人語を話すリスかモモンガのような小動物。

奇天烈な少女は自身を見習い魔法使いだと名乗り、修行をするために太郎に一か月ほどの居候を求めます。
著者
越谷 オサム
出版日
2016-11-22
魔法使いの見習いは、一人前になるために魔法学校がある世界から人間界へとやってきます。次の満月までに一人前になれなければ消えてしまう存在。太郎は少女アリスを一人前にするため、行儀作法を教え、叱り、励まします。

『魔法使いと副店長』の魅力の一つはなんといっても主人公である太郎の包容力。突然飛び込んできたアリスを迎え入れ、ちょっと偉そうな小動物の存在を受け入れ、部下や上司やお客様の起こす問題を処理するその姿は、「凄い」の一言に尽きます。

アリスが一人前になるまでのドタバタ劇、明かされるアリスの過去、そしてラストの爆破事件。読み始めたら止まらない作品です。

戦え軽音楽部!漫画化もされた『階段途中のビッグ・ノイズ』

先輩の不祥事により廃部が決定した軽音楽部。主人公の啓人は幽霊部員の友人に引きずられるまま、軽音楽部廃部取り消しのために動き出します。

文化祭で一発ドカンとかまして軽音楽部を存続させてやる!

そんな啓人の決意もむなしく、仲間たちは文字通り不協和音を発生させ、顧問はやる気があるんだかないんだか。啓人たちの奮闘と恋。爽快感あふれる青春小説です。
著者
越谷 オサム
出版日
『階段途中のビッグ・ノイズ』は2011年に亀屋樹によって漫画化されるなど、多数のファンをもつ作品です。

この作品の魅力はなんといってもキャラクターの個性が強いこと。

主人公の啓人は優柔不断で権力者に声を上げられない、よくいる男子高校生。ベース担当の伸太郎は猪突猛進な性格で、自己主張するわりに他者の気持ちに鈍感であり、それが摩擦を生みます。ギターの勇作は見た目が良く、軽薄ですが演奏技術はかなり高度。そしてドラム担当の徹は、顧問が厳しすぎることに疑念を抱き吹奏楽部を退部したマイペースな行動派です。

軽音楽部を目の敵にする水泳部顧問の森先生による圧力や、他の生徒たちからの冷たい視線。それらに真正面から立ち向かう啓人たちの姿はギャグ調でありながら胸を打ちます。

啓人たちの部室があるのは、屋上に差し掛かる階段の途中。そこから聞こえるのはノイズか、はたまた、旋律か。熱い王道ストーリーです。

自分を変える、みんなで変わる。『いとみち』

「お、おがえりなさいませ、ごスずん様」

人見知りの女子高生、いと。自分を変えようと決めた彼女が選んだバイトは、県庁所在地駅前のメイドカフェでした。

人見知りかつ強度の津軽弁で、泣き虫。そんな接客業での三重苦をもった彼女が、仲間たちの力を借りながら成長していく物語です。
著者
越谷 オサム
出版日
2013-10-28
主人公いとの祖母、ハツエは、三味線で洋楽ロックをロックを弾きこなす逸材。いともその才能を受け継ぎます。しかし同時に、祖母ゆずりの強い津軽弁のせいで引っ込み思案になってしまいます。

そんないとを迎えたのが「津軽メイド珈琲店」の面々です。

年齢をごまかしてメイドをするシングルマザー幸子に、漫画家志望のメイド智美。店長は東京のブラック企業の元社員で、オーナーは何やら怪しげなビジネスをしている様子。

そんな田舎育ちの高校生には刺激が強い人々が、いとを助け、ときにいとの若さや処女性にコンプレックスを抱いて葛藤し、いとを成長させていきます。

そんな彼らに訪れる試練は、オーナーが薬事法違反容疑で逮捕され、店が閉鎖の危機に陥ること。ハッピーエンドに向けての展開にどきどきが止まりません。

2巻である『いとみち 二の糸』では、いとが二年生になり、新しくメイド仲間が増えます。そして、店長と幸子が結婚したり、智美が漫画家として生きることの覚悟を決めて東京へ出ていくなど、それぞれの人生が動き出す内容です。

最終巻である『いとみち 三の糸』では、いとが2巻で自覚した恋心を告白したり、後輩メイドを叱ったりと、いとの精神的成長に焦点があてられます。母親の人生の続きを自分が歩んでいくのだと決意し、地元を盛り立てるために大学に進学する彼女の姿は必見です。

そんな成長物語『いとみち』ですが、隠れた魅力があります。それは、いとの祖母ハツエの、いと以上に強い津軽弁。ページをめくってびっくり。とにかく何を言っているかわかりません。表記にひらがなさえ使われていません。ぜひ本書を手に取ってご確認ください。

若さは暴走だ。短編集『金曜のバカ』

表題作「金曜のバカ」を含む5作品を収録した短編集です。

変質者とやたら遭遇してしまう女子高生の話「金曜のバカ」。

SFを思わせる今と過去のオーバーラップ「星とミルクティー」。

地方に住む男子高校生の理由なき全能感と空回りを描く「この町」。

オタクな自分を隠してデートに挑む「僕の愉しみ 彼女のたしなみ」。

才能のある人間と自分との圧倒的格差に絶望し大人になる「ゴンとナナ」

それぞれがどこか懐かしく心をつかむ作品です。
著者
越谷 オサム
出版日
2012-11-22
表題作「金曜のバカ」はワケあり女子高生と元引きこもりのストーカー男とのバトルを描いた作品ですが、ミスリードと伏線が丁寧に重ねられており、推理ものとしても楽しむことが出来ます。爽快感あふれるラストは病み付きになるでしょう。

そして、苦笑もあり明るい笑いもありの「僕の愉しみ 彼女のたしなみ」は、恐竜オタクの主人公が恐竜展でのデートをするお話。

自分の趣味を言い出せず、相手のために必死に沈黙を貫いた結果、デートがぎこちなくなってしまう様子や、彼女もまた自分の趣味を言い出せずにいたことが判明するところが甘酸っぱいです。

二人の恋の始まりに、後日談が欲しくなること間違いなし。

若さと優しさと切なさが詰め込まれた越谷オサム作品。どれも読後感が良いので、疲れたときにおすすめです。

越谷オサムが描く、さわやかな青春小説

文芸部が舞台の青春小説。とはいっても、文芸部としての活動がメインではありません。恋愛・友情の舞台がたまたま文芸部だった、といった方がしっくりくる小説です。

主人公は、入部もしていないのに文芸部に入り浸る涌井 陸(オケイ リク)。身長170cm未満、体重98kg、ウエスト115cmの巨漢。クラスメイトからは「ブーちゃん」と呼ばれることも。体形の事は本人も気にしているのですが、悪気なく「ブーちゃん」と呼んでくるクラスメイトに強く言うこともできず……。

友人・「ハカセ」こと河本 博(コウモト ヒロシ)は唯一の文芸部員。ある日、地味ながらも可愛らしい1年生、野村 愛美(ノムラ マナミ)が入部希望者として現れます。

「ぱっとしない男が2人いるだけの退屈な部」になぜ彼女は現れたのか?と不思議に思う主人公。その後、野村の靴が盗まれる事件が起きたかと思えば、主人公にとってプライベートな内容がぎっしりの「空色メモリ」が盗まれて……。

著者
越谷 オサム
出版日
2012-06-22

主人公はコンプレックスを抱えていますが、それでも前向きに過ごそうと努力しているため、卑屈な印象派ありません。冴えない男仲間の「ハカセ」が恋をし、それを主人公が応援する様子が本作の主軸となっています。ハカセとの友情は必見。読者の心を温めてくれるでしょう。

ミステリ要素も小さいながら、ところどころに散りばめられており、謎を通して主人公達がほんの少しだけ成長する様子は、良い意味で現実離れしていません。男性の方、女性の方ともに充分納得できるストーリー展開となっているでしょう。

学生はもちろん、高校生活を思い出したい方。最近疲れ気味な方におすすめの1冊。読後はなんとも爽やかな気分になれます。

一気に読破しても、ゆっくり読んでも。お好きな方法で楽しんでみてください。