木下古栗の本5冊をおすすめ順に紹介!ツイッターでも人気の作家

更新:2021.12.22

木下古栗、ネット上でとても人気がある作家です。木下の作品はどれもパンチがあるもので、一度読んだら忘れられません。今回はそんな作品の中から、5作紹介したいと思います。

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ユニークな作風がネットで話題の作家木下古栗

木下古栗は1981年、埼玉県生まれの小説家です。2006年に『無限のしもべ』で群像新人文学賞を受賞しました。下ネタやパロディを用いた作品が多く、そのシュールな作風から特定の読者に人気があります。突拍子もない、誰も考えない世界を作る作者です。

作者についての詳しい情報は明かされていません。Twitterでの人気が高く、2014年には『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』で第5回Twitter文学賞を受賞しました。ネット社会のイマを担う作家といえるでしょう。

Twitter文学賞第1位に選ばれた作品

本書は、表題作を含む3つの短編を含んだ作品です。

表題作「金を払うから素手で殴らせてくれないか?」は、失踪した「米原」という人物を探す物語となっています。探すメンバーは、当の米原を含む同僚たち。米原から送られてくる情報をもとに、所々で食い倒れながら米原を探していきます。

著者
木下 古栗
出版日
2014-03-27

Twitter上で一般のユーザーが投票して与えられる賞、2014年Twitter文学賞1位に選ばれた作品です。

まずおかしな点は、「米原」という人物が「米原」を探すということ。米原はそこにいるのに、なんで探しているのか、周りの同僚もなぜ本人に聞かないのかと疑問に思いながらも物語は進んでいくのです。

思わずナニコレ?と声をあげてしまうような世界が、まさに木下の作る世界なのでしょう。

表題作以外には、「Tシャツ」「IT業界 心の闇」が収められています。

「IT業界 心の闇」は、OLが社長の愛人のふりをして、奥さんに謝りに行く様子が描かれています。様々な年代や職種の人が、不倫についての考え方を討論したり、笑っていいのかわからないようなジョークを交えたりと、なんだかネット上のやり取りを見ているようなテンポで、思わずニヤリとしてしまうでしょう。

どの短編も、予想とは真逆の結末が待っています。え、これで終わり?と思う方もいるかもしれませんが、それがこの作品のいい所です。

いい女のはずが、男の裸体?

表題作「いい女vs.いい女」の他に「教師BIN☆BIN★竿物語」「本屋大将」を含む3作の短編集が収録されています。

「いい女vs.いい女」は、全裸の男の夢を見た主人公の話です。そのイメージを払拭するべく「いい女」について考えようとしたのもつかの間、なぜか話は本筋からそれ、全裸サークルの活動へと移動します。

全裸の男性をたくさん見たい人におすすめです!
 

著者
木下 古栗
出版日
2011-08-26

思わず目をそらしてしまいそうになるほどのリアルな下ネタです。呆れるほどくだらないのですが、なぜか一文一文しっかり読んでしまいます。

表題作は、「いい女」を求めているにも関わらず、女よりも男が目立ちます。それも、全裸の男たちがたくさん頭の中に浮かんできてしまうのです。おもいっきり翻弄されてください。

短編「本屋大将」は、同じ読みで漢字が違う某文学賞についての、木下古栗の思いが作品になっているのでしょうう。

作品全体のバカバカしい雰囲気と共に、大衆に認められるような作品よりも、自分が描く芸術を突き進むような木下の思いも感じられる作品となっています。
 

各方面の変態を揃えました

表題作「生成不純文学」のほか、「人間性の宝石 茂林健二郎」「泡沫の遺伝子」「生成不純文学」のあわせて4作が収録されています。

作品ごとに取り上げられるテーマはまさに変態で、目を覆いたくなるものもあります。ふざけるな、と思う方もいるかもしれませんが、これが木下なりの文学なのです。

著者
木下 古栗
出版日
2017-02-24

表題作は、「不純文学」に与えられる名誉な「殺人芥川賞」を受賞する悪夢を描く作品となっています。

官能小説というものに抵抗がある方もいらっしゃるかと思いますが、一般的な文学作品にも官能的な表現が含まれるものはあります。この作品も、そのうちの1つなのかと思いきや……。

官能とは何か、不道徳とは何か、という「不純」というテーマに徹底的に向き合った作品となっているのではないでしょうか。

「虹色ノート」では、OLが登場します。ロシア人の宇宙飛行士は日本のOLに興味を抱いていました。宇宙飛行士なのに、宇宙のことは頭から抜けてただ日本のOLのことを考える変態っぷりに苦笑してしまいます。

そこから視点が変わり、日本のとあるOLが公園で見つけたのは、野糞を採取して記録する「虹色ノート」というものでした。様々な色をしたお弁当をサラリーマンに食べさせて、野糞をしてもらうのです。内容から、題名のネーミングが「虹色」という意味に気付くことでしょう。宇宙飛行士の視点からOLの視点へ移り変わるさまは見事です。

シュールな木下古栗作品が詰まった一作

一言で言うと「下ネタばかり」の作品です。短い物語が約30篇収録されています。

手法を変えていろいろな木下古栗ワールドを楽しめるようになっています。それは例えば下品なもの、暴力が伴っているものなど様々ありますが、総じて言えるのは意味が分からないということです。今回は厳選していくつかの短編をご紹介しましょう。

著者
木下 古栗
出版日

「ラビアコントロール」の主人公の名前は純一郎です。ある日の朝、彼の手足は陰毛によって覆いつくされてしまいました。

なぜこんな状況に陥ったのか、純一郎が悪いことをしたのか、という疑問がわきますが、それはあまり意味がありません。純一郎がおかれた状況自体を楽しむために、この物語はあるのではないでしょうか。

「この冬…ひとりじゃない」は、腹痛を起こすジャクソンの話です。ジャクソンの痛がっている様子がリアルに描かれているため、こちらまで痛くなってくるような表現をされています。思わず目をそらしたくなるような作品です。

本書は多岐にわたる木下古栗の作風を1冊にまとめたものとなっています。作者のいい意味での変態度が分かることでしょう。

電車の中で読むのは危険!

本書は12篇からなる短編集です。いかにもぶっとんでいて、わかる人にしかわからない、独特な世界観を持つ作品となっています。

一言で言えば意味不明、でもなぜか癖になる、そんな感想を持つことでしょう。
 

著者
木下 古栗
出版日
2016-03-26

本書の読んだ方の感想を見ると、意味が分からなくて挫折したという方が多くいることが分かります。物語性があるようでないため、理解が非常に難しいのです。

おすすめは「道」という作品。途中からなんと漢字の羅列で表現されているのです。中国語かと思いきや、よくよく見てみるとなんと、日本人でも読めてしまうような、偽中国語でした。そのことに気付いたとたん、え、これ読めるじゃないか、と、読むのすらバカバカしく感じます。しかし、その突拍子もない表現を物語に盛り込むセンスを感じるのです。

その漢文の内容は、実際読んでみて下さい。思わず吹き出してしまうこと間違いなしです。

いかがだったでしょうか。木下古栗の作品は、どれをとっても変態なものばかりです。だからこそ、頭を空っぽにしながら読むことができる作品となるでしょう。何も考えずに、ただ面白いなあと感じながら、読んでみて下さい。

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