自己啓発書は大抵似たり寄ったりのことしか書かれていないと、うんざりしていませんか?オグ・マンディーノが書く作品は、小説の中に自身の経験と知性に基づいた自己啓発を盛り込んだ小説です。楽しんで読みながら、成功の哲学を手に入れましょう。
オグ・マンディーノとは、アメリカのベストセラー作家であり、小説だけでなく自己啓発本を出版しています。講演も開いており、「世界中で最も多くの読者をもつ自己啓発書作家」とも呼ばれるほどの存在です。
オグ・マンディーノは1923年に誕生、高校時代に学生新聞の編集長を務めており、大学進学後にジャーナリズムを学ぼうと勉学に勤しんでいました。しかし、17歳になる年の夏、彼に作家になるように勧めていた母親がなくなってしまいます。これがきっかけでオグ・マンディーノは大学進学を諦めてしまいました。
その後1942年に空軍に入隊、第二次世界大戦後に帰国してから作家を目指しますがうまくいきません。結局生命保険会社に勤めることになるのですが、アルコール依存症になってしまいます。
妻子に捨てられ、仕事も失い、ホームレス状態にまで落ちぶれたオグ・マンディーノは自殺も考えたそうです。しかし、このどん底の時期が人生の転機であったと言えます。彼は立ち直るため、様々な成功哲学の本を読むようになりました。
結果として、彼は再び職につくことができ、再婚も果たします。そして、「サクセス・アンリミテッド・マガジン」の編集者となったのです。本記事でもご紹介する『世界最強の商人』(改題前『地上最強の商人』)を1968年に執筆、作家としてデビューしました。
1976年以降、講演家としても活発に活動し始め、全国講演者協会からはCPAE賞が与えられ、国際的な演説家の殿堂入りも果たします。多くのベストセラー作品を世に出したのち、1996年にこの世を去りました。
『十二番目の天使』は1993年に出版された作品です。
仕事で成功を収めたジョンは、長年離れていた故郷で暮らそうと思い妻子を連れて帰郷します。町の人々にも祝福され、ジョンは幸福の絶頂期でした。
ところが2週間後、妻と息子が交通事故で即死してしまいます。葬式後、幸福から一転した状況下でジョンは自殺を考えます。拳銃に弾を込め、こめかみにあて、いざ引き金を引こうとしたとき、扉から現れたのは親友でした。
絶望に染まったジョンに対し、彼は「少年野球チームの監督をしてほしい」と持ち掛けます。最初は乗り気でなかったジョンは、少年たちの野球する姿を目の当たりにして、かつての自分の少年時代を思い出すのです。
- 著者
- オグ マンディーノ
- 出版日
あたかもオグ・マンディーノ自身の経験が反映されているようです。彼も一度、離婚によって妻子を失っています。とはいえ、ジョンの場合は死別ですから、そこまで重きを置いている設定ではなさそうです。
本作のポイントとなっているのは、タイトルになっている「十二番目の天使」。「天使」とは何を指しているのかというと、野球チーム「エンジェルズ」に所属している少年ティモシーのことを表しています。
野球チームにおいて12番目というのはスタメンではありません。しかしティモシーは誰よりも熱心に野球に取り組み、大声で応援するんです。「毎日、毎日、あらゆる面で、私はどんどん良くなっている!」「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめるな!」という台詞は一見単調に見えますが、実践できている人は少ないでしょう。ただ口にするだけでも世界の見え方が変わる、そう思えば言葉がどれだけ強力で素晴らしいものかお分かりいただけるでしょう。
加えて、彼には実は重大な秘密があり、その秘密は当人の心を深い闇に染めることが容易なものです。にもかかわらず、ティモシーのポジティブな言動は、本人だけではなくジョンの心までにも光を指していくことになります。
言霊という言葉が日本にもあるように、何かを「口に出して言う」ということは絶大な威力を持っているのでしょう。成功するためには何が必要か。きっとそれは、心より言葉が未来を先導するということを知っておく、ということでしょう。
ポジティブな発言が前向きな生き方を作るということです。本作を読んだ人には、ぜひその日から前向きな言葉を口にする習慣をつけてほしいですね。
『星のアカバール』は作詞家であるバディ・ケイと共著の作品です。
文学の才能があり、また凧あげも上手なトゥロという少年が物語の主人公。順調な人生かと思えた矢先、両親がなくなり、自身も事故にあってしまいます。
トゥロは自身の不遇に嘆き、妹と2人で絶望のさなかにいたのですが、とあるきっかけで「星」を捕まえることになります。なんと、星が凧にのって降りてきたのです。その名もアカバール。自分のするべきことをやり遂げて死んだ人は星になる、とアカバールはトゥロに伝えました。
そんな中、アカバールは村の人々によって地上に引きずり落とされたため、消えてしまいます。トゥロは自分のせいでアカバールを死なせてしまった、と自己嫌悪に陥ってしまいました。それにも関わらず、星を求めて村の大人たちはトゥロに迫ってきます。その後、彼が選択した行動とは……。
- 著者
- ["オグ・マンディーノ", "バディ・ケイ"]
- 出版日
- 2004-10-15
どこか神話のような、ファンタジー特有の光と影のある話となっています。この光と影が、まさしくオグ・マンディーノが自身の経験をオマージュしたような存在なのです。
主人公・トゥロは人生のどん底にいたとき、ひたすら自分の悲劇的状況を嘆いていました。なぜこんな目にあうのは自分なのか、ずっと後ろ向きのままで、真の意味で「生きている」とは言えない状態だったのです。
しかし、妹とともに立ち直り、周囲の人からもその変化は目に見えるものでした。オグ・マンディーノがアルコール中毒から立ち直って周囲の環境を変えていくのと重なりますね。
やがてトゥロは凧をあげて「星」をとる、というストーリーに展開されます。これは、ただ「希望を目指す」だけではなく、自分の武器(=トゥロでいう「凧」、オグでいう「文章力」)で獲得するという点がポイントでしょう。
成功の哲学的に読み取れることは、自分の心をどん底に落とすのは環境や他人ではなく、自分自身の心であり、そのマイナス状況からスタート地点に立つのも自分自身次第ということ、そしてスタートの0地点からプラス地点にのぼり成功するには自分の武器を使うことが重要ということです。
トゥロは物語のラストで思わぬ結末を迎えます。果たしてそれは幸福なのか、それとも……。結末をどうとらえるのかは、貴方次第です。
『この世で一番の奇跡』は1975年に刊行された作品です。
出版社の社長として成功を収めた主人公は、どこか物足りない気持ちになっていました。そんなある日、廃れてしまった人間を拾っているという不思議な老人に出会います。
彼の言うところによると、他人にだけでなく自分にすらも自身のことを捨てられ、夢を追わず安定に逃げた、生ける屍たちを救うことが、彼の使命だというのです。
1年間老人と仲良くしていたのですが、「神の覚え書き」なる文書を残して姿を消してしまいます。神の覚え書きを手に入れた主人公に起こる奇跡とは……。
- 著者
- オグ マンディーノ
- 出版日
この神の覚え書きにはルールがあり、100日間毎日かかさず読まなければなりません。覚え書きの内容を要約すると、「神はありのままの貴方を愛する」といったようなことが書かれています。
また、幸福と成功に導く3つの法則があり、それは第1の法則「自分が偉大なる創造物であることを認識する」、第2の法則「自分のかけがえのなさを主張する」、第3の法則「自分の枠を超える」というものです。
作品タイトル『この世で一番の奇跡』というのは、「(神から見て)あなたが誕生したこと」を指しています。神は自分を愛してくれるのに、どうして自分自身で自己の可能性や存在意義を否定できるでしょう? つまり、本作のテーマは、自己肯定感の重要性ともいえるのです。
また、途中に聖書の内容に近い文も見受けられ、キリスト教に通じている人にとってより効果的で印象的なものとなっています。100日間読み続けることによって、言葉が胸の奥底にしみこみ、自分を愛する術を身に着けることが可能になるでしょう。
『きっと飛べると信じてた』は1986年の作品です。
第二次世界大戦下に両親を不慮の事の故で失い、孤独と貧困の中で生きていた少年・ルークは、ある日、大富豪の老婦人と出会います。
老婦人はルークを見て亡き息子と重ね、彼の前向きな姿勢に心打たれ、人生の成功哲学を教えることを決意します。
- 著者
- オグ マンディーノ
- 出版日
母親を亡くし爆撃手になっていたオグ・マンディーノと作中のルークはどこか重なって見えます。オグが本から成功哲学を学んだように、ルークも図書館の本を読んで前向きに生きるようになっています。自分が成功哲学で絶望から抜け出せたからこそ、今度は自分の番、本作の老婦人のように、誰かに成功哲学を掴ませたいのかもしれませんね。
物語は老婦人がルークに優しく語りかけて進んでいきます。他の作品は前向きさや自己肯定感、成功のために必要な習慣などをテーマにしていますが、本作は「今日を生きる」という点に焦点が当てられているのでしょう。
未来のことより今日やるべきことを見つめ、夜ベットで寝るときに後悔がないようにする、そういった内容のことが書かれています。耳にタコができるほど聞き覚えのある、当たり前のようでなかなか実践できていないことを老婦人は独特な言い回しで語ってくれています。
それは、他の自己啓発書と異なり、そのように生きることによってこのような恩恵を与えてもらう、という内容を神に誓っているかのような言い回しです。これは、自己を愛し、自己の可能性を主張する際の後ろ盾に「信じるもの」の存在が必要不可欠なことを示しているように思われます。
「信じるもの」の存在は神ではなくてもよいでしょう。自分を変えるきっかけとなった出来事や人物でいいのです。確固たる意志があれば、自分自身の存在も後ろ盾になり得ます。それによって真の自分を見失わない、信念・思想が生まれるのでしょう。
もしかしたら本作こそ「信じるもの」になり得るかもしれません。読んだその日から生きる希望を与えてくれる作品です。
世界で誰よりも富を築いた商人・ハフィッドは、年老いて残りの人生も残りわずかです。彼は弟子であるエラスムスに自分がどうしてこれほどにまで商売が大成功になったのか、その秘密を打ち明けることにします。
彼に見せられた秘密とは、10巻で構成される巻物でした。エラスムスはその巻物を譲り受け、その巻物に書かれている教えの通り、商人としての成功への道を歩み始めます。
- 著者
- オグ・マンディーノ
- 出版日
- 2014-11-22
10巻からなる巻物の中で印象的な言葉に、「失敗とは、それが何であれ、その人生の目的に到達できないこと」というものがあります。
自分が成し遂げたいことに向けて歩んでいけば、死ぬまでに目的にたどり着かない限り、成功は約束されているということです。諦めないことの大切さや、つまずきは失敗ではなく途中経過であることをほのめかしています。
何かにつまずいた時、いつまでもくよくよしている時間はもったいないと感じますよね。そんなことに今日という限られた時間を、明日には終わってしまうかもしれない命を使うのは無駄なのです。
長いスパンで目標をとらえながら、時は金なりと考え1日を大事に生きていく、それが成功のもとなのでしょう。
巻物10巻はそれぞれ違うことが書いてありますが、主張する方向性はどれも揃っています。また、本作に登場する巻物には読み方があり、1巻を1日3回30日間読み続け、そうしたら次の巻物を読まなければなりません。それを実践していけば、誰でも成功することができるというのです。
みなさんも時間をかけて本作を読んでみて下さい。読み終える頃には頭には成功の哲学が染みつき、今後の人生が明るいものに見えるはずです。
以上、成功の哲学を読み取れるおすすめ小説を5作品ご紹介いたしました。すべてを読んでいくと、共通事項が分かると思います。それを頭に叩き込み、自分という存在を最大限まで肯定してあげることで、オグ・マンディーノのように成功を収めることが可能となることでしょう。