大きくはっきりとした目に背筋の伸びた誇らしげな姿。若い少女たちの理想像を描いて憧れを集めた、アーティストの中原淳一。彼が残した数々のイラストやエッセイは、私たちの日常を色鮮やかにしてくれるでしょう。
中原淳一は若いころから才能を発揮し、戦後には多くの女性から支持をうけたアーティストです。その活動はファッションからヘアメイク、作詞、そして画家と多岐に渡り、彼の刊行した雑誌は、戦後の暗い雰囲気に沈む女性達へ多くの夢を与えました。
香川県に生まれ徳島県、広島県と中国地方を転々。西洋人形の作成を好み、埼玉の日本美術学校に入学します。西洋美術に深く触れてきた中原は当時異彩を放っていたそうですが、その評判は決して悪いものではありませんでした。しかし戦争が始まると、彼の西洋の影響が強い作品は弾圧されるようになります。
戦後は、以前開いていた雑貨屋を再開。女性の為の雑誌を創刊し、暮らしやファッションを特集して、美しくあるよう働きかけました。敗戦の影響から強いショックを受けていた女性の心に夢をもたらし、強く美しい心をもつための道標となりました。
表紙に描かれている愛らしいドレス姿の少女。シルエット絵本とある通り、その表情は真っ暗な影で表されていて見えなくなっています。
しかし、表情がわからない事は、必ずしもその感情が読み取れない、という事にはなりません。真っ暗な顔、ここに表情を描き出すのは読者の想像力なのです。
- 著者
- 中原 淳一
- 出版日
- 2016-06-20
本文中の絵もほとんどの人物は真っ暗な影で、あまり顔や表情は描かれていません。使用する色もほぼ無彩色。ベタ塗りされていうるページ全体の色と、白、黒のみです。コントラストのはっきりとした細密な絵は、読者の想像力を掻き立てます。シルエットによる描写は、登場人物への興味を呼び起こし、感情移入しやすくさせる効果があるのです。
収録されている物語は、人魚姫や蝶々夫人、マッチ売りの少女など、誰もが知っている物も多いです。しかし文章がしっかかりしているので、童話として触れた時とは一味違う物語を味わわせてくれます。絵本ではありますが、小説を読むような感覚で触れる事ができるでしょう。
この本は文庫として出版されており、手のひらに収まってしまう位の大きさです。持ち運びやすく場所を選ばず読む事ができるようになっており、いつでも少し大人びた少女たちの物語に親しむ事ができるようになっています。
イラストながら凛々しい姿は、スーパーモデルを思わせるでしょう。パッと目に華やかな服を誇らしげに纏う様子は憧れを掻き立てます。
描かれたファッションに、ファッション評論家であるピーコが現代風の解説を入れています。何年たっても色あせない美しさが表された絵が、現代の私たちにおしゃれを教えてくれるのです。
- 著者
- ["中原 淳一", "ピーコ"]
- 出版日
- 2003-02-01
1950年代の雑誌に掲載された作品から、ピーコが現代の有効にマッチするものをセレクトしたそうですが、ゆうに100ページ超、数百に及ぶイラストカット。全身が描かれた女性はどれもキリリとした表情をしていて、自分に自信のある女性の姿が、理想像を具体的なものにします。
描かれた服の種類や小物などに合わせて、着こなしや合わせ方のポイントも解説されています。たくさんのイラストにつけられた解説は自分がおしゃれをしようという時、大きなヒントになることでしょう。この本を読む事で、日々のおしゃれが少し楽しくなるかもしれません。
全く年月を感じさせない洗練されたファッションの数々。今の流行には添っていなくてもそう感じられるのは、描かれている色や柄、形がしっかりと計算されているからなのです。
表紙に描かれているのは、柔らかい表情をした美しい少女。こうして美しく微笑むためにはどうすれば良いのか。この本では具体的な方法論ではなく、心の在り方を教えてくれます。決して押しつけがましいものではなく、優しく、柔らかく、そっと指し示すように導いてくれる一冊です。
- 著者
- 中原 淳一
- 出版日
中原淳一の描く女性は、皆すっと自然に背の伸びた姿で描かれています。自信に満ちたその姿は、彼の描く理想の女性像なのでしょう。その誇り高い姿を実現するためにはどうすれば良いのか、この本はその考え方を示しています。
文章はとても優しく、若い読者でも受け入れやすいです。特別な事ではなく、おしゃれや暮らしを楽しむ方法が述べられていて、美しさとはどこからくるか、自然と理解できるでしょう。
この本のエッセイを読むと、一つ一つの事柄への向き合い方や感じ方が丁寧なことがわかります。日々、少しずつ過ごし方を変えてみると、姿勢も変わるかもしれません。
昔は普段着だったはずの着物は、今では着方もしきたりも難しい、敷居の高い服となってしまいました。日常的に着ている人はほとんど見かけませんし、ましてや格好良く着こなせる人はなかなかいません。
着物は同じものを長く着ることができ、物を大事にする国民性がよく表れた衣服です。この本はそんな着物を、いつまでも着こなす為の本となっています。
- 著者
- 中原 淳一
- 出版日
- 2005-03-01
かわいらしいイラストとともに語られるのは、着物そのものに関する事から着付け方など様々なもの。色や髪形など着物を着る時に迷いそうなポイントがしっかりと抑えられています。初めてで不安を抱えていても、中原淳一らしい優しい文章で着物の楽しみ方を事を学ぶことができます。
西洋風のイラストは着物のイメージからは少し外れるかもしれません。しかしどうやら、中原は和装と洋装の違いをしっかりと見つめ、その魅力を伝えようとしていたようです。
普段着慣れない着物は、どうしても難しいと感じてしまうことでしょう。そうして着物を着る事を諦めてしまうのは、もったいない事です。この本を読んで、楽しそうという気持ちから着物を着るきっかけができれば、それはとても幸せな事だと思います。
絵本とはありますが、物語ではなくイラスト付きのエッセイ集です。子供に着せる服について、いろいろと悩む母親は多いでしょう。子供が着たがる服、母親が着せやすい服、どんな服を与えればいいのか考えこんでしまうこともあると思います。
そんな母親の為に書かれた、子供の服を選ぶための本です。
- 著者
- 中原 淳一
- 出版日
- 2011-10-13
まだ大きくないからだに合わせた服は、子供のからだに合っているからこそ、その子をかわいく見せてくれるのだと教えてくれます。またしっかりとおしゃれも意識していて、親子でファッション誌のように見ることもできるのです。
この本では、手作りの子供服の例や、子供との接し方にも触れています。イラストからも丁寧で繊細な心構えが伝わってきて、子供を育むうえでの大きなヒントとなることでしょう。
ここにあるような服をいつもいつも着せてあげるのは大変だと思います。おもいっきり遊ぶ子供には、汚れてもいい服を着せてしまいがちです。しかし、そんな日常でもできる工夫もしっかり載っています。参考にしてみてはいかがでしょうか。
イラストに描かれる少女たちは、皆爽やかに描かれています。こうした颯爽とした姿への憧れは、いつの時代の少女にも通じるものがあるでしょう。理想への第一歩として、中原淳一の本に触れてみるのはいかがでしょうか。