巧みな話術と、元気いっぱいな登場人物たちが所狭しと活躍をくりひろげるライトノベルを読んでみたくありませんか? ここでは大ヒットシリーズ『スレイヤーズ』で知られる神坂一のおすすめの4作品をご紹介します。
神坂一(かんざかはじめ)のライトノベルは、掛け合い漫才のようなテンポの良い語り口、元気いっぱいな登場人物が縦横無尽に活躍する姿が魅力です。
第1回ファンタジア長編小説大賞に『スレイヤーズ!』が準入賞した後、同シリーズの『白魔術都市の王子』がデビュー作品となりました。「スレイヤーズ」シリーズは特に人気を博し、漫画・TVアニメ・アニメ映画・ゲーム化され、幅広く普及しています。
『スレイヤーズ!』以外にも「ロスト・ユニバース」、「クロスカディア」、「アビスゲート」など数多くの作品を世に生み出しており、その中でも「ロスト・ユニバース」は、根底の設定で『スレイヤーズ!』の世界とつながっていたりと、神坂一の遊び心が隠れているのです。
多くの魔法を使いこなす天才美少女魔道士であり、凄腕の戦士でもあるリナ・インバースは、暇つぶし目的で成敗した山賊たちから、ついでにお宝を奪います。しかし、その奪ったお宝の中に隠された「あるもの」が原因で、悪の一味に狙われることに……。
旅の中で出会った仲間達と共に、襲い来る魔族と闘いながら突き進んでいく冒険ファンタジーです。
- 著者
- 神坂 一
- 出版日
- 1990-01-25
かつて勃発した「神魔戦争」と「降魔戦争」という大規模な戦いの影響で、リナたちは外界と隔絶された世界に住んでいました。1巻は、リナが山賊から奪ったお宝に紛れていた「賢者の石」をめぐり、襲い来る敵を、降臨した魔王を撃退していくという物語です。
リナたちのいる世界にたびたび現れる魔族は、人間の持つ負の感情を糧として存在しているため、野放しにしていると人間に危害が及んでしまいます。また、魔族にも階級があり、「亜魔族」、「下位魔族」、「中位魔族」、「高位魔族」、そして「魔王」と、強さを増して立ちふさがるのでした。
リナをはじめとする、腕の立つ魔道士や剣士達の戦闘シーンは、読んでいて気持ちがよくなるほど痛快です。さすがは大ヒットライトノベル、といったところでしょう。他にも、旅を続けていく中で、今まで敵だった存在と助け合ったり、手を組んだりする王道展開があったり、読者はたまらず熱くなるはずです。
「スレイヤーズシリーズ」には、金髪の剣士「ガウリイ」と旅をし、魔族の謎に迫っていく本編と、白蛇(サーペント)のナーガとの腐れ縁を描いた短編で構成される番外編があります。どちらもリナの天真爛漫さと計算高さ、テンポの良い話の運びにぐいぐいひっぱられて、読んでいる方は目が離せなくなるでしょう。
『スレイヤーズ』については<『スレイヤーズ』の伝説は終わらない!シリーズ全編ネタバレ紹介!16巻発売>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
主人公の村瀬栄理(むらせえり)は、魔道士のレックスにより、召還魔法の実験台兼情報源として異世界に召還されました。
毎日に退屈していた栄理は、突如召喚されたことで降り立った異世界での時間を、旅行気分で楽しみ始めます。彼女の異世界冒険へのハマりっぷりは、魔道士レックスに向けて毎週決まった時間に自分を召喚するように約束させるほどです。
しかし、楽しいと思っていた世界にも様々な事情がありました。奴隷として辛い日々を過ごす人々の存在や、異なる種族同士の激しい戦い、王国滅亡の危機など……。とても平和な世界とは言い切れない場所だったのです。
そんな危険はつゆ知らず、天真爛漫な女子高生の栄理を中心に、物語は動き出します。
- 著者
- 神坂一
- 出版日
「日帰りクエスト」シリーズは「1.なりゆきまかせの異邦人(ストレンジャー)」、「2.困ったもんだの囚われ人(プリズナー)」、「3.見物気分の旅行人(トラベラー)」、「4.間違いだらけの仲裁人(メディエター)」の4部で構成されており、コミカライズもされています。
神坂一の作品らしさが光る、元気で話術の巧みな女の子が主人公です。そのため、重いテーマや暗い世界観も、明るい雰囲気で描かれています。また、主人公を囲む登場人物たちの人の良さや、人間味あふれる様子も魅力的で、読者は生き生きとしたキャラクター達を容易に想像することができるでしょう。
平凡な女子高校生である栄理に、魔法や超能力といった特殊能力はありません。そのため、様々な力が交差する異世界を、丸腰で突き進んでいくような展開です。キャラクターたちの特技が見どころでもあった「スレイヤーズ」シリーズとは、また違った面白さがあります。栄理は、異世界で波乱や困難に、どう立ち向かっていくのでしょうか?
神坂一節ともいえる巧みな屁理屈や、斜め上をいく栄理の行動など、是非楽しみに読んで見てください。
「マズガミア帝国」から、地球侵略の目的で送り込まれた機械生命体・ラーヴァキアは、まるでお遊びのような魔女っ子の闘いぶ介入しようとしたところ、魔女っ子のいる界隈を取り仕切っている「魔法の国の妖精」に、関西弁で強烈なダメ出しを受けます。
ラーヴァキアは、怒涛の勢いと圧力を持つ妖精の言いなりにならざるを得ず、そのまま、妖精のプロデュースする魔女っ子の「いずれ現れる新たな敵」として地球に滞在することになってしまいました。
- 著者
- 神坂一
- 出版日
- 2015-05-20
11の銀河、506の惑星と種族を併呑(へいどん)し、勢力の拡大を続ける帝国、マズガミア。侵略目的で地球に手を出したはずでしたが、降り立った地で出くわした「関西弁の妖精」により、侵略どころではなくなってしまいます。その後も、最初のラーヴァキアだけでなく、帝国の幹部たちまでもが、妖精がプロデュースする「魔女っ子」の世界に巻き込まれてしまうのでした。
学生として地球に滞在することになったラーヴァキアは、人間の姿を模し、名前も「幅木一新」と改めます。ラーヴァキアの時の冷徹な雰囲気と、幅木一新として年相応の男子学生になりきってしまっている時の二面性が、たまらなく面白いです。
また、幅木一新は、いずれ戦う相手となる「魔女っ子メイミ」(本名:美幌鳴実)と良いムードで付き合いはじめるなど、青春を謳歌しているように見えなくもありません。その他にも、魔女っ子メイミと、的である「ラミカ」のやりとりや、地球の侵略者同士の戦いなど、相変わらすキャラクターの掛け合いシーンは一級品です。
学校にはラーヴァキアの他にも、魔女っ子の敵候補がたくさん数まぎれていますが、皆同様に「いつ敵として現れていいのかわからずに焦っている」という状況で笑いを誘われます。
ファンタジー、魔女っ子、学園生活などの様々な要素がいり混じり、突っ込みどころも満載な本書で、ぜひ大笑いしてください。
ある日の夕暮れ時、自動販売機に忘れた釣銭を取りに行った稀綱(きづな)は、不思議な女の子マキと出会います。マキの誘導で、ボロボロのアパートにたどり着いた稀綱。そこで出会ったのは、なんと妖怪でした。
マキの育ての親だという納戸婆に「この子に人間の世界のことを教えてあげてほしい」と頼まれたことから、稀綱とマキのどたばたの毎日がスタートします。たくさん笑えてちょっぴり泣ける、人間と妖怪たちとの青春コメディです。
- 著者
- 神坂 一
- 出版日
- 2014-09-01
稀綱が通う大学で知り合った閑(しずか)と、マキと、妖怪たちとが繰り広げるハートフルな日常が描かれた本作は、神坂一の作家25周年記念の書き下ろしだけあって、作者の趣味が全開のお話です。
「いるかいないか、で言えば、たぶんいないんでしょうね。-まあ、いてくれた方が面白いけど」と本文で閑が言いますが、もしかすると、これは作者の妖怪への思いなのかもしれません。
「妖怪」という、本来は恐怖を煽るテーマですが、不気味な要素はほとんどありません。むしろ、怖い物語が苦手な方におすすめしたい一冊と言えます。また、一風変わった神坂一作品として、「スレイヤーズ」シリーズや「日帰りクエスト」シリーズなどと読み比べてみるのも、きっと楽しいでしょう。
知られざるマキの生い立ちや、妖怪達の世界、時折稀綱が見せる男気など、注目したい内容が盛りだくさんです。タイトルの通り、「妖怪半分、学生半分」な稀綱の生活を、読みながら応援してみてください。
いかがでしたか?「真剣な話と人を丸め込むような理屈で笑わせる話の混在」が特徴の神坂一の本を4つご紹介しました。楽しんで読めることうけあいの作品ばかりです。ぜひ、ご一読いただきたいと思います。