宮尾登美子のおすすめ文庫本5選!「強い女性」を描くベストセラー作家

更新:2017.7.9

宮尾登美子が書き続けた強い女性とは「耐える強さ」をもった女性達です。家族のため自分が愛する者のために自分の思いを抑え耐える女性の生き様を描いた5選をご紹介します。

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激動の時代を生き抜いた女性を描くベストセラー作家宮尾登美子

宮尾登美子は1926年高知県に生まれました。高等女学校を卒業後、教員や保育士をしながら執筆活動をはじめています。

20代前半は満州に渡り、戦後日本への帰国した自分の体験を書いた作品が『櫂』でした。宮尾登美子はこの思い入れのある作品を自費出版しその壮絶な内容から当時話題となりました。

この作品は、宮尾登美子の出世作でもあり太宰治賞を受賞されています。宮尾登美子の作品は文学だけでなく、映画やNHK大河ドラマまた舞台などでも繰り返し公演されています。

作品への評価も高く『一弦の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞と次々と文学賞を授与されました。宮尾登美子はこれら文学界への長年の功績により1989年には紫綬褒章を授与されており2009年には文化功労者を授与されています。

宮尾登美子の生い立ちに触れる作品『櫂』

昭和初期の貧しい日本には娘を売り買いする「女衒」という仕事がありました。「女衒」を営む夫・岩伍を嫌悪しながらも別れることができない喜和でしたが、岩伍が外で生ませた子供を引き取り育てるように強いられる辛い日々が続きました。複雑な思いの喜和でしたが様々な事情から受け入れざるを得なくなってしまいます。

やがて尽くしても思いが離れる岩伍からは一方的に離縁され、実の子からも疎まれる喜和を救ったのは自分を本当の母と慕う妾腹の子、綾子の存在だったのです。

著者
宮尾 登美子
出版日
1996-10-30

娘や妻を遊郭に紹介する仕事が「女衒」というものでした。宮尾登美子は自分の父が「女衒」であることを本来は隠したかったと語っています。

重い内容ですが筆者が「劣等感を感じていた」という生家の様子を、自費出版してまで世に出した渾身の一作がこの『櫂』という作品です。宮尾登美子初のベストセラーとなり太宰治賞を受賞しました。
 

芸術を極め愛も捨てられない女性の一途を描く『序の舞』

古都京都で幼少から絵の才能を見いだされた津也という多感な少女が主人公です。日本画を極めていく一方で師への尊敬の思いがいつしか愛に変わっていきました。

その後、自分の思いを抑えることもできず子を宿して一人で産んでいく女性の悲しさが描かれています。当時の日本画壇ではめずらしく次々と師を変えていき、いつも師への思いが重なり男女の関係となっていくのでした。

主人公津也の愛憎する思いがその都度発表される日本画に投影されていく珠玉の作品です。
 

著者
宮尾 登美子
出版日
1985-01-10

女流日本画家として初の文化勲章を受けた上村松園の半生を描いた作品です。10代から天才女流画家として才能を認められていた津也、いつも師と弟子という関係を超えてしまい関係が深まります。

次々と師を変えていく津也の心中は愛も絵も捨てられず、思いや強い意志を感じる作品といえるでしょう。時系列で上村松園の半生と発表された作品が解説されており、本を読みながら上村松園の作品を確認してのも興味深いです。
 

11代目市川團十郎の妻がモデル『きのね』

主人公の光乃は一家離散し一人で生きていくことになります。女学校をが卒業後も仕事が見つからず口入れ(職業紹介所)で歌舞伎役者の御曹司雪雄の女中の仕事を得ることができました。

光乃に与えられた仕事は、雪雄が別の女中に生ませた産後の身の回りの世話でした。歌舞伎という独特の家風の中で雪雄を支えていきますが、光乃と雪雄が関係を持ってしまいます。空襲で傷ついた雪雄に自分の血を輸血し尽くしますが、雪雄への思いは届かず辛い日々が続いていくのでした。
 

著者
宮尾 登美子
出版日
1999-03-30

この『きのね』も実在する人物を題材にした作品です。モデルは11代目市川團十郎の後妻「堀越千代」。現在の市川海老蔵のお祖母さんにあたる方になります。

この「きのね」とは芝居の幕が上がる前触れに鳴らす拍子木の音。光乃と雪雄の出会いの幕が上がるこの拍子木を宮尾登美子は、二人の出会いと『きのね』最期に描いています。

歌舞伎界きっての名門の御曹司の結婚相手が女中というのは当時としてはあり得ない結婚でした。光乃はそんな中でただひたすらに雪雄への思いを貫くいくのです。

当時の歌舞伎界での様子なども宮尾登美子の丁寧な取材で描かれています。光乃のひたむきさに一気読みしてしまう作品です。

徳川13代将軍家定の正室篤姫の生い立ちから輿入れまで『天璋院篤姫』

篤姫は薩摩藩主島津家分家島津今泉家長女「一」(かつ)として生まれます。後に島津家本家島津斉彬の養女となり聡明で利発な篤姫を見込み13代将軍家定の御台所として大奥に上がることになります。

上巻では故郷である薩摩での生い立ちや御台所としての教育係「幾島」との出会い。江戸屋敷に入ったが1855年に起こった安政の大地震の影響で婚儀が延期となり不安な日々が描かれます。1856年に大奥へ入った経緯や後に争うこととなる西郷隆盛が輿入れ用意をしたことも興味深い内容です。

この婚姻は薩摩藩の発言を強め病弱な家定後の将軍選びに一橋家より時期将軍を出すことを目的としての輿入です。しかし周囲の思惑とは別に家定と篤姫との間睦まじい描写も微笑ましく描かれています。
 

著者
宮尾 登美子
出版日
2007-03-15

NHKの大河ドラマでこの『天璋院篤姫』をご覧になった方も多いと思いますが、ドラマはほぼ原作を忠実に再現しています。篤姫と幾島の関わりや大奥での様子など徳川末期とはいえ華やかな大奥での生活の様子が偲ばれます。

作中では家定が篤姫を頼りにしており、篤姫がかけがいのない夫を守る様子がほほえましく感じられるでしょう。

過酷な運命を受け入れ挫けず進む烈の生き方『蔵』

現在の新潟県亀田市の造り酒屋の田乃内家は県下有数の豪農、一人娘の烈は両親の愛情を受けて不自由ない暮らしをしていました。しかし烈の視力が落ちていることが分かり成長するにつれて失明に至る病となります。

烈の母は我が子を心配しながら烈が15歳の時に無くなり、更に田乃内家には不幸が重なっていくのでした。

造り酒屋の蔵の中で発酵段階で異常が起き日本酒が製造できなくなる「腐造」が発生します。そのショックで烈の父親の意造が病に倒れてしまい烈は不安な日々を耐えていきます。

著者
宮尾 登美子
出版日
1998-01-01

宮尾登美子の代表作の一つです。映画化やドラマ・舞台でご覧になった方も多いと思います。
 
雪深い新潟で次々に起こる家族の不幸。母が亡くなり、失明の時が近づき烈は必死に不安に耐えていくのでした。烈は家族が自分を大切に思う気持ちに慰められて気持ちを立て直していきます。

上巻では田乃内家の家族関係が中心です。妻を亡くし、愛娘の病気と造り酒屋として窮地から家庭内が複雑になる様子が描かれています。自身の病と複雑な家を守る烈、彼女の前を向いて歩く勇気に元気づけられる作品です。

宮尾登美子は一貫して「強い女」を描き続けました。明治から大正、昭和にかけて大きな歴史の節目にひたむきに生きた女性達はみな耐える強さを持っていました。今回ご紹介した作品の多くは実在するモデルがいます。激動の時代を生き抜いた女性達に触れることができる秀作なのでぜひ読んでいただきたいです。

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