安房直子の絵本・童話集おすすめ5選!幻想的な物語が魅力の作家

更新:2017.7.12

当たり前の日常の中に、不思議な世界への扉が見え隠れしている。そんなイメージで楽しむ安房直子の作品は、小さな子どもから大人まで幅広い年齢層に愛されています。夢と現実が交錯するような、安房のおすすめ作品を5つ紹介します。

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人間のあらゆる感情を柔らかく描き出す児童文学者、安房直子

優しい語り口で紡がれる幻想的な世界を描いた作品に定評がある安房直子は、1943年に東京で生まれました。日本女子大学国文科を卒業後は詩人として知られる山室静に指導を受け、児童文学の創作に力を注いだといいます。

その作品の多くは日本の民話風でありながら幻想的な世界を描いたもので、人間の感情のマイナス面にも鋭く切り込みながら、それでいて温かく読み手を包むような世界が広がっているのです。

1971年には『さんしょっこ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞するなど華々しい受賞歴を持ち、『きつねの窓』は1992年から小学校の国語の教科書に採用されています。1993年に50歳という若さでこの世を去った安房直子。時を経ても色あせる事のない幻想的な世界を、その作品で味わってみてはいかがでしょうか。

『春の窓 安房直子ファンタジスタ』 春の風に吹かれたような爽快感

この作品には、安房直子の作品が12作品収録されています。音楽を教えて欲しいと張り紙をしたクマの子のお話や、継母にいじめられてしまう女の子のお話など、どこか物悲い雰囲気をまといながらも、読み終わると優しい気持ちになれる作品ばかりです。

「あるジャム屋の話」は恋の物語です。ある青年が森の片隅でジャム屋を始めますが、なかなかお客さんが来てくれませんでした。そこにメスの鹿がやってきて、ラベルがよくないから売れないのではないかとアドバイスします。その後もメスの鹿は青年を助け、店は繁盛していきますが、ある時メスの鹿は姿を消してしまうのでした。

彼女は人間になって青年の元に帰ってくるため、旅に出たのです。青年は悲しみにくれますが、月日が流れ、ある年の冬に、何かが起こります……。

著者
安房 直子
出版日
2008-11-04

「北風のわすれたハンカチ」では、両親を殺されてしまい、悲しみに暮れるクマの子どもの心の内が、読み手の心をつかむほど切なく、淡々と描かれています。

きれいごとだけでは言い表せない気持ちや表情を、独特の世界観でファンタジックに包み込んで表現している作品の数々。悲しい出来事があった日や、心が疲れて何もかも忘れてしまいたいと思うような日に、この本の世界にどっぷりと浸ることですべて忘れられるような、そんな一冊です。

『うさぎのくれたバレエシューズ』少女に起きた奇跡を描いた、安房直子の代表作

この本は、バレエのレッスンに5年も通って頑張っているのに、バレエが上手にならない女の子のお話です。お正月や七夕が来るたび、女の子はバレエが上手に踊れますようにと願います。するとある日、可愛らしいバレエシューズが女の子の家に届くのです。

女の子がその不思議なバレエシューズを履いてみると、不思議な声が聞こえます。声の聞こえる山の中に行くと、そこにはうさぎの靴屋があったのです。

うさぎに頼まれて30足のバレエシューズ作りを手伝った女の子は、その靴を取りに来たうさぎのバレエ団と一緒にバレエを踊ることに。桜の木の下で、女の子はうさぎたちと風のように飛び、夢中になって踊るのでした。

著者
安房 直子
出版日

この絵本はぜひ、可愛いものが大好きな女の子にプレゼントしてあげたい一冊です。女の子の衣装も、バレエシューズも、バレエ団のうさぎたちも、登場する何もかもがとてもキュートで、何度でも読み返したくなることでしょう。

女の子が蝶や花びらのように舞い踊る姿を見れば、読んでいるほうにまでその躍動感が伝わってきます。踊り疲れた女の子が草原に座り、その上から桜の花びらが舞い落ちる様子はとても美しく、いつまでも眺めていたい魅力があります。

習い事を一生懸命頑張っている子どもに、ぜひ読み聞かせてあげたい作品です。頑張っても上手くいかない時は、この絵本を読んで再び笑顔を取り戻して欲しいと思います。あきらめずに挑戦を続ければ、その先に素敵な世界があるという教訓を感じ取ってくれるのではないでしょうか。

『なくしてしまった魔法の時間』 安房直子ワールドを堪能する

この作品には、短編が11編と、著者のエッセイが収録されています。短編は安房直子の代表作である「きつねの窓」や「雪窓」などなど。動物と人との触れ合いが描かれた作品を読むことができます。

「きつねの窓」は教科書に掲載されたこともある有名な作品です。銃を担いで山の中を行く猟師の青年がきつねを追いかけると不思議な体験をするのです。桔梗が咲き誇る花畑に迷い込んだ青年は、子狐が人間に化けて営む染物屋に足を踏み入れます。子狐は何でも美しい青に染めると言い、猟師は相手が子狐だと気づきながらも、その話に引き込まれていくのです……。

著者
安房 直子
出版日
2004-03-01

「雪窓」は山のそばにあるおでん屋のお話です。そのおでん屋のおでんは格別で、常連客だったタヌキはいつの間にかおでん屋の助手になっていました。ある日そのおでん屋を訪れた不思議な少女が手袋を片方忘れていきます。雪女のようなその少女を追いかけて、屋台のおじいさんはタヌキと一緒に山の中へ向かうのでした……。

登場人物はみな人間味にあふれていて、親しみを感じるキャラクターばかりです。そして、人間と自然に会話を交わす動物たちが日常の景色からいつの間にか読み手をファンタジーの世界にいざないます。子どもの頃に感じていた夢と現実が混ざり合うような幻想的な感覚を、この作品で味わっていただけたらと思います。

『くまの楽器店』誰もが行きたくなる素敵なお店

これは不思議な不思議な楽器店のお話です。その楽器店は「ふしぎや」緑色のベレー帽をかぶったクマが店番をしています。クマの周りにはいろんな種類の楽器が並んでいます。太鼓・鈴・タンバリンにアコーディオンなどなど。

何日も雨が降り続いたある日、ずぶぬれの男の子がふしぎやを訪れました。雨で憂鬱な気分を振り払う、楽しい楽器を探しに来たというのです。クマが差し出したのは空の星よりまぶしいトランペット。男の子はトランペットのお礼に梅の実をクマにプレゼントします。

男の子が雨の中を歩きながらトランペットを吹いていくと、その音色に合わせて空の雲が動き出し、いつの間にか空には雲一つなくなってしまったのです!

著者
安房 直子
出版日
2009-08-27

ふしぎやにはさまざまな楽器がありますが、それぞれに不思議な力が込められているのか、手に取ったお客さんに次々と奇跡が起こります。

春の訪れを待ち遠しく思っていたウサギが大きな太鼓を叩くと、風に乗って菜の花の香りや小鳥の歌声が聞こえ始めます。

こんな楽器屋があるならぜひ行ってみたい! と誰もが思うのではないでしょうか。子どもに読み聞かせた後は、自分ならどの楽器が欲しいかと話し合ってみるのも楽しいですね。

『ハンカチの上の花畑』ノスタルジックな世界に潜む小さな恐怖

題名や表紙の絵を見るととてもほんわかした雰囲気を感じられますが、この作品には背筋がぞっとするような怖い要素が含まれています。

ハンカチの上の花畑にいる幸せそうな家族は、普通の人間ではないのです。彼らは菊酒という酒を造る小人で、古びた酒屋のおばあさんが大切にしまっていたビンの中で暮らしています。小人はおばあさんの言葉を聞くと酒を造るためにおばあさんのハンカチの上に菊を植えて花を咲かせ、とてもおいしい菊酒を作るのです。

郵便屋がおばあさんに菊酒の秘密を聞いたその日から、郵便屋はビンを預かり、菊酒を楽しむようになります。しかし、おばあさんに言いつけられた決めごとを破ってしまった郵便屋に、恐ろしい運命が忍び寄るのです……。

著者
安房 直子
出版日
1973-02-15

おばあさんからの言いつけを最初はしっかりと守っていた郵便屋。彼の人生が少しずつ明るく華やいだものになるにつれ、言いつけの大切さが揺らいでいく様が淡々と描かれ、読み手はハラハラしながらページをめくることでしょう。

褒美をもらったことで少しずつ仕事に対する姿勢が変わっていく小人達と、約束を忘れて行く郵便屋とその奥さん。人間のダークな一面を描きながらも、ファンタジックな設定と柔らかい言葉で紡がれた文章なので、読んだ後には不思議な爽快感があります。

郵便屋夫婦がどうなってしまうのか、ハラハラドキドキしながら楽しく読むことができる作品。本好きの小学生や、中学生以上の人にもおすすめです。

日常とファンタジーの境目が曖昧になり、いつの間にか不思議な世界に足を踏み入れている……安房直子の作品はどれも、日常に潜む不思議な世界を小さなライトで照らし出すようなものばかりです。幻想的な気分に浸りたい、そんな気持ちを満たしてくれる作品のなかから、お気に入りの一冊が見つかる事を祈っています。

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