ついに最終巻『絶対可憐チルドレン』を結末まで徹底解説【ネタバレあり】

更新:2021.12.10

絶対可憐、だから負けない!3人の美少女特務エスパーと天才美形指揮官の織りなす、コミカルで時々シリアスなSFアクションコメディ。まもなく最終章が始まる本作の見所を、ネタバレを踏まえてご紹介したいと思います。

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漫画『絶対可憐チルドレン』の見所をネタバレ紹介!

著者
椎名 高志
出版日
2005-10-18

『絶対可憐チルドレン』(通称「絶チル」)は2004年に「週刊少年サンデー」で連載が始まりました。2021年3月現在も同誌で連載中です。

本作の主人公は4人。「ザ・チルドレン」と呼ばれる日本最高峰のエスパー少女・明石薫、野上葵、三宮紫穂。そして彼女達の指揮官である皆本光一です。ぶっ飛んだ実力と容姿、性格の少女3人が、上司と教育係を兼ねた年上の青年を公私ともに翻弄するSFコメディ。

作者の椎名高志はオカルトをメインにした、『GS美神 極楽大作戦!!』で人気を博した漫画家です。高橋留美子と藤子・F・不二雄の影響を公言しており、それが作品全体の軽妙なノリ、SF的深みとして現れています。

物語は「ザ・チルドレン」の小学生時代を描いた小学生編から中学生編、そして高校生編へと着実に未来に向かって進んでいきます。彼女達の成長を軸として、敵味方を含めた社会情勢が世界的に変化していくので、全巻を通してそういった部分を俯瞰するのも面白いです。

本作にはスピンオフ作品としてアニメ『THE UNLIMITED 兵部京介』と、大柿ロクロウ作画の同名漫画があります。本編の小学生編と中学生編の間の時間軸の話ですが、いくつか矛盾する点があるので、厳密にはパラレル・ワールドとなっているようです。一部設定やキャラが本編に逆輸入もされているので、興味のある方はぜひこちらもどうぞ!

著者
["大柿 ロクロウ", "椎名 高志"]
出版日

漫画『絶対可憐チルドレン』あらすじ

21世紀以降、人々の中から突然変異的にエスパーが現れ始めました。彼らの超常能力で文明水準が上がる一方、社会はその変化に対応しきれず、エスパー犯罪が頻発。日本では特務機関「バベル」が設立され、エスパーの支援と犯罪抑止を担う公的機関として発展しました。

エスパーは能力の大きさに応じて、超度(レベル)と呼ばれるランク付けがされています。その中で7は最高ランク――というより、強力すぎて計測不能を意味します。

「ザ・チルドレン」は世界でも希少であり、日本にはたった3人しかいない超度7の超能力者。しかも彼女達の能力は特別らしく、世界の法則を根幹から変えてしまいかねない、とんでもない力ということが示唆されています。

薫の能力は物体を操作し破壊する念動力、サイコキノ。葵は高速移動と高い空間認識力で索敵をおこなう瞬間移動能力のテレポーター。そしてどんな防壁も無意味にし、過去の情報を読み取る接触感応能力、サイコメトラーの紫穂。

「バベル」に所属する3人は皆本の指揮の下、個々の力をさらに越えた力を発揮します。国内の大小の事件、世界を股にかける国政的エスパー犯罪組織、そして同盟国との微妙な関係。どんな困難を前にしても、「ザ・チルドレン」はあらゆる事件を痛快に解決していきます。

漫画『絶対可憐チルドレン』小学生編ネタバレ考察:運命の子供達は希望の象徴か破滅の前兆か【1~15巻】

著者
椎名 高志
出版日
2005-10-18

「ザ・チルドレン」は優秀なエスパーチームですが、いかんせん3人の性格が大問題。物語開始直後はたった10歳なので、移り気で気分屋、能力にものを言わせてわがまま放題するクソガキ状態でした。彼女達はある事情で人間不信に陥っていた時期があり、その反動もあるので仕方ない面もありますが……。

そんな3人ですが、物語を通して年齢を重ね、段々と変化していく部分がポイント。

政府直属の特務機関「バベル」に所属する特務エスパーでもある「ザ・チルドレン」は、解決困難な天災や超能力犯罪に立ち向かっていきます。その過程で反エスパー団体や、エスパー至上主義を掲げるテロ集団「パンドラ」、エスパーの戦争利用を目論む闇組織「黒い幽霊(ブラック・ファントム)」と幾度となく関わっていきます。

その戦いの中で、否応なく目にするエスパー差別。エスパーが増えていると言っても、いまだに社会の大多数を占めるのは、超能力のない普通人(ノーマル)です。

有形無形の差異を目にする「ザ・チルドレン」は、それでも皆本の指導の成果で、ノーマルとエスパーが共存する平和な世界を目指そうとします。

しかし、そこには1点だけ懸念が存在しました。近未来において「ザ・チルドレン」の3人が、敵組織のはずの「パンドラ」のリーダーとなって、ノーマルとの間に戦争を引き起こすという不穏な未来予知が出るのです。

この破滅の未来予知は本編での大きなテーマ。しかし最新巻までのストーリーで、何度か予知がやり直された結果、内容が徐々に変化している点が興味深いです。決して変わらない未来などなく、意志の力でよりよくできるというメッセージ性が感じられます。

「ザ・チルドレン」が導く未来は、人類の希望となるのか、それとも……。

漫画『絶対可憐チルドレン』中学生編ネタバレ考察:成長し、変わっていくチルドレン【16~39巻】

著者
椎名 高志
出版日
2009-03-18

小学生だった「ザ・チルドレン」が進級し、少し大人になった中学生編。全編を通して感じられるこの中学生編のテーマはおそらく「成長」でしょう。

もちろん、小学生編でもチルドレンの成長は描かれていました。しかし、中学生となったことによる外見の変化、それにともなう内面の変化、そして環境の変化は、チルドレンの「成長」という要素をより具体的にビジュアルに反映した結果なのではないかと思います。

たとえばチルドレンを阻む反エスパー団体「普通の人々」は、『サザエさん』や『渡る世間は鬼ばかり』のパロディキャラとして描かれています。これは誰にでもわかる「一般人」のイメージであることもさることながら、元ネタとなる作品が普遍的で変化しないものの象徴と読み取ることも出来ます。

四季があるのに年齢の変化がないことを時折「サザエさん時空」などと揶揄されますが、『絶チル』はそうではありません。チルドレンが中学生、高校生へと「成長」するのはそういったものへの対比のようにも思えるのです。

そんな中学生編の見所と言えばやはり、ついに表面化してきた「黒い幽霊」、その中核を担う「ファントム・ドーター」との直接対決でしょう。

「ファントム・ドーター」は未覚醒の潜在的エスパーを強制的に目覚めさせ、催眠能力で洗脳して支配下に置くという恐るべき敵です。現実ではロンリーウルフと呼ばれる繋がりを持たない単独テロが脅威となりつつありますが、それと同じく、未覚醒のエスパーが突如暴れ出すのは予測も予防も困難で、これまでで最大級の敵といえるでしょう。

新たな脅威と時を同じくしてチルドレンの新たなクラスメイトとなった雲居悠理(くもいゆうり)。彼女の本名はユーリ。「ファントム・ドーター」であると同時に、何も知らない一般人の悠理でもあります。彼女は主人格の「ミラージュ」、好戦的な「ファントム」、そして一般生活に溶け込むための「悠理」という3つの人格を持った多重人格者なのです。

さらに、どの人格とも接点を持たない謎の第4の人格「フェザー」。その正体は、未来の「ザ・チルドレン」が破滅の運命を回避するため、未来の数多くのエスパーを統合して時空を越えて送り込んできた、エスパーの意識と能力の集合体。

中学生編のクライマックス。「フェザー」の介入によって歴史は変わり、ユーリ=悠理は呪われた「ファントム・ドーター」から解放され、それによって未来が変わります。超能力とは物理法則を超越し、怨念を断ち切り、未来をも変える希望の力。

「あたし、その考え方は好きよ。だって……『失敗した過去』を変えたわけじゃないんだもの。超能力はね、未来を変える力よ」(『絶対可憐チルドレン』より引用)

薫が「破壊の女王」と呼ばれ、ノーマルに戦争をしかけるという、予知されていた破滅の未来はこれによって回避されました。未来は何が起こるかわからない、白紙の状態へと変わりました。

そして季節は移ろい、チルドレンは中学校を卒業します。子供達はまた一歩大人へと成長し、高校へ進学。物語はいよいよ未知の領域へ。

漫画『絶対可憐チルドレン』高校生編ネタバレ考察:パターンを破壊し、変革していく世界【40巻~】

著者
椎名 高志
出版日
2014-12-18

中学生編のテーマが「成長」なら、高校生編のテーマは「変革」でしょうか。物語が未知のステージへ進んだように、これまでになかった予想不可能の展開を見せていきます。未来が白紙になったことで、あらゆる可能性が生まれ、何もかもが従来とは違ったものになっていく。それを暗示するかのように、作品中で当たり前だった構図に大きな変化が生じていきます。

高校進学を機にチルドレンは、これまで続けられていた皆本との同居状態が改められ、皆本は現場指揮官を退き、研究に専念するという意向を示します。指揮官皆本と実働部隊チルドレンの構図が変化するというのは、今までにない大きな異変といえるでしょう。さしずめ親離れ、子離れと言ったとこでしょうか。

さらに「財団」と呼ばれるエスパー支援組織に身を寄せていたユーリ=悠理が帰国し、出向という形でザ・チルドレンの4人目のメンバーとして加わります。このようにチームの構図だけでなく、人数にも変革が現れます。

そして異変は登場人物の所属する組織にまでおよびます。それも最悪の形で。

社会に属する穏健なエスパー組織「バベル」と反社会的テロ集団「パンドラ」。互いに主義主張はあれど、時には一致した利害のために協力してきた2つの組織。基本的に一枚岩だったそれらが「黒い幽霊」――ユーリを失った後、組織の実権を握ったユーリの兄ギリアムの暗躍によって事実上瓦解します。

ギリアムの力は、超能力と相性のよいレアメタルで構成された特殊マテリアルを媒介とし、精神汚染を引き起こすというもの。しかもそれは単なる洗脳ではなく、本人の秘めた願望を彼の意に沿う形で発揮させるという最悪の能力。感染者は己の自由意思を持ったまま、社会の敵、チルドレンの敵に回ってしまうのです。

「パンドラ」は現在のところ幹部の真木が汚染されたのみですが、「バベル」の被害はより深刻。トップの蕾見不二子、局長の桐壺をはじめとした上層部が汚染され、被害を免れた特務エスパーも味方がわからないため行動出来ず、身動きが取れない始末です。

さて、そんな高校生編で最も注目されるのが、この年代からの新キャラの松風浩一。超能力を持たないノーマルの彼ですが、「完全視覚記憶」という特殊技能の持ち主です。常時録画状態の超高性能ビデオカメラと言えばわかりやすいでしょうか。一度見た記憶を完全な形で保持することが可能で、その上、皆本並の頭脳と分析力がある指揮官向きの逸材。

折しも皆本が研究職への異動を考えていた時期のこと。身元もハッキリしていて清廉潔白。松風は見習いながらも指揮官としては非常に優秀で、頼もしい存在。皆本と違って経験こそありませんが、創意工夫してチルドレンを運用する様子はとても新鮮です。チルドレンの新たなクラスメイトとして登場した松風は渡りに船……ですが、あまりにも出来すぎています。

誰かにお膳立てされたかのように、必要な時に必要な人材が用意されている。「バベル」とは敵対関係ですが、チルドレンには親身な兵部はそこに引っかかりを覚えます。これ以上ないほど心強い味方なのに、ギリアムの送り込んだ刺客である疑惑が拭えません。

松風は過去にチルドレンに救出されたことがあり、その経緯から彼女達に協力的。なかでも薫には特別好意を抱いています。チームの構図の変化とともに、人間関係にも変化をもたらした松風は、敵味方不詳の存在として物語にも緊張感を与えています。

漫画『絶対可憐チルドレン』最新巻までの経緯:激化する黒い幽霊との死闘【48~59巻ネタバレ注意】

著者
椎名 高志
出版日
2017-03-17

ギリアムは各国上層部を掌握し、密かにエスパーとノーマルの対立を激化させていきました。その中で日本「バベル」すらも「黒い幽霊」の手に落ち、皆本と賢木が拉致されてしまいます。また「パンドラ」もナンバー2たる真木が、精神汚染によって敵に寝返りました。

からくも窮地を脱出した「ザ・チルドレン」は松風を臨時の指揮官と仰ぎ、「パンドラ」に身を寄せて反撃のチャンスを窺いました。

数々の死闘を経て「バベル」や奪われた仲間を解放したのも束の間。ギリアムの罠にかかって、「ザ・チルドレン」達はタッチの差で皆本を逃してしまいます。しかも最悪なことに、皆本は汚染されて、「ザ・チルドレン」にも対抗可能な能力者ドロシーを鍛えることに……。

ドロシーはたった1人でチルドレン3人を相手にできる、超度7クラスの強敵です。年齢的に幼く、ほとんど盲目的に皆本に懐いているせいか、どことなく幼少期の薫達を彷彿とさせます。

結果として、チルドレンはドロシーに打ち勝ち、その過程で皆本の解放にも成功しました。この辺りの展開は、チルドレン&皆本が彼らの過去(あるいは今後起こる破滅の未来)を克服するという暗示にも思えます。

皆本は無事「バベル」に帰還し、ドロシーも仲間入りするのですが……。そこで無事に終わるわけがありません。

漫画『絶対可憐チルドレン』最終章あらすじ:最終決戦まで秒読み状態!【60巻ネタバレ注意】

著者
椎名 高志
出版日

皆本の代理を果たし、チルドレン達を勝利に導いてきたノーマルの少年・松風。彼はギリアムによって生み出された模擬人格で、「黒い幽霊」の潜入エスパーでした。離反した松風はドロシーを伴い、「黒い幽霊」へと帰還します。

事態は悪い方向に動いたかに見えましたが、かねてより松風を警戒していた兵部の機転によって、「黒い幽霊」本拠地の特定に成功しました。表向き存在しないコメリカ軍基地、エリア666の誰も知らない地下区画。

「バベル」と「パンドラ」は少数精鋭で最終決戦を挑みますが、そんな彼らの前に「ファントム・クイーン」、「ファントム・ナイト」とコードネームを変えたドロシーと松風が立ち塞がります。

準主役級くらい読者にも馴染みがある2人だけに、戦いには悲壮感が漂います。しかし、そこで活躍するのが最強レベルのヒュプノたる悠理です。かつて「黒い幽霊」の象徴的エスパーだった悠理がチルドレンに味方して、ドロシーを解放しようとする姿が非常に印象的。

果たしてギリアムの呪縛を打ち消すことができるのでしょうか? 物語はいよいよクライマックスを迎えます。

漫画『絶対可憐チルドレン』最終章あらすじ:ドロシーと松風の解放【61巻ネタバレ注意】

著者
椎名 高志
出版日

反ギリアムに傾いた「黒い幽霊」内部の手引きで、エリア666に潜入したチルドレンたち。ところがそこには、「黒い幽霊」の裏切りすら織り込んだギリアムの罠が待ち構えていました。皆本は強力な催眠に取り込まれるのを察し、事態を打開すべく自分の思念を薫に託します。

そして薫は単身、超能力ネットワークで繋がった催眠空間でドロシーと対峙。皆本の思念体とともに、ドロシーの心を救うべく懸命に説得を重ねます。

61巻で焦点が当てられるのは、ドロシーと松風の救済です。超度7クラスの凄腕エスパーで皆本に好意を寄せるも、薫にはなれなかった少女ドロシー。優秀な頭脳でチルドレンを補佐し、薫にほのかな恋心を寄せるも、皆本になれなかった松風。

ギリアムに付け込まれた2人のわだかまりが、どのようにして解消されるかが見所となってきます。シリアス一辺倒かと思いきや、椎名高志らしいユーモアがそこかしこに挟まれ、鬱屈とした展開にならないのはある種の救いでしょう。

漫画『絶対可憐チルドレン』最終章あらすじ:ギリアムの闇に迫る最終決戦【最新62巻ネタバレ注意】

著者
椎名 高志
出版日

中枢に突入したのと前後して、チルドレンらの中に蘇る「フェザー」の記憶。そこから導き出されたギリアムの狙いは、形の変わった「ファントム・システム」によって回避された破滅の未来を呼び戻すことでした。

エスパーの能力を集中する薫の切り札「ブースト」を参考にして開発された、無尽蔵に超能力エネルギーと負の感情を吸収するナノマシンの群体。ギリアムは薫の怒りを呼び起こし、システムを完全始動させようとしますが……。

すべてのエスパーの女王として目覚めつつある薫は、そんなギリアムすら救おうとするのでした。

物語はいよいよ、ギリアムとの最終決戦に突入します。そこで薫が選んだ手段は暴力ではなく、「ブースト」を利用した催眠の疑似体験による融和の道でした。

薫の想いが光だとするなら、ギリアムはまさしく闇。かつての兵部にもあった暗い絶望を、光ではね除けることはできるのでしょうか。

大団円となった漫画『絶対可憐チルドレン』の最終章を考察!

作品としての「絶チル」は2021年7月14日の「週刊少年サンデー」で完結しました。ここからはそんな「絶チル」の最終章を独自に考察していきます。

回避された破滅の未来では、ユーリを組み込んだ「ファントム・システム」によって、エスパーとノーマル対立の引き金が引かれました。不二子らが犠牲になる凄惨な予知でしたが、本編終盤はその辺りが大きく変わっています。

差異の生まれるきっかけになったのは、やはりユーリの存在です。ギリアムの呪縛から逃れ、悠理としてチルドレンに協力したことで、本編が予知実現ルートから外れたのは間違いありません。予知を回避すべく、「フェザー」を過去に送った未来のチルドレンの機転が功を奏した形です。

そしてもう1つ違うのは、薫が徹底抗戦ではなく、最後まで対話にこだわった点。「フェザー」から引き継いだ記憶の残滓の影響もありますが、予知になかった松風およびドロシーの存在も無視できません。

味方になったり敵になったり色々ありましたが、薫は彼らのおかげで個性の多様性や相手を知ることの重要性、そしてエスパーの中でも特異な存在である自分たち「ザ・チルドレン」を客観的に捉えられるようになったはずです。

62巻でギリアムにチルドレンの幼少期を疑似体験させたのは、メタ的視点で見れば記憶喪失で少年になった兵部のエピソードのセルフパロディでしょう。しかし薫が自身を客観視できるようになったと考えると、これまでに培ってきた体験の原点に触れさせることで、「未来が変わる可能性」を提示して更正を促したのがはっきりわかります。

またこれは同時にチルドレンとギリアムの対比にもなっており、何かが違えばチルドレンも道を外していた可能性を示唆しているように思えます。

チルドレンの小学生編の姿は最終話にも出てきますが、ギリアムの疑似体験も含めて、物語の終盤であえて読者に連載初期を意識させたのは象徴的です。形を変えて「始まり」を振り返ることで、「終わり」をより一層強調させるテクニックでしょう。ベテラン漫画家ならではの手腕。

また最後の最後に物語の冒頭を想起させる描写があったのは、時空をも越える薫のパワーがその実、小学生編のチルドレンにも影響を与えていたとも解釈できます。実際、劇中で皆本を守護するように現れていた天使のイメージが、成長した薫の過去干渉だったことから見ても可能性は低くありません。

成長した薫が抱く「未来への強い希望」に感化された結果、小学生編のチルドレンががむしゃらに成長しようと足掻いて、連載初期の無軌道かつ型破りな行動につながった……という風に考えると、ちょっとロマンチックで面白いです。

いずれにしても、小学生のチルドレンから始まった「絶チル」の物語で、再びチルドレンの小学生姿が描かれるのは感慨深いものがあります。

『絶対可憐チルドレン』最終巻となる63巻は、2021年9月17日発売予定です。コミックス派の読者の方は、ぜひ発売を心待ちにしてください。

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