寺村輝夫のおすすめ絵本・児童書5選!「王さま」シリーズが人気

更新:2017.7.18

おちゃめな王様が大暴れする「王さま」シリーズでおなじみの寺村輝夫。彼の描き出す世界は、人間味のあるキャラクターの魅力に溢れています。今回は、笑いたい時、ちょっと怖い話を読みたい時、気分に合わせて選べる5つの作品の紹介です。

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敏腕営業マンという異色の経歴を持つ寺村輝夫

ナンセンス童話作家の異名を持つ寺村輝夫は、1928年に東京で生まれ、幼少期に関東大震災を経験しています。

10代の頃は軍国主義教育が色濃い学校へ通い、山本五十六に憧れた時期もあったそうです。彼は海軍に入隊し、1945年5月には海中特攻隊に志願した過去を持ちます。この時、特攻隊の本来の意味をよく知らなかったという彼は、合格者に与えられる一週間の休暇目当てで応募したそうです。

1945年8月に戦争が終結すると大学に進学し、卒業後は出版社に入社した寺村。会社員として勤務しながら童話作家としてのデビューを果たしますが、その後も会社員としての仕事は続け、退職した営業マンに代わって営業職についた時には、営業成績を1年で6倍にしたという功績も残しています。

その作品にはアフリカの動物が登場することが多く、本人もアフリカの魅力に取りつかれて何度も現地に足を運んだそうです。一番好きな動物は象で、その作品の多くに象が登場しています。

少年のような王様が魅力・寺村輝夫の名作絵本

子どものような正確の王様が、大騒動を巻き起こすこのお話です。勉強の後の休み時間にふらふらと城の中を散歩していた王様は、鶏小屋にぎゅうぎゅう詰めになった鶏たちを可哀想に思います。小屋に鍵が刺さったままだと気づいた王様はその鍵を外してあげますが、そのせいで鶏たちが城中に散り散りに!お城の人々は大騒ぎです。

王様は大慌ての大臣たちを眺めながら、鶏小屋の鍵を開けたのが自分であることを黙っていました。みんなが慌てる姿をどこか楽しんでいる様子の王様でしたが、王様が犯人だと知っている雌鶏に口止めをすると、生まれてきた卵が、秘密をある方法でばらしてしまい……!

著者
寺村 輝夫
出版日
1998-05-01

自由気ままな王様は、嘘をついたり、勉強を嫌がったり……。欠点もあるけれど、小屋にぎゅうぎゅうに詰め込まれた鶏を可哀そうだと思う優しい心も持っています。心の中ではいろいろと考えているのに、言葉数が少なく、「あ、うん」としか言わないぶっきらぼうな態度にも、親近感がわきますね。

シーンごとに少しずつ変わるラッパの音は、絵本の中に読み手を引き込むスパイスのようです。王様の日常がぐんと読み手に近づき、あたかも自分が城の中にいて騒動に巻き込まれたような臨場感を味わえます。

目玉焼きをナイフで切って出てきた王様の声、ぜひともどんな声なのか聞いてみたいものです。

寺村輝夫が描く、日本の怖い話

1977年に初版が発行されたこの作品は、日本に古くから伝わる妖怪やおばけのお話が収録されています。ひとつ目小僧やのっぺらぼうに河童、そして大人の男も怖がるような大蛇。表紙の絵から伝わるほのぼのとした雰囲気とは違い、その中身は背筋がひやっとするこわいお話ばかりです。

例えば卵のようにつるんとした顔ののっぺらぼう。のっぺらぼうに出会った人が、大慌てで人に助けを求めると、いつの間にか自分の周りの人間が皆のっぺらぼうになってしまう、というお話です。夏の暑い時季に、肝試し気分で読むのもいいかもしれません。

著者
寺村 輝夫
出版日
1977-06-20

挿絵はカラーが多く、文字も大きいので、小学校中学年くらいから一人で読めるでしょう。本が好きなら、小学校低学年からでも読めると思います。そのくらい優しい作品です。

目次にも、本編にも遊び心が溢れる挿絵がふんだんに使われていて、どれもインパクトの強い挿絵ばかり。収録された短編作品の中には、背筋がゾッとするような恐ろしい物語もあります。

それでも、怖い物見たさで次のページを開きたくなる不思議な魅力を秘めているのです。

言葉遊びに夢中になれる絵本

「あ」から「ん」までの平仮名50音を、王様と一緒に楽しみながら覚えられるこの作品。「あ」なら「あいうえおうさま あさのあいさつ あくびをあんぐり……」といった風に、楽しい文章が50音の数だけ書かれています。

汽車の切符を切る王様や、スキーを滑る王様、そして治った病気を内緒にして、なるべくなんでも怠けようとする王様。怠け者で、遊びが大好きな王様の素顔が50音で面白おかしく描かれています。

著者
寺村 輝夫
出版日

ゲームに負けて家来と喧嘩する王様や、捕まえた虫に向こうを向けと芸を仕込もうとする王様。言葉遊びの面白さを味わうことができ、一度読んだら忘れられない楽しいエピソードが満載です。

50音に慣れ親しむため、未就学児に読み聞かせるのもとてもおすすめですが、文字が読める小学生にとっても十分に読みごたえがあって、楽しめる作品となっています。読み聞かせてもらうよりも、自分自身で声に出して読みたくなる作品なので、子どもは何度も読むうちに楽しみながら、音読を上達させることができるかもしれません。

ポンと叩くと楽しい赤ちゃん絵本

1ページ目には、黄色い背景に真っ白な卵が一つ。ぽんと叩くと、次のページでは真っ白な卵から黄色いヒヨコが生まれます。黄色いヒヨコをぽんと叩くと次は雌鶏になり、雌鶏をぽんと叩くとなんと、卵を産むのです。

ぽんぽんと雌鶏のお尻をたたくと、叩いた分だけ卵が産まれます。リズム感のある文章は、絵本の読み聞かせの初心者にとっても読みやすいものではないでしょうか。

著者
寺村 輝夫
出版日
2003-07-01

この絵本は、優しくポンと叩くたびに新しい何かが生まれます。卵からヒヨコが生まれ、ヒヨコが雌鶏に成長し、雌鶏はいくつかの卵を生み出すのです。目まぐるしい展開とリズム感あふれる文章が、赤ちゃんの心を引きつけます。

太い線で描かれたイラストが印象的で、ページをめくるのがとても楽しいこの作品。たくさんのヒヨコ達が一列にならんで「わんつうわんつう」と行進する姿は、とってもチャーミングです。

ラストシーンは予想外の展開で、読み手を驚かせてくれます。出産祝いや、1歳の誕生日などにもとてもおすすめです。

寺村輝夫も好きな像が主役!優しい気持ちになれる絵本

この絵本は、迷子になった小さな赤ちゃん象が、いろんな動物たちに出会いながらお母さんを探して旅をする絵本です。お母さんとはぐれて泣いていた赤ちゃんに最初に声をかけてきたのは、優しいキリンでした。キリンは赤ちゃん象のためにお母さんを探してあげますが、赤ちゃんは川に入って水遊びを始めてしまい、キリンとも離れてしまいます。

次に赤ちゃんが出会ったのは、水の中にいたカバでした。カバは赤ちゃんがワニに食べられてしまうことを心配しますが、赤ちゃんはのんきに「あばば、うぶー」としか言いません。カバは赤ちゃんを川岸に追いやりますが、そこへワニが現れるのです!

著者
寺村 輝夫
出版日
1989-01-01

ワニやライオンに出会っても、赤ちゃんはいつも通りです。「あばば、うぶー」と言うと、みんな赤ちゃんの可愛さに負けて、食べるどころか大切に扱ってくれます。

ライオンのお腹の上で眠ってしまった赤ちゃん象。ライオンがその重みに耐えきれずに赤ちゃんを振り落とすと、赤ちゃんは転がって行って、お母さん象の足にぶつかるのでした。

赤ちゃんに出会う動物たちが、赤ちゃんのために何かしてくれるのを見て、心がほんわかと温まります。最後はとても大きなお母さんに再会できて、嬉しい気持ちで読み終えることができるでしょう。

寺村輝夫の描き出す世界に登場するキャラクターたちは、一癖も二癖もあって、どこか憎めない魅力があります。子どものように柔軟な発想力で描かれたそれらの作品たちは、クスっと笑ってしまいたくなるようなシーンもあり、心が温まるようなシーンもあり、読み手を飽きさせないのも魅力です。

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