脚本家としてはもちろん元横綱審議委員も務め、50歳を過ぎてから東北大学大学院で宗教学を専攻するなど幅広い活躍をする内館牧子。小説をはじめ、ビジネスマナーに役立ちそうなエッセイなど5作品を紹介します。
内館牧子が手がけた脚本はテレビや映画で数々のヒットを生んでいます。書店などで彼女のコーナーを見るとセンスの良いタイトルの本が並び、つい手に取ってみたくなるでしょう。今回はその中から、長い人生の生き方にヒントを与えてくれそうな小説やエッセイを選びました。
また彼女の出身地である秋田の事を綴った『心に愛唇に毒』、仙台での大学院生活をはつらつと描いた『二月の雪、三月の風、四月の雨が輝く五月をつくる』は、街の風景なども愛情たっぷりに書かれています。
これからご案内する5作品を読むと、年齢に関係なく様々な事に興味を持つ彼女の姿も見えてきます。「こういう生き方ができるといいな」と、自分にもできそうな事からチャレンジするきっかけ探しにも読んでみませんか。
内館牧子のベストセラー小説で2018年に映画が公開される『終わった人』は銀行勤めをしていた主人公が出向先で定年を迎え、不完全燃焼の自分をどうにかしたいと模索する物語。
元銀行勤めということもあり退職金もある主人公。しかし妻や娘を旅行に誘っても乗り気ではありません。一心に仕事をしてきて、家庭の事をおろそかにしていたのでしょうか。ワンオペ(ワンオペレーションの略)という言葉が話題になる昨今、こんなことは普段暮らしていてもよくありそうですね。
- 著者
- 内館 牧子
- 出版日
- 2015-09-17
再就職先を探しても学歴や職歴が邪魔をして思うようにならない主人公。カルチャークラブに通う人達のことをはじめは軽視していますが、自分もジムに通い始めます。そこで出会った男性により会社社長に就任するも、倒産寸前の事態となり……。
『終わった人』というタイトルは仕事の定年を迎えただけでなく、その後の主人公の生き方も表しているよう。今まで一線で活躍してきた自分のプライドを捨て、第二の人生を送る展開は、自分のこれからの人生を考えるきっかけにもなりそうです。
『カネを積まれても使いたくない日本語』は、普段使っている日本語が正しいのかを立ち止まって考える機会を与えてくれる1冊です。
何気なく使っている言葉や文法の中には間違って使われている日本語もたくさんあります。『カネを積まれても使いたくない日本語』では普段よく耳にする、実は間違った日本語を例文として取り上げ、正しい使い方をわかりやすく解説。
一般向けに取ったアンケートや資料と内館流の考察から構成されており、よく見聞きする気になる日本語が一通り網羅された濃い内容となっています。
- 著者
- 内館牧子
- 出版日
- 2013-07-12
テレビ番組の中だけにとどまらず、会話の中で「ヤバイ」「ぶっちゃけ」といった若者言葉と言われる日本語が蔓延しつつある世の中。本来の意味からずれているにも関わらず知らずに言葉を使っていると、大変な誤解を招いてしまうこともあるでしょう。
または、「ら抜き言葉」など間違った文法を注意されたことはありませんか。この本では、会話の言葉だけでなく正しい日本語の文法も解説されています。
会社などで使っている自分の言葉が正しいのかを再確認したい時にも参考になりそうな内容ですので、ビジネス書としても最適です。
「今の仕事を続けていていいだろうか」、「自分のしたい事とは違う仕事に就いたけれど、もう1度挑戦してみたい」など、人生のこれからを迷っている方におすすめの本です。
現状に満足せず仕切り直す人、自分が叶えたかった夢に改めて挑戦する人を「飛ぶ人」、そのまま踏みとどまった人を「飛ばなかった人」とし、一般の方にアンケートを取った結果をまとめた1冊。
作者である内館も腰掛のつもりで入社した会社で10年以上勤め、転職した同僚を横目に過ごします。13年目に彼女はその生活から飛ぶ事を決意します。その後の彼女の活躍はご存知の通り。
- 著者
- 内館 牧子
- 出版日
- 2005-04-01
「飛んだ人」、「飛ばなかった人」それぞれの決断をした結果なども有名人のエピソードやドラマの主人公になぞらえてわかりやすく紹介しています。
今の仕事から転職をすると言っても、次の仕事で希望の職種に就ける可能性、成功率は未知数。人間は一体、何歳までやり直しがきくのでしょうか。
「飛ばなかった人」について書かれている章では、敢えて飛ばずにそこに踏みとどまった人の事も内館が手がけたドラマの登場人物の台詞で書かれています。
サブタイトルには「揺れる人、揺れない人」と入っていますが、新たな事へ挑戦する時には気持ちも不安になり、自分の選択が正しかったのかと心が揺れるのではないでしょうか。そして踏みとどまろうとした人の心の揺れはいつ落ち着くのでしょう。
『夢を叶える夢を見た』 は、働く人はもちろん、長い人生の生き方のヒントにもなりそうな1冊です。
2003年に東北大学大学院に入学した内館牧子。同じ時期に読売新聞、東北支社からの依頼を受けてコラム連載をしていたエッセイに加筆をし、1冊の本にまとめたのがこちらの本です。
長いタイトルはマザーグースの一文を彼女なりに解釈したもの。雪や風が強い季節が過ぎるとやってくる新緑の五月。人間も同じように嫌なことを越えて輝く五月になるのだと。
50歳を過ぎてから東北大学大学院に進学した彼女。周りは20代の学生が多く年齢のギャップに戸惑ってしまいそうですが、その中にすっと溶け込んでいくバイタリティは羨ましく感じます。
- 著者
- 内舘 牧子
- 出版日
- 2012-03-01
大学院生活を送った仙台での3年間、そして卒業後も続いた連載。学生との交流だけでなく街の中での人との出会い、風景なども描かれている素敵な1冊です。
中には仙台の特産なども紹介されており、普段の生活の中で使っているものの中に、意外に仙台発の商品があったという発見にもなるかもしれません。また仙台麩で作る彼女オリジナルのレシピは、ヴィーガン料理(完全菜食)のはしりのよう。
後半では、忙しく仕事をしていた彼女に襲い掛かかった心臓の病。それに負けない彼女のモチベーションは文体からもひしひしと伝わってきます。
また、2011年の東日本大震災のことも綴られています。被災の復興はまさに本のタイトルのよう。仙台愛にあふれた内館牧子を感じる1冊です。
幼少期に父親の転勤により秋田で生まれ、東京で育った内館牧子。『心に愛唇に毒』では3歳まで過ごした秋田の事について書かれています。新聞に連載されたエッセイを1冊の本にまとめてあり、目次のタイトルを読むだけでも面白く、どんな話が書かれているのかと気になってくるはず。
冒頭から東京大学の新入生に向けて東大総長が話した言葉になぞらえ「秋田が自分に何をしてくれたか。ではなく自分が秋田に何ができるか。」、秋田のために何かできることはないかと考える内館。秋田には元気がないと綴っています。
この問いかけは自分たちの故郷に対しての気持ちはもちろん、社会での働き方や家庭での役割も考えさせられるきっかけになりそう。
- 著者
- 内館牧子
- 出版日
- 2012-05-17
また秋田の話題だけにとどまらず、現代の子どもの名前は読みにくいと非難されることもありますが、内館は「名前は愛情の表し」だと肯定的にとらえています。そして元横綱審議委員らしく、力士の四股名を例に挙げ、読めない名前が多いことを語ります。そしてその名前を付けられた人も自分の名前に親の愛情を感じ、名前負けしないようにと綴っているのです。
そうかと思えばレジで並んでいた時のヒトコマ、病院に入院していた時の出来事など、普段彼女が生活していて気になった事、関心を持った事なども綴られています。色々な事に興味を持ちアンテナを張ることで活力も湧いてくるのかもとさえ感じ、自分でも考えることを真似してみたくなるかもしれません。
各編どれも短く、どこからでも読める内容です。きっと続きが気になってどんどん読んでしまいたくなる一冊となっています。
内館牧子が手がけた5作品の紹介はいかがでしたか。脚本家としてのイメージが強い方も多いのではないかと思いますが、ビジネスの参考になりそうな本もたくさん出版されています。堅苦しくなく彼女らしさがあふれた内館牧子の本をぜひこの機会に読んでみてください。