那須正幹の著書おすすめ5選!「ズッコケ三人組」シリーズは定番

更新:2021.11.7

性格も見た目も全く違う三人組の少年がくり広げる、おもしろおかしい日常を描き出した「ズッコケ三人組」シリーズで知られる那須正幹。少年の心をみずみずしく描きだし、自然に読み手を引き込んでいく名作の中から、おすすめの作品を5つ紹介します。

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戦争体験を若い世代へ伝える使命感に燃える那須正幹

1942年に広島で生まれた那須正幹は、1945年8月6日、3歳で被爆しています。  少年時代は本を読むよりも外で遊ぶのが大好きだったといいますが、中学3年生の時に出会った教師に影響を受け、文学に興味を持ちはじめました。

大学卒業後は自動車のセールスマンを経て、実家の習字教室を手伝うようになるのですが、書道の心得がなかったことから、教室を継ぐことが現実的ではないと気づきます。姉に誘われるがままに広島児童文学研究会に参加したことがきっかけで、30歳での作家デビューを心に決め、それを見事に実現させました。

自身が幼少期に体験した戦争を若い世代に語り継ぎ、メッセージを送り続けている那須正幹。いくつかの作品では、物語を読み終えた読者に考えを深めてもらうことを意図して、わざとバットエンドに導いたことがあるとも語っています。

那須正幹の代表作

ズッコケ三人組は、小学6年生。やんちゃでいたずら好きのハチベエ、太っちょでのんびり屋さんのモーちゃん、読書が好きで研究熱心なハカセの三人組が、突拍子もない事件にドタバタと立ち向かっていきます。

本書は、トイレの中で勉強をする癖があるハカセがいつも通り家のトイレにこもっていると、なんと泥棒が侵入してくるというシーンからはじまります。

泥棒はまだハカセに気がついていないけど、このままだと逃げられない……その時ハチベエとモーちゃんがハカセの家の横を通りました。ハカセはトイレットペーパーにメッセージを書いて、ふたりに何とか伝えようとしますが……。

著者
那須 正幹
出版日

「ズッコケ三人組」シリーズの1作目で、合わせて5つの短編が収録されています。万引きをした年上の女の子たちを懲らしめる話や、同じクラスのかわいい女子を自作のオバケで怖がらせる話など、ひとつひとつが完結しているのでアニメを楽しむように活字の面白さを味わうことができます。

難しい漢字にもフリガナがふってあるので、小学校の低学年からでも読むことができるでしょう。

那須正幹が描く思春期の少年たち

この作品は、冒険を夢みて大海原に乗り出すべく、船を造る少年たちの物語です。小学校6年生の少年たちは日ごろから秘密基地としていた小屋に廃材などを持ち込み、一心不乱に船を造っていきます。彼らはそれぞれ家庭の不和や愛情不足などの問題を心に秘めながらも、船を造りあげるという目標に向かってまっすぐに進んでいくのです。

大人に黙って続けていた船造りでしたが、台風が近づいたある日、ひとりの少年が台風から船を守ろうとして波にのまれてしまい、大変なことに……。

著者
那須 正幹
出版日
2010-06-10

登場する少年たちは、生まれながらの経済的な格差や、愛情への割り切りなど、現実を飲み下しながら生きています。児童文学という位置づけをするにしては大人びた子ども達のように感じるかもしれませんが、子どもから大人になるはざまで、揺れ動く少年たちの姿そのものなのかもしれません。

表紙のイメージからは牧歌的な少年の冒険ストーリーを予想させますが、その内容はかなりシビアな面を含んでいます。ラストは予想を裏切る展開が待っていて、胸がすくような気分を味わえるでしょう。強くなろうとする少年たちを応援したくなるような作品です。

久々の再会が懐かしくてうれしい

「ズッコケ三人組」シリーズでお馴染みの少年たちが、時を経てなんと40歳に。大人になった彼らは、再び騒動に巻き込まれていくのです。

ハチベエはコンビニエンスストアの店長になっていて、すでに家庭を持ち2児の父になっています。ハカセは大学院で修士課程を修了しながらも就職難で希望の職に就けず、母校の社会科教諭になっていました。そしてモーちゃんは、勤め先の倒産などがあってフリーターという驚きの状態から物語はスタートします。

著者
那須 正幹
出版日
2015-12-04

三人組が子どもだったころのシリーズのファンにとってみれば、同窓会で懐かしい友人と再会したような気持ちになるかもしれません。

小学生だった彼らは次から次へと面白おかしい事件に巻き込まれていましたが、40歳になった彼らも同じように難事件に力を合わせて立ち向かっていきます。

笑いあり、涙あり、彼らとともに子ども時代を過ごした全ての大人に読んで欲しい、珠玉の一冊です。

那須正幹の生々しい戦争体験が心に刺さる

この作品には幕末の戊辰戦争から沖縄戦に至るまでの、少年兵たちの姿が淡々と描かれています。彼らは皆10代前半という若さで、戦争という大きな歴史の波に押し流され、命令のとおり必死で戦い、命を奪われてしまうのです。

家庭の事情や、戦争をビジネスととらえる親の手によって戦場へと駆り出された少年たちの姿を知るにつれ、胸が苦しくなるような感覚に陥るかもしれません。主人公の少年たちは大人の背中を追いかけ、手に取った武器で人を傷つけ、傷つけた自分自身におののきます。

著者
那須 正幹
出版日
2016-05-21

無力な少年たちが大人の始めた戦争に巻き込まれ、戦いを余儀なくされる姿が見ていて痛々しく、目をふさぎたくなるようなシーンもあります。しかしそれを見つめることが、幼いころ実際に戦争を体験した那須が伝えたいことを見つめることに繋がります。

戦争が起きた時代、なぜ少年までもが大人と同じように武器を取らなければいけなかったのか。その時代の人々の考え方や、現実に起きた凄惨なでき事をリアルに感じる事ができ、教科書を読むだけでは手に入らない貴重な体験をすることができるでしょう。

子供にも親にも読んでほしい那須正幹の作品

この物語の主人公ヨースケ君は、ミニ四駆とゲームが大好きで、学校の授業では体育が苦手。どこにでもいるような小学5年生の男の子です。

しかし、マラソン大会でビリになったらどうしよう、父親がリストラされたらどうしようと、小学生なりにいろいろと考えているのです。

著者
那須 正幹
出版日

ヨースケ君は日々、自分を取り巻く情景を眺めながら頭の中で考えを巡らせています。彼視点の描写は美しく、臨場感も味わえ、彼と同年代の子供たちは読んでいて共感できることが多いでしょう。

平凡だけど思慮深いヨースケ君は、誰もが友達になりたいと思うような魅力があります。彼の頭の中が手に取るようにわかる内容なので、小学生の子供の考えていることがわからず頭を抱えている親にも読んで欲しい一冊です。

おもしろおかしい内容のものから、目をそむけたくなるような恐怖の戦争体験まで、幅広いテーマの作品を世に送り出している那須正幹。たくさんの作品の中にキャラクターたちの個性が息づき、どれも読んだ人の心に残るものばかりです。読書感想文のテーマにもピッタリの作品が多いので、若い世代にぜひ読んで欲しいです。

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