谷甲州のおすすめ小説5選!SFものや山岳小説などを手掛ける作家

更新:2017.7.22

本格的な推理小説や、ハードSF小説で、ファンから高い評価を集めている小説家・谷甲州。独特な経歴を活かし、人気の山岳シリーズも手掛けるなど、多彩な実力を持っている実力派として、活躍を続けています。

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推理にSF、そして山岳…多ジャンルに渡って高い実力を発揮する小説家谷甲州

谷甲州は、工学部出身の所謂理系小説家です。土木工学科を卒業したあと、建築会社で働き、その後は青年海外協力隊のメンバーになり、ネパールで過ごしていました。当時から小説執筆は進めており、『137機動旅団』で小説家デビューを果たしたそのときも、ネパールで在勤中だったのです。

その後数編の掲載を挟み、1981年には、自身初の単行本である『惑星CB-8越冬隊』が刊行されます。冒険小説とハードSF小説を組み合わせた独自のスタイルは、デビュー間もない新人にして、その完成度の高さが、各所で大きく話題になりました。以降は、確立された世界観が魅力のSF系のシリーズ作品や、豊富な海外経験を活かした山岳冒険小説などを多数発表していきます。

また谷甲州は、『日本沈没』の執筆プロジェクトにも参加しました。前述したネパールのほかにも、国際協力事業団プロジェクトの調整メンバーとして、フィリピンに勤務していた経験もある谷甲州は、その経歴と執筆力を評価され、当時すでに老齢となっていた小松左京の後を継いで、第二部を担当することになったほどです。


その多彩な作家性を活かし、日本推理作家協会会員、宇宙作家クラブ会員、ハードSF研究所客員、日本推理作家クラブ会員にもなっています。非常に豊富な谷甲州の作品の中から、特にチェックしておきたい5作品を、ピックアップして紹介しましょう。
 

土木建築をテーマに挙げた宇宙開拓の物語

全7話の短編から構成されたシリーズ作品集となっています。刊行は2013年ですが、収録された作品のうち、最も古い「コペルニクス隧道」は、1988年初出のもの。「極冠コンビナート」「熱極基準点」までが続けて掲載されながらも、掲載雑誌『小説奇想天外』の休刊により、凍結されてしまっていたシリーズの待望の完結作となっています。

月の地下交通トンネルや、火星の与圧ドーム、彗星の射出軌条や木製の浮遊工場など、太陽系の開発現場が舞台の作品たち。最悪の事故を回避するため、持ち得る知恵と技術、そして人類ならではの勇気を振り絞って、技術者たちが立ち向っていく物語です。

著者
谷 甲州
出版日
2013-09-26

谷甲州の手掛けるハードSFの世界が、これでもかというくらいに繰り広げられている一冊となっています。メインテーマである宇宙土木とは、建築工学を学び、土木会社で働いた経験のある谷甲州だからこそ描けたものだと言えるでしょう。宇宙という非現実的な世界と、土木建築というリアルな題材が、絶妙なバランスで組み合させている傑作です。

宇宙開拓ストーリーという、SFでは王道のテーマではありますが、そこに土木建築というテイストを取り入れることで、唯一無二の仕上がりになっています。新しい世界を作り上げていく人々の、ヒューマンドラマにも注目です。
 

極寒のヒマラヤを舞台にした山岳冒険小説

登山家の滝沢は、マナスル登頂を目指すチームの隊長になるよう依頼されます。しかしその依頼は穏やかなものではなく、正体不明の男からの脅迫でした。やむなく登山隊に加わったものの、出発したチームの雰囲気はどこかおかしく、やがてその正体が、チベットゲリラの部隊だったことが明かされます。  武装を施した登山チームは、いったいどこに向かおうとしているのでしょうか?極寒のヒマラヤにおいて、数々の陰謀と策略が交錯します。衝撃の展開に、思わず手に汗握ってしまうこと間違いなしでしょう。
 

著者
谷 甲州
出版日

本作は、普段ハードSFで人気を博している谷甲州の「山岳」シリーズの一作として、高い注目を集めました。一方で、このミスで第4位を獲得した作品として、ミステリー要素もふんだんに取り込んだ、極上の一冊となっています。淡々とした筆致ですが、迫真の展開内容は濃密です。

登山に興味がある人や、山岳ものが好きな人はもちろん、これまで谷甲州のファンだったSF読みにとっても、かなり興味深い一冊となっているでしょう。誰もが知っている地名から、マニアックな登山用語まで、幅広い層をターゲットにしており、ぐんぐん物語の中に引きこんでくれます。

前作から22年ぶり!ファン待望の人気シリーズ続刊

谷甲州が手掛ける、大人気の「宇宙航空軍史」シリーズにおいて、22年ぶりに刊行された新作として、大きな話題を呼んだ一冊です。その圧倒的な軍事力によって太陽系を制圧していた「航空宇宙軍」からの独立を求め、外惑星連合が戦った動乱から既に40年が経過した世界。第二次外惑星動乱が引き起こされるまでの、それぞれの物語が綴られています。

徹底された技術考証を感じさせる、リアリティ溢れるメカニック事情と、戦争にまつわる人々のドラマが丁寧に描かれた大作です。二つの大きな戦争の合間を舞台にし、技術の進化と破壊を、一見何の変哲もない登場人物の視点で作り上げています。

著者
谷 甲州
出版日
2017-06-22

本作はSF大賞を受賞した傑作です。谷甲州らしい硬質な文体と精緻な状況描写力で、すぐそこで物語が巻き起こっているような気分に浸ることができるでしょう。動乱の間をピックアップした作品ですが、大きな戦争が起きていなくても、そこでは確かに人々の物語が生まれ続けているのだということを知ることができます。

ハードSFのファンには、とにかくたまらない一冊のはずです。シリーズ前作を知っている人はもちろんのこと、本作を皮切りに、逆から作品群を楽しむのも名案かもしれません。
 

実在した登山家をモデルにした山岳作品

実在した登山家・加藤文太郎をモデルに、その生涯を描いた山岳小説です。大正から昭和にかけてを舞台に、当時あり得なかった山岳ガイド無しの一人登山を次々と成し遂げた勇敢な登山家について、史実をもとに構成しています。冬の北アルプスを駆け巡った、伝説の登山家の物語なのです。

冒頭は、槍ヶ岳北鎌倉尾根にひとりで向かっていく加藤の姿を描いています。史実の彼は、その後行方不明になってしまうのです。書き手の山岳小説のファンは、そのルーツを知るためにも、是非チェックしておきたい作品でしょう。

著者
谷 甲州
出版日
2013-04-25

『遥かなり神々の座』や『神々の座を越えて』、『ジャンキー・ジャンクション』などが、山岳冒険小説として高い評価を集めた頃に刊行された一冊です。構想にはなんと35年の歳月が費やされたそうなので、満を持しての発表だと言えるでしょう。

自身でも本格的に登山に取り組み続けてきた谷甲州が、20代のころに出会い、多大な影響を受けたという加藤文太郎をモデルとした作品となっています。山岳部の記録や会報を大量にチェックして完成させたことで、実際の登山シーンの手に汗握る展開は圧巻です。

登山作品を集めた傑作短編集

山岳小説6作品をまとめた短編集です。そのうち5作品は、とある登山家をめぐる連作短編となっており、主人公は、実在の登山家・加藤文太郎をモデルとしています。

表題作である「白き嶺の男」では、後輩登山家に良いところを見せようと、かえって無茶をしてしまい、むしろ後輩に助けられる羽目になってしまう主人公を描きました。「沢の音」は、この連作のもうひとりの主人公である久住が登場するストーリーで、「ラッセル」は、登山家ならではの方法で、亡くなった人を弔う作品です。ほかに「アタック」「頂稜」「七ツ針」を収録しています。
 

著者
谷 甲州
出版日

本作は、1996年には新田次郎文学賞を受賞しています。知力と体力を限界まで振り絞った男性たちの物語が、短編という手に取りやすい形でまとまっているのも、魅力的な一冊だと言えるでしょう。もちろん、ひとつひとつの物語はとても濃密なので、読み応えもたっぷりです。


 

そして本作では、登山家の加藤文太郎をモデルにした人物が登場しており、谷は、そののち加藤の史実をもとに構成した作品『単独行者』を発表しています。彼をフィクションの世界に反映したという意味でも、谷甲州にとって重要な登山小説だと言えるでしょう。

いかがでしたか?谷甲州の作品は、どれもが魅力的で、血の通った力強さを持っています。ハードSFでも登山ものでも、あなたが気になった作品のすべてを、是非手にとってください。

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