玉岡かおるは兵庫県三木市出身の小説家です。大学卒業後2年間教職に就いたのち、子育て中に書いた『夢喰い魚のブルーグッドバイ』で小説家デビューをしました。コメンテーターとしてテレビ出演などもしており、マルチな才能を持つ作家として活動しています。
玉岡かおるは、兵庫県の三木市に生まれました。大学卒業後は中学校の教師として2年間勤務し、その後文筆業に転身します。子育て中に書いた『夢喰い魚のブルーグッドバイ』で神戸文学賞を受賞しました。玉岡かおるの小説の特徴は、歴史ものを背景に、その時代の女性の活躍を描いている作品が多いことにあります。
近年では『お家さん』が実写化され話題になりましたが、女性の目を通してその時代を切り取り、繊細に描くところが、玉岡の小説の魅力です。またコメンテーターとしてもテレビに出演しており、メディアへの露出の多い彼女は注目すべき女性小説家のうちの一人であるといえましょう。
本書は玉岡かおるが得意とする、女の一生にフォーカスをあてた長編小説です。1910年の10月、播州は播磨平野のある村では実りの季節とともに嫁入りが相次いでいました。
大地主である青倉家の長女であり、明石の女子師範学校に通う17歳の柚喜が、幼馴染のハルの嫁入り姿を見るために帰省する場面から物語は始まります。長女である柚喜や妹の佐喜、母の津多を通して、男尊女卑の時代のなかを、一人の人間として力強く生き抜いていく女性が描かれているのです。
- 著者
- 玉岡 かおる
- 出版日
この物語は明治末という時代を背景に、「女性の自立」という大きな社会的なテーマに立ち向かう女性たちを描いた長編小説です。一人一人の女性が織りなすそれぞれの物語は、現代においても、男女の差異と社会制度の整備について考えさせられる作品となっています。
加えて、当時の農政や播州の風習など、兵庫県出身の玉岡かおるならではのエッセンスがちりばめられていて、時代小説としても大変面白く、ためになる小説です。
本書も、先ほどの『をんな紋 まろびだす川』と同様、明治時代の物語となっています。しかしこちらの物語の舞台は、なんとアメリカです。旧姫路藩の家老の姫君の身代わりとして、下働きの少女、酒井美佐緒は留学の船に乗せられます。
船酔いと厳しいしつけの日々の中、運命の男性・光次郎と出会い、時が経った上陸後に再会することとなります。二人は惹かれあいますが、姫君の身代わりとして出会ったオーストリア子爵家の血を引くマックスからの求婚を受け、美佐緒は二度と日本に戻らぬ覚悟でオーストリアへ嫁いでいくことになるのです。
- 著者
- 玉岡 かおる
- 出版日
- 2005-12-22
この物語は、いささか大げさな設定であるものの、王道のシンデレラストーリーの構造を持っています。出自の卑しい少女が身代わりとして米国へ送られ、身分を隠している罪悪感と葛藤しながらも、良家の子息に見染められ、その世界の中で成功を収めていくストーリーです。
成長した美佐緒と光二郎の、超えられぬ立場の中で揺れ動く心境を、女性らしい鋭い筆致で描き出しています。
玉岡かおるは、本作で織田作之助賞を受賞しました。天海祐希の主演でテレビドラマ化されるなど、話題となった作品です。明治から昭和にかけて実在した貿易商社である「鈴木商店」の女主人・よねと、その大番頭・金子直吉をモデルにした小説となっています。
神戸の洋糖輸入商であった鈴木商店を、よねと直吉の力で世界的な貿易企業として発展させていく姿を辿った物語として、時代小説としても経済小説としてもすぐれた作品です。
- 著者
- 玉岡 かおる
- 出版日
- 2010-09-01
本書の魅力は、当時としてはまだ珍しかった女性の経営者が幾多の困難を乗り越えながら鈴木商店を日本一の貿易商社として発展させていくところにあります。
よねの一生を通して、当時の風俗や社会情勢、そして女性の権利の拡大を描いたこの作品は、感動の長編です。金子直吉に興味を持たれた方は、城山三郎の『鼠 鈴木商店焼打ち事件』もあわせて読んでいただくと、作品をより深く味わえるかもしれません。
舞台は明治時代の但馬、生野銀山です。そこで働く孤独な坑夫・雷太と、東京帰りの名刺の娘・咲耶子、町一番の美貌を持つ芸伎・芳野、気立ての良いまっすぐな気性の女中・志真。彼女たちと雷太を通して、明治に生きる女性たちの姿を描いた名もなき人々の大河ロマン小説です。
三人の女たちのそれぞれの生き方と悲哀、時代や男に翻弄されながらもたくましく生き抜く女たちを描いた玉岡ならではの作品となっています。
- 著者
- 玉岡 かおる
- 出版日
- 2011-08-28
本書の魅力は何といっても人間の悲哀を描いた小説として、ただの恋愛小説でない人間の奥底に隠された欲望や悲しみ、そして愛を浮かび上がらせている点にあるといえましょう。
三人の女と一人の男の交情と夢、そしてそれぞれの生きざまを描き出すことによって、これまでの玉岡の小説には書かれなかったエッセンスがたくさん詰まっています。
玉岡の鋭い時代に対する視点と女性の逞しさ、尊さを描き出す筆力が存分に発揮されている作品です。王道でない分、ハマる人の多い作品といえるでしょう。
本書は、建築家、伝道者、事業家、教育者など多くの顔を持ち、メンソレータムを日本に普及させるなどの功績を残したヴォーリズの、その妻となった華族出身の女性、一柳満喜子の一生を描いた大作ロマンです。
華族に生まれた満喜子は複雑な幼少期を送っていました。華族出身にありながら平民と同じ女学校に通い、キリスト教の精神を学び、神戸女学院では音楽を学びます。乳兄弟の佑之進との恋に破れた満喜子は傷心の中アメリカへと留学しますが、波乱の人生がそこにはまっているのでした。
- 著者
- 玉岡 かおる
- 出版日
- 2014-07-28
この作品でも玉岡は、得意とする女性の目線で、その一生を詳細に描き上げます。人それぞれが持つ葛藤や、理想のためにもがく姿から、唯一の信念を持った様子を描きあげることに成功しています。
特にこの物語においても、封建的で荒廃した旧華族の家庭で育った少女が、激動の時代の中を強くたくましく生き抜いてゆくというテーマで、登場人物たちが生き生き作中を飛び回っています。玉岡の真骨頂といってもいい小説です。
いかがでしたでしょうか。玉岡かおるの小説は、封建的な時代の中、強くその時代を生き抜く女性の姿を追うことで、女性の強さであったり女性の一生の喜びや悲しみを描き出すことを得意としています。ぜひ、気になった方は一読をおすすめいたします。