かゆいところに手が届くことばの本

かゆいところに手が届くことばの本

更新:2021.12.13

言葉を使って、いったいどのくらいのことを表すことができるのか。誰かと何かを共有したい時には言葉を使うのがとても便利です。だけど、この感覚やこの気持ちを何て言っていいのかわからない。そんなことってよくあります。詩やうたがあったら、そんな普段なかなか触れられない領域まで届くかも知れません。かゆいところに手が届く言葉ーー。今回はそんな本を、詩集を中心に5冊おすすめします。

ブックカルテ リンク

十八歳

著者
["谷川 俊太郎", "沢野 ひとし"]
出版日
谷川俊太郎さんの、詩への出発点であるという2冊のノートから、沢野ひとしさんの繊細な、絵とともにまとめられた詩集。言葉と絵を交互に見て、詩と絵っていうものはとても近いのだなぁと思います。

例えば「かなしみ」という詩が私は好きなのですが、“水素爆弾の記事のとなりに 雛祭りのことがのっていた”(本文より)。言葉にできないと思っていた種類のかなしみを、こうして鮮やかに見せてくれていたりします。谷川さんの最初期の作品を纏めたものでもう1冊、『二十億光年の孤独』という詩集があるのですが、「十八歳」はそれと同じ時期の同じノートから収録されているそう。

寺山修司青春歌集

著者
寺山 修司
出版日
演劇、詩、映画などたくさんの分野で活動していた寺山修司さんのいくつかの歌集が文庫にまとめられたものです。短歌集なので、殆ど57577のリズムで読めて馴染みやすいはず。読む時には視覚だけでなく嗅覚も使いますから、五感が研ぎ澄まされるとはこのことです。

“日あたらぬ せまき土地にて 隔てられ 一本の樹とわが窓親し”。
湿った匂いを感じたり……。
“見えぬ海 かたみの記憶 浸しゆく夜は抱かれていて遥かなり”。
景色が見えたりします。

どこから読んでもいいと思うのです、気まぐれに開いたページから読んでみてほしいです。

中原中也詩集

著者
中原 中也
出版日
1981-06-16
“汚れつちまつた悲しみに……”という有名な詩があります。どこで聞いたんだか忘れてしまったけど、何故だかその一節を覚えていました。この本は、その詩を書いた中原中也さんの詩集です。もちろんこちらも収録されています。

「夏の夜に覚めてみた夢」では、幼少のいつかの記憶にもなっていないような感覚をふいに呼び覚まされたり、「死別の翌日」では、人の死に対面した翌日の感覚を過不足なく言い当てられ、暴露されたりします。“卑怯にも似た感情を抱いて私は歩いていたと告白せねばなりません”(本文より)。そして、人とはそういうものなのだと罪悪感を拭われた気持ちになったりもします。

ランボオ詩集

著者
出版日
2013-08-21
フランスの詩人ランボオの訳詩集。そして、この本の訳者は前述した詩人、中原中也さん。信頼している詩人が訳したとなると、読み手としては安心して読めるというものです。「七歳の詩人」という詩では、出てくる七歳の少年の気分をまるで至近距離から眺めている、もしくは本人に立ち変わって、感じ取っているような気持ちになりました。

そして、この本の言葉を読んでいる時には、自分が普段属しているものや、これまで生きてきたこと、周りの人との関係をすっかり忘れてしまう。そんな透明な気分になれる詩集だと、思うのです。

詩ってなんだろう

著者
谷川 俊太郎
出版日
詩人である谷川俊太郎さんが、詩について感覚的にわかりやすく教えてくれている「詩の見取り図」。本を開いて最初にでてくるのは「いない いない ばあ」というわらべうた。これも詩なのかぁ、と半信半疑ながらも読み進めていくのですが詩の種類や変遷が、並んでいる詩達をよんでいくと難しくなくだんだんわかってきます。

詩ってなんなのか、私も説明なんてできませんが、詩ってなんですかっていう問いかけに詩そのものを見せて感覚的に味わってもらうっていう方法は、とても画期的だなぁと思うのです。“詩ってなんだろう、というといかけにこたえたひとは、せかいじゅうにまだひとりもいない”(本文より)。

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