十八歳
谷川俊太郎さんの、詩への出発点であるという2冊のノートから、沢野ひとしさんの繊細な、絵とともにまとめられた詩集。言葉と絵を交互に見て、詩と絵っていうものはとても近いのだなぁと思います。
例えば「かなしみ」という詩が私は好きなのですが、“水素爆弾の記事のとなりに 雛祭りのことがのっていた”(本文より)。言葉にできないと思っていた種類のかなしみを、こうして鮮やかに見せてくれていたりします。谷川さんの最初期の作品を纏めたものでもう1冊、『二十億光年の孤独』という詩集があるのですが、「十八歳」はそれと同じ時期の同じノートから収録されているそう。
寺山修司青春歌集
演劇、詩、映画などたくさんの分野で活動していた寺山修司さんのいくつかの歌集が文庫にまとめられたものです。短歌集なので、殆ど57577のリズムで読めて馴染みやすいはず。読む時には視覚だけでなく嗅覚も使いますから、五感が研ぎ澄まされるとはこのことです。
“日あたらぬ せまき土地にて 隔てられ 一本の樹とわが窓親し”。
湿った匂いを感じたり……。
“見えぬ海 かたみの記憶 浸しゆく夜は抱かれていて遥かなり”。
景色が見えたりします。
どこから読んでもいいと思うのです、気まぐれに開いたページから読んでみてほしいです。
中原中也詩集
“汚れつちまつた悲しみに……”という有名な詩があります。どこで聞いたんだか忘れてしまったけど、何故だかその一節を覚えていました。この本は、その詩を書いた中原中也さんの詩集です。もちろんこちらも収録されています。
「夏の夜に覚めてみた夢」では、幼少のいつかの記憶にもなっていないような感覚をふいに呼び覚まされたり、「死別の翌日」では、人の死に対面した翌日の感覚を過不足なく言い当てられ、暴露されたりします。“卑怯にも似た感情を抱いて私は歩いていたと告白せねばなりません”(本文より)。そして、人とはそういうものなのだと罪悪感を拭われた気持ちになったりもします。