高尾滋おすすめ漫画ベスト5!優しい絵柄でほっこりする『ディアマイン』

更新:2021.11.7

高尾滋(たかおしげる)は、埼玉県出身の女性漫画家です。その柔らかなタッチの絵柄と、少女漫画らしい繊細な登場人物たちの心の揺れ動きを描いた作風はデビューから現在まで根強いファンを獲得しています。

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高尾滋とは

高尾滋は1996年、『人形芝居』で花とゆめまんが家コース優秀賞を受賞し、同年に『不思議図書館』でデビューしました。

1998年には『人形芝居』の続編で白泉社アテナ新人大賞デビュー優秀者賞するなど、『人形芝居』を自身の代表作としていきます。この『人形芝居』は不定期連載ではあるものの、10年以上続く人気シリーズとなっています。

2000年代に入ってからも、2000年に発表した『ディアマイン』、2001年に発表した『てるてる×少年』がドラマCD化するなどヒット作を連発していきます。特に『てるてる×少年』は作者最長の連載期間となり、作者の代表作の1つになりました。

そんな高尾滋作品の魅力は、柔らかいタッチで描かれた絵柄と、「大人びたたくさんの顔の下にかくしているの?」(『ディアマイン』より引用)、「咲十子が俺達の気持ちを決める必要なんてないんだよ!」(『ディアマイン』より引用)といった、独特ながら心に残る名言の数々。

今回はそんな心に残る漫画家、高尾滋の、おすすめ作品をご紹介していきたいと思います。

5位:人形と機械との関係を描く『人形芝居』

2800年代の西東京は、砂漠に覆われた大地となっていました。そんな地にあるのが、嵐と静かという双子の人形師が営む人形の館。そこでは喜怒哀楽を持つアンドロイド「子供型機械人形(チャイルドタイプアンドロイド)」を作り出していました。

そんな人形師の2人と、彼らの作り出す人形、そして依頼主との間の関係を描いたオムニバスです。

著者
高尾 滋
出版日

高尾滋の実質的なデビュー作であるとともに、10年以上もの間不定期ながら連載を続けている代表作でもあります。嵐と静という、全編に通して登場する語り部こそいるものの、1話完結の短編で構成されているのでどこから読んでも楽しむことができます。

数百年後の砂漠と化した東京、アンドロイドと人間の関係性というSFチックな舞台設定ながら、家族愛や恋愛など現代にもありふれたヒューマンドラマを描いていて人気の高い作品です。

特に2008年に発売された最新刊(2017年7月現在)である3巻は、人間とアンドロイドの間に生まれた愛情をテーマに描かれています。

特に、お互いに想い合っていながらも、愛しているからこそ一生一緒にいられないということを解っているがゆえに離れ離れになることを選ぶ3巻2話は、その相手を思いやるからこそ悲劇的な結末に着地する展開で涙を誘います。

4位:高尾滋の描くひとつ屋根の下ラブコメ『いっしょにねようよ』

宇佐見一子は、過去の出来事から幼児を見ることができなくなった15歳の女の子。同居していた姉夫婦の家を飛び出した一子の前に現れたのは、お面を被った謎の少年、古白。

そんな古白に一子が連れてこられたのは、心にトラウマを抱えた人々が同居している家。だからこそ、住人達は一子に温かく接し、一子はここでトラウマを克服していくことになります。

一子を連れてきてくれた古白との関係はどうなっていくのでしょうか。

著者
高尾 滋
出版日
2008-11-19

「幸せを望む事は罪じゃない。毎日幸せだっていいんだよ。」というセリフからも察せられるように、トラウマを抱えた主人公たちがそれを乗り越え、幸せになっていく物語です。

ひとつ屋根の下ラブコメという、非常に古典的でベタな設定ですが、登場人物たちの抱えるトラウマや、上記のような高尾滋の醍醐味でもある心に刺さるセリフ回しが読みごたえを与えています。

誰かを好きになることを幸せだというのであれば、それを願うのは罪ではないという人間賛歌に溢れている本作。各々の登場人物に与えられたバックボーンこそ重たいものがありますが、それを補って余りある愛と幸福感に溢れた作品です。

3位:淡いBLを描いた『ゴールデン・デイズ』

幼いころの誘拐事件をきっかけに異常なまでの過保護になってしまった母に辟易としている主人公、相馬光也の唯一の心の拠り所は、現在は入院している祖父の相馬慶光。

しかしある夜、慶光の容態が急変してしまいます。その知らせで病院に駆け付けた光也ですが、そこで地震が起こり光也は意識を失ってしまいます。意識を取り戻した光也が見たのは、自身のことを「慶光」と呼びながら殴り掛かってくる青年、春日仁と大正10年の東京の街並みでした。

地震の前、後悔していることがあると語った慶光の後悔とは何なのか、またなぜ光也は過去にタイムスリップしてしまったのか。光也の送った、輝かしい大正時代での青春が描かれる漫画です。

著者
高尾 滋
出版日
2005-11-18

大正時代に、瓜二つの慶光としてタイムスリップしてしまった主人公の光也と、慶光の友人であり後悔の元でもある仁との友情を描いた、微BL作品とでもいったテイストになっています。

掲載元である白泉社の「花とゆめ」は男女間の恋愛を描ている作品がほとんどなので、男子同士の淡い恋愛を描いた『ゴールデン・デイズ』は非常に話題になり、また人気を獲得しました。高尾滋はツイッター等でBL好きを公言しているので、作者の趣味が押し出された作品と言えるでしょう。
 

またこの作品は高尾の絵柄が非常に安定しているという点でも評価が高い作品です。柔らかなタッチの、性描写がきつくないBL作品を読んでみたいという方にはおすすめです。

 

2位:オリエント急行を舞台にしたミステリー風味作品『マダム・プティ』

主人公の青山万里子は16歳ながら、父親の残した借金の返済の帳消しを条件に、30歳年上の青山俊と結婚をすることになります。しかし小さい頃から憧れていた俊との結婚に喜ぶ万里子。

そんな万里子に、俊は新婚旅行としてパリへの旅行を用意してくれました。パリからオリエント急行に乗る2人。そこで万里子はインドの貴族ニーラムを紹介されます。そしてその翌日、俊は遺体となって発見されてしまいました。

しかしそんな俊の殺人は、俊やその友人らによって計画されたもので、俊は実は生きており、彼は愛していた他の女性と駆け落ちしていたのでした。楽しい旅行は一転、いきなり「未亡人」となってしまった万里子の新婚旅行はどうなってしまうのでしょうか。

著者
高尾 滋
出版日
2012-10-19

オリエント急行が主な舞台であることから、出発前に乗務員が食料を点検する様子や、列車が雪で動かなくなるシーンなど、アガサ・クリスティーの名作ミステリー『オリエント急行の殺人』のオマージュが随所に見られる作品です。

舞台であるオリエント急行やフランスの描写も非常に丁寧に描かれているので、まるで本当に旅行に行っているかのような没入感を得ることができます。

また舞台が1900年代なのですが、出てくる女性がみんな一様にパワフルで、主人公も女性ながらミステリー仕立ての冒険活劇のようなわくわく感も味わうこともできる作品です。

 

ちなみに2017年7月現在で既刊9巻ですが、初期の構想としては1巻で完結させるつもりだったそうです。

 

1位:優しい作風と名言が光る『ディアマイン』

母と2人でつつましく幸せに暮らしていた女子高生の倉田咲十子。しかしある日咲十子が帰宅すると、母はいなくなっていて、代わりにスーツ姿の青年が姿を現します。

彼は母親の会社が潰れてしまったこと、連帯保証人として1億円もの借金を背負う羽目になったこと、しかし母の知人である社長令息が借金の肩代わりを申し出ていること、その社長令息が咲十子の許嫁であること、などを説明し咲十子をお屋敷に連れていきます。

そこで咲十子が出会った許嫁は、わずか10歳の男の子である和久寺風茉(わくでらふうま)でした。咲十子はこれからどうなってしまうのでしょうか。

著者
高尾 滋
出版日

上述のように「大人びたたくさんの顔の下にかくしているの?」、「咲十子が俺達の気持ちを決める必要なんてないんだよ!」(『ディアマイン』より引用)などといった、少し独特なセリフ回しが特徴的な作品です。

また主人公の許嫁は10歳と非常に若く大人びている風茉ですが、それでも年相応に子どもらしいところもあり、咲十子との歳の差に悩むなど可愛らしい少年です。その子どもっぽさと大人らしい面のバランスが絶妙で、とても大人びた10歳とは思えない発言をしたかと思えば、子どもらしい少しわがままな一面も存在する風茉。

いわゆる「おねショタ」的漫画となっている作品であり、2000年にこのようなジャンルを描いていた少女漫画作品は無いのではと思われ、しかしながら主人公たちの心の動きが繊細に描かれるなど純粋な少女漫画としての面白さもきちんと兼ね備えており、そのセリフ回しと相まって非常に中毒性がたかい作品となっています。

いかがだったでしょうか。さまざまな作品が優しさに溢れており、また作品の設定で斬新さを見せつけることもある漫画家、それが高尾滋です。ありきたりな設定の少女漫画にはもうあきたという方は、高尾作品を読んでみると面白いのではないでしょうか。

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