大人になった今、ゲームをやることの意味が改めて見出せるオススメ漫画

「ゲーム」というコンテンツに昔ほど夢中になれなくなってきている自分がいます。

年齢の所為でしょうか。自分はそんな大人にはなるまいと思っていたのに。

人生はロールプレイングゲームに例えられることがあります。

壁を乗り越え、経験値とお金を稼ぎ、武器を買い、また新たな壁に挑む。

そのルーチンが上手く回り始め、リアルがフィクションに負けないくらい楽しくなってきた時、人はゲームを離れるのではなかろうか。つまり俺は今リア充……なんてポジティブに考えたりしています。

とはいえ今まで夢中になれたものが一つ消えていく感覚に、寂寞を感じる今日この頃なのです。

あっ、「ドラゴンクエスト」は僕のゲーム人生の原点なので別です。

「やって何の意味があるの?」と問われれば言葉に詰まる不思議な遊び、ゲーム。一歩引いて見れるようになった今こそ、意味を見出せるのではないか。

「ゲーム」を題材にした3作品、逆にマジメにご紹介。

ハイスコアガール

著者
押切 蓮介
出版日
2012-02-25
己の趣味にも真剣になれん奴は 何をやっても駄目よ

1991年。日本を席巻した未曾有の格ゲーブーム。今日も今日とてゲームセンターに通う小学6年生・矢口ハルオは「ストリートファイターⅡ」の対戦で一人の強敵と出会う。クラスメイトの大野晶。成績優秀でお嬢様な彼女は実は凄腕のゲーマーでもあった。落ちこぼれの意地にかけて彼女を憩いの場から追い出すために、ハルオはハメ技を使ってまで勝とうとするが……。

恋に趣味に真剣勝負な少年少女を描いた、アーケードゲームが紡ぐラブコメディ。既刊7巻、現在連載中。

このマンガの最も素晴らしいところは「キャラの魅力」だと思います。

ゲーマーらしくストイックなのに他人には優しいハルオの格好良さ。

ゲームは超人的に上手いのに恋愛には奥手な晶の可愛らしさ。

彼らの関係が遅々として進展しないのにヤキモキしながら読むのが最高に楽しいマンガです。

1992年生まれの僕にとっては知らないゲームの話も多いのですが、それでも登場人物の「真剣」さに引き込まれていきます。非紳士的なハメ技にマジギレし、1クレジット(50円)で可能な限り遊び倒さんと情熱を燃やす少年少女。この「一見しょーもないことに命を賭ける姿勢」は誰もが子供時代に経験し、そして年齢を重ねるにつれて忘れていくもの。年代を超越したノスタルジーを体感できるこの作品、ゲームに疎い方も是非読んでみて欲しい。

87CLOCKERS

著者
二ノ宮 知子
出版日
2012-04-10
「オーバークロック」は処理能力を競うパソコン界のF1!!
難点は日本ではよく知られていないことだが

ヴァイオリンが弾けるという理由で音大に進んだものの、さしたる目標もなくボンヤリ生きてきた大学生・奏。彼はひょんなことから知り合った美女・ハナに一目惚れしてしまい、初めて胸に熱い衝動を感じる。

しかし彼女はOC……つまりパソコンの処理速度を競う競技「オーバークロック」のマニアであり、その世界ランカー・MIKEにこき使われる助手だった。不遇な扱いを受けるハナを解放すべく、奏はOCの世界で頂点を獲ることを決意する。

『のだめカンタービレ』の二ノ宮知子が描く、「オーバークロック」を題材にしたラブコメディ。9巻完結。

あらすじからして何を言っているか分からない感はありますが、この意味不明さこそ当マンガの魅力。かく言う僕とこの作品の出会いも「パソコンに液体窒素を垂らし続けるマンガがヤングジャンプで連載している」という知人の意味不明な紹介が琴線に触れたからです。つまり人間は「よく解らないもの」に自然と惹かれるのです。

パソコンの発熱を抑える究極の方法として「PCを液体窒素で冷やす」という、我々には馴染み無い行為が中々にシュールで、真剣なシーンと絵面のギャップがクセになります(本業のクロッカーの方、すみません!)。

ニッチな題材にも関わらずストーリーもコメディ部分も面白く、9巻完結とお求めやすい作品です。

連射王

著者
川上 稔
出版日
2013-02-09
……ピアノの鍵盤叩いているみたいだな。
 (中略)
 だが、動きは似ているとはいえ、
 ……こんな連射が何かを語る筈も無い。
 ゲームは遊び。音楽とは違うと、高村はそう思う

進路を決める区切りの年になって、自分は何に対しても本気になれないのではないかと悩む高校3年生・高村昴。彼は「連射王」というシューティングゲームに出会い、真剣に攻略することによって少しづつ「自分とはどんな人間なのか」を再確認していく。

ゲームを通して自分を識るということはあながちフィクションとは言い切れません。

例えば漫画なり小説なり、己の趣向を分析するだけでも自分という人間像が少し明確になるのではないでしょうか。「心の底では熱い物語に憧れる自分」「奥手な恋愛模様に共感する自分」みたいに。

ゲームにしたって、様々な仮想のシチュエーションに身を置くことで「意外と完璧主義者な自分」「追い詰められると逆に燃える自分」等々、この作品の主人公のように「本当の自分」を発見することも少なくない。ゲーム好きとして僕はそう思います。様々な試験紙や化学反応の結果から、自分という物質Aの正体を逆算するようなものでしょうか。

「自分と語り合う時間」という最もプライベートな瞬間は、他者から見たそれは無駄に見えるのかもしれません。この作品はそういった、ゲームに限らない「趣味」の本質に迫る作品です。「無駄な時間」を胸張って愛せるようになる、そんな一冊。

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