藤原ていのおすすめ作品4選!ベストセラー『流れる星は生きている』の著者

更新:2021.11.8

第二次世界大戦に翻弄されながらも、その経験も生かして作品を書いた作家、藤原ていをご紹介します。満州に渡り、敗戦後引き上げるといった経験を基に、執筆した小説『流れ星は生きている』も含め、今回ご紹介する4作品はどれも必読です。

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壮絶な人生を生きた女流作家・藤原ていとは

藤原ていは1918年、長野県に生まれ、第二次世界大戦を生き抜いた女流作家です。同じく作家の新田次郎を夫に持ち、次男の藤若正彦はエッセイストという、文学一家の一員でもあります。2016年に老衰で死去するまで、数多くの作品を残しました。

1939年頃に結婚し、その約4年後、夫の仕事の都合で満州に移住することになります。これが、ていにとってはその後の人生の転機となるものでした。

第二次世界大戦の敗戦後までを満州で過ごし、その後日本本土へ帰国した経験は、ていの代表作ともいえる『流れる星は生きている』の題材となっているのです。

『流れる星は生きている』がベストセラーになった後、自伝小説である『旅路』、さらにはエッセイ集『生きる』などを執筆しました。自身の体験や思いをベースに昭和の戦時中から平成に至るまでを記した作品たちは、どれも藤原ていの人生観が詰まったものになっています。

また、小説の執筆以外にも、読売新聞で『人生案内』の回答者として約13年間活動するなど、活動の幅を広く持った作家でした。

戦争を描いた、藤原ていの代表作『流れる星は生きている』

本書は、藤原ていが県立諏訪高等女子学校を卒業し、藤原寛人(新田次郎の本名)と結婚後に満州へ渡ってから、帰国するまでのエピソードを描いた作品です。

敗戦を前に日本本土へ帰国することになるていは、夫を残し、3人の幼子を連れて移動します。満州から引き揚げ、朝鮮半島を超え、朝鮮半島の南端、釜山から博多へ入港することになりました。

しかし、その旅は非常に過酷なものでした。帰国に至るまでのいきさつ、移動中の困難、葛藤、やり場のない思い、瀬戸際に立たされた人間の生きざまを描いています。

著者
藤原 てい
出版日
2002-07-25

藤原ていのベストセラー作品であり、著者を語る上で最も欠かせない作品です。本書は、ていの体験を元に描かれており、多少のフィクションが含まれているものの、その壮絶さに、当時の情勢を伺うことができます。

生と死がリアルに交差する場面において、人間はどのように行動するのかといった点まで、詳細な描写とともに描かれます。体裁や見栄を気にせず、自分が生き抜くことを優先し、個人のエゴをむき出しにしていく登場人物たちには、当時がどのような状況だったのかを読者に教え、考えさせるでしょう。

ラストのシーンで、藤原ていの出身地・長野まで、なんとか辿りつきます。しかし、そこで彼女が感じるのは「もう死んでもいいんだ」「もうこれ以上は生きられない」という感情でした。衝撃的なラストまで、見逃せない作品です。

自身の人生を語った自伝小説『旅路』

代表作『流れ星は生きている』でベストセラー作家となったその2年後、1981年に自伝小説として出版されたのが本書です。諏訪で過ごした幼少期、そして学生時代から始まり、藤原寛人との新婚生活など、『流れる星は生きている』では扱われなかった、それ以前の藤原ていについても語られます。

満州での生活から、帰国までの間に著者が体験した事実をベースとしており、その後の日本での生活や家族への思いなど、著者の人生が丸ごと描かれた作品です。

著者
藤原 てい
出版日
1986-07-10

本書は、藤原ていが夫の藤原寛人を失った際に執筆された作品です。ていが自身の人生を振り返りながら、自伝として執筆しました。人生において幸せで楽しい時間はあっという間で、辛く悲しい時間の長さを訴えています。

戦中・戦後の動乱の時代を強く生き抜いたていの姿は、現代にいる私たちの人生にも訴えかけるものがあります。どんな人生であっても日々を一生懸命に生きていこうとする藤原ていの姿、思いに心が動かされるでしょう。

満州からの帰国部分をクローズアップした『流れ星は生きている』では描き切れなかった人生を感じることができる一冊です。

藤原ていの生き方を感じるエッセイ集『生きる』

藤原ていの代表的エッセイ集です。『流れ星は生きている』、『旅路』はじめ、自身の経験を基に物語を紡いでいたていが、エッセイという形で自分の生きたかや人生観について語っています。

壮大な物語から少し外れて、ゆったりとした深い想いや、家族の愛を堪能できるエッセイ集になっています。

著者
藤原 てい
出版日

藤原ていの作品の数々は、生き抜くということや、生と死のはざまでの生き方に焦点を当てているものが多いです。本作もまた、ていの死生観や生き方について書いた作品ではありますが、今までとは少し違う「人生観」として描かれた作品になっています。
 

特に、他の作品で藤原ていの人生について触れた人には、理解しやすい内容となっているでしょう。

波乱万丈の半生を通して戦争を知る『絆』

本書は『旅路』に続く、藤原ていが自身の半生を綴った自伝小説です。戦争に翻弄されながら生き抜いた彼女の生きざまを心に響くリアルな描写で綴っています。

藤原ていは、その半生の中で、貧困や敗戦など、様々な困難にぶつかりました。戦争の時代を生きた人々の思いを切に感じることができる作品になっています。

著者
藤原 てい
出版日

本書には、藤原ていの波乱万丈な人生がありありと綴られています。彼女の人生は決して順風満帆というわけではありませんでした。

満州で過ごした後、三人の子供を連れて命からがら日本本土へ引き上げてきたていの半生を通して、貧しさとは、飢えとは、戦争とはどのようなものだったのかが、息が苦しくなるほど鮮明に綴られています。今後、本物の戦争の体験談を語ることのできる人たちが減っていくなか、「戦争について知りたい」という人々の願いを、本作は叶えてくれるでしょう。

人間とはどう生きていくべきなのかを考えさせられる作品です。

今回は藤原ていの作品を、代表作『流れ星は生きている』をはじめ、小説やエッセイなどの4作品ご紹介してきました。彼女の作品は読めば読むほどに味わい深くなります。ぜひ、一読して、彼女の人生観を味わってみてください。

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