たくさんの作品を発表し、新作のたびに世間を賑わす大人気小説家・村上春樹。翻訳者としても活躍しており、数々の文学賞も受賞しています。世界各国に多くのファンを持ち、彼の作品を心待ちにしている読者の数ははかりしれません。
村上春樹は、1979年に『風の歌を聴け』でデビューを果たした小説家です。1987年に刊行された大ベストセラー『ノルウェイの森』は実写映画化も果たし、その知名度を大きく上げました。国外でも非常に高い評価を受け手おり、アジア人初のフランス・カフカ賞受賞者となった他、ノーベル文学賞に何度もノミネートされていることでも話題です。
小説家としてはもちろんのこと、エッセイストとしても高い評価を集めています。翻訳の活動も盛んで、1979年の『哀しみの孔雀』以降、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『ぼくが電話をかけている場所』など、多数の作品の翻訳を手がけました。フィクション作品での評価が注目されていますが、『アンダーグラウンド』をはじめとしたノンフィクション作品でも、多くの読者に支持されています。
親しみやすい文章と、深いテーマを取り扱ったストーリーが人気を呼び、新たな作品を発表するたびに話題を呼ぶ村上春樹。そんな著作の中から、特にチェックしておきたい代表作品を、ピックアップして紹介していきます。
本作は、1984年に刊行された村上春樹の初期作品のひとつです。タイトルにある「螢」や「納屋を焼く」を含む5編を収録した短編集となっています。
「螢」は、学生寮の二人部屋に暮らす主人公の、友人や恋人との日常を描いた物語です。「納屋を焼く」は、結婚パーティーで知り合った彼女に、納谷を焼くのが趣味である別の恋人がいるという、やや不思議な設定のストーリー。「踊る小人」では、夢の中で出会った小人との交流を描いています。それぞれ独自の世界観が詰まった一冊だと言えるでしょう。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 1987-09-25
収録作のひとつである「螢」の登場人物は、その後に発表された代表作『ノルウェイの森』の登場人物のモデルとなりました。自身のエッセイ作品の中でも「蛍」について取り上げており、著者本人にとっても重要な作品であることが伺えます。
村上春樹は、「螢」と『ノルウェイの森』のように、短編小説の世界観を元に長編小説を仕上げることが少なくありません。著者のルーツを知りたい!という方には、原案とも言えるこの短編小説を一読されることをおすすめします。
本作は、エッセイを中心として、インタビューや書評、超短編小説など、村上春樹による69作品もの自選文章が収録されています。出版された海外版への序文や、文学賞の受賞あいさつはもちろん、知人の結婚式にあてた祝電まで収録された、まさに「雑文集」です。
音楽論や人物論などもチェックでき、著者の小説家としてだけでない、様々な側面を見ることができます。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2015-10-28
多くの雑文の中で、村上春樹の小説に登場する要素が取り上げられています。その中でも特に「音楽」についての内容が多く、全体の5分の1ほどにも及びます。これは、著者の小説の多くで、音楽やアーティストが取り上げられていることからもわかるでしょう。活き活きとした文章で、この本でしか読めない表現や持論に触れることができます。
村上春樹のデビュー以来、様々なシチュエーションで書いたものがこの一冊に詰まっているため、作品を年代ごとに比較しながら読んでみるのも楽しいかもしれません。
合計6作品が収録された短編集です。英語はもちろん、フランス語やドイツ語、フィンランド語やリトアニア語など、世界各国で翻訳されています。
表題作である「女のいない男たち」は、夜中の一時すぎにかかってくる電話から始まる物語です。主人公は、これまで付き合っていた女性の三人を、「自殺」によって亡くしています。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2016-10-07
本作用の書下ろし作品が、表題作に選ばれている1編です。孤独や喪失をテーマとして扱っている作品が多く、登場人物たちの独特の心理描写が魅力となっています。
一作目である「ドライブ・マイ・カー」は、不倫について語っており、「イエスタデイ」では、好きすぎるあまり一線を越えられない恋人のことが綴られています。一筋縄ではいかない恋愛物語を味わいたい人におすすめです。
その他の「独立器官」や「シェヘラザード」、「木野」などの短編にも、村上春樹らしい世界観が詰め込まれています。
全部で5作品の連作短編を収録しています。人生に「欠けたもの」を感じている人々の、不思議な日々を綴った一冊です。
「偶然の旅人」は、孤独なピアノ調律師の心に届く微かな光を追った物語。「ハナレイ・ベイ」は、息子をハワイで失った女性の人生を描いています。「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は、消えた人を捜すひとに興味を持っている女性のストーリー。その他に「古語移動する腎臓のかたちをした石」と「品川猿」が収録されています。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2007-11-28
肉親の行方が分からなくなっていたり、大切な家族を失っていたり、名前を忘れてしまっていたり、突然何か大切なものを失ってしまった人々に焦点をあて、その人生の道筋を、独自の筆致で描き出しています。それぞれの短編は、一見独立しているようにも見えますが、すべてを通して読み込むことで、より作品世界を堪能できる一冊だと言えるでしょう。
自由に動き回る腎臓の形をした石や、人の名前を盗んでしまう猿など、ユーモアあふれる設定も魅力的です。村上春樹自身が体験したエピソードなども取り入れ、不思議な世界に臨場感を与えています。
物語は、37歳になった主人公が、飛行機内でビートルズの曲・ノルウェーの森を聞き、学生時代のことを思い出す場面からはじまります。
主人公は、友人のキズキの恋人・直子と出会い、やがて恋に落ちます。キズキの自殺や、直子の精神療養所での生活、活発な同級生とのロマンスなど、彼の学生生活を取り巻く多彩な日常を追った作品です。直子のルームメイトや、学生寮の先輩、生真面目な同級生など、それぞれの個性を持った登場人物たちの人生にも注目してみてください。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2004-09-15
本作は、2010年には実写映画化もされており、ベストセラー作品として世界的にも知られています。村上春樹の代表作の一つだと言えるでしょう。
物語の主人公の出身地や、大学の専攻、学生寮のことなどの設定は、春樹の人生そのものと言えます。本人は自伝的小説であるということは否定していますが、ファンにとっては、著者の歴史の一部を知るのにうってつけの一冊です。
馴染みのあるビートルズの音楽や、大学内に入る機動隊など、学生運動が盛んだった時代を感じさせるモチーフも魅力です。どこかノスタルジックな世界観に触れることができるでしょう。
主人公の始は、小学校5年生の終わり頃に転校してきた「島本さん」という少女と友達になります。足に軽い障害のある島本さんは他人の家で靴を脱ぐのが嫌なようなので、始が島本さんの家を訪れ、彼女の父親のコレクションであるクラシックやジャズのレコードを聴いて過ごしていました。
始は引っ越しのため島本さんとは違う中学に通い始めます。最初の頃は電車に乗って遊びに行っていたのですが、徐々に会わなくなり歳月が過ぎていきました。心に島本さんへの想いを抱きつつ、始は高校生の時にイズミという少女と付き合い始めます。島本さんとはまったく違うタイプのイズミを愛していましたが、ある事で彼女を深く傷つけてしまいイズミと別れた始は地元を離れ東京の大学に進学しました。
大学卒業後に教科書の出版会社に就職した始は、30歳の時に有紀子という女性と結婚します。裕福な妻の父の援助でジャズバーの経営をはじめ、平和で幸せな生活を営んでいました。しかし店に来た高校時代の友人から現在のイズミのただならぬ様子を知らされ、その数日後に美しく大人になった島本さんと再会するのでした。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 1995-10-04
物語の前半は少年の始が思春期を迎え青年になる過程が描かれ、後半は大人になった始が島本さんに出会ったことで心のバランスを失っていく姿が描かれています。物語には主人公に知り得ないことは描かれていないため、読者も主人公と共に混乱しながら進まざるを得ません。それにより読者は、主人公の取り返しのつかない過去への罪悪感や悪意なく人を傷つけてしまうことの哀しさを主人公と共に体感することになります。
この作品には、思春期に経験する漠然とした感情や何となく抱いてしまうモヤモヤとした想いといった形を持たない人の心が、巧みな比喩と多彩な表現で見事に描き出されています。
物語の起伏の少ない前半の少年期に読者が引き付けられるのは、村上春樹の見事な文章の力に他なりません。読者は前半の少年期を強く印象付けられることにより、中盤の思春期と後半の成年期をより深く理解できるのです。村上春樹の作品が世界中で受け入れられる理由が納得できる、春樹の類まれな才能が発揮された作品です。
東京の大学に進学した20歳の「僕」のひと夏(18日間)を、29歳の「僕」が回想する物語です。
帰省した夏休みの内、「僕」は「鼠」と連れだって、ほとんどの時間を中国人のジェイが経営するジェイズ・バーに入り浸って過ごします。そこで子供の頃電気掃除機で小指を失くしたという、4本指の女性と知り合います。
ジェイズ・バーで電話代を「僕」から借りた30歳くらいの女は、「私も昔は学生だったわ。60年ごろね。良い時代よ」と話しますが、どんなところが良かったのかは、聞いても答えません。
「鼠」も、大学をやめたというので理由を聞いてみましたが、答えてくれませんでした。彼は自分が裕福である事に、ある種の罪悪感を覚えています。それは彼の父親が「詐欺」まがいの商法で金儲けをし、自分がそのお金の恩恵を受けているからでした。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2004-09-15
登場人物に固有名詞は無く、一人称の「僕」の話として展開する其々のドラマは、吹き抜ける風のように終わっています。
それは「君が抜けてきた井戸は時の歪みに沿って掘られているんだ。つまり我々は時の間を彷徨っているわけさ。宇宙の創生から死までをね。だから我々には生もなければ死もない。風だ」というのがこの本のテーマだからでしょうか?
「風」つまり見えない存在だけど、確かに感じられる「物体」。人間も「風」のように生まれて消えてゆくものなのだと、作者は言いたいのかも知れません。これは村上春樹のデビュー作ですから、まずここから読書入門を。
主人公の「僕」は、見知らぬ土地の話を聞くのが病的に好きでした。僕は大学時代に付き合っていた直子から、彼女が昔住んでいたという退屈な町とその町にある駅の話を何度も聞きます。僕はその4年後に、直子を愛していた事と彼女が死んでしまったことを忘れるため、1人でその駅に行くのでした。
ある日アパートの流し台の下に仕掛けた鼠捕りの罠にかかって死んでしまった鼠を見た僕は、「物事には必ず入り口と出口がなければならない」と思うのです。以後、物語は主人公の「僕」の話と「鼠」と呼ばれる男の話が交差するように進みます。
大学を出た僕は友人と翻訳の仕事を始め、仕事は順調でした。鼠は大学を去った後、裕福な父親の所有するマンションの一室に住み始めます。いつしか鼠は1人の女性に温もりを求め、僕は名前も知らない双子の姉妹と同居を始め、ゲームセンターのピンボールに夢中になるのでした。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2004-11-16
その時代に流行り、ただ高得点を目指すだけで何も生み出さないピンボールゲームは、行き場を見出せず時代の流れの中で立ち止まっている主人公のようです。やがてゲームセンターは取り壊され、ピンボールゲームの台も失われ、僕はピンボールを止め鼠も女の元を去っていきます。
村上春樹は青年の1つの時代との決別の時を、独特のセンスと巧みな表現で鮮やかに描き出しています。本作は1980年代に発表されたものですが、現在でも違和感なく作品に溶け込むことができるのは、誰もが青年期に抱く普遍の心理を描いているからでしょう。
随所に描かれる1970年代のアイテムは年配の読者にとってはノスタルジックであり、若い読者にとってはレトロな味わいとなって物語を彩ります。村上春樹といえば世界的に有名な作家ですが、その作品は決して敷居の高いものではなく、読みやすく親しみやすいものであることが本作を読めばわかるでしょう。
主人公は、妻に出ていかれたばかりの男性。傷心しながらも広告代理店の仕事を続けていき、耳専門のモデルをしている女性と知り合います。その女性と仲睦まじく過ごしていましたが、ある日大きな事件が起きました。とある右翼の大物が、星形の斑紋がある羊を探し出さなければ、会社も主人公自身もおしまいだと脅迫して来たのです。
不思議な羊をめぐり、北海道に渡った主人公とガールフレンド。スリリングな展開や、懐かしさを感じさせる風景、人々の思惑なが溢れる長編作品となっています。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2004-11-15
村上春樹は本作の執筆に専念するため、それまで運営していたジャズ喫茶を、人に譲ることまでしました。各地に取材旅行に渡り、大量の資料を集めた上で、自宅に4ヶ月もこもって書き上げた、渾身の長編作品です。
『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』と同じ主人公による、「鼠三部作」の完結編となっています。好きなのに、離れなくてはいけない。そんな切ないラブストーリーであると同時に、先の見えないミステリー要素も含んでおり、多様な雰囲気やテイストを味わうことが出来るでしょう。
激しい雪の降る荒天の札幌から、物語がスタートします。主人公は、かつて翻訳事務所で働いていたフリーライター。ホテルの女性スタッフから、取り残されたひとりの美少女を、東京まで連れていくよう頼まれます。
人気俳優の元同級生や、特別な力を持つ元恋人、謎の美少女の母である写真家など、ミステリアスな登場人物たちが魅力となっていますす。激動の80年代を舞台にし、主人公の生き様やそれぞれの矜持を、鮮やかに描き出した長編小説です。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2004-10-15
『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』と同一の主人公であるため、これらの3作品を読了した方は、本作でより一層村上春樹の世界観を味合うことができるでしょう。また、主人公の魅力は、作品を追うごとに増しています。
他にも、作中では『羊をめぐる冒険』に登場したガールフレンドや、村上春樹の名前をアナグラムした小説家など、ファンならくすりとしてしまうような登場人物も出てきます。不確かで儚い現実を、精一杯に生きる人々の美しさを、ぜひ感じてください。
本作はタイトルの通り、「世界の終り」章と「ハードボイルド・ワンダーランド」章が交互に展開される仕様になっています。「世界の終り」では、外界との接触がまったくない、高い壁に囲まれた街で暮らす主人公・「僕」の視点で物語が進み、一方の「ハードボイルド・ワンダーランド」では、科学者によってある思考回路を組み込まれた主人公・「私」が、回路に隠された秘密を探るために奔走します。
静かで幻想的な世界と、波瀾万丈の冒険の世界を、交互に行き来することができるのが、本作の特徴でしょう。ハラハラしたり、切なくなったり、見どころ満載の作品です。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2010-04-08
『ノルウェイの森』の下敷きに「蛍」があったのと同じく、本作にももとになった作品があります。世界の終り章のモデルとなったのは、どの全集にも単行本にも収録されていない「街と、その不確かな壁」という作品です。しかし、結末はまったく異なった仕上がりになっているため、こちらを読んでいる人も、読んでいない人も、たっぷり本作を楽しむことが出来るでしょう。
一見関係がないように見える世界や出来事が、物語が進行していくにつれ、徐々にひとつに集まって来ます。伏線の収集や、大きな事件の解決といったミステリー要素が好きな方には、たまらない作品と言えるでしょう。
善也はある宗教団体に所属する母と2人で暮らしています。母は若いころ複数の異性と交際し、避妊をしていたにも関わらず妊娠したため2度の堕胎を経験しました。その時お世話になった産婦人科の若い男性医師とも交際し、善也を妊娠します。しかしその医師からは自分は完璧に避妊したと言われ、自分の子とは認めてくれませんでした。
他の男性との関係を疑われ、身に覚えのない母は傷つき死のうとしますが、その頃知り合った田端さんという男性から、善也は神から授かった「神の子」だと言われます。母はその言葉に救われ田端さんの所属する宗教団体に入信し、善也を神の子として育てたのでした。
善也は自分が神の子なのだとは到底信じられず、本当の自分の父親はその医師だと思っていました。そして母が宗教団体の人々と神戸の震災のボランティアに出かけて留守をしていたある日、善也は母から聞かされた医師とまったく同じ特徴を持つ男を見かけます。善也はその男をそっと追いかけるのでした。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2002-02-28
本作には表題作を含む全6作の短編小説が収録されています。いずれも神戸で起こった地震が主人公たちに何らかの関わりを持ちますが、震源地である神戸の描写はありません。村上春樹はあえて震源地について描かないことにより、遠くの悲劇が自分とは何の関わり合いもないと思って無関心になってしまう我々に、世界は常に連動しているのだということを示唆しているのです。
予期せぬ大地震が平穏な日常を突如として破壊するように、主人公たちの人生は予期せぬ事から一変してしまいます。この世界は常に不確実で不安定であるにも関わらず、多くの人々は何の根拠もなく昨日と同じように平和な明日が続くと信じているのです。1つの地震の余波は無限に広がって行き、世界には繰り返し悲劇が訪れます。そんな世界の中でも希望を持つことの喜びと大切さを描いた、奥の深い心に染みる作品です。
15歳の少年(田村カフカ)と初老の男(ナカタさん)のふたりが主人公の長編です。ふたりは同じ地区に住んでいましたが、ある時期まで全く接点がありません。作者はこのふたりの現実と非現実を絡み合わせることで、不思議な世界を作り上げてゆきます。
幼少期に母と姉が失踪。ふたりに捨てられたと思いながら父と暮らしていた田村少年は、ナイフを擬人化し「カフカ」と呼び、空想の中での友達にします。
ある日父が予言します。それはカフカが、「何時か失踪した母や姉と性交し、父を殺す」というものでした。自分の心に潜む「黒い影」におびえる少年は、その予言から逃れる為に、「友人カフカ」を懐に家出をします。向かう先は四国です。
予言から逃れる為の家出でしたが、佐伯さん(母ではないか?と思わせる人)やさくらさん(姉のような人)と出逢い、性交に至ります。佐伯さんとの性交で、少年は自分の中にある「悪」から解放されるのでした。
一方ナカタさんは幼少期に事故に遭い、知的障害者になった初老の男です。猫と話せるという特殊の能力を持っていて、「猫」に特別の想いを抱いています。彼はある日自称「猫殺し」男を殺してしまい逃亡するのですが……。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2005-02-28
「猫殺し男」が実は少年の父親だったという設定で話は進みます。少年と接点の無いナカタさんは、もちろん「猫殺し男」が少年の父親である事は知りません。ナカタさんも又、運命の糸に手繰り寄せられるように四国を目指します。
結果的にはナカタさんが「予言」の実行犯になった訳ですが、全く接点の無かった少年とナカタさんが、次第に近づいて行くプロセスがここから始まります。
物語はギリシャ神話や日本神話を疑似的に取り扱ってもいます。さてこの難解な謎解きは?じっくり読まないと解けません。難解な謎ほど、解けた時の快感はたまりません。是非一読して快感を味わってみて下さい。
本作には、青豆と天吾という二人の主人公がいます。どちらも孤独な少年少女で、10歳の頃は互いを想い合っていましたが、結ばれることなく離れ離れになってしまいました。物語はそこから、何十年もの歳月が過ぎた1984年から始まります。それぞれが今までとは少しだけ異なった1Q84の世界に入り込んでしまうのです。
一巻と二巻では、青豆と天吾の物語が交互に展開され、三巻では、そんな二人を調べていた人物の物語が絡み合ってきます。背負うもののある登場人物たちの謎と運命が絡み合い、核心に迫っていく長編作品です。
- 著者
- 春樹, 村上
- 出版日
本作は、発売そのものをメディアによって大きく取り上げており、続刊が早められるほど人気になりました。それぞれ発行年間のトップクラスのセールス記録をだしており、ミリオンセラーも達成しています。
社会問題に対し、数々のノンフィクション作品やエッセイでも切り込んでいる村上春樹が、「事件」や「罪」について掘り下げた作品です。作中には、短編の「神の子どもたちはみな踊る」に登場した組織に類似した存在が現れるなど、奥行きを感じられる設定も魅力です。
時を経て再会する二人の主人公の行く末に、最後まで目が離せない作品となっています。
主人公の岡田亨は、妻の久美子とともに平穏な日々を過ごしていました。しかし、飼い猫の失踪をきっかけに、平和な毎日が少しずつ崩れていきます。妻は失踪し、主人公は奇妙な人々たちと出会い、異質な世界に身を投じていくこととなるのです。
妻を追い求めるうちに到達した謎めいた彼女の兄・綿谷昇の存在。ノモンハン事件をめぐる鮮烈かつ衝撃的な事件。受け継がれる意思や、理不尽な悪意に対峙する勇気などが、圧倒的な世界観で綴られています。SF、サスペンスなど、様々な要素を持つ、村上春樹の傑作です。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 1997-09-30
本作で、村上春樹は初めて「戦争」というテーマを本格的に取り上げています。著者の作品の中で、根元的な悪との対峙という重要なテーマが、初めて用いられた作品でしょう。悪に対し、暴力的に立ち向かっていくという、これまでの作品にはなかなか見られなかったスタイルも、本作ならではの特徴です。
ねじ緩め鳥、ねじまき鳥という、一見抽象的でファンタジックな設定が特徴となっています。ねじまき鳥の正体や、その言葉や存在が持つ意味とは一体何なのか、読み進めるうちに、きっと知ることが出来るでしょう。渦巻く悪事に対し、武力を持たない主人公が、どのように立ち向かっていくのかに注目です。
いかがでしたか?村上春樹の作品は、どれもが独自の世界観を持つ、魅力的なものばかりです。ぜひ手にとってみてください。