文芸

山本幸久のおすすめ文庫作品5選!ユーモアたっぷりの元気が湧いてくる本

更新:2020.12.1 作成:2017.8.3

お笑い芸人やバスガイドなど、さまざまな職業にスポットを当てて人々の温かな暮らしを描く山本幸久。笑いあり涙ありの人情豊かな物語は読んでいてほっこりしてしまいます。そんな山本幸久のおすすめ小説を5つ紹介します。

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山本幸久とは

山本幸久は1966年に東京都八王子市で生まれました。幼い頃から本や漫画を読むのが好きで、中学2年生で星新一のショート・ショートコンテストにて入賞した経験を持っています。しかしそれから20年、小説を書くことからは遠ざかっていました。

中央大学文学部を卒業し、内装会社に勤務。編集プロダクションへの転職を経て、大手出版社に出向し漫画編集者になりました。

妻のすすめで再び小説を書き始めたのは2002年のこと。その際書き上げた「アカコとヒトミと」は世田谷文学賞で敢闘賞にあたる3席を受賞しました。2003年に小説すばる新人賞を受賞したのはこの時の作品を元に書き直した作品です。のちに『笑う招き猫』と改題された本作は、映画化やドラマ化されるなど、代表作のひとつになっています。

今回は、そんな山本幸久の心が温かくなる5冊を紹介します。

映画化にドラマ化も。山本幸久の代表作『笑う招き猫』

2003年に小説すばる新人賞を受賞したデビュー作。2017年には清水富美加と松井玲奈のダブル主演でドラマ化、映画化されたことでも話題になりました。

アカコとヒトミは男も金もいらない、と漫才に命をかける27歳です。舞台で食べていく、というのが二人の目標。しかし人気が出てくるにつれてさまざまな迷いが生じてきます。「アカコとヒトミ」の行く先は?

著者
山本 幸久
出版日
2006-01-20

150センチぽっちゃり体型のアカコと180センチでスレンダーなヒトミは性格だって真逆です。アカコは子どもみたいに猪突猛進で、しっかり者のヒトミがそれをカバーする、というある意味いいコンビ。ヒトミにセクハラをした先輩芸人にアカコが殴りを入れるシーンには思わず笑ってしまいます。

山本幸久が実際にお笑い芸人とつながりを持っていることもあり、お笑い界のリアルを覗き見している気分になれます。「舞台で食べていく」と決めたのに、テレビ出演がかなった二人はだんだんと方向性を見失っていき……。

お笑い芸人として生きていくというのは決して簡単ではない道。アカコがプロポーズを断ってまでお笑いを選ぶ場面からは彼女の本気が伝わってきます。二人とも、お笑いにかける情熱はだれにも負けないのです。

アカコとヒトミのやりとりは、ほのぼのしていて癒されること間違いなし。ネタを披露するシーンも必見です。

一歩を踏み出す勇気『一匹羊』

一人の一歩に焦点を当てた短編集。それぞれ年齢も性別も境遇もさまざまな人々のさりげない日常が温かいまなざしで描かれています。「狼なんてこわくない」「夜中に柴漬け」などバラエティ豊かな全8編、自分と似た主人公が見つかるかもしれません。

著者
山本 幸久
出版日
2014-05-13

一匹狼ならぬ「一匹羊」というユニークなタイトルがついた表題作の主人公は縫製工場で働く大神。四十代にして独身、未来に希望の持てない彼ですが、職場体験に来た中学生の担当を務めることになりました。そこで出会ったキクチとの交流を通して、面倒なことを見て見ぬふりするようになった自分に気づいていきます。  

未来のない自分の町から脱出することを切望する中学一年生が主人公の「野和田さん家のツグヲさん」に登場するツグオは35歳なのに両親から多額のお小遣いをもらっているという変わり者。なぜか憎めない愛されキャラで、読んでいてほっこりする作品です。

その他にも、とある事情から孫を抱いたことのない富音子が子どもたちに昔の遊びを教えることに喜びと生きがいを見出していく「どきどき団」など、バラエティ豊かな作品が揃っています。 

働くってかっこいい!山本幸久の経験が活きている『カイシャデイズ』

内装会社というとどのようなイメージがありますか?本作は店舗リフォームを請け負う内装会社「ココスペース」を舞台にした本格お仕事小説。各章ごとに別の人物に焦点が当てられており、営業やデザイン、施工などさまざまな側面から内装会社で働く人々の生き生きとした様子を感じることができます。

著者
山本 幸久
出版日
2011-03-10

山本幸久自身が内装会社に勤務していたこともあり、非常にリアリティに溢れた本作。人間模様だけでなく、実際の仕事の工程にも凝って描かれているので読み応えがあります。

仕事に対する価値観は人それぞれですが、ココスペースの従業員はみな自分の仕事に誇りを持っています。楽しんで働いている様子が読み手にまで伝わってくるので、読めば元気をもらえること間違いナシ。また、従業員50人ほどの会社ならではのアットホームな雰囲気もたまりません。

読み終えたとき、ココスペースのような会社で働きたい、と思えるエネルギッシュな一作です。

新人バスガイドが大奮闘『ある日、アヒルバス』

2015年にNHKでドラマ化もされた本作。

23歳のデコは東京・月島に本社を置く観光バス会社「アヒルバス」の新人バスガイドです。慕っていた先輩バスガイドの転職に落胆しながらも、入社して5年目にして新人の教育係を任されるのですが……。

著者
山本 幸久
出版日
2010-10-05

女性が働きやすい職場を目指すデコの同期である亜紀や、最年長バスガイドの通称「鋼鉄母さん」をはじめ、アヒルバスで働く人々は個性的ぞろい。デコはそんな職場でときには楽しく、ときには不安を抱えながら働いています。

デコには自分に自信が持てないところがあるのですが、23歳という若さで新人研修の指導係になってしまいます。そこで感じる、教える側の難しさ。一筋縄ではいかない新人のたちを相手に悪戦苦闘する中、ツアー中に盗難に遭うなど、まったくついていません。

悩んだり迷ったりしながらも成長していくデコの姿に元気をもらえる作品です。もっとデコの活躍がみたい人は続編の『天晴れ、アヒルバス』も合わせてどうぞ。

山本幸久が描く、働く大人の青春小説『凸凹デイズ』

セクシー雑誌のレイアウトからスーパーのチラシ作りまでなんでもやります、と謳う弱小事務所、凹組。社員はたったの3人で、そのうち二人が中年男性の大滝と黒川。二人の部下は22歳の凪海ただ一人です。

穏やかで波風の立たない平和な職場ですが、あるコンペをきっかけに3人に大きな野心が生まれていって……。

著者
山本 幸久
出版日
2009-02-01

大滝と黒川は冴えない中年男性ですが、なぜか憎めません。凪海はそんな二人の元でのびのびと働いています。まさに理想の社内環境といったところでしょうか。

凹組に立ちはだかるのは美人女社長である醐宮率いるデザイン事務所です。実は醐宮はかつて凹組のメンバーで、独立して自分の事務所を立ち上げました。そこには大滝と黒川とのある確執があるのですが、新人の凪海は醐宮と仕事をしていくうちにその事情を少しずつ知っていくことになります。

物語には凹組の立ち上げに関するエピソードも描かれています。本作の主人公は凪海ではありますが、もと凹組メンバー3人の人間関係にも注目です。

仕事に疲れてしまった人、情熱を取り戻したい人におすすめの一冊。

山本幸久の小説は読んでいる人に元気を与えてくれます。たくさん笑って、何気ない日々を大切にしていけたら素敵ですよね。バラエティに富んだお仕事小説はどれをとっても読み応えあり。ぜひまずは一冊、いかがですか?