文芸

芹沢光治良のおすすめ本4選!信念が生んだ「神」シリーズなど

更新:2017.8.9 作成:2017.8.9

芹沢光治良は、数々の有名な文学作品を残した小説家です。主に神を題材にした作品が支持を集め、独自の世界観を持っていました。フランス滞在の経験もあり、著作の一部はフランス語に翻訳され、現地でも大ヒットを成し遂げています。

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フランス留学の経験も!独自の世界を持った小説家・芹沢光治良

静岡県に生まれた芹沢光治良は、父が天理教に入信しそちらの活動ばかりになってしまったために、幼少期から祖父母と叔父夫婦と暮らしていました。その後、叔父も天理教会となったことで、幼いころから宗教との距離がとても近かったと言えます。

高校卒業後は、地元の小学校で代用教員として勤めながら、数年後には第一高等学校の仏文科に入学。東京帝国大学の経済学部を卒業し、農商務省に入るなど、優秀な実績を積み重ねました。農商務省を辞任した後は、現在のパリ大学に入り、金融社会学を学びます。

しかし、このパリ滞在中に、彼は結核にかかってしまいました。学業を休み、療養に専念しつつも、当時の体験をもとにした『ブルジョア』が懸賞小説の一位となり、デビューを果たすこととなります。

そののち執筆した『巴里に死す』は、フランス語翻訳もされ、ベストセラーを果たしました。

芸術選奨文部大臣賞や日本芸術院賞などを受賞し、生まれ育った現在の静岡県沼津市の名誉市民でもある芹沢光治良。晩年は自らの信念をより高め、神を題材にした神秘的な作品でも注目を集めました。

そんな芹沢光治良の作品の中から、特にチェックしておきたい代表作を、4作品ピックアップして、見どころを紹介していきましょう。

宗教観や人生観を詰め込んだ人気シリーズの1冊目

作者が90歳のときに書きあげた作品です。独自の宗教意識を語りながら、自身の少年時代からの人生を綴っています。

子どものころの天理教との関わりや、フランスの療養所で神について考え始め、やがて作家になろうと決意したことなど、芹沢光治良自身の人生について、深く知ることが出来るでしょう。

作品の後半では、天理教教祖との対話を通じて得た様々な考察や、樹木との会話、自らの信仰や宗教への考えも示されています。

芹沢光治良の作品をひとつでも読んだことがある人は、そのルーツを知るためにもおすすめです。 

著者
芹沢 光治良
出版日

本作を含む、全8冊の作品は、「神」シリーズとも呼ばれ、神を題材にした大長編となっています。96歳で亡くなるまで、およそ年に1冊のペースで発表されました。

本作の続きとして、『神の慈愛』『神の計画』『人間の幸福』『人間の意志』『人間の生命』、そして『大自然の夢』『天の調べ』と続き、晩年の宗教観や人生観を綴りました。

宗教を取り扱った作品は、そのイメージから遠ざけられてしまうこともありますが、本作は、あくまで宗教の押し付けではなく、自らの信仰を語る1冊だと捉えることができるので、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

もちろん、宗教だけではなく、フランス留学中の刺激的な出会いや、時代を取り巻く様々な出来事などにも触れられる作品です。

激動の時代を舞台にした、芹沢光治良の自伝的大長編

本作の舞台は、明治から大正、そして昭和にかけての、激動の時代となっています。当時の日本人が、どのような苦労を抱えていながらも、決して諦めずに希望を残し続けてきたのかを、時代の証言として語っている大長編作品です。

主人公は森次郎。物語は、彼の誕生日から始まり、幼少期からの苦難を説明しています。叔父の死をきっかけに宗教に目覚めた父は、全財産を宗教に捧げ、母と兄を連れてその教えを広めるために村を出ていってしまうのでした。

残された幼い次郎に降りかかる、過酷な日々を描いた序章的な1冊です。

著者
芹沢 光治良
出版日

信仰した宗教の伝道師となった両親に、残された祖父母と若い叔母。貧しい漁村に取り残された主人公は、幼いころから大変な苦労を強いられることになります。

この非常に厳しい人生は、実は書き手の芹沢光治良自身に降りかかった出来事でもありました。子どものころから、人生とは一体何なのかを悩みつつ、神や信仰ととても近い距離にいた著者だからこそ描ける、自伝的な1冊と言えます。

物語の後半では、日本が第2次世界大戦に向かっていく過程や、その後の混乱を詳しく描写しています。主人公の視点から、道徳観や近代史を教えてもらえることでしょう。

フランス語にも翻訳された大ヒット作『巴里に死す』

物語のメイン舞台は、1920年代の美しい巴里です。主人公の伸子は、夫と共に訪れた留学先で、愛する娘と幸せに過ごしていましたが、ある日結核に倒れてしまいます。

遠くない未来、自分の命が終わることを悟った伸子は、娘の運命を憂い、3冊のノートに、自身の闘病生活を記録していくことにしました。 本作では、当時わずか3歳であった娘に向けたノートの内容と、それを20年後に読むことになった娘のストーリーが綴られています。

命と引き換えに自分を生んでくれた母の、人知らぬ苦悩に触れた娘の反応とは?不幸な運命にあっても、愛と知を手放さなかった女性の、悲しくも美しい物語となっています。

著者
芹沢 光治良
出版日

作者は、同じく巴里に留学し、結核を患って現地の療養所に入っていたことがありました。当時の経験を活かして綴られた本作は、フランス語訳もされ、現地でも広く読まれたベストセラーの1冊です。

本作で、夫はかつての恋人の存在を妻に語ってしまいます。夫の心に残る女性の影に、伸子は悩まされました。実は芹沢光治良もまた、巴里生活で恋人に逃げられてしまった経験があります。彼の人生を知っている人は、二重の面白さを堪能できるかもしれません。

芹沢光治良の運命を変えた人物を描く!『天理教教祖伝』

本作は、芹沢光治良が手掛けた天理教の教祖である中山みきの伝記となっています。後に、多くの人々から「おやさま」と慕われた中山の人生を、生まれから天理教の発展まで、細かく追って描いています。

奈良県の農家に生まれたみき。両親は熱心な浄土宗信者でした。二人の影響を色濃く受けていた彼女は、13歳のときに嫁入りの話が出たときも、尼になりたいという理由から断っているほどです。

みきは婚家で懸命に働きながらも子宝に恵まれず、苦しい思いをしていました。そんなみきが40歳になるころ、神を引き受けることになります。みき本人、家族、そしてやがて集まる多くの信者たちの人生を綴った大作と言えるでしょう。

著者
芹沢 光治良
出版日

芹沢光治良は、自らの人生を大きく変えた天理教について知るためには、教祖についての伝記を書くのが良いと考え、その結果本作を書きました。

確かに、中山みきの伝記であることに違いはありませんが、宗教の布教本ではなく、文学作品として非常に高い完成度を誇っているのがこの作品の特徴です。

熱狂的な天理教信者であった父はもちろん、母や兄、叔父も天理教に人生を投じていったという背景を持つ作者。教祖の決して楽ではない人生を追いながら、どんな想いを抱いたのでしょうか?芹沢光治良ファンは、その人生を知るためにも手にとってみるのがおすすめです。

いかがでしたか?芹沢光治良の作品は、どれも魅力的なものばかりです。気になった1冊を、ぜひ読んでみてください。