陳舜臣のおすすめ文庫本5選!中国歴史小説で名高い作家

更新:2017.8.11 作成:2017.8.11

中国の歴史を題材にした小説を数多く手掛けたことで有名な作家、陳舜臣。その作品の魅力を、文庫で刊行されているおすすめの本とともにご紹介していきます。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

陳舜臣とは

陳舜臣は1924年、神戸にて生まれました。両親は当時日本領であった台湾の出身だったため、終戦後は日本国籍を喪失し中華民国(台湾)籍となりました。

家業であった貿易業に従事しながら神戸で生活を続け、1961年に推理小説『枯草の根』で江戸川乱歩賞を受賞したことをきっかけに、作家としてのキャリアをスタートします。

初期はミステリーが中心でしたが次第に中国の歴史をテーマに小説を書くようになり、1968年の『青玉獅子香炉』で直木賞を、1991年には『諸葛孔明』で吉川英治文学賞を受賞するなど実績を挙げ、「中国歴史小説」の分野における第一人者となりました。

他にも、琉球王国の歴史物語である『琉球の風』はNHKの大河ドラマ原作となっています。

2015年に90歳で死去し、没後に従四位を追叙されました。

三国志の英雄・曹操の等身大

後漢末から頭角を現し、中国の三国時代において最強を誇った国・魏を打ち立てた英雄である、曹操の生涯を追った歴史小説です。

上巻では若者であった頃の曹操を、下巻では魏の勢力圏を確立しこの世を去るまでの曹操を、それぞれ扱っています。

後漢王朝が衰退し黄巾の乱などが起こる群雄割拠の中国大陸に覇を唱え、優れた人材登用によって支配体制を整えていった曹操の、内面の心理や政治戦略に焦点を当てた物語となっています。

著者
陳 舜臣
出版日
2001-03-01

「三国志演義」以来現代に至るまで定着してきた「悪者」としての曹操ではなく、乱世に生まれ、家族を持ち、理想を掲げて戦ったひとりの人間としての曹操を描き出しているのが、本書の特徴です。

冷静に状況を判断して競争相手に打ち勝ち、勢力を拡大していく強い曹操。一方で、父親を殺されたことへの怒りにまかせて殺戮を行ったり、それぞれに違う魅力を持ちつつも反目し合う2人の息子の、どちらを後継者とするか決められずにいたりもする弱い曹操がいたのです。

従来のイメージとは違う等身大の曹操に触れられるこの本を、三国志が好きな方にぜひおすすめしたいと思います。

三国志小説の流れを変えた、陳舜臣の代表作

黄巾の乱の勃発から、234年の五丈原にて諸葛亮が死没するまでの三国志の物語が、文庫本全6巻で展開されます。

本書は主人公を、当時流行した宗教である五斗米道の教徒に設定し、彼らの視点から三国時代というものがどのようにして成立し、そして終わっていくのか、群雄たちの活躍とあわせて語られます。

著者
陳 舜臣
出版日
2009-03-01

先ほど紹介した『曹操』は英雄個人にスポットライトを当てた作品でしたが、本書は三国志そのものについてをテーマにしています。

中国・明代に成立した『三国志演義』、またそれを元にして書かれた吉川英治の小説や横山光輝の漫画などは以前から存在していましたが、それらは「劉備=善、曹操=悪」というこれまでの図式に沿ったものでした。

陳舜臣はそうした固定的な三国志観を打破し、史実に従って人物たちを評価しつつ、宗教という観点を導入して当時がどういう時代だったのかを理解するという手法を取り、三国志というものに対して非常に大きなインパクトを与えました。

以降のあらゆる三国志系の作品に影響を与えている小説として、押さえておきたいものです。

中国史全体を俯瞰できる入門書

「十八史略」とは、神々の時代から13世紀の南宋滅亡と元の成立に至るまでの中国の歴史をまとめたものです。

もともと各時代の正史の抜粋を中心にした「十八史略」が中国にあったのを、陳舜臣が改めて小説として書き上げたのが本書になります。

著者
陳 舜臣
出版日
1992-01-08

項羽と劉邦の物語や三国志・水滸伝などひとつの時代を取り扱った作品は色々ありますが、中国の歴史を全体的に勉強するような機会があるのは、高校で習う世界史の授業くらいではないでしょうか。

中国の長い歴史の中でどのようなことが起こって来たのかを通して知りたいという方にとって、本書はうってつけです。

ひとつひとつの時代が移り変わるさまをダイナミックに描き、登場しては消えていく数々の善人や悪人に着目しながらも、全体の流れを崩すことなく書ききっているのはまさに圧巻のひとこと。

この本から入って、各時代のことをもっと詳しく知りたくなったらそちらに手を広げていく、という読み方もおすすめです。

インド・ムガル帝国の歴史に触れる

この本は、陳舜臣が大学時代に専攻していたインドの歴史を題材にした小説です。

日本人にあまりなじみのないインドの歴史を「三国志」にたとえ、アウラングゼーブ帝が治めるイスラム国家のムガル帝国、それに対抗し立ち上がったシヴァージーのマラータ王国、そしてイギリスの東インド会社の3勢力が相争う、17世紀のインドを取り扱っています。

著者
陳 舜臣
出版日

本書の最大の特徴は、まず読者の関心をインドの歴史に振り向かせるためのタイトルにあるといってもよいでしょう。

手にとってしまいさえすれば、ヒンドゥーの地・インドに入ってくるイスラム勢力のムガル帝国、さらに権益を求めて遥か海の向こうから現れたイギリス人たちの引き起こした大きなうねりが、陳舜臣の筆によって見事に描き出されているため、物語に没頭していくこと間違いありません。

アウラングゼーブ帝が89歳で死去するところまでで本書は終わっていますが、続編の出版も期待されていたほどの作品です。

血の通った人間としての孔明を描いた陳舜臣作品

当代随一の知性を持ちながら在野のまま時を待ち、劉備という君主を得て、まさに三国時代を構想し実現することになった孔明。

彼が幼少の頃に頼った叔父である諸葛玄から物語はスタートし、蜀漢の成立、赤壁の戦い、魏への北伐、そして五丈原にて孔明が最後の戦いに臨むまでの物語が記されています。

著者
陳 舜臣
出版日
1993-10-01

後世においては稀代の天才として神格化され、魔術的な力すらも備え人間離れした姿で描かれることも多い孔明ですが、本書における孔明は感情を持ったひとりの人間です。

誰が天下を統べるに値する君主となるかについて熱く語り合う若者としての孔明、ときに怒りや悲しみの情念に流されそうになる孔明と出会うことができます。

赤壁の戦いでの勝利のように、孔明がやってきたことは決してマジックではなく地道な準備と計算にもとづいているという点、努力家としての彼にも焦点が当てられています。

孔明ファンであれば必ず読むべき書です。

いかがでしたか。日本における中国歴史小説のイメージを塗り替えた作家として、陳舜臣の作品は今も読み継がれるべき価値をもっていると思います。ぜひご覧ください。