目取真俊の著書おすすめ5選!沖縄の歴史や風土を描いた作品を多く執筆

更新:2017.8.16

芥川賞や川端康成文学賞などを受賞し、多くの読書通に高く評価されながらも、意外とその名を知られていない名作家・目取真俊。沖縄の問題を直視した作品の数々は、痛くも読者を魅了し続けています。今回はおすすめ5選をご紹介します。

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目取真俊とは

目取真俊は、沖縄生まれ沖縄育ちの小説家です。

作品のほとんどは沖縄にまつわる社会問題を描いた小説です。沖縄に息づく作者だからこそ描ける言葉の魅力や、目取真俊の特徴とも言われている鮮やかな自然描写が人気を集めています。また、現実世界を描きながらもファンタジックな設定が混ざる独特の世界観もポイントです。

芥川賞、川端康成文学賞などを受賞し、文学作品としての評価も高い作家です。メディアへの露出をあまりしないため、隠れた名作家として評判を集めています。

今回は目取真俊の魅力を感じるおすすめ本をご紹介します。

戦争によって溢れる想いは水滴になる

徳正は沖縄に住む老人です。口うるさくも暖かい妻、ウシとなんてことない日々を送る日々。徳正はいい加減な男で、正義感や義務感といったものとは縁の遠い性格です。

ある朝目覚めると、徳正の右足が腫れ上がっています。ウシは旦那が病気になっては役に立たないとなじりながらも、徳正を看病しました。しかし、症状はよくなりません。右足はどうやら水で腫れ上がっているらしく、親指からは水滴が滴り続けます。

その水滴を求めて、夜になると戦死したはずの兵隊が徳正の元へやってきます。そしてその水滴を飲んでいくのです。さらに、その水滴を使って植物を育てるなどの出来事を通じて、徳正は封じてきた戦争の思い出と対峙することになっていきます。

著者
目取真 俊
出版日

九州芸術祭文学賞と芥川賞をダブル受賞した目取真俊の代表作です。沖縄という戦争の色濃く残った土地で、何気ない日々を送ってきた老人に起こる不思議な現象を通じて戦争が残したものの大きさを語ります。

戦争そのものを描く作品は小説にも多く、その悲惨な殺戮や死を繰り返してはならないというメッセージを受け取ることができます。一方、目取真俊が描いた戦争は、生きて残った者の悔恨です。しかも、その悔恨は決して感情や言葉になって訪れるものではなく、体への異変という形で現れます。

むしろ生々しい戦争の傷跡を描いた傑作です。作品に一貫する美しい沖縄方言のリズムや民話のような言い回しも必読の一冊でしょう。

沖縄に生きる人々のリアルを描く短編集

沖縄のとある部落には、マーという少年が過去にいました。マーは間違いなく存在しており、交流もあった青年は、マーの記憶を辿ります。やがて、マーは意図的にその部落から排斥されたという過去が明らかになっていくのです。

マーはいわゆる知恵遅れに当たる障碍者でした。それでも子供達はマーを含めてコミュニティを広げていたのですが、ある日マーが部落内の女性と性的行為をしたということがわかります。大人たちはマーを排斥しにかかり、やがて子供達も大人とともに彼を孤独に追いやったのでした。

青年はマーの過去、そして消し去られていた記憶の重さを憂い、マーの墓を訪ねます。そこには、マーの声にならない声が響くのでした。

著者
目取真 俊
出版日
2013-03-29

「魚群記」には沖縄を舞台に様々な社会的問題が描かれています。あらすじをご紹介した、収録作「マーの見た空」は、障碍者に対する社会の偏見や、一人の人をどこまでも傷つけたとしても、人は忘れてしまうという記憶の残酷さが光ります。

こういった「魚群記」で描かれた出来事は、決して沖縄だから起こっていることではなく、今もなお私たちの生活に直結している問題です。目取真俊は、沖縄方言に乗せてそれらを浮き彫りにします。

収録作品に多く見られるのは、目取真俊の見る小動物やオブジェクトに対する比喩と想像力の飛躍です。現実を描きながらどこか非現実的な印象を与える表現力に気圧されるばかり。目取真俊の初期作品集となっていますが、初期とは思えない文才を読み取ることができます。

戦後の沖縄を描く珠玉の短編集

幸太郎はまだ幼い頃、戦争で父と母をなくしました。戦後幸太郎は祖母に我が子のように育てられ、その人生を謳歌しました。

人生の折り返し地点もすぎた頃、幸太郎は魂(マブイ)を落とします。この魂とは、生命そのものではなく、肉体とは別個のものです。幸太郎の魂は海を漂いますが、なかなか体に戻ろうとはしません。幸太郎の魂を体に戻すため、祖母は祈ります。その祈りには、幸太郎の両親の命を奪った戦争への想いがこもっていました。祖母は祈りと共に戦争の記憶を呼び起こし、過去と現実はやがて境界線を失っていきます。

果たして幸太郎の魂(マブイ)は再び体に戻るのでしょうか。

著者
目取真 俊
出版日

ご紹介した「魂込め」の他、戦争の爪痕を描く目取真俊の傑作短編集です。「魂込め」は2000年、木山捷平文学賞と川端康成文学賞をダブル受賞しました。沖縄と戦争の関係性を、あくまで一人の人間の想いや記憶から描き出す作品に高い評価が集まりました。

どの作品にもやや幻想的な設定が組み込まれており、「魂込め」も命とは全く別の概念の「魂」という存在がごく普通に描かれています。それらは沖縄言葉や沖縄ならではの神秘的な背景の元描かれることによって、まるで民話のような雰囲気を読者に伝えます。

目取真俊の鋭い感性と、優れた文章力の双方を感じられる傑作です。

暴力に次ぐ暴力。沖縄の若者を描く長編

沖縄に住むカツヤは、暴力集団のトップに立つ比嘉の子分としてすべての命令に言いなりになる少年です。比嘉は圧倒的な権力を持っており、暴力的な行動力と思考の持ち主です。カツヤは比嘉の元、明けない夜のような日々を送り続けます。また、カツヤと共に生きる少女マユも比嘉にいいように使われており、性的暴力や女としての身売りなどを強いられています。

マユが刺青にしている「虹の鳥」は、沖縄に言い伝えられる伝説の鳥です。その鳥を見たものはどんな不幸からも救われると言われており、一方でその鳥と出会った話は誰にもしてはいけないという掟も存在します。カツヤは虹の鳥を求めてマユと逃避行を始めるのでした。

著者
目取真 俊
出版日

沖縄に住む少年少女のやるせない暴力と不安の日々をひたすら描き続けた長編小説です。沖縄と米軍の関係性は、本当に沖縄に住む人々でなければわからない苦しさがあるのでしょう。それを目取真俊は刮目せよ、と言わんばかりの暴力づくしの作品で一切綺麗事にせず描ききりました。

少年たちのコミュニティにおいて行われる非道の数々は、そのまま米軍から沖縄が受けている悲惨な事件に重ねることができます。単なる不良少年たちの不遇ということではなく、沖縄だからこそ根付いてしまった深い問題があるのだということを痛感します。

あまりの残虐なシーンに目を覆いたくなる読者もいるかもしれませんが、それでも目取真俊が伝えたかったものは、それが現実だということ。沖縄問題について考えるのにはうってつけの一冊です。

沖縄の現状を見つめる目取真俊のエッセイ集

目取真俊は数々の短編を始め、長編小説も含めて小説という形で沖縄の問題を描いてきました。その執筆活動の合間に同時に書かれてきたもう一つの「沖縄」が、目取真俊のエッセイです。

取り上げるテーマは「沖縄と米国」、「沖縄と日本」、「沖縄の現在と過去」、「沖縄と戦争」などです。沖縄に対して目取真俊が持つイメージが小説以上に浮かび上がる傑作エッセイが並びます。

著者
目取真 俊
出版日

目取真俊という小説家に対して、「もっと評価されるべき小説家」、「素晴らしい才能の持ち主なのにあまり知られていない」といったレビューをよく見ます。それには理由があって、単純に沖縄についての取材依頼があっても、それが自身の考える沖縄問題とかけ離れているものであれば断るのだそうです。

目取真俊は、沖縄にまつわる問題が一過性の流行やニュースとして取り上げられて忘れられていくことも、お涙頂戴物に変換されてフィクションになってしまうことも望みません。現実を現実として描き、たとえ戦争が終わったとしても、そこにまだ問題は根付いている、現在進行形なのだということを人々に届けようとしています。

そういったメッセージや意志が伝わるエッセイがこの一冊に凝縮されています。とても読み応えのあるエッセイ集です。

沖縄を現在を知るには目取真俊の作品をぜひ読んでいただきたいです。どんな内容でも一気に読ませる表現力と沖縄言葉のリズムが魅力的ですので、読書好きの方はぜひ読んでみてください。

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