若い内に出会っておけば人生が変わるかもしれない名著の数々。小説、実用書を問わず、過去にまとめられたかけがえのない教えが丁寧に残されています。今回ご紹介する本にみずみずしい感性で触れれば、きっと世界が違う色に見えてくるでしょう。
『学問のすすめ』が書かれたのは明治維新直後。古い考え方をくじき、現代に続く民主主義と近代的思想の基礎を築きました。
明治時代の本ということで、元々は古文で見るような文章で書かれていましたが、本書は現代語訳されていて、いまの私たちにも読みやすくなっています。数百年続いた江戸時代が終わり、新しい考えを人々に伝えたこの本は、時を経ても色あせることなく、大切なものを教えてくれるのです。
- 著者
- 福澤 諭吉
- 出版日
- 2009-02-09
タイトルのとおり、当時の人々には学問が必要でした。封建社会の体制が崩れ、民主主義へと変わっていくなかで、それまで主君に従うだけで良かった民衆も、主権者として考えること、学ぶことが必要となったのです。
「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」 (『学問のすすめ』より引用)
これは多くの人が聞いたことのある言葉でしょう。平等の大切さを説いたものだという認識があるかもしれませんが、本書はあくまでも学問の大切さを説いているものです。この言葉は、世の不平等を作っているのは学が無いからだ、と述べています。
本書が想定している読者はまだ学を修めていない人たちなため、表現はわかりやすいものが使われています。時代背景は違えど、学び、独立する姿勢を示した言葉からは日々の生活にいかすヒントがあるはずです。
乗っていた飛行機が砂漠に不時着した「ぼく」は、不安に包まれるなか、ひとりの少年と出会います。彼はある小惑星から、驚くほどの旅路を越えてきた王子でした。王子は宇宙を巡って少しおかしい大人たちと出会い、そして地球で知った大切なことを「ぼく」に教えてくれます。
淡く優しい色使いの表紙は、作品の雰囲気をそのままに表しています。王子を通して知る宇宙のおかしな大人たちと、王子から見た地球の話は、不思議で面白く、そして新鮮に見えることでしょう。
- 著者
- サン=テグジュペリ
- 出版日
「ぼく」が飛行機を直している間に聞いている王子の話が、物語の主軸です。王子が自分の住んでいた小惑星から出てきたのは、彼の育てていたバラと仲違いをしたためでした。バラは少しとげのある言葉で、強いて引き留める事はせずに彼を送り出します。
それから王子が訪れた小惑星で出会った様々な人と、地球の住人について語られます。なかでも大切なことを教えてくれたキツネは、王子の心に強く影響を与えました。キツネとの会話のなかで、自分とバラの間にあったもの、自分とキツネの間に生まれたものを王子は悟るのです。
本来ならば「ぼく」は砂漠でひとり、壊れた飛行機のそばで途方に暮れていたことでしょう。水を汲む井戸も無ければ、話す相手もいないのです。王子がいたことで、「ぼく」は孤独から救われました。
王子の話す内容はどれも寓意に満ち、多様な解釈ができます。すべてにそれらしい説明をつけることも可能です。しかし初めて読む読者にはまず先入観なく本書を読み、感じるままに感じてほしいと思います。
本書は、人が抱えている悩みはすべて人間関係によるものだとし、対人関係を改善していく方法を述べています。人との関係で悩むということは、すなわち人との関係でそうなりたいという願望があるということです。ここではその願望を肯定し、幸福につなげるための考え方を教えてくれます。
アドラーという心理学者は、フロイトやユングと並ぶ心理学界の巨頭です。本書は2者の対話形式で表されており、両者をキャラクターづけることでよりわかりやすく彼の教えを説いています。
- 著者
- 岸見 一郎 古賀 史健
- 出版日
- 2013-12-13
自己啓発本と聞くと、刺激的な見出しに著者の優しい解説がくり返されているものを思い浮かべるかもしれません。しかし、結論を先に伝え解説を加えていく形は論文でも一般的なもので、何が言いたいかが明言されているためわかりやすいものでもあります。
行動を制限してしまうほどの辛い思い出を、この本ではすべて否定しています。制限された行動のほうへ着目し、それによって得られるメリットがあるから人はその行動を選ぶのだ、ということです。変えようの無い過去ではなく、目的を持ち、それに向かって行動しよう、という趣旨になっています。
目指すものは成長で、そのために必要なこととして自他の切り分けが説かれています。自分と他人で、目指すものは当然異なるので、たとえ嫌われてでも他人の目指すものは無視をして、自分のことに集中するべきなのです。
かといって他人を排斥しろというわけではありません。人と人とはメリットではなく、信頼関係で結びつくべきだとしているのです。対人関係の答えのひとつとして、この心理学に触れてみてはいかがでしょうか。
本書の主人公はごく平凡なサラリーマン。今までは三日坊主で何も続かなかった彼が、1冊を通して関西弁を話すゾウの出す課題をこなしていきます。
「靴をみがく」「コンビニで募金をする」「まっすぐ帰宅する」など、ほとんどがごく簡単なものですが、この些細な課題とともに主人公は気付きを重ね、人生を変えていくのです。
- 著者
- 水野 敬也
- 出版日
- 2007-08-11
この課題はつまり、成功する自分になるために具体的な行動をとれ、というものです。それは自分の生活を変えるものであったり、その行動をとるために環境を整えるものだったり、意識ではなく具体的な行動で示されます。
主人公に課題を出し、応援をするガネーシャですが、このキャラクターも本書の人気のひとつでしょう。軽い口調でさまざまな著名人の名を出し、自分が育てたとのたまっています。
難しいことは書いていないので、なんとなく自分の人生に満足していない方、ぜひ本書を手に取って行動してみてください。
本書はスタンフォード大学で実際に行われているユニークな講義をまとめたものです。自由な発想を生かす表題からくり出される納得の論理に、ぐいぐい引き込まれてしまうでしょう。
- 著者
- ティナ・シーリグ
- 出版日
- 2010-03-10
本書の最大の魅力は、自分の可能性を閉ざしてしまうような考えを取っ払ってくれる点でしょう。何かを始める時に、常識を考慮に入れる必要なんてないのだ、と思わせてくれます。
常識的でなければならない、他人に合わせなければならない、と思っている人にとってはとんでもないと思うようなことが、この本では次々に肯定されていきます。とにかく明るいエネルギーに満ちたアイデアばかりで、自然と上を向くことを意識させられる内容です。
年をとってからでももちろんためになる面白い本ばかりですが、やはりこういったものには試行錯誤のチャンスが多い若いうちに触れてほしいものです。少しでも興味を持ったならまずは1ページ、開いてみてください。