ショートショート作品おすすめ10選!手軽に読める気楽さが良い!

更新:2021.12.11

数ページで完結してしまう超短編・ショートショート。大スターである星新一の名前は聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。今回は有名作家からちょっと意外な作家まで、おすすめできる名作10冊を紹介します。

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不可解で毒々しい、筒井康隆『笑うな』

タイムマシンを開発した研究者たちが、最初のタイムスリップ先に選んだのは、自分たちがタイムマシンを完成させた「ついさっき」でした。

生命の起源、古代ローマ、戦国時代。いくらでも魅力的な時代はあるはずなのに、なぜか「ついさっき」を選んでしまった彼らは、動きの無い自分たちという不思議な光景を眺めます。そして、笑いが止まらなくなりました。

いったい何を笑っているのでしょうか。そこには様々な感情がありました。

著者
筒井 康隆
出版日
1980-10-28

現代社会が抱えた矛盾を鋭く突いた物語をたくさん収録した作品集です。「常識とは、本当に正しいことなのか」ということについて、考えるきっかけになるでしょう。時にシニカル、時に不条理と、バラエティ豊かなラインナップです。

明らかに実名が想像できてしまうネーミングで特定の団体を皮肉っていたり、今では発売できないようなギリギリの表現が散りばめられていたり、古い作品ならではの露骨さと面白さに、読者はニヤニヤさせられます。

筒井康隆のブラックな笑いを楽しめる名作です。

ショートショート界の新たな才能『夢巻』

古い友人に連れられて入ったシガーバー。店員に渡された葉巻には、子供の頃の思い出が詰まった作文の紙が使われていました。それを吸うと、その頃の思い出が鮮やかに蘇ります。

人間は身体だけでなく、心も老化します。昆虫採集や夏祭り……お金は無かったけれど、子供の頃の夏休みは何をしていても楽しかった。そんな気持ちをもう一度味わえたらどれほど幸せでしょうか。

不思議な店での至福のひとときを描いた、少し変わったショートストーリーです。

著者
田丸 雅智
出版日
2016-07-14

田丸雅智は星新一に憧れて育ったと公言しています。その言葉の通り、ショートショートへの愛が感じられる作品集です。

ショートショートは作品の性質上、無駄な表現を極力削っていく必要があります。したがって、描写は淡白になりがちですが、 田丸雅智の作品は独自の世界を持っており、不思議で少し暖かい雰囲気を持った作品が多いです。

典型的ショートショートの良いところであるテンポの良さをそのままに、なおかつファンタジックな世界を楽しめる一冊となっています。

高濃度の独自の世界を展開『ショートショート千夜一夜』

主人公は多魔坂神社の祭りで、不思議な刀ばかりを扱う店を見つけます。そこで主人公が惹かれたのは「バベルの刀」という妖刀でした。バベルの塔を縦に伸ばしたような螺旋状をしており、赤い刃をしています。

この刀で斬られた者は、相手がなにを喋っているのかよくわからなくなり、他者との意思疎通が困難になってしまうのだといいます。

給料半年分ほどの金額を払い、バベルの刀を購入した主人公。職場にいる嫌な部長に使ってみようと、さっそく背中を切りつけます。次の日から無事に部長の嫌味はきこえなくなったものの……。

著者
田丸 雅智
出版日
2016-07-13

田丸雅智の持つファンタジックな世界観がより濃くなった作品です。神社という舞台が、物語に神秘的な雰囲気を持たせています。

また、よく練られた内容と気合の入った構成からは、「ショートショート作品を盛り上げていきたい」という作者の熱意と心意気が感じられます。

読者を惹き込むフリとオチの鋭さに磨きがかかった、驚きに満ちた一冊です。

力作揃いの58編、おすすめの作品集『ショートショートの広場』

取調室で、警部が老人に「なあ」と気軽に話しかけます。この老人が何者なのかは明かされぬまま、警部の子供の頃の思い出話は進んでいきます。綿菓子、黒パン、謎のジュースについてなど、警部のたくさんの思い出が心地よい関西弁で語られはじめました。

そして彼は「花火」という提灯を下げた不思議な店を見つけます。店主は花火を芸術だと熱く語り、そして珍しい花火を披露してくれるのでした。

不思議な暖かさを持つ文体と驚きに満ちた結末が待っています。

著者
出版日
1985-07-08

星新一ショートショート・コンテストに応募された2万5420編もの作品の中から、特に優秀だった58編を収録した一冊です。

一人が作ったたくさんの作品ではなく、作者一人ずつが賞を目指して精いっぱいの力を込めた意欲作たちは、どれも高い完成度を誇り、読者をあっと驚かせます。

上記で紹介した作品の名前は「花火」。作者は、現在SF作家として活躍する江坂遊です。この作品の応募が、江坂がデビューするきっかけとなったのでした。あの星新一が才能を認めた作者の妙技が味わえます。

楽しさ満載!初心者におすすめの作品集『ショート・トリップ』

罪を犯した人間には、どんな刑罰が適当なのでしょうか。犯した罪にもよりますが、死刑はそう簡単に出せませんし、懲役刑にはお金が必要です。そんな中、新たなアイディアが生まれます。

ならず者は旅をさせられていました。「前に七歩進んで後ろに5歩。くるりとターン、カニ歩き、ケンケン、 シュワッチとさけんでジャンプ」という恥ずかしいポーズを取らされ、ゆっくりと旅をするのです。

そんなわけねーだろ!とツッコミながら楽しめる、読みやすくて少しブラックな作品です。

著者
森 絵都
出版日

毎日中学生新聞でやっていた「Further sight 旅のかけら」という連載企画から40編を選び、加筆することで完成した作品集です。

企画タイトルが「旅のかけら」となっている通り、作品はすべて「旅」に関連したもの。大きなオチというよりは、発想のユニークさを楽しめるような構成が徹底されていて、小学生から大人、読書家から初心者まで楽しめる、丁寧で分かりやすい作品ばかりとなっています。

気軽に読める作品を探している人におすすめです。

60ものトリックをひとまとめ!『4ページミステリー 60の奇妙な事件』

遠いところからわざわざやってきた主人公の佐和。彼女の義父は、孫の書いた「早くおとうさんが帰ってきますように」という短冊を見て悲しんでいました。佐和の夫・真吾は、海で行方不明になってしまい、いまだ遺体としても発見されていません。それを理解しているか、していないかも分からない孫の願いは、義父の目にはとても悲しいものに映りました。

やがて太朗という男性が父親代わりをしてくれるようになりますが、彼もまた失踪してしまいます。そして明かされる、意外な真実とは……。

著者
蒼井 上鷹
出版日
2015-03-12

ミステリーのトリックは有限です。近年は出し尽くされ、枯渇してきているとも言われています。それを本作は、60編ものショートショートとして使ってしまいました。

本来ならば、それぞれが一冊のミステリー小説になったであろう物語の、一番おいしい部分だけを残した、非常に贅沢な作品集と言えるでしょう。必要最低限の表現で書かれたミステリーは、ある種の様式美を感じさせるほどに綺麗な論理展開を繰り広げます。無駄が無い分、直球で勝負しているような印象です。

ミステリーでありながらほのぼのとした物語もあり、通学・通勤中の電車内や、待ち時間などで読むのにピッタリな本です。

何でもありなのに謎の統一感?『職場、好きですか?』

美人で優秀だったはずの女友達が、入社試験に落ちた理由。仕事ができてかっこいい先輩OLの秘密。停滞恐怖症の社員が過ごす休暇。本書には、「会社」を中心とした物語が収録されています。多くの社会人が、最も長い時間を過ごしているであろう会社では、常にいろんな事件が起こっているのです。

収録された全てのショートショート作品を通して、会社の中がだんだんと明らかになっていきます。何でもない日常かと思いきや、それはSFであり、非日常なのです。

著者
眉村 卓
出版日
2013-08-08

ショートショートという表現方法と会社というテーマがマッチした作品集。

最近の若者は、自分の時間を非常に大切にし、プライベートを充実させているといいます。しかし、少し昔はそうでない人の方が多くいました。ひたすら働くことこそが善とされた時代だったからでしょうか、人々の中心は常に会社だったのです。

だからこそ、会社にはいろんな事件が起こります。様々な場所から、別々の考えを持った人々が集まったことで生まれた群像劇です。視点を変えやすいショートショートであるという点を活かした、センスを感じられる一冊となっています。

本格派が作り出すお手本!ショートショート『あやしい遊園地』

「無用の店」という不思議な名前の店。ある酔っ払いはその店で、なんと10万円もする傘を購入します。騙されたかと思いきや、これはぼったくりではありませんでした。その傘が持つ価格とは、そして意味とはいったい何なのでしょうか?(「無用の店」)

ある日、祖父が語り始めた茶碗の思い出。茶碗にまつわる不思議な話の内容とは?(「龍の碗」)

バカバカしいほどの内容から、ぞっとするような怖いものまで、ジャンルにとらわれない70編を収録した一冊です。非常にボリュームがあってたっぷり楽しめます。

著者
江坂 遊
出版日
1996-03-15

星新一ショートショート・コンテストでデビューのきっかけを掴んだ、ショートショートを代表する作家・江坂遊渾身の作品です。

70作品のうちの60作品は初収録となっています。オチの意外性だけでなく、過不足なく的確に状況を描写する能力が非常に高いので、どの物語もしっかりとしたショートショートとして成立させられています。デビュー作「花火」も収録された、お得感溢れる一冊です。

映像化もされたおすすめ感動作『妻に捧げた1778話』

癌によって余名宣告を受けた妻のために、小説家の夫は何か自分にできることはないかと悩みました。妻が少しでも長生きする方法……それは、「笑うことで自己の免疫力を高める」ということ。

夫は「千夜一夜物語」のストーリーからヒントを得ました。女性不信の王は、夜伽をさせた娘を毎日殺していました。ある日、王に召されたシェラザードは、死を回避するために王に話を聞かせます。毎日聞きたくなるような話をしていけば、王は自分を殺さない……そう判断したからです。

夫は必死になって物語を書き、妻を楽しませ、笑わせようとします。毎日、原稿用紙三枚以上。これを5年もの間続けます。しかし、妻はどんどん弱っていくのでした。

著者
眉村 卓
出版日

現代版シェラザードとなった夫と、末期癌の妻。限られた時間を過ごす二人の絆が感じられる感動作です。

しかし、これは創作ではなく、作者である眉村卓に実際に起こった出来事でした。小説家の仕事は創作です。しかし、妻のために、来る日も来る日もひたすらに書き続けた姿は尊敬に値します。

読者の涙を誘うために作られた作品ではありませんが、バックグラウンドを知りながら読むと、自然に感動してしまいます。妻を笑わせるために書かれたショートショート作品のため、楽しい気持ちにさせてくれる内容ばかりです。

東野圭吾のブラックユーモアが顔を出す『毒笑小説』

安西静子はニュータウンに念願の一戸建てを手に入れて、充実した日々を送っています。しかし、そんな順風満帆な静子にも一つだけ憂鬱なことがありました。

それは夫の会社の重役の夫人に招待されるパーティーでした。彼女はパーティーで手作りの品を配ります。静子をはじめとした招待客の奥さま方はそれを迷惑に思っていましたが、断れないのです。

しかしある日、とあるきっかけから静子たちの本心が重役夫人に知られてしまいます。彼女たちはいったいどうなってしまうのか。驚きの結末が待っています。

著者
東野 圭吾
出版日

ミステリー作品が多い東野圭吾のブラックユーモアを堪能できる作品集です。短い作品といえど、やはりそこは推理作家。どの物語も起承転結がしっかりした、非常に丁寧な構成となっています。

世の中のあれこれをバカにしたような、小気味よさも魅力でしょう。現代社会が抱えている嫌な部分をあえてたっぷり強調し、バッサリ切って捨てる。そんな快感をいくつも味わえるのは、短編ならではの魅力といえます。

それぞれ毒を持った登場人物のやりとりも爽快です。本を読んでスッキリしたい!そんな人におすすめです。

少ない時間でも少しずつ読み進むことができる。そんな利点を生かして、ショートショートでスキマ時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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