こんな素敵な歳の取り方したい!と思える本3冊【KUSHIDA】

更新:2021.11.8

「この人、素敵だな~!」と思うのが、自分の好奇心に忠実で、人生をエンジョイしている人です。ストレスフリーで気分は永遠の中学生のような。今月は素敵に年齢を重ねる心の旅人たちの本をご紹介します。僕もこんな素敵な歳の取り方をしたい!

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世界の獣神

著者
獣神サンダー・ライガー
出版日
2017-07-07

去年の話。ROHというアメリカにあるプロレス団体のニューヨークでの大会に呼ばれ、ライガーさんと2人旅。その道中、経由地・ダラスの空港でこんなことがありました。

入国審査のラインに並び、ライガーさんが先に呼ばれました。すると、いつもなら無愛想なアメリカの入国審査官がニコニコと素顔のライガーさんと談笑をし始めました。こんな光景は初めて見ました。あとで何を話していたのか聞くと「職業は?と聞かれたからプロレスラーだと答えたら、リングネームは?と聞かれて、ライガーだ!と言ったら、俺はお前のこと知ってる! WCWの頃、テレビで見た! 握手してくれ。だってさ(笑)」

思わぬタイミングで世界の獣神たる所以を垣間見ました。多くのプロレスラーにとってそうであるように、僕の人生もまた獣神サンダー・ライガーによって狂わされたと言っても過言ではありません。小学生の頃、メキシコに渡ってデビューしたというライガーさんのレスラーとして生い立ちを雑誌で知りました。そこに「自分もプロレスラーになれるかもしれない!」という希望を見ました。

この本のなかで、ライガーさん自身はマッハ隼人さんがメキシコに渡って、後にデビューしたことを雑誌のインタビューで知ってと語っています。入門規定に至らなくても、プロレスラーになる方法はある……鵜呑みにした僕自身も大学を休学し、2005年単身メキシコ修行。時代は巡るんですね。そして、巡り続けることでしょう。

自伝といっても堅苦しさはなく、上巻の本書は新日本プロレスに運命のように導かれる山田恵一少年の冒険記。ライガーさんにはこの先もずっと、変わらぬ獣神サンダー・ライガーでいてほしいです。

NYに暮らすミュージシャン

著者
大江 千里
出版日
2015-04-17

5歳年上の兄の影響もあり、当時ヒットした大江千里さん「格好悪いふられ方」が昔から好きで、今でも当時のアルバムを聴いています。

3年ほど前、試合でニューヨークに行った時、現地在住のタイガー服部レフェリーにその遠征中、唯一あったOFF日に「ジャズバーへ飲みにいこう!」と誘われました。そこが偶然、大江千里さんが今でも定期的に出演されているTomi Jazzというバーで、演奏を生で、それも最前列で聴けるという、旅ならではのラッキーハプニングが発生。しかも、ご挨拶までさせて頂きました。初めて聴いたジャズ。赤ワインなんぞを生意気に注文させて頂き、大江千里さんの奏でるピアノに酔いしれました。その姿がとにかくカッコよくって輝いていたのが脳裏に焼き付いています。言葉でうまく表現できませんが、とにかく唸りました。ジャズとプロレス。なにか、こう……どこかできっと共通項があるのではないだろうか?とそんな気がしました、この本を読んで。

日本での25年のキャリアを全部捨てて、ニューヨークへ向かう際の葛藤と恍惚が書かれた前半部分、痺れます。日本人が暮らすニューヨーク、海外生活が浮き彫りになっていたりして、ニューヨークの風が詰まった一冊です。ジャンルは違えど大江さんの、やりたいことを海を渡って突き詰めた姿勢に、ただただ尊敬しかありません。年齢やしがらみを考えて行動を躊躇するのは単なる言い訳だ、と喝を入れられているかのようです。

好奇心に忠実な旅人

著者
丸山 ゴンザレス
出版日
2017-07-26

プロレスラーにとって、海外という土地は最高のインプットの場です。何を仕掛けてくるか分からない対戦相手、観客との言葉の壁……それは僕にとって“地球を歩く”という感覚です。この感覚を常に養っていると、新しい発想に出会え、刺激的です。生きている実感を得られます。

実際にお会いしたゴンザレスさんの印象は自身の好奇心に忠実な人。本文中にちょいちょい出てくるTBS『クレイジージャーニー』の放送ありきの旅ではない! 俺が行きたいところに勝手にテレビスタッフが付いてきているというスタンス! その部分を絶対崩さないところに、ゴンザレスさんの旅人としてのプライドを感じます。

地球上の目の付け所、嗅覚には驚かされるばかり。定期的に己の視野の狭さを教えてくれているかのようです。これからも世界の広さ、単なる広さだけではなくマンホール的な奥深さを世間に発信していってくれることを期待しています。

そして、一緒にお酒飲んだことのある友人としては、沢木耕太郎さんのこの言葉を贈りたいと思います。「恐れずに、でも気を付けて」。マジで本当に変なモノを食べて死なないでください(笑)。旅人の先輩として背中を追っ掛けます。

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