PEACH-PIT作『ローゼンメイデン』。球体関節人形、アリス、薔薇……ゴシックな世界観で一大ブームとなり、アニメ化。美しいドールたちが繰り広げるストーリーには漫画・アニメファンのみならず著名人たちもハマッていたという人気シリーズです。 今回はそんな『ローゼンメイデン』のあらすじとみどころを、「深紅」「水銀燈」をはじめとする魅力的なそのドールたちとともにご紹介します。 一部ネタバレを含みますのでご注意ください!
薔薇乙女(ローゼンメイデン)シリーズ。それは人形師・ローゼンの手によって作られた最高の作品、生けるドールの姉妹たちのこと。全世界に7体が存在するローゼンメイデンは、それぞれ「ローザミスティカ」のかけらを持っています。
ローザミスティカとは彼女たちの魂のようなもの。7つすべてのかけらが揃ってはじめて、完全な唯一の存在になるのだといいます。ローゼンメイデンたちは自分こそが至高の少女「アリス」となるために、それぞれの所有者である「マスター」を力の媒体とし、ローザミスティカを奪い合う「アリスゲーム」で戦っています。このゲームに勝ったただ一体の「アリス」だけが、父であるローゼンに会えるとされているのです。
球体関節人形、薔薇、アリス、そして鏡の向こうの世界……この世界観に魅了されたファンは数知れません。単行本の、いばらをモチーフにした箔押しの装丁も凝っていて美しいのです。
今回は、個性豊かなローゼンメイデンシリーズの人形たちをご紹介します。
- 著者
- PEACH-PIT
- 出版日
「ローゼンメイデン」シリーズには複数のタイトルがあります。
2002年~2007年に月刊コミックバーズで連載された『Rozen Maiden』(全7巻)は「まいたジュン」の物語です。
繊細な少年・桜田ジュンは不登校の中学生。古物商の両親は買い付けのためか海外に行っており、姉の桜田のりがジュンの親代わりです。そんなジュンの趣味は、通販でインチキ商品を購入してはクーリングオフ期間にぎりぎりに返品し、スリルを味わうというもの。
そんな荷物の山に紛れていたある日、「まきますか まきませんか」と書かれたダイレクトメールが届きます。面白半分で「まく」方に丸をつけるジュン。そして届いたのが、ローゼンメイデンの第5ドール「真紅」でした。ジュンは背中のねじを「巻いて」やり、真紅を目覚めさせます。
家にあったぬいぐるみにいきなり攻撃されたジュンは、まったく状況がのみこめないまま真紅と契約をかわし、アリス・ゲームに巻き込まれていきます。
一方、2008年~2014年に週刊ヤングジャンプで連載された『ローゼンメイデン』(既刊10巻)で展開されるのは「まかなかったジュン」の世界。この世界でのジュンは大検を取って大学生になっていますが、大学でもバイト先でも疎外感ばかり感じていました。
そんなジュンでしたが、「週刊少女の作り方」という雑誌を偶然手に取り、真紅のボディを組み立て始めます。寝不足もいとわず没頭し、毎週少しずつ届くパーツを心待ちにするジュン。あとは頭と右足のパーツが揃えば完成、というところまできて、唐突に届いたのは雑誌休刊のお知らせでした。
ショックと混乱でいっぱいのジュンに、中学生のジュンからメールが送られてきて……。
「ローゼンメイデン」シリーズの物語は、桜田ジュンの成長物語でもあるのです。
- 著者
- PEACH-PIT
- 出版日
- 2008-12-19
真紅(しんく)は気位の高い第5ドール。深い赤色のドレスに身を包み、ボンネットをかぶり、金色の髪をツインテールにした真紅はまさに正統派アンティークドールといった姿です。
紅茶が好きな真紅は、ジュンのもとに来るなり紅茶とミルクを要求。茶葉の種類や抽出温度にもこだわりがあるようです。それだけではなく、お茶にたとえた話でジュンやのりを諭す場面も。人間よりも長い時を見てきたアンティークドールの風格が漂います。
しかし現代の日本の生活には疎いようで、トイレを見て勘違いし「変わったテーブルね」「ここにお茶を運んで頂戴」とジュンに命令してしまうなど、かわいいところもあるのです。
戦うべき相手でありながら他のローゼンメイデンの姉妹たちを思いやる真紅は、誰も傷つけずにアリスゲームに勝つことを自らのルールとしています。
- 著者
- PEACH-PIT
- 出版日
- 2009-09-18
ローゼンメイデン第1ドール・水銀燈(すいぎんとう)。背中には黒い羽を生やしており、アリスゲームに勝つためなら手段を選ばないという激しい性格の持ち主です。
裏を返せばそれは、誰よりも「アリス」になりたい、そして自分を作った「お父様」に愛されたい……という心のあらわれ。彼女が最も恐れるのは「ジャンク(壊れた子)」となってしまうこと。人形は完璧であらねばならず、壊れた人形には何の価値もないのだというのです。
そんな水銀燈がマスターに選んだのは、心臓に不治の病を抱え、ずっと病院で暮らしている柿崎めぐという少女。自分の置かれた状況をいやというほど理解し、生きる気力を失っているめぐは「私の命を使ってよ」と水銀燈にもちかけ、契約をします。
しかし、水銀燈はマスターとなった彼女にこう告げるのです。
「いいえ 死んでも一緒だわ」(『Rozen Maiden』7巻より引用)
- 著者
- PEACH-PIT
- 出版日
- 2011-11-18
金糸雀(かなりあ)、通称・カナは真紅や水銀燈と比べて幼い姿をしたドール。「~かしら」が口癖の金糸雀は自称・ローゼンメイデン一の策士です。
「我ながら怖いくらいにタクティクスかしら……」(『Rozen Maiden』5巻より引用)
しかしかなりのおっちょこちょいなのです。
カナのマスター「みっちゃん」こと草笛みつはドールマニアのOL。金糸雀以外にもたくさんの人形を所持しており、買ったり縫ったりした衣装で金糸雀を頻繁にお着替えさせています。夢を追うみっちゃんは、手先の器用なジュンの才能を見いだした一人でもありました。
- 著者
- PEACH-PIT
- 出版日
- 2010-02-19
第3ドール・翠星石(すいせいせき)は双子のドール。アリスゲームよりもマスターよりも、双子の妹である蒼星石(そうせいせき)を大切に思っている優しい姉です。
彼女の持つ「庭師の如雨露(じょうろ)」は人の心に育つ「心の樹」を育て、時に根腐れを起こさせるというもの。対して妹の蒼星石はその邪魔をする雑草を取り除く「庭師の鋏」を持っています。このふたつの能力が揃って初めて夢の庭師の仕事は完成するのです。
翠星石はアリスゲームを制するためというよりも、ゲームに敗れてローザミスティカを奪われた蒼星石のために動いています。
「~です」という一見丁寧な口調のわりに口が悪いというギャップも彼女の特徴。
「オマエちょっと話があるからツラ貸せやです」(『Rozen Maiden』7巻より引用)
本作のは女性漫画家ユニットPEACH-PITによる作品。そんな彼女たちのおすすめ作品を紹介した<PEACH-PITおすすめ作品4選!幻想的な絵柄が魅力の漫画>の記事もおすすめです。
人が作ったドールが自らの意思で、人形としての誇りを持って戦う……というのが「ローゼンメイデン」シリーズの大きな魅力。あなたはまきますか?まきませんか?