漫画アプリcomicoで読むことができる『ネト充のススメ』。仕事に疲れ、ネットゲームの世界へ逃げ込んだ主人公・盛岡森子が共感できる、と絶大な人気を得ています。アニメ化も決定した『ネト充のススメ』、今回はその魅力を紹介していきます。ネタバレありなのでご注意を。
性別も年齢も住んでいる地域や職業も違う多くの人たちが一体となって遊べるオンラインゲーム。『ネト充のススメ』は、そこを舞台としたネット上での繋がりと現実との繋がりが交差して進んでいくストーリーです。2017年10月にアニメ化もされます。
本作のオンラインゲームは「マビノギ」が元ネタだと噂されています。確かに自動走行が無い点や他のプレイヤーとガヤガヤ交流できるなどの似通った点はありますが、本作の序盤で重要になってくる職業の制約が「マビノギ」には無いなど、異なる点もあります。
おそらく作者の黒曜燐がいくつかのゲームを混ぜているのではないかと思われますが、実際にあるゲームと比較されるとは、ゲーム描写が楽しそうでリアルだということではないでしょうか。
ちなみに原作漫画はアプリ「comico」に連載されていましたが、2017年現在、作者の黒曜燐の体調不良により、2015年7月から休載されています。漫画アプリとして有名な「comico」初期作品の看板のひとつである本作。今も再開を望む声がやまない人気があります。
そんな本作の魅力は2次元とリアル双方の素晴らしさを感じられる点。それはどちらも登場人物たちの優しさに起因するものです。
森子は過去のトラウマから引きこもってゲームだけをしていたいのに、なぜかネット上で充実すればするほど、どんどんリアルも充実していきます。それは周囲が彼女に好意を持ち、ネット、リアルそれぞれの距離感を保ちながらも優しい目で応援してくれるから。
そんな周囲の協力やちょっとした日常の事件を通して、森子は現実を見つめ直し、立ち向かっていきます。その様子は読者を勇気づけるとともに、2次元の世界での交流も捨てたもんではないなと、思わされるものです。
この記事では本作のあらすじ、個性豊かなキャラたち、そして見所をご紹介!キャラ紹介はネット上、リアルでの姿まで詳しくお伝えします!ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- 黒曜燐
- 出版日
- 2015-02-14
主人公の盛岡森子は仕事であるトラウマを抱え、心に傷を負って仕事を辞めた三十路女子。退職をきっかけに、今まで名前のとおりモリモリ働いて蓄えてきた貯金がなくなるその日まで、オンラインゲームに漬かりきることを決意します。
現実では無職の三十路女ですが、ゲームの中では18歳の大学生、しかもイケメンという設定にしてしまいます。しかしキャラ名は迷いすぎたあげく「林」。残念イケメンです。
ネト充として生きることを決意した森子ですが、その後なぜかどんどんリアルも充実いていくことに。しかも当初の大学生という設定がのちにややこしい事態を生むことになり……!?
主人公の盛岡森子はある過去を抱えて、スーパーニートとして生きていくことを決めた30歳の女性。ネット上では完璧なキャラデザをほどこし、ネナベとしてゲームをプレイします。
しかしせっかくイケメンに仕上げたにも関わらず、迷いすぎた挙句、名前が林。キャラコスもあまりお金がないことも手伝い、残念イケメン感が出ています。
しかもゲーム内で知り合った相手の勘違いもあり、無職の女にもかかわらず、中の人は男子大学生ということになってしまうのです。いろいろととっちらかっているのは森子の優柔不断、優しいとも言える性格が出ています。
この場合自分の意思とは少し異なりますが、現実を忘れて「なりたい自分に自由になれる」というのもオンラインゲームの魅力のひとつでしょう。そしてこの勘違いがのちのちストーリーのスパイスとなってくるのです。
そんな森子の魅力はとにかくダメダメなところ。リアルの彼女はとても気が弱く、自分に自信のない女性なのです。
ですが、根が真面目で仕事も優秀にこなしていました。それが過去のトラウマと関わっているので、余計真面目なのに報われない感に同情してしまいます。
ダメダメで優柔不断ではあるけれど、人の痛みや感情に敏感な彼女。本人は気づいていませんが、その優しさや誠実さから現実でもゲーム内でも多くの人望を得ているのです。
そしてもうひとつの隠れた長所はちょいちょい机に乗せるほどの巨乳……(笑)作品では触れられませんが、アプリ「comico」でのコメント欄はこのことでよくざわついていました。感想をすぐ共有できるコメント欄は、アプリ連載漫画ならではの漫画の楽しみのひとつでした。
アニメでは森子役を能登麻美子、林役を鈴木崚汰が演じます。
ゲーム序盤で困っていた森子を助け、自分の加入していたギルド(ゲームのプレイヤー同士のグループ)へ誘ったのが桜井です。
現実では日本とイギリスのハーフで金髪イケメンの彼は、仕事に対しての考えがとても真面目で、目上の人が相手でも、間違っていることを指摘せずにはいられない性格。その真摯な姿勢が買われてか、会社では容姿だけでなく、働きぶりにも定評があります。
しかしゲーム内では一転、非常に可愛い女性キャラクター・リリィを演じています。本物の女子より可愛らしい言動によって、彼をリアルでも女子だと思っている森子の心を何度も打ち抜くのです。
そんなフェミニンな面が、現実世界でもふとした時に垣間見れ、そこが読者の人気を集める理由の一つでしょう。
ちなみに心を撃ち抜かれるのは森子だけではなかったようで、リリィは可愛すぎるキャラデザ、言動によって、過去にあるトラウマを抱えています。そこを打破したのが林なのですが、その展開はぜひ作品でお確かめください。軽く描かれるのですが、なぜリリィが林に特別目をかけるのかが分かり、より彼らの仲良しっぷりが微笑ましく思えます。
アニメでは桜井役を櫻井孝宏、リリィ役を上田麗奈が演じます。
桜井優太の上司でもあり、働いていた頃の盛岡森子を知る人物が小岩井です。彼は普段からオンラインゲームをする訳ではないのですが、そのキャラデザはある意味圧巻。
筋肉隆々、骨太で巨乳な「はるみ」という人物を操ります。小岩井が非常に明るい性格なこともあり、その体躯でグイグイ寄ってこられると怖いものがあります。
ちなみに動作環境が悪いようで、ちょくちょくPCがフリーズして棒立ちになっちゃいます。はるみ面白すぎです。ぜひその姿を作品で見てみてください……。
そんな小岩井はリアルが充実していそうな人物。後輩である桜井や昔関わりのあった盛岡に対して距離感を感じさせないフランクさで近づき、悪戯心を発揮して周りを困らせてしまうこともある無邪気なタイプです。
人にあだ名をつけるのが好きなようで、桜井のことを「桜ちゃん」、森子のことを「モリモリちゃん」と呼んでいます。森子に関してはちょっとかわいそうなあだ名ですね……。
自分が楽しむために人々を翻弄して困らせる彼ですが、「他人に損をさせないのが心情」らしく、意外と計算高いその頭脳で結果的には全員を幸せな方向へと導いてくれているのです。なんだかんだとやっぱり『ネト充のススメ』にはいい人しかいないんですよね〜。
アニメでは前野智昭がその役を演じます。
盛岡の家の近くのコンビニでバイトをしている人物が藤本。オンラインゲーム内では「カンベ」という名前で盛岡や桜井が所属しているギルドのリーダーを担っています。
口調が荒かい彼なのですが、実は気配りが出来て面倒見のよい好青年。ゲーム上ではさりげなく、それぞれの人間関係を見ていてフォローしたり、時にはスルーしたり(笑)
そしてリアルでは盛岡が無職であるということを知ってからたびたび相談に乗ってあげます。実は仕事ができるタイプの森子ですが、いかんせん頼りないところがあるので、藤本は「俺と同じコンビニで働いてみるか?」と声をかけたこともありました。どっちが年上だか分かりません。
しかし、立てたルールやマナーはしっかりと守る性格で、ギルド内のメンバーにもその点では厳しく接することがあります。年の割に人格者で人望の厚い藤本。
そんな彼に恋愛感情を抱くギルドメンバーのライラック(本名は今の所明かされていません)に対しては、「恋愛禁止」のルールを守らせるために好意を感じても見て見ぬふりを決めています。
アニメでは藤本役を寺島拓篤、カンベ役を上田麗奈が演じます。
とにかく猫耳が大好きなのがライラック。ゲーム上では職業・魔法使いとして活躍しています。美人な彼女は、リアルではリア充女子大生という外面を保ちながらも、実はオタクという設定です。リアルでの仮面とゲームで明かしている本当の性格にギャップのある人物かもしれません。
大好きな猫耳を布教しまくったり、ついつい何も考えずに林にリアルでの正体を聞いたりと、純粋ゆえに暴走してしまうところのある。しかし女子大生ゆえにまだ幼いところが残っているというだけのことかな、と何だか憎めないお得な性格でもあります。
カンベに想いを寄せているものの、「恋愛禁止」のギルドのマスターである彼にはなかなか想いを伝えられず……。でもリアルでまでその気持ちに振り回されている様子を見ているとついつい応援したくなります。
カンベに想いを伝えられるのかも見所のキャラクター。ぜひ初々しい様子にキュンキュンしちゃってください!
アニメでは相坂優歌がその役を演じます。
林の所属するギルドには夫婦でプレイしているキャラたちもいます。それがヒメラルダとぽこたろう。ゲーム内ではどちらも男なのですが、お嫁さんの方がそのまま普段の言葉遣いなのでオネェのようになってしまっています。
ヒメラルダがキレイ系なのに対し、ぽこたろうはギャグ系。豊満な体系が笑いを誘います。
ちなみにそんな見た目に反してふたりのパワーバランスは嫁強し。いつもPCの争奪戦ではぽこたろうが席を譲っており、正月にはわざわざネットカフェからゲームをするほど。
しかしそれがギスギスしていることはなく、ぽこたろうの人柄の良さからむしろいちゃいちゃにすら見えてしまうほどです。
恋愛展開でハラハラな『ネト充のススメ』ですが、この夫婦枠は見ていて安定感があります。作品のほのぼの枠がヒメラルダ、ぽこたろう夫婦なのです。
アニメではヒメラルダを八木隆典、ぽこたろうを寸石和弘が演じます。
さて、キャラの設定紹介が終わったのでここからは作品の見所をご紹介したいと思います。アニメ化までされるほどの魅力はどんなところにあるのか、その見所を考えてみました。
会社でのあるトラウマから、自ら意志的にニートになる道を選んだ森子。もともとは仕事のできるタイプで、入社5年目から後輩を任されるようになり、これからさらに活躍が期待されていた人物でした。
しかしその道を阻んでいたのが上司の池田。彼女はタイプで、それによって森子も悩まされていました。そしてある日、その溝が決定的になるある出来事が起こり、ついに森子は会社をやめてしまうことになるのでした。
そして森子が退社してから研修としてその会社にやってきたのが桜井でした。彼は森子の有能さを感じさせる過去の仕事を見て、いい状態とは言えない今の会社に戻ってきてほしいと考えていたところでした。そしてそれに協力するのが以前森子と同じ会社に在籍しており、現在は桜井と同じ会社に務める小岩井です。
そんなことを考えている時、たまたま外に出ていた森子と道でぶつかる桜井。体調が悪いことも手伝って気絶してしまった彼女にお詫びを兼ねて近づきはじめます。
また同じ頃、よく行くコンビニの店員である藤本が、同じネトゲをプレイする者だということを知った森子。彼とも交流するようになっていき……。
人と3次元で関わることを放棄した森子ですが、そんな彼女の気持ちをよそにどんどん新しい人付き合いが始まっていきます。そして彼らと関わるうちに、彼女は過去の傷と向かい合うことになるのです。
そんな森子の葛藤、成長の様子が本作の見どころのひとつ。ヘタレながらも素直に前進する彼女の様子は、応援したくなるとともに、自分自身の人生についても考えさせられるものがあります。
2つめの見所となるのが森子と桜井の恋愛展開。今のところ恋愛感情が描かれていないとはいえ、そこに小岩井と藤本も加わり、さらにストーリーを盛り上げていきます。
おそらく小岩井は森子を面白がっているだけ、藤本はライラックとの恋愛展開があるかと思われるので、メインは桜井と森子になるかと感じられますが、まさかの展開がある可能性もあります。この人間関係がどんな方向に進んでいくのかが楽しみなところです。
特にアニメは何かしらのオチをつける必要があるので、漫画ではまだ明かされていないラブストーリーが描かれる可能性もありますよね。
ちなみにメインである桜井と森子の関係性は、お互いに相手がゲーム上で親しくしているキャラだということを知らずに仲を深めていくすれ違いに胸キュンしてしまうもの。あと少しで交わりそうなのに、と読者をドキドキさせながら焦らす展開に引き込まれること間違いなしです。
運命的な出会いに、そこからどんどん展開してく人間関係と、現実ものだとしてもご都合要素が感じられてしまうのが漫画の弱いところ。しかし本作はそこをリアルに感じさせる様々な設定が仕掛けられています。
移ろいゆく季節や、日常で誰もが感じたことがあるであろう小ネタなどがところどころに挟み込まれ、作品を現実味あるものにしているのです。
そのなかでも楽しみながらリアリティを感じさせるのがゲーム設定。そのあるある感は先述したとおり、実在のゲーム「マビノギ」などではないかと言われるほどです。
自動走行のないゲームの始まり、職業を選択する楽しさなどの実際にこのゲームをやってみたいと思うような楽しそうな様子や、初期クエストだと知らずに延々とやり続ける、課金の罠にはまるなどのあるあるがいくつも登場します。
ゲームをやっていない人でも楽しめるこのリアルなネトゲ世界がより作品に入り込める要因のひとつなのです。
- 著者
- 黒曜燐
- 出版日
様々なキャラについて、時間をかけてリアルでの実情や過去が明かされる『ネト充のススメ』。オンラインゲームならではの人間の距離感が新鮮な作品です。
ぜひその面白さを原作漫画で読んでみてはいかがでしょうか?
2017年8月の編集部公式アナウンスによると、作者の休養が必要なため連載再開ができるところまでは至っていないとのことですが、気になるところで休載してしまっているので、作者の体調回復と連載再開を気長に待ちたいですね。
本作は社会人の方もそうでない方も、自分の仕事への認識や、これから自分が社会でどう存在していくのかを考えさせられる作品でしょう。登場人物ひとりひとりの感情や思惑にリンクして、どんな立場の方が読んでも楽しんで何かを学ぶことができる作品になっていると思います。スマホがあればcomicoのアプリで簡単に読むことができるので、ぜひチェックしてみてください。
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