comico人気作『遠くの日には青く』の魅力徹底解説!意味と由来も沁みる

更新:2021.11.26

漫画アプリとして有名なcomico。今回は掲載作品のなかから、人気を集めている漫画『遠くの日には青く』の魅力を徹底解説いたします。独特の世界観とその由来は、きっと心沁みるものとなるでしょう。

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漫画『遠くの日には青く』の魅力をネタバレ解説!意味と由来を知るとさらに深い

 

『遠くの日には青く』は、長くても3話から4話、短ければ1話完結の短いお話が中心となっています。本作の魅力といえば、詩的な台詞回しや、謎かけともいえるような考えさせられる内容、そして無造作な線画で描かれた可愛らしい雰囲気の絵柄といえるでしょう。

作者は西造+世叛。変わった名前かと思いきや、実はこの作品には2人の作者がいます。西造という作画担当の女性と、構成などを担当している世叛という男性の2人で作られている作品なのです。一時期は西造の妊娠のために長期的な休載期間もありましたが、2人いわくご夫婦ではないとのこと。

2人によって作られた物語は、独特の透明感あふれる世界観が特徴的といえるでしょう。短編ながら、結末が読めない展開や、余韻を残すようなラストには、毎回コメント欄で「解読班」なる人たちが作品のメッセージを解説してくれて初めて理解できるようなものもあるほど。

今回は『遠くの日には青く』の魅力を具体的に紹介していきます。

 

著者
西造+世叛
出版日
2015-10-30

漫画『遠くの日には青く』のタイトルの意味と由来は?

まず気になるのは、本作の一風変わったタイトル「遠くの日には青く」ではないでしょうか。このタイトルの意味と由来については、作者が4コマにて説明をしているのです。その4コマでは、1人の少女が主人公となっています。

1コマ目では、少女は両手のひらに水をすくい取っている絵が描かれています。「掬いとった水は透き通っているのに、遠くの海はあんなに青い」少女は水を見ながらそう思うのです。そして2コマ目には浜辺に立つ少女の姿。彼女の両手の水は、海水だったようです。

2コマ目で彼女は「吸いこんだ空気は無色なのに遠くの空はあんなに青い」と思い、3コマ目で続いて、「私が生きる今日はこんなにもとうめいなのに今を生きる私はこんなにもとうめいなのに」という言葉だけが書かれるのです。少女の姿はなく、海と空を描いた背景だけが3コマ目の絵柄となっています。 そして続く4コマ目。

少女の強い意志を帯びたように感じさせる表情のアップで、ラストを迎えるのです。そのコマの端に、「遠くの日には青く」というタイトルが書かれ、タイトルが少女の独白であることがうかがえるようなラストとなっているといえるでしょう。

水も、空気も、近くで見れば透明なのに、遠くに見える海や空はとても青い。それなら、今を生きている私も、いつか遠くの日になった時、青く見えるだろう……そんな内容の4コマでしょうか。 

遠くの日の「私」を、遠い未来の大人であると解して、大人が青く美しい色を発することの重要性を読み取る読者もいれば、逆に遠くの日の「私」は、過去の自分であると理解して、「今」も遠い未来から見返せばまた違った色、青い色に見えると読み取った方もいるようです。

どちらにしろ、「今」が遠くに見える青色のように美しいものではなく、ただの透明であったとしても、「今」は必ず遠くから見れば青く見える。そのために、「今」を生きていく……。そんなメッセージを読み取ることができる内容です。

最後のコマでの、少女の精悍な表情は、「今」をしっかり生きていく覚悟を決めたような、そんな表情のようにも見えます。

魅力をネタバレ解説1:ホラーもあり!

魅力をネタバレ解説1:ホラーもあり!
出典:『遠くの日には青く』1巻

『遠くの日には青く』で描かれる物語は、先ほど紹介した4コマのような、意味深でメッセージ性のあるものだけではありません。他にもさまざまなジャンルの短編があるのですが、意外にもホラーな世界観も描かれています。

優しい絵柄は、ホラーからほど遠い印象を受けますが、ぞっと背筋が凍るような内容の物語もたくさんあるのです。さまざまなホラー作品がありますが、そのなかでももっとも多く描かれているのが「なつめちゃん」シリーズです。

特に、「なつめちゃんと僕」は、「なつめちゃん」シリーズの第1作目であり、薄ら寒くなるような内容となっています。

小学生の「僕」の幼馴染のなつめちゃんは少し不思議な女の子。「ユーレイ」や「オバケ」がいるなど、変なことを言うので、クラスメイトから怖がられていました。お母さんから、なつめちゃんと仲良くするように言われて一緒にいる「僕」ですが、変なことを言うなつめちゃんはあまり好きではない様子。

「ちいさいおじさんが葉っぱに隠れて歩いているの」と、なつめちゃんが変なことを言った時、「僕」は少し苛立ったように、「そういうのやめた方がいいよ」と言うのですが……。

「僕」が苛立った結果、起こったまさかの結末。そしてそれに対するなつめちゃんの反応に、ぞっと背筋が凍ってしまうことでしょう。

魅力をネタバレ解説2:ギャグもあり!?

魅力をネタバレ解説2:ギャグもあり!?
出典:『遠くの日には青く』1巻

ホラーも描かれている本作は、ギャグストーリーも収録されているのです。今回は、「白雪姫と女王様」というお話を紹介します。

こちらも「なつめちゃん」シリーズと同じく、珍しく短編のシリーズとしてたびたび登場します。

「白雪姫」シリーズの第1作目であるこちらの物語は、本作ならではの、オリジナルの白雪姫が登場します。本来の白雪姫は、魔法の鏡が「世界で一番美しい」とした白雪姫を、継母が妬んで、城から追い出してしまうお話ですが、『遠くの日には青く』で描かれる継母、女王様はそうではありません。

鏡が「白雪姫がもっとも美しい」と言えば、「でしょー♡♡」と答える始末。そんな、白雪姫を溺愛する女王様のもとで、なぜ白雪姫は城を出ていくことになったのでしょうか?そして、その女王様の溺愛ぶりはどこまで暴走していくのでしょうか……。もとのお話の斜め上をいくキャラ設定に、笑いが止まらなくなるでしょう。

魅力をネタバレ解説3:やっぱり透明感ある儚げな話が最大の見所!

魅力をネタバレ解説3:やっぱり透明感ある儚げな話が最大の見所!
出典:『遠くの日には青く』

ホラーも、ギャグも面白く魅力的ですが、透明感ある独特の物語が展開される1話〜3話ほどで完結するお話もおすすめです。

ここで紹介するのは、「シンクタンク」というお話。登場人物の会話が非常に少ない、無声映画のような構成の物語です。

主人公は若い男性。彼はとある部屋にいて、そこを「仕事場」としています。セリフのない描写で、彼が1人でその部屋に入ってくるたくさんの本を整理したり、スピーカーで音を聞いたり、モニターで映像を見たりする場面が淡々と描かれます。

大量の書類がどこからともなく入ってくる部屋の不思議な構造から、その「仕事場」が、単なる部屋ではなく、何かを暗示するような表現であると想像できるでしょう。

忙しそうにしながらも充実してそうな彼を、突然地震のような大きな揺れが部屋を襲うことで、状況は一変します。

揺れの後、まるで機能を停止させたかのように、あかりが消えた「仕事場」。温度もどんどん下がっているようで、彼は1人、孤独に凍えていってしまうのです。しかし、そこに突如として音が響き……。その音によって部屋の様子は再び変ります。そして、描かれる衝撃のラスト……。

彼の置かれた状況がどんなものだったのかがラストで描かれた時、きっとその切なさに胸が締めつけられるような思いになるでしょう。ラストまで読んだ時、それまで意味がわからなかった本や書類、そしてスピーカーから流れてくる音の正体が判明します。もう一度読み直さずにはいられない、そんな物語です。

著者
西造+世叛
出版日
2016-05-11

独特の世界観がある『遠くの日には青く』は、メッセージ性のあるものから、笑って読めるギャグ。そして、ちょっとゾッとするようなホラーまで幅広いジャンルの短編が収められています。その深い表現を楽しむのもオススメですが、可愛らしい絵柄で描かれるキャラの数々も漫画好きの方には見逃せない魅力となっています。


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