『異世界食堂』のキャラクターデザインを手がけたイラストレーターのエナミカツミ。繊細で美麗なタッチで描く作画は、ファンタジーを中心にさまざまな作品の魅力を引き立たせています。今回は、彼が作画を担当したライトノベルを5作品ご紹介します。
エナミカツミは、2003年までソフトウェア会社のグラフィッカーとして働き、2004年からフリーのイラストレーターとして活動をしています。
ゲームでは「スターオーシャン4」や「英雄伝説Ⅶ」、「ワールド エンド エクリプス」。書籍では『バッカーノ!』や『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・ナイツ』、『異世界食堂』など、数々のキャラクターデザインを務め、知名度、人気ともに高いイラストレーターです。
彼のイラストは繊細かつ美麗で、キャラクターの個性を引き出しており、作品をより魅力的に感じさせてくれます。
オフィスビルからほど近い商店街の、雑居ビルの地下1階にある「洋食のねこや」。洋食以外の料理も豊富に取り揃え、サラリーマンの胃袋を満足させるその店は、何の変哲も無い食堂です。
しかしその食堂にはある秘密が隠されていました。
毎週土曜日に異世界とつながり、さまざまな場所に出現した扉から絶品料理を求めてやってくる異世界の住人たち。彼らはこの店のことを「異世界食堂」と呼びます。
- 著者
- 犬塚 惇平
- 出版日
- 2015-02-28
本作は2013年から小説投稿サイト「小説家になろう」で連載され、2015年に主婦の友社のヒーロー文庫から書籍化されました。また、2016年から雑誌『ヤングガンガン』にて漫画版を連載しているほか、2017年7月からはアニメが放送されています。
現実世界にある「ねこや」は土曜日だけ異世界と通じ、突如出現する扉からやってくる異世界の住民に料理を振る舞います。
トレジャーハンターに大賢者、エルフにリザードマンなど、訪れる種族はさまざまです。普段は関わることのない種族たちが「ねこや」で出会い、分け隔てなく絶品料理を楽しんでいるという一見不思議な空間は、とても温かな空気に包まれています。
エナミカツミのイラストには幻想的な雰囲気があり、異世界に通じるドアには思わず吸い込まれそう。登場人物たちも個性豊かに描かれており、本作の世界観がしっかりと表現されています。
基本的に1話完結型で、各話でスポットがあたる異世界の住人の育ちや、食べる料理について詳しく描かれ 彼らについてより深く知ることができます。同時に、料理をより鮮明に想像することができるので、読んだ後は物語で取りあげられた料理を食べたくなってしまうことでしょう。
グルメファンタジーの決定版、『異世界食堂』を、ぜひ手に取ってみてください。
両親がその場のノリとテンションで南の島への移住を決断してしまったことで、南の島での生活をすることになった主人公・駆駒将は、手違いにより極楽な楽園生活ではなく、サバイバル生活をすることになってしまいました。
しかし、南の島で出会った異国風の4人の美少女の助けにより、不慣れな南の島生活もなんとか拠点を築けるように。
雲ひとつない青空と緑豊かな森、エメラルドブルーの美しい海。美少女たちとの新しい生活はまるで楽園のようです。しかし、この島にはあるとんでもない秘密がありました。
宇宙での領土を獲得する順位を決めるため、少年・少女による代理戦争が行われていたのです……。
- 著者
- 水樹 尋
- 出版日
- 2013-05-02
本作は『真・天地無用! 魎皇鬼外伝 天地無用! GXP』の約10年後の物語を描いた作品です。
南の島の「盤上島」で起こる代理戦争では、代案として申請した唯一の特技「じゃんけん」が「野球拳」という形で採用され、その才能がいかんなく発揮されていきます。
平凡だった少年が、ある条件下で活躍しだすというストーリーは王道ですが、主人公の将とヒロインたちが持つ独特の魅力が、オリジナリティを生んでいます。また、前作「天地無用」シリーズに出てきたキャラクターも登場しているため、古くからファンという人にはたまりません。
ここでのエナミカツミのイラストは、南の島を舞台ということでとても色鮮やかで、緑豊かな南の島を彩る美少女たちも美しく描かれています。
本作だけでも十分楽しめて、「天地無用」シリーズを通して読むとより一層深みが出る『パラダイスウォー』を、ぜひ読んでみてください!
「この世で最も吸血鬼らしくない吸血鬼」と言われている主人公、ゲルハルト・フォン・バルシュタインは、姿から性格、コミュニケーションの方法だけでなく、与えられた称号に至るまですべてが今までになく珍妙です。そんな彼が治めているグローワース島では奇妙な事件が次々と起こります。
吸血鬼や人間だけでなく、半人半鬼や食人鬼も合わさってくり広げられる、奇妙な偶像劇です。
- 著者
- 成田 良悟
- 出版日
本作の主人公・ゲルハルトは、「全身が液体の吸血鬼」という今までにないタイプの吸血鬼です。肉体を持たないというだけでなく、趣味はDVD鑑賞にネットサーフィンなどという、従来の吸血鬼では想像がつかないような一面を持っています。
彼以外のキャラクターも特徴的に描かれており、ハイテンポでコミカルな物語は、読めば読むほど味が出てきます。脇役っぽいキャラクターまで強烈な個性を持っていて、登場人物全員が主人公!といっても過言ではありません。吸血鬼を題材にした作品は多いですが、『ヴぁんぷ!』は異色の雰囲気が漂い、これまでの吸血鬼モノとはまったく別物です。
エナミカツミのイラストは、設定の濃いキャラクターたちの特徴をしっかりと描きだしており、より具体的な姿を読者たちに見せてくれます。
吸血鬼モノが好きだけど、マンネリを感じている人は1度手に取ってみてください。
「アドウェナ・アウィス号」で、錬金術師たちが「不死の酒」を飲んでから約200年後、不死者の能力によってたくさんの仲間を喰った錬金術師のセラードは、わずかに得た不死の酒の調合法をもとに、出来損ないの完成品を生み出しました。
しかしその不完全な酒が、ギャング組織マルティージョ・ファミリーの構成員フィーロの昇進式に紛れ込んでしまいました。セラードは酒の行方を捜すため、彼の配下のエニスに調査をさせます。
すると、マルティージョ・ファミリーには完全な不死の酒の調合法を知っている、錬金術師のマイザーがいるということがわかったのでした。
- 著者
- 成田 良悟
- 出版日
本作は、3つの時代を描く「バッカーノ!」シリーズの第1弾で、成田良悟のデビュー作。舞台である禁酒法時代末期のアメリカで、個性的なキャラクターたちがドタバタ偶像劇を展開します。
物語には主に、200年前に「不死の酒」を飲んで不死者になった錬金術師たちや、変な変装をする不死者の泥棒カップル、そして、組織幹部の多くが不死者というギャング集団などが登場し、不死の酒を巡って争います。
各登場人物の視点で物語が進むため、切り替わりは激しいですが、キャラクターそれぞれの特徴や行動が細かく描写されているので、混乱せずに読み進めることができるでしょう。
アニメ版を見た方もいるかもしれませんが、小説で読むからこそ気づけることや、解決する謎があるはずです。また自分のペースでゆっくり読み込むことで、本作をより深く楽しむことができるでしょう。
ここでのエナミカツミのイラストは、作品の持つミステリアスな雰囲気を描き出し、腹の底の見えない登場人物たちをよく表していて、一層「バッカーノ!」シリーズを魅力的に感じさせます。
また近年のライトノベルに多い、いわゆる萌え系や王道系の要素は一切ありません。ライトノベルに苦手意識を持っている方も、ぜひ1度手に取ってみてください。
父と同じ「怪造学者」になるため、「古頃怪造高等学校」に入学した空井伊依。異世界「アンダカ」に棲息している怪造生物と共存できる世界にしたい!という夢を胸に抱きながら、高校生活をスタートさせます。
夢と希望に満ちあふれた平和な学園生活を送るつもりの伊依ですが、ある大事件へと巻き込まれてしまうのでした……。
- 著者
- 日日日
- 出版日
- 2005-05-29
角川学園小説大賞を受賞した「アンダカの怪造学」シリーズの第1巻です。
怪造学とは「虚界(アンダカ)」に住んでいる快造生物を召喚し、利用する学問です。主人公の空井伊依は、その怪造学を研究する快造学者(モンスティスト)となって、怪造生物と共存していく世界を作ることを夢見ています。伊依はとても前向きな性格で、どんな困難が立ちはだかっても自分の理想を突き通していける少女でした。
第1巻では、彼女が古頃怪造高等学校に入学したころの様子が描かれています。落ちこぼれ扱いをされながらも、明るい性格で人を寄せ付ける伊依が、怪造生物や友達を通して事件を解決し、彼女自身も成長していく、というのが本作の大まかな流れです。
エナミカツミは伊依をはじめ、ドクロの首飾りとして登場している伊依の父や、伊依を信頼している怪造生物、そしてクラスメイトなど、キャラクターそれぞれの個性を繊細なタッチでしっかりと表現し、物語のイメージを読者に提示してくれています。
シリーズを通して成長し続けていく彼女の姿を、ぜひ見守ってあげてください。
いかがでしたか?物語の印象を壊さない繊細で美麗なエナミカツミのイラストはファンタジーものからマフィアものまで、どんな作品でもつい手に取ってしまうくらい物語の魅力を引き出しています。
ぜひ1度チェックしてみてください。