「青春ブタ野郎」シリーズや「さくら荘のペットな彼女」シリーズで有名なイラストレーター溝口ケージ。彼が描く女の子は線画・色彩共に柔らかく透明感があり、萌えることで有名です。今回はその魅力が存分に詰まった代表作を4冊ご紹介しましょう。
溝口ケージは主にライトノベルの挿絵を担当している人気イラストレーターです。透明感のある柔らかい雰囲気を纏った作風が特徴ですが、萌え要素の盛り込まれた可愛らしい女の子のイラストにも定評があり、多くのファンに支持されています。
また、溝口は元々同人誌の作家として活動をしており、「他人がデザインしたキャラクターを自分の絵柄と調和させて描く作業は物凄く好き」(『電撃萌王』2013年4月号から引用)と語っています。イラストレーターとして名を馳せた後も「NtyPe」というサークル名で同人誌の活動を継続中です。
一方、趣味の格闘ゲームは相当な腕前で、ニコニコ動画に「北斗の拳」のコンボ動画を配信する一面も。自らを「描くゲーマー(絵を描く格闘ゲーマー)」と名乗っています。
ライトノベル作家・鴨志田一が執筆した「青春ブタ野郎」シリーズ1作目。小説だけでなく、コミック化、ユーザー参加型のラジオドラマ化もされている人気作品です。
主人公は高校2年生の梓川咲太。ある日地元の図書館に行った咲太は、およそ場所に似つかわしくないバニーガール姿の少女を発見します。それは活動休止中の人気女優であり、咲太の高校の先輩でもある桜島麻衣でした。
しかしバニーガール姿の麻衣は、咲太以外の人々には見えていないようで……。
- 著者
- 鴨志田 一
- 出版日
- 2014-04-10
タイトルが長く印象的な「青春ブタ野郎」シリーズ。中でも本作は「バニーガール」という男性目線を惹きつけるワードを用いているため、そのタイトルから少しセクシーなラブコメを期待してしまう方も多いのではないでしょうか。しかしヒロインである麻衣の登場がバニーガール姿であるものの、残念ながらセクシーな要素はほとんどありません。
物語のキーワードは「思春期症候群」です。これは実際に医学用語として使われている言葉で、思春期に起こりがちな精神や身体の失調、非行、摂食障害などを指します。一方「青春ブタ野郎」シリーズではファンタジー要素を加え、心の傷が実際の傷として現れたり、他人から存在を忘れられてしまうと透明人間になったりするなどのオカルト現象として用いています。
主人公の咲太、ヒロインの麻衣など年頃の登場人物の多くが、何らかの思春期症候群に悩まされているこの物語。透明人間化してしまった麻衣を、「恋心」と「ちょっとした下心」を隠した咲太が助ける、というストーリーです。
「空気を読む」ことがとても常識的なこととされる現代社会において、麻衣の置かれる立場には深く考えさせられます。また咲太の妹・花楓が、連絡ツールのちょっとした既読スルーからいじめを受け病んでいる様子は、決して他人事とは思えないでしょう。
そして現実社会の問題点に深く切り込んだ本シリーズにおいて、その存在感を軽く、読みやすくしているのは透明感のある儚げな溝口ケージのイラストです。重くなりすぎないよう柔らかく、愛らしいタッチと色合いで描かれた登場人物たちはとても魅力的で、物語に癒しを与える存在と言えるでしょう。
ぜひ癒されるイラストと共に思春期症候群を味わってみて下さいね。
本作は小説だけでなく漫画化、テレビアニメ化、シュミレーションゲーム化もされた、鴨志田一の代表作です。
水明芸術大学附属高校(スイコー)に通う主人公の空太は、ペット厳禁の学生寮で猫を飼っていたことがばれ、問題児の巣窟と言われる悪名高き「さくら荘」への引っ越しを余儀なくされることになりました。
やがて春になり、転入生として世界的天才画家・椎名ましろがさくら荘にやってきます。天才美少女は何としてでも自分が守らなければと意気込む空太でしたが、ましろの実情は……。
- 著者
- 鴨志田 一
- 出版日
- 2010-01-10
ヒロインであるましろは画家としてかなりの才能を持っていますが、私生活では迷子になったり、部屋がグチャグチャだったり、洋服もきちんと着ることができなかったり、という短所の多い人間。そんな彼女を主人公の空太が、手取り足取り世話をして成長させていく物語です。空太とましろ以外のさくら荘のメンバーもどこか欠点のある人ばかりで、彼らも個々に成長を遂げていきます。
溝口ケージ特有の優しく愛らしい挿絵はもちろん、ワチャワチャしたギャグのようなやり取りもコミカルな挿絵にされています。本作品では女性にも好まれる親近感のある挿絵が楽しめますよ。
また男女混合の寮が舞台となりますので、物語にはほんの少しですがサービスシーンもあります。しかし溝口ケージのイラストはそこまできわどく描いておりませんので、電車の中などでも安心して読むことが出来るでしょう。
育成ゲーム好きな方、寮に憧れのある方はぜひ手に取ってみて下さいね。
イラストレーターの溝口ケージが企画・原案も手掛けた、お仕事系ラブコメファンタジー小説です。イラストレーターを主人公にした珍しい作品となっています。
主人公・京橋悠斗はアニメ化された作品も持つプロのイラストレーター。ある朝、自室で目が覚めた悠斗の隣に居たのは、アニメのコスプレをした女の子。何が起こったのかほとんど覚えていない悠斗ですが、どうやら前の晩、同人誌のイベントの打ち上げで売り子をしていた女の子をお持ち帰りしたようで……。
- 著者
- むらさき ゆきや
- 出版日
- 2016-11-25
本作は本職のイラストレーターである溝口ケージが企画・原案を行っているため、業界あるあるや裏話が多数散りばめられています。イラストレーターを目指している方はもちろん、ライトノベルを愛読している方々にとっても、大変興味深い作品でしょう。
そして主人公・悠斗とヒロイン・乃ノ香の出会いは同人誌のイベントですが、溝口ケージ自身も同人活動を積極的に行っていることで有名です。そのため、イラストレーターと同人誌の繋がりも実にリアルに描かれています。
本作に出てくる女の子たちはすべて、とても魅力的で可愛い女性ばかりです。文章にもきわどいセリフが多数散りばめられていますので、それに合わせて溝口ケージのイラストもセクシーで愛らしく描かれています。
かなりグラマラスな体形でありながらも、ヒロインの乃ノ香は14歳。現実であれば大問題になりそうな設定ですが、そこはファンタジー小説。年下の女性がタイプという男性や、妹が欲しい!という読者にとっては、悠斗の姿は大変羨ましく見えるでしょう。
漫画を描くことが好きな方、ライトノベルに興味のある方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。
本作は大人気作品である「僕は友達が少ない」シリーズのアンソロジーコミックです。溝口ケージは表紙を担当。その他4人のイラストレーターがカラー画を、19組が原作のパロディコミックを執筆しています。
「大勢のすごい作家さんたちが集まってくれて感激しました。まるで友達が少なくないかのようです。 平坂読」(『僕は友達が少ない 公式アンソロジーコミック』から引用)
ライトノベルファン必見の一冊ですよ!
- 著者
- ["溝口ケージ", "okiura", "よう太", "緋賀ゆかり", "いたち", "田口囁一×春川三咲", "山田孝太郎×三浦勇雄", "文倉十 他"]
- 出版日
- 2011-10-22
アンソロジーコミックとは一つの原作に対して複数の作家が寄稿して作られたコミック本のことです。一見、同人誌と酷似していますが、出版社が出版し一般の書店に並ぶもののみが「アンソロジーコミック」と呼ばれています。
原作となる「僕は友達が少ない」シリーズは、友達が少なく孤立し気味な主人公の少年が、似たような境遇の女子たちと学園生活を送る、通称「残念系青春ラブコメ」です。公式アンソロジーコミックではその登場人物たちにまつわるパロディコミックを主に掲載。そのラインナップは山田孝太郎、文倉十、春野友矢など、ライトノベルを中心に活動する錚々たるメンバーです。
中でも溝口ケージはコミック本の顔である表紙を担当しており、柔らかく愛らしい女性像がカラーで十分に堪能できます。
原画に寄せて描かれたイラストや、全くオリジナルで個性的なイラストなど、手がけたいたストレーターによってさまざまな違いがあり、収録作の半分以上は原作を読んだことのない方でも楽しめるものとなっています。
同人誌活動や格闘技ゲーム好きとしても有名な多趣味なイラストレーター・溝口ケージがイラストを描く大人気作品を4冊ご紹介しました。溝口は趣味も含めた多くの活動内容を糧にイラストレーターとしての幅を広げており、読み手を楽しませ、納得させることの出来る実力派イラストレーターです。ぜひ作品を手に取ってみて下さいね。