兄妹。それは親を除けば、最も近しい異性です。ひとつ屋根の下に住む年頃の男女、ドラマが生まれないはずがありません(基本的にフィクションに限る)。今回は「兄妹」にスポットを当てて、男性女性ともにおすすめできる漫画5作品をご紹介していきます。
石井春子と守は仲のいい兄妹です。妹の春子は対人恐怖症で、反対に兄の守は社交的。正反対の性格の2人ですが、オタク趣味が一致していること以外にも、ある共通点がありました。それは20歳を越えた彼らが、揃いも揃って、働かないニートだということです。
本作は、ニート兄妹とその家族や友人たちとの、とりとめのないほのぼのした日常のお話です。
- 著者
- 吉田 覚
- 出版日
- 2014-05-09
2013年からWEBコミックサイト「くらげバンチ」で連載中の吉田覚の作品。元々作者のブログにて発表されていた漫画ですが、「くらげバンチ」に掲載されるようになりました。
ニートとは、いまさら詳しく説明するまでもなく、就学や就活、就労していない人々のこと。石井兄妹もそんなニートで、ずばりタイトル通りに働いていない2人です。ただ、ひと括りにニートと言っても色々あるように、兄妹のタイプは異なります。
妹はニートと聞いてイメージされるような、典型的な引きこもりニート。対する兄は比較的アクティブで知的、過去には就労していたこともあり、なぜいまニートなのかがわからないハイスペックぶりです。
タイプの異なるニート同士の日常のギャップ、交友関係がある一般人とのギャップ……この差異がかみ合ったりかみ合わなかったりして、ほのぼのした笑いを生み出しています。
彼らの家族をはじめ、友人たちはいい人ばかりで、ニート生活にも好意的。優しい環境なのは結構なことなのですが、それでいいのか石井兄妹!と思わず読者の方からツッコミを入れたくなってしまいます。
主人公の「うまる」こと土間埋(どまうまる)と、兄のタイヘイは、「コーポ吉田」の一室に住む兄妹です。
うまるは誰からも羨まれる美少女女子高生――なのですが、ひとたび家に帰ればその本性を現します。対外用とは打って変わって、ぐうたらわがままし放題です。誰が呼んだか「干物妹(ひもうと)」うまる。そんな彼女に、タイヘイはいつも振り回されてばかりいます。
- 著者
- サンカクヘッド
- 出版日
- 2013-09-19
本作は2013年から「週刊ヤングジャンプ」で連載中のサンカクヘッドの作品。外面だけはいい、うまるの学校生活と普段の生活のギャップを描いた日常コメディです。
本作の特徴は、とにかくうまるの強烈なキャラクターに尽きます。容姿端麗、品行方正、成績優秀、誰が見ても完璧な美少女。そのうまるが、帰宅するなり別人としか思えない2頭身に縮み、ジャンクフードを漁りながら漫画やゲームに興じるのです。
彼女の本性は兄(と読者)以外誰も知らず、というか兄以外には同一人物と認識されていません。デフォルメ姿への変身(?)現場を目撃されても、なぜか都合良く認識されないというおかしさです。
彼女のわがまま放題、傍若無人っぷりは自堕落の極みで、ここまでくれば逆に痛快。デフォルメ時のトレードマークである謎のハムスターフードも可愛らしく、段々とクセになってきます。
全編ほぼデフォルメ姿のセルフパロディ『ひもうと!うまるちゃんS』や、うまるの友人海老名菜々が主役のスピンオフ『秋田妹!えびなちゃん』も、本編をふまえて読めば爆笑必至。
2017年10月からは、テレビアニメ第2期『干物妹!うまるちゃんR』も始まります。予習、復習のためにもぜひ1度読んでみてはいかがでしょうか。
高校2年生になり、順風満帆な青春を送る主人公の田処志乃(たどころしの)。恋に、友情に、バイトに大忙しです。はた目にはいわゆる「リア充」をしている彼女には、人には言えない悩みがありました。
周囲にはひとりっ子で押し通している彼女には、実は引きこもりの兄、保(たもつ)がいたのです。ところが、そんな保が急に社会復帰を目指し始めました。本来であれば歓迎すべきことなのですが、これまで取り繕ってきた日常が壊れる危険に気付いて、志乃は大慌て……。
- 著者
- 日暮 キノコ
- 出版日
- 2015-09-23
本作は「月刊モーニングtwo」に連載されていた日暮キノコの作品。『喰う寝るふたり住むふたり』でアラサー同居男女の生活を描いた作者による、兄妹の微妙な関係をテーマにした漫画です。
志乃は高校デビューを果たし、友人にも恵まれ、人並みに恋をする普通の女子高生。彼女が兄の存在を隠していたことにはわけがあって、引きこもりの保のせいで、中学時代に白い目で見られて嫌な思いをしていました。そのため、父親の引っ越しを機に、新天地となる高校では兄を抹消することにしたのです。
一方の兄、保。20歳の節目に心機一転、家族の、とりわけ妹の負担を減らすことを心に決めました。社会から隔絶していたせいか、あるいは生来のものなのか、その行動はいちいちズレがあるものの、妹への想いはひしひしと伝わってきます。
とはいえ、ずっと邪険にしていた保から、急に兄らしく接するようになられては志乃も困惑してしまいます。思春期であることも相まって素直になれません。
4年という長い時間、兄は部屋を閉ざして引きこもり、妹は兄に対して心を閉ざしていました。保の自立への意志を契機に、兄妹はお互い心を開いて少しずつ歩み寄っていくことになります。
果たして兄は社会復帰できるのでしょうか?そして2人は、4年前の仲の良かった兄妹関係に戻ることができるのでしょうか?
主人公の名前は沖康子。彼女はちょっと勉強は苦手ですが、ごく普通に学校に通い、ごく普通に恋をする、ごく普通の女子高生です。でもただひとつ普通と違っているのは、彼女の兄の健児が元ヤンキーだったということです。
両親と死別し、2人きりで暮らす兄妹。ヤンキー上がりの健児は、口調は乱暴なのに過保護気味です。日々の厳しい躾に康子は辟易し、今日も飽きずに兄妹喧嘩をくり返しています。
- 著者
- アルコ
- 出版日
- 2005-08-25
本作は2005年から「別冊マーガレット」で連載されていたアルコの作品。2008年にはテレビドラマ化もされました。
元々は全4巻で完結していたのですが、ドラマ化に合わせた再連載によって5巻目が刊行されています。続きを匂わせつつも、2017年現在続刊は出ていません。今後なんらかの反響があり次第、といったところでしょうか。
康子は夢見がちな少女。両親と死別したわりに影を感じさせない明るい性格なのは、健児の気遣いのなせる技でしょうか。健児の過保護、過干渉が悪いのか、あるいは思春期特有の反抗か、兄に対しては常に反発しています。遠慮のないあけすけなもの言いは、内心の信頼の現れなのでしょう。
元暴走族の総長で、今でもヤンキーの風格が残る健児のインパクトは強烈です。妹想いなのは間違いないのですが、親代わりのつもりなのか康子には非常に厳しく接します。口調はともかくとして、言うことがいちいち正論なので、彼女からは余計に反発されている様子。元ヤンだけあって迫力満点なのですが、身内の気安さか康子はほとんど意に介しません。
そんな健児が妹を養うためにしている仕事が、なんと漫画家。それも成人向けです。アシスタントには暴走族時代の手下を使っていて、とにかく絵面が凄いことに……。
自身の勉強不足のせいで塾に無理矢理入れられた康子は、そこで椿純(つばきじゅん)という秀才の少年と運命的に出会います。もちろん健児がまともに交際を認めるはずがありません。しかも純の姉であるエリカは、健児とは旧知の仲の、元レディースなんです。
思わず吹き出して、ほっこりして、少し感動する。ごく普通の女子高生である康子の意に反して、彼女の日常は波乱に満ち溢れています。
主人公の菊川詩織は、ある日目覚めると病院にいて、自分に関する記憶を失っていました。彼氏の好意や、優しい兄の言葉にも安心することはできません。退院して日常生活に戻っても、違和感は強くなるばかりでした。
友人には裏切られ、家族を家族と思えない。記憶喪失の詩織の居場所は、果たして……。
- 著者
- 池谷理香子
- 出版日
- 2010-06-15
本作は2009年から少女漫画誌「Cookie」で連載されていた池谷理香子の作品です。
物語は詩織の記憶喪失というショッキングなシーンから始まります。優しい兄の明夫、無愛想な妹の真歩の3兄妹。親はおらず、彼らは3人で暮らしていました。しかし、兄妹力を合わせて頑張ろうと明夫に言われても、記憶のない詩織にとってはどこか他人事です。兄は優しくても、妹には嫌われていて、本来は安らぐはずの家に「居場所」を感じられません。
彼氏もいるにはいますが、実は付き合いだしたばかりだということがすぐにわかります。そして親しく接していたはずの女友達には、陰口を言われていたことが判明。しかも過去の自分は、陰口を言われても仕方ないほど派手な交友関係をしていたらしいことも、詩織は知っていきます。
記憶は戻らないまま、過去の自分が曝露されていく……。記憶喪失のうえに、頼れる人がどこにもいないというつらい状況です。
そんな彼女の力になってくれるのが、兄の明夫。記憶喪失の彼女に親身に世話を焼いてくれます。実は事故以前に詩織とは何かあったようで、彼女の素行不良についてもなんらかの関係がある様子です。
自分ではない自分がいたという恐怖。詩織は自らの過去と向き合い、家族と、そして兄と向き合うことになります。全編に渡ってサスペンスを感じさせる謎めいた展開が続き、それがドラマチックに収束していく様は圧巻です。
『シックスハーフ』について気になった方は<『シックスハーフ』最終回までの見所ネタバレ紹介!記憶喪失からの恋【無料】>がおすすめです。ぜひご覧ください。
いかがでしたか?笑いあり、涙ありのラインナップ。「兄妹」と聞いて少しでも惹かれるのであれば、どの作品もきっと琴線に触れること間違いありません。ぜひ1度手にとってみてください。