『うる星やつら』や『らんま1/2』を世に生み出した高橋留美子が12年間にわたって連載をつづけた『犬夜叉』。今までの作品とは一戦を画するハードな展開に息をのむ読者は大勢いました。多くのメディア作品も作られた本作の魅力をご紹介します。
高橋留美子と言えば、数々の名作を作り上げてきた大御所漫画家です。著作の多くは、恋愛とコメディーを主題にした作品でしが、本作は単なるラブコメディーでありません。妖怪がのさばる戦国時代を背景に繰り広げられる、ハードな展開が魅力となっています。
物語には「四魂の玉」という、すべての願いが叶う秘宝をめぐる争いと、複雑な人間模様が描かれています。
もちろん、作者の持ち味であるラブコメ要素も盛り込まれ、キャラクターたちは今にも動き出しそうです。しかし、穏やかな展開ばかりではありません。妖怪によって人は殺され、大地は枯れ、時には主要なキャラクターたちも死の危機にさらされるなど、手に汗握る展開が続きます。
また、作中で繰り広げられる恋愛模様も見どころです。かつて夫婦になる約束を交わしていたにもかかわらず、犬夜叉を裏切った巫女・桔梗と、その生まれ変わりであるかごめ。
彼は裏切られた経験から人を信じられす、かごめは自身が桔梗の生まれ変わりであることで彼に負い目を感じ、死んだはずの桔梗は妖怪の手によって蘇りましたが、彼のことを避けています。三者三様に複雑な心情を抱きながら展開する三角関係からも目が離せません。
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- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
現代の日本に生まれた中学生のかごめ。ある日彼女は、四魂の玉を狙ってやってきた妖怪に引っ張られ、神社の井戸に落ちていきます。
なんとか妖怪を振りきり井戸から這い上がると、あたり一面は大自然になっていました。そして井戸の側に立っていた大樹に、犬の耳をした白髪の少年が封印されているのを見つけます。思わず犬の耳を触っていると、少年は目を覚まし、すぐさま彼女に敵意を向けました。これが犬夜叉との出会いです。
目を覚ました彼は、かごめが戦国時代につれてきたムカデの妖怪が襲い来ることを察知し、襲われているかごめに対して「俺を封印したときのように倒して見せろ」と嘲笑しますが、なぜか彼女が反撃しないことに焦りを見せはじめます。
その様子から、相手が桔梗ではないと気づき、四魂の玉を奪われたくないがために封印を解くことを要求しました。かごめは騒ぎを聞きつけてやってきた村の老巫女である楓に「封印を解いてはいけない」と言われますが、このままじゃ殺されると覚悟を決めて彼を解放し、自由の身になった彼は瞬く間にムカデの妖怪を切り裂き、倒してしまいました。
そして彼は封印を解いたかごめに「四魂の玉を寄越せ」と言って襲いかかります。先ほどの強さを見ていたかごめは恐怖しますが、桔梗の妹である楓の機転によって「言霊の念珠」がつけられ、「おすわり」という言葉に反応し、彼は地面にめり込むほど叩きつけられました。
犬夜叉は四魂の玉を他の妖怪に奪われたくないためにかごめを守りますが、その彼も隙があればかごめから四魂の玉を奪う気マンマンで、かごめの前世である桔梗とは深い因縁があるという、非常に危うい関係でした。
四魂の玉を狙いにやってくる妖怪はどれも狡猾で、ついには四魂の玉を奪われてしまいます。幸い妖怪は退治しますが、その折に四魂の玉は砕け、世界に散らばっていったため、この欠片を集める旅に出たのでした。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 2005-05-18
犬夜叉は、その名のとおり犬の妖怪です。父親はかつて名を馳せた犬の大妖怪で、誰もが恐れる存在でした。そんな父親が妻に選んだのは、ただの人間の女性でした。
大妖怪の父親と、人間の母親の間に生まれた彼は、「半妖(妖怪と人間のハーフ)」という性質から蔑まれる存在となりました。そのため彼には仲間もおらず、孤独な幼少期を送っています。
唯一の異母兄弟である殺生丸(せっしょうまる)もまた彼を蔑み、取るに足らない敵としてあしらわれるなど、その関係はとても殺伐としたものです。
そんな彼も、かつては巫女の桔梗と愛し合う仲にありましたが、彼女もまた彼を裏切って50年間も彼を封印し続け、そのまま死亡してしまいました。
ある日、神社の井戸に落ちたことで現代から戦国時代にタイムスリップしてやってきた少女・かごめ。なんと彼女は桔梗の生まれ変わりで、どんな願いも叶える秘宝「四魂の玉」を体に宿した存在でした。
彼女の持つ四魂の玉を使い、完全な妖怪になると意気込むも、桔梗の妹・楓のとっさの判断により、かごめを襲うことに失敗してしまいます。
「他の妖怪にとられるくらいなら」と、かごめと四魂の玉を守る犬夜叉でしたが、紆余曲折の果てに玉は砕かれ、日本各地に散らばってしましました。玉は欠片であってもすさまじい力を持ち、それを狙う妖怪たちもたくさんいます。その欠片たちを放っておくことはできず、彼らは欠片を集めるべく旅立つことになりました。
旅に出た彼は、はじめこそ周りのすべてを敵だと考えるほどに荒んでいましたが、かごめとの旅で心を癒していき、かつての桔梗といた頃のような、へそ曲がりでありながらも不器用な優しさを持つ男性へと戻っていきます。
ついには戦いの中で毒に侵され、呼吸の止まっていた仲間が息を吹き返したのを確認すると、背を向け「やかましい!泣いてねえ!みんな助かったんだからな!」といって涙を隠すなど、仲間のために涙を流すことまでできるようになるのでした。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 2009-02-18
かごめは、実家の古い神社で祖父・母・弟と4人暮らしをしている普通の女子中学生です。ある日、猫を探して近づいた井戸から現れた妖怪に襲われ、引きずり込まれます。不思議な力で妖怪を振り払い井戸から這い出すと、目に映ったのは見覚えの無い大自然。こうして彼女は、妖怪のはびこる戦国時代にやってきました。
そこで彼女は、自分の前世が強力な巫女の桔梗であることや、自分の中に四魂の玉があること、それによって妖怪たちかた襲われることなどを聞かされ、どんどん物語に巻き込まれていくのでした。
彼女はいたって普通の中学生です。前世がいくら強力な霊力をもつ巫女だったとしても、現代に生まれたかごめには弓矢の打ち方も結界の張り方も、それどころか旅の仕方すら知りません。
しかし、持ち前の負けん気でそれらを修練し、旅の傍らで勉強すらしながらひたすら頑張っていきます。ときには犬夜叉と喧嘩するなどのハプニングも絶えませんが、それでも四魂の玉をどうにかするために奮闘するのでした。
旅を通じて犬夜叉と心を通わし、相思相愛の仲へと至るかごめでしたが、彼女の前には妖怪の手によって復活した桔梗が立ちふさがります。桔梗は彼女の前世、それに犬夜叉のかつての恋人です。互いを裏切り者だと思い込む2人ですが、それでも過去に愛し合った関係は強く、かごめはたびたび疎外感を感じています。
さらにはかごめでなく、桔梗が選ばれてしまう場面もありますが、彼の選択にショックを受けつつも、それでもよいと受け入れる、ひたすらに強い女性として描かれています。
桔梗はかごめを恨んでいますが、それに対しても、「私のことを言えるほどあんたは立派なの!?あんたと犬夜叉に強い絆があるんだったらもっと堂々としていればいいじゃない!」と一喝するほどでした。
前向きで強さを持っている存在として己の道をまっすぐ歩いていく、そんな強い女性がかごめなのです。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 1998-12-01
かつて四魂の玉を守護する巫女であり、犬夜叉を愛した人間の女であり、彼を裏切り、裏切られ、恨みの中に死んだ人間、それが桔梗です。孤独な彼に寄り添った唯一の存在でした。
犬夜叉は完全な妖怪になるために桔梗が守る四魂の玉を狙って彼女に接近します。しかし彼女は、四魂の玉を守護するだけあって、人間のなかでもとりわけ強い霊力を持つ巫女でした。強大な妖怪である彼のことも、簡単に返り討ちにしてしまいます。
何度襲っても軽くいなすだけで殺そうとしない桔梗に、なぜ殺さないのかと彼が訪ねると、彼女は「私は人間であって人間であってはならない。妖怪でもなく人でもない半妖のお前と私は似ている。だから殺せない」と言いました。桔梗もまた、自身の強さから孤独を感じていたのです。
そんな鏡合わせのような2人はだんだん距離を詰めていき、恋仲になります。ある日彼女は犬夜叉にこう言いました。「四魂の玉を使って人間なれ」と、「人間になって共に生きよう」と。
四魂の玉に正しい願いすれば、玉は消えるはずだと考える彼女に、犬夜叉は「四魂の玉が消えればお前はどうなる」と尋ねます。すると彼女は「私もただの人間になる」と告げました。その言葉で彼は、完全な妖怪になるために四魂の玉を狙っていたのにも関わらず、人間として桔梗と共に生きることを誓います。
しかし運命の日、犬夜叉は村を襲い、桔梗を傷つけ、四魂の玉を奪いさります。これにショックを受けた桔梗は彼を射掛けますが、愛する存在ゆえに殺すことはできず、封印という手で眠りにつかせました。そんな彼に桔梗は「私もそちらへ行く」と言い、四魂の玉を抱えて死んでいくのでした。
そんなこともあって、桔梗は蘇るや否や彼らに襲い掛かり、なぜ裏切ったのかと憎悪をたぎらせます。しかし彼に裏切った覚えはなく、すれ違いだということが両者にわからないまま、桔梗は姿を消しました。
それ以来、たびたび犬夜叉の前に現れては、かつての恋慕は今もまだ残っているのだと愛おし気に伝え、一方で自身が死者で生まれ変わりのかごめの存在に苛立ちを覚えるなど、生前には表さなかった女性らしい情感を見せます。
生前は四魂の玉を浄化する巫女として穏やかで慈愛に満ちた存在であり続ける必要があり、感情を抑えていましたが、死後は役目から解放されたからか、喜怒哀楽が激しくなり、少女としての一面をのぞかせます。
死後役目から解放されてやっと感情を露にするというそれこそが桔梗の儚さを表しているのではないでしょうか。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 2004-07-16
奈落は作中の全編にわたって暗躍する黒幕的な存在です。その存在は初期のころから示唆され、幾度となく四魂の欠片を集めるために策謀の糸を張り巡らせ、時には犬夜叉一行と直接対決するなど、アグレッシブな黒幕として彼らに立ちふさがっていきます。
奈落という存在は、生きていた頃の桔梗が看病していた「鬼蜘蛛」という人間が、数多の妖怪に身を差し出したことで誕生しました。そんな「妖怪の寄せ集め」ともいえる彼は、身体を砕かれようと、頭だけになろうと、死ぬことはありません。時には己の足で、時には己の配下を使ってひたすら逃げ切ります。その逃げっぷりは見事なまでに潔く、何と作中で50回以上も逃げおおせているのです。
奈落は桔梗に対し、天敵としての憎悪や殺意を持つ反面、鬼蜘蛛が彼女に持っていた恋心も留めているために、複雑な心境となっています。その心をあさましいものとしてさらに憎悪をたぎらせますが、自分の中にある以上、桔梗を直接手を下すことができません。
鬼蜘蛛を疎み、桔梗を憎々し気に考えていながらも、桔梗が愛していた犬夜叉を憎悪しきっているなど、その心は相反するモノばかりで構成されていました。
あらゆる策謀を企て四魂の欠片をかき集めている奈落。なぜ四魂の玉を追い求めるのか、何を成そうとしているのか、それは誰にもわかりません。奈落自身でさえも完全な妖怪になるためだと言いながら、いざ玉を手に入れた際には取り込むことを無意識に拒んでいました。
最後の決戦、四魂の玉を手に入れ、犬夜叉たちと対面し奈落が思う本当の願いとは……。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 2003-12-05
殺生丸は犬夜叉の異母兄弟で、れっきとした大妖怪の母親から生まれました。そのためか、己の血に誇りを持っている彼は半妖を見下し、さらには犬夜叉が手も足も出ないほどの強さを持っています。
冷酷で非道、そして何より強大な殺生丸ですが、さらなる強さを追い求め、父親から犬夜叉に授けられた「鉄砕牙」という、最強の刀を手に入れるために姿を現します。彼も父親から刀を授けられてはいますが、それは慈悲の心をもって死者を救うとされている「天生牙」という、何も斬れない刀でした。
何の強さも持たない天生牙を忌まわしく感じ、強さを求める殺生丸は最強の刀である鉄砕牙に執着しますが、犬夜叉に封印された鉄砕牙は半妖の彼にしか使えない刀でした。その事実に激高し、さらには鉄砕牙を手にする犬夜叉に動揺して彼を殺そうとしますが、逆に自身の片腕を切り裂かれ、敗北してしまいます。
この戦いで深手を負った殺生丸でしたが、人里で倒れているところを親を殺され言葉をなくした少女、りんに介抱されることから心情の変化が起きていきます。りんは非力な人間でありながらも、一生懸命に介抱し、傷を癒すなど、明らかに今までの彼の価値観にそぐわない存在でした。
しかし、そのりんも人喰い狼に殺されてしまいます。己の近くにいながら死なせてしまった殺生丸は何を思ったのか、慈悲の心でしか扱えぬ天生牙を使ってりんを蘇らすことに成功しました。
以降、邪見という老人のような小鬼と、ただの人間の少女であるりんを従え旅をしますが、相変わらず無慈悲で、最強の妖怪としてあり続けます。慈悲の心をもっているとは思えない存在でありながらも天生牙を使いこなす殺生丸が、心の中ではは何を思っているのか、語られることはほとんどありません。
唯一その心情が語られたのは、物語が佳境に入り、りんが再びの死を迎えた時でした。彼女が死したとき、もう一度天生牙を使おうと刀を抜きますが、二度目の死には天生牙が使えないことを母親から知らされます。
死んだりんを抱きしめ、「天生牙。こんなもののために、お前を死なせてしまった。りんの命と引き換えに得るものなど、何もない」と後悔する場面が、彼が唯一本音を明かしたシーンだったのです。
冷酷無比であり、何よりも強大な妖怪である殺生丸のそんな人間に対する私情を見て、母親は「父親とそっくりだ」とため息をつき、一度だけだと冥界からりんの魂を呼び戻し、りんを蘇らしたのでした。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 1998-05-01
「私の子を産んでくだされ」
この強烈な一言で初登場となったエロ法師、弥勒。ところかまわず女性をナンパしまくり、口説くことに全精力を傾けるというキャラクターでおなじみです。
当初はかごめが持つ四魂が目当てで近づいてきましたが、犬夜叉一行と仲間として行動をともにすることになります。
女たらしの弥勒ですが、珊瑚という恋人がおり、ふらふらしているようで本命は彼女だけ。ふたりのいちゃいちゃシーンはファンの間でもキュンキュンすると人気です。最終的には3人の子供をもうけ、父としての優しい一面も見せます。
また普段は丁寧な口調なのに怒ると一人称も変わり、乱暴な話し方になるなど、少し怖いけれどギャップ萌えをしてしまうキャラでもあります。
そんな弥勒の最大の特徴は「風穴」という呪い。これは彼の祖父が奈落との戦いの時にかけられたもので、奈落を倒さねば代々受け継がれてしまうものでした。
その穴を開ければすべてのものを吸い込んでしまうという最強能力でもありますが、吸い込んだものがそのまま弥勒の体に影響してしまうという欠点があります。
また、最終的にはその穴が持ち主をも吸い込んでしまうという特性もあり、父が飲み込まれていく様子を見ていた弥勒はその恐怖とも戦っていました。
軽いキャラのようで、ギャップがあり、暗い過去を持ち、と好きにならずにはいられないキャラクターが弥勒なのです。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 1999-05-01
妖怪退治稼業を営んでいる村で生まれた珊瑚は、飛来骨という巨大なブーメランと、小さな獣から巨大な空を飛ぶ獣へと変化する猫又・雲母を扱う村一番の手練れです。
ある日までは順調に妖怪退治屋として生きていた珊瑚ですが、奈落の陰謀により村は壊滅、弟の琥珀は死亡し、恨みの中で死の淵から蘇ることになりました。彼女は奈落に「犬夜叉たちが里を滅ぼし、弟を殺した仇だ」と知らされ、彼らを付け狙う存在となりました。しかし死闘の中で誤解が解け、彼女は仲間として迎え入れられることになります。
それ以降、珊瑚は妖怪退治屋としての腕っぷしの強さと知識をもって、犬夜叉一行を支える立場となりました。そんな彼女の性格は男勝りで毅然としていますが、その裏側には繊細で、弟思いの脆い一面を抱えていることがたびたび描かれます。
奈落の配下としていいように使われる琥珀に心を痛め、打ちひしがれる場面も散見されるなど、強さがすべてではなく、むしろ女性としての優しさや脆さを抱えている少女が珊瑚なのです。
犬夜叉一行で、法師をしている弥勒という男性に心を惹かれ、旅を通じて相思相愛となっていくのですが、当の弥勒は大の女好きであるため、各地で他の女の尻を追っかけるたびに、嫉妬に怒る珊瑚が描かれるなど、恋愛に対しても潔癖なところがあるところもまた、彼女の少女らしさをうかがわせる一面でしょう。
また、弥勒が「私は少々無理をしすぎた」と死相の浮かぶ顔で言えば、「置いていくくらいならここで一緒に死ぬ!」と言い切るなどという情の深い一面も、彼女の魅力です。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 2005-12-15
七宝は、7歳児の見た目をしている子狐の妖怪です。普段は自分も妖怪なのに他の妖怪を恐れるという臆病な性格をしていますが、ここ一番では、惚れた少女を守るために犬夜叉たちに立ち向かうなど、奥底では勇気を持つ少年として描かれています。
直接的な戦闘力はなく、狐火で敵を攪乱したり、「狐妖術」という幻術や変化を駆使しておとりを買って出たりすることが多くあります。親を仇である雷獣兄弟を犬夜叉が討ったことが、彼が仲間に加わったきっかけでした。
外見年齢と同じように、子供っぽく遠慮のない性格で、よく犬夜叉に確信をついた言葉を無遠慮に言って殴られるなど、全体的にコメディーリリーフ的な存在として、物語の重さを緩和させています。
また、妙な責任感で「オラがしっかりせねば」が口癖のようになっており、可愛さも頼もしさも持ち合わせた、魅力ある存在です。
- 著者
- 高橋 留美子
- 出版日
- 2002-03-18
雲母は珊瑚と常に一緒にいる猫又です。普段はかわいらしい子猫のような姿をしていますが、戦闘時には巨大化し、珊瑚を背に乗せて戦場を飛び回ります。弥勒と珊瑚、七宝を乗せて飛ぶこともできる力持ちです。
人の言葉を理解し、人間に害を与えることはないなど、非常に賢い妖怪として描かれているほか、犬夜叉の鍛錬の相手を務めるなど、普通以上の強さを持った妖怪であることがうかがえます。
楓は犬夜叉と桔梗の関係を知る唯一の人間です。桔梗が死に、彼が封印された50年間という月日を生き、かつては少女だった楓も本編ではすっかり老婆に。時間の経過を思わせるキャラクターです。
50年間も巫女をやっていたおかげか、かごめが犬夜叉を御すための言霊の念珠をかけられるだけでなく、彼女の前世が姉の桔梗だと初めから見抜き、経験と知識の深さを感じさせます。
作中でも随一の知識を持っており、弥勒と共に結界を張り、犬夜叉を守護したり、その都度薬草を煎じて薬を作り出したりするなど、適確なバックアップをする頼れる存在です。また巫女としてだけでなく、1人の人間としても人生経験豊富で、恋愛の助言などもしてくれます。
蘇った姉に対しては、思い悩むことなく「安らかに成仏してほしい」と願いました。長い人生を生き切って完成した人間が、楓なのです。
本作は、高橋留美子が12年もの歳月をかけて完成させた物語だけあって、完成度が高い作品です。脇役一人ひとりに物語があり、人生がある。そしてハードな世界でありながら強く生きる彼らに、あなたはきっと息をつかず最後の一ぺージまで物語に浸ることができるでしょう。