「週刊少年ジャンプ」にて連載されていた大人気漫画「デスノート」。その人気から、映画やドラマなどのさまざまなメディアに進出しており、原作が終わった今でも話題に事欠かない作品です。
主人公・夜神月(ライト)は、「日本最高峰の大学へ進学に確実できる」と言われるほど秀才な高校生です。彼はある日、「デスノート」という1冊のノートを拾います。そのノートは死神の「リューク」が落とした、「名前を書かれた人が死ぬ」という悪魔のノートでした。
彼はノートを使って犯罪者のいない「新世界」を創るべく、自らの「正義」の名のもとに犯罪者を次々と殺していきます。
彼の殺戮の噂はインターネットで広まり、殺し屋「キラ(=killer)」と呼ばれ、神として崇める人まで現れました。そんなキラを捕らえるべく、全世界の警察を動かせる権限を持つ名探偵「L(エル)」が動きはじめます。
これはライトとLの正義がぶつかり合う、頭脳を使った戦いの物語です。
- 著者
- ["大場 つぐみ", "小畑 健"]
- 出版日
- 2004-04-02
本作の魅力はなんといっても、スリリングで高度な頭脳戦です。この頭脳戦こそが物語の醍醐味であり、最大の特徴となります。緻密な戦略と息詰まるほどの心理戦。こんな漫画はこれまでなかったのではないでしょうか。
さらに、登場人物たちがそれぞれの魅力を持っており、主人公だけでない、他のキャラクターにも感情移入することができるでしょう。
また、本作は複数の媒体で発表されていますので、ドラマ・アニメ・映画など、好きな形で楽しむことができます。
さまざまなメディアで楽しめることに加え、多くの視点から楽しめるのがこの「デスノート」。今回はネタバレを含んだ紹介と、楽しみ方についてご紹介します。
本作の見どころである頭脳戦。それを左右するルールがあります。
「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」「書く人物の顔が頭に入っていないと効果はない。ゆえに同姓同名の人物に一遍に効果は得られない」「名前の後に人間界単位で 40 秒以内に死因を書くと、その通りになる」(『デスノート』1巻から引用)
など、いくつもの細かなルールが設定されており、ライトはこれらのルールを逆手にとってLを追い詰めてゆくのです。
- 著者
- 大場 つぐみ 小畑 健
- 出版日
- 2004-07-02
中でも重要となってくるのが以下のルールです。
「デスノートの所有権を失った人間は自分がデスノートを使用した事等の記憶が一切なくなる。しかし、ノートを持ってから失うまでの全ての記憶を喪失するのではなく、自分のしてきた行動はデスノートの所有者であった事が絡まない形で残る。 」(『デスノート』4巻から引用)
当初からLは「関東で生活する警察関係者、もしくはその血縁者」にキラがいると当たりをつけていました。警察庁刑事局長・夜神総一郎を父に持つライトも容疑者の1人として挙げられるのです。そして、Lは早々にライトと接触します。
初めは「5%未満」とされていたLからライトへの疑いでしたが、話がすすみ、接触の回数が増えるにつれ徐々に濃くなってゆきます。さらにそこに「第2のキラ」という存在が発覚し、状況は混乱しましたが、Lは強硬手段でライトを拘束しました。
正体がバレそうになってしまったライト。絶体絶命かと思われましたが、なんとここで「ノートの所有権」を放棄します。ルールに則り、ライトの記憶からは「デスノート」に関する一切の事柄が喪失します。
しかし、これは単なる自暴自棄ではなく、ライトの作戦です。ノートを手放し実際に「キラ」ではなくなることで、疑いの目を自身から逸らせたのです。当然、今後の展開もライトの手によってすべて準備されており……。
このように、「複雑なルールを逆手に取る」という展開も用意されています。ただし、文庫版で綴られるルールは、初版のものより2つほど少なくなっていますので、読み較べる際にはご注意ください。
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物語を語る上で欠かせないのがライトとLの存在です。主人公はライトとされていますが、Lのことも、もう1人の主人公として認識できます。
殺人者と探偵である彼らはそれぞれの「正義」を掲げており、本作で描かれる戦いは、言わば「正義のぶつかり合い」です。ライトの掲げる正義は「犯罪者を根絶やしにし、犯罪のない新世界を創る」というもの、対するLの掲げる正義は「どんな理由であれ、人を殺す者は犯罪者」というものです。
- 著者
- ["大場 つぐみ", "小畑 健"]
- 出版日
- 2005-02-04
君臨する2つの正義のどちらに同調するかで、ライトからの視点で物語を読むか、Lからの視点で物語を読むかが変わってきます。この「ライト派」か「L派」か、という議論は、これまで多くの場で展開されてきました。
まずはライト派の意見をいくつかご紹介します。
次に、L派の意見の紹介です。
たくさんの意見がありますが、おそらく、どちらが正しいかを決めることはできません。L派もライト派の望む「新世界」については同調できるはずですし、ライト派もL派の言う「どんな理由であれ殺人者は悪」ということを理解しているはずだからです。
どちらの正義に賛同するかで、違った物語を味合うことができるでしょう。
「デスノート」は連載以前に読み切りで描かれたことがあり、その時に実施された読者アンケートで1位に輝き、連載作品となったのでした。読み切り作品の主人公はライトではありませんが、リュークとデスノートは存在し、ノートの効力もほぼ同じです。
ただし、最大の違いは「死者を生き返らせる消しゴム」が存在したこと、そしてLのような相手や敵ともいえるような人間がいなかったことでした。
- 著者
- ["大場 つぐみ", "小畑 健"]
- 出版日
- 2006-10-13
こうしたことから、デスノートを拾ったさまざまな人間の様子を描くオムニバス的なホラー作品になると予想されていましたが、 「ノートを拾った一人の少年の物語を描きたい。」と、原作者の大場つぐみが希望します。
しかし、それでは人を殺し続ける単調な作品になってしまう、ということで、主人公の正義に対抗できる人物が必要となります。そうして生まれたのが「L」です。こうして、デスノートをめぐる「正義と正義のぶつかり合い」である、コミック版『デスノート』が誕生しました。
原案ともなった読み切り版。大幅な改変を施されてはいますが、作品の雰囲気はこのころから健在です。もし読み切り版が気になった方は、シリーズ13巻に載っているので、そちらでご確認ください。
作中ではあくまで脇役に徹しますが、本作にはライトとL以外にも欠かせない存在がいます。それは「死神」です。今回は本編に大きく関わる死神を2人紹介しましょう。
まず1人目は「リューク」。ライトが拾ったデスノートの元所有者であり、わざとノートを人間界へと落とした死神です。本来、死神は人間に大した興味がなく、適当にノートに名前を書き、その人間の残りの寿命を吸い取るだけの存在でした。
しかしリュークには、他の死神たちとは違って好奇心があり、退屈を嫌います。そのためデスノートを持った人間を観察し、それを面白がるためにノートを落としたのです。
ただしその立ち位置は、デスノートを所有したライトの「相棒」などではなく「傍観者」です。大好物であるリンゴを食べたい、という損得のためにライトに協力するシーンはありますが、自らライトが有利になるために動くことはありません。
ライトとLの視点以外からも、このような傍観者的な立ち位置のリュークの視点から物語を楽しむこともできます。
- 著者
- ["大場 つぐみ", "小畑 健"]
- 出版日
- 2006-05-02
2人目の死神は「レム」。第2のキラ・弥海砂(ミサ)の持つ「デスノート」の元所有者です。
レムはリュークとは違い、海砂にかなり肩入れします。リュークのように好奇心や損得ではなく、海砂を慕い、海砂のためになる行動を作中では繰り返します。レムは「愛情」を好み、ライトに思いを寄せる海砂を見守りますが、海砂を利用することばかりを考えるライトを内心では嫌っていました。
しかし、ライトに心中をすべて見透かされていたレムは、凄惨な結末を迎えてしまうのです。その最期の時までも彼は、海砂のことを思っていました。
脇役でありながら、本作に大きな影響を与える2人の死神。リュークからの視点はもちろんのこと、レムからの視点でも物語を楽しめるのではないでしょうか。
最初にお断りしておきますと、このセクションでは最終回の多大なネタバレを含みますので、それを知りたくないという方は読まないことをおすすめします。
それでは、漫画・映画・ドラマのそれぞれの結末をご紹介していきます。
- 著者
- ["大場 つぐみ", "小畑 健"]
- 出版日
- 2006-07-04
まず、漫画の結末からご紹介します。
長きに渡る戦いの軍配はライトに上がり、彼の策略によってLは死んでしまいました。しかし、ここまでは第1部。続く第2部で、Lの意思を継ぐM(メロ)、N(ニア)という人物が現れます。
ライトは、メロのことは始末できましたが、ニアにはギリギリまで追い詰められてしまい、最後にはリュークの力に縋って助かろうとします。しかし、リュークはそれを拒否してノートにライトの名前を書き、彼を殺してしまうのでした。
次に、映画の結末をご紹介します。
映画は、漫画でいう第1部で完結しておりますが、その内容は漫画とは少々異なります。デスノートに名前を書かれてしまったLでしたが、彼は先に他のノートに自ら名前を書いておいたことで、後から書かれたノートの効力を発揮させませんでした。その後の展開は漫画と同様で、リュークの手でノートに名前を書かれてライトは死亡します。
最後にドラマの結末のご紹介です。
漫画と似た結末をたどり、ライトはメロに敗北します。ただ、彼はリュークに殺されるのではなく、キラを心酔する魅上という者がライトを助けるべく放った火に焼き尽くされてしまうのでした。
このように、漫画・映画・ドラマによって違った結末を迎えますが、ライトの死だけは変わりません。しかし、漫画はこれで最終話というわけではなく、ライトが死んだ後の世界が1話だけ描かれて最終回を迎えます。
デスノートがすべて焼却され、キラのいない世の中へと戻ります。世界はキラがいなくてもいつも通りに回り、キラは過去の人となっていました。しかし、何やら白い装束に身を包んだ集団がキラの名を呼んで祈っている、といった異様な光景を最後に物語が終わるのです。
この白い装束の集団がなんなのかは書かれていませんが、「キラに救われた者たち」なのでは?と噂されています。彼の復活を望み、祈りを捧げているのではないかと推察されます。
死してなお、その影響を与え続けたキラこと夜神月。実は、二次創作ではありますが、死後の彼について描かれた続編も存在します。そのクオリティーの高さから「真の最終話」とも呼ばれる物語となっていますので、気になる方は、一度見てみてはいかがでしょうか。
全12巻という短い作品ではありますが、その密度はかなり濃い作品となっております。未読の方はぜひ一度読んでみてください。そして、一度読んだ方はここで紹介したように様々な視点からもう一度楽しんでみてください。