天の川の向こうがわ、時をかける宇宙図鑑

更新:2016.9.18 作成:2016.9.18

想像を超える遠方、でも確かに存在する天体。それをぐっと身近に引き寄せてくれるのが宇宙図鑑です。今回(といいつつ初めてですが)、いちおしの個性豊かな3冊を紹介いたします!

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夏の夜空をいろどる「天の川」、見たことはありますか?……と偉そうにいいながらも、私も小学4年生のとき、飯ごう炊飯でゆるいご飯を炊き、カレーをつくり、テントを組み立てセミを追いかけた、あの夏の少年自然の家での夜。数えきれない数の星が広がる空に「天の川って、本当にあったんだ!」とピュアに感動しキャンプから頭だけ出してぐっすり寝た……ときの記憶のみ。以来かれこれ10年以上見かけていません。天の川を構成する星の光は、ほんのりすぎて、普段は眩しい町のあかりに飲み込まれてしまいます……。(ほろり)

夜空に帯状に星が集まる様子を、ミルキーウェイだの織姫と彦星の逢瀬だのと大昔からもてはやされているわけですが、川のように見えるのには、なんと地球と銀河の構造に関係があるのです。現代では常識ですが、地球は太陽を中心にぐるぐると回っています。そしてさらに太陽は大きなブラックホールを中心にぐるぐるぐる。そんな太陽のような星が無数に集まり、1つの銀河を形成しています。地球から夜空を眺めるとき、太陽の所属する円盤型の銀河を内側から眺めることになるため、川のように星が集まって見えるのでした。そんな私たちの所属する銀河は「天の川銀河」と呼ばれています。

天の川銀河は直径1,000,000,000,000,000,000,000メートル。光のスピードでも天の川の向こうがわに着くまで10万年がかかります。逆に言うと、天の川の向こうがわの光が地球に届くまで10万年。つまり、現在空に見えている星の姿はだいぶ昔の姿ということになります。

想像を超える遠方、でも確かに存在する天体。それをぐっと身近に引き寄せてくれるのが宇宙図鑑です。今回(といいつつ初めてですが)、いちおしの個性豊かな3冊を紹介いたします!
 

ロマンティック・スペースワールド

著者
マイケル ベンソン
出版日

「永遠は、時が生み出すものに恋をする」というちょっとキザな引用から始まります。著者は映画監督、写真家、ジャーナリストの顔を持つ人物。「たしかに構成も何やら凝っているわ!」とページをめくると本当にこんなものが宇宙にあるのか?と疑いたくなるようなめくるめく天体写真たち……。しかしすべて望遠鏡で撮られた、正真正銘の写真。ビジュアル的に美しくドラマチックにまとめられた1冊です。

この本では、天体の距離に合わせた人類史コラムが各章末についています。6000光年先にあるわし座の章には、6000年前の地球の話。人口がまだ500万人ほどでちょうど旧約聖書のノアの方舟のモチーフと考えられる洪水が発生して……。遠くの天体の解説も興味深いのですが、同じくらい地球の話も面白いのです。ただ、遠くの天体とはいっても「遠く」を突き詰めると全ての始まりになってしまうのが不思議なところ。この図鑑で見られる一番の「遠く」は、130億光年先。地球もまだできていない頃の世界の姿を見ているというのは、少し恐ろしくも感じてしまいます。
 

三鷹の国立天文台からはじまる、最果てへの旅

著者
["観山正見", "小久保英一郎"]
出版日
2011-12-20

宇宙の図鑑というと、黒い背景にドッカーンと爆発、複雑で込み入った説明がたくさんあり、大枠がつかみづらいイメージがありませんか?(私はあります)。しかしこの図鑑はめずらしく表紙が白く、構成もシンプルで解説文が明快。天体写真も正方形で今どき感あふれる宇宙図鑑です。

三鷹の国立天文台からスタートし、ぐんぐんズームアウトして、東京、地球、太陽系、銀河系を抜け出し、宇宙の大規模構造も超え、最果ての137億光年まで一気に見せてくれます。目次にはまるく切り取られた天体写真がぽんぽんぽんと並んでいて、一見どこかから掘り出してきた宝石のようにも見えるのですが、実際は数十億光年先から数十億年をかけ宇宙を飛んできた光をCCDで検出し、紙にインクでプリントしたもの。地球の外に広がるといわれてはいるけれどほとんど脳内妄想に近かった「宇宙」が、気さくな面持ちの「天体写真」として載る図鑑を手にすることで、ぐんと、自分の中で不思議と現実感を持ちました。構えることなく手に取ることができて、私たちの日常に宇宙を引き寄せてくれる1冊です。
 

解き明かされる宇宙の謎から、謎のままの謎まで

著者
キャロル・ストット
出版日
2012-04-05

私は宇宙関係の研究をする大学院生なのですが、しばしば気分屋の教授に振り回されることに我慢できなくなり、「ばかばかばかー先生のあほー!」と研究室から逃げ出し、優しい司書さんのいる図書室に駆け込んでいました。外敵のいない静かな図書室、机でぼーっとしているわけにもいかず本棚から持ってきて読んでいたのがこの図鑑です。ナショナルジオグラフィックから出ているビジュアル図鑑シリーズのひとつで、ぶ厚く濃く重く、持ち上げて読もうものなら手がもげます。完全保存版のザ・図鑑。

ビッグバン、ブラックホール、現在の宇宙論といったオーソドックスな内容から、火星へのテラフォーミング、最新探査機のスイングバイ計画、宇宙人からの信号を待つ望遠鏡などそそるトピックまでもりだくさん。「宇宙はこうだよ」という事実が述べられるだけではなく、どうして星までの距離がわかるのか、宇宙の大きさをどのように求められたかといったことも図を用いて丁寧に説明されています。読めば読むほど解き明かされていく謎と、謎のままの残される謎。小説にはない緊張感。ぶ厚ければぶ厚いほど、この楽しさがずっと続いていくという、本好きにはきっとたまらない重量級の図鑑です。