偉人から犯罪者まで、歴史上の人物たちの生まれ変わりが、前世の能力をぶつかり合わせる異能バトル漫画『リィンカーネーションの花弁』。ユニークなキャラクター設定、彼らの能力に、新しい世界観を感じられる作品です。 今回はその魅力を、徹底紹介!
『リィンカーネーションの花弁』は、『月刊コミックガーデン』で発売されている能力バトル漫画です。
「輪廻返り」をすることで前世の才能を呼び起こし、異能力を手にした人物たちとバトルを繰り広げていくというもの。単行本は2018年1月現在、7巻まで刊行されています。
- 著者
- 小西 幹久
- 出版日
- 2014-11-10
本作の魅力は、犯罪者から偉人までいるキャラクターたちの持つ、奇妙な異能力。その能力は多種多様で、実在した人物たちの才能を受け継ぎ、活用することができます。自身の肉体を切り裂くナイフ「輪廻の枝」を使って前世の才能を引き出すのですが、その才能は凶悪犯のものだったり天才的偉人のものだったりとさまざまで、自分自身で選ぶことはできません。
また単行本では、キャラクターの才能とともに実在した人物の解説も記載されているので、その人物の才能を知ることもできます。
これより以下、ネタバレも含みますのでご注意ください。
高校生の扇寺東耶(せんじとうや)は、多才な才能を持つ兄にコンプレックスを抱き、何のとりえも才能もない自分を卑下していました。しかし、宮本武蔵の才能を開花させたクラスメイトの灰都(はいと)と関わった事で、彼の環境は一変します。
ある日東耶は、アルバート=フィッシュの才能を引き出した犯罪者の殺人現場を目撃。そこに現れた灰都とアルバートの戦闘に巻き込まれてしまいます。
そしてそのなかで、輪廻の枝の存在を知ることになります。灰都とアルバート、前世の才能を引き出したふたりのバトルを見て、東耶は自分も才能を引き出すことを決意しました。しかしそのためには、「輪廻の枝」を使い、自分の首を掻き切らなければなりません。
しかも、引き出す才能は偉人のものなのか犯罪者のものなのか、首を掻き切らなければわかりません。恐怖におされながらも才能に飢える東耶は、輪廻の枝で自分の首を掻き切りました。果たして、彼が引き出した才能とは……。
- 著者
- 小西 幹久
- 出版日
- 2015-05-09
『リィンカーネーションの花弁』をスムーズに紹介するため、まず登場する用語を説明いたします。
【輪廻返り】
輪廻の枝を使って前世の才能を呼び覚ますこと。輪廻返りを引き出した後は、偉人もしくは犯罪者などの才能が反映した異能力を行使できるようになります。
【輪廻の枝】
前世を呼び覚ますために必要な「枝」で、才能を引き出すために自分の首を掻き切るナイフのようなものです。
【廻り者】
輪廻返りした者は「廻り者」と呼ばれ、その姿も、引き出した才能の持ち主の姿になります。しかし、廻り者には時間制限があり、ある一定の時間が経過すると、元の姿に戻ってしまいます。
【完全な廻り者】
輪廻返りを何度も繰り返して「完全な廻り者」になると時間制限が無くなり、敬意を表されて、前世の名で呼ばれるようになります。
この作品の魅力は、何といっても実在した人物の才能を異能力として開花させられることでしょう。しかも引き出せる才能は、いい意味でも悪い意味でも歴史に名を残した誰かのものです。また、才能を手にいれるためには自分の首を斬らなければならないという壮絶さもあります。
欲しい才能を自分で選ぶ事が出来ないという点でも、まさに人生を変える大きな賭けのようなものです。ここでは作中で引き出された能力と、実在した偉人や犯罪者たちがどういう設定で描かれているのかなどを一部ご紹介します。
- 著者
- 小西 幹久
- 出版日
- 2014-11-10
【扇寺東耶(せんじとうや)】
石川五エ門は、安土桃山時代に実在した盗賊。当初は伝説とされていた人物ですが、イエスズ会の宣教師の日記に記されていたことから実在が判明しました。一般に知られている石川五エ門は大泥棒ですが、それを引き出した東耶の才能も、まさに「盗む」こと。右腕はあらゆる物体を貫通することができるので、右手が届くところなら、どんなものでも盗みとることができます。
しかし、盗み取るものは「物」だけとは限りません。実体の無いもの、つまり廻り者の「才能」も盗み取ることが出来るのです。また、盗んだ才能を行使するのは左腕。使いこなしたら大変な才能となっていくでしょう。
【灰都(はいと)=ルオ=ブフェット】
宮本武蔵は江戸時代に実在した剣術家で、巌流島で佐々木小次郎と戦を交えたことで知られており、二刀流を用いた「二天流」の兵法を完成させた人物です。灰都は二刀流の使い手で、才能を引き出した際は日本刀が具現化した刀を使用します。通常の刀流は、実在した宮本武蔵も含め日本刀1本と小刀1本が定番ですが、灰都の場合は両方とも大太刀です。
このようにキャラクター設定がしっかりとされていて、本編も偉人たちにまつわる解説付き。歴史に詳しく無い方でも、とても分かりやすく読むことができます。
東耶や灰都の他にも、魅力的な力を持つキャラクターたちが多い『リィンカーネーションの花弁』!ここでは人気キャラクターの一部を紹介します。
【アドルフ=ヒトラー/才能:掌握者(エニグマ)】
「罪人軍(記事後半で説明)」の一員で、可愛らしい姿をしています。「掌握者(エニグマ)」とは、目の合った人物の心や記憶読みとることが出来る才能です。実在したヒトラーは、演説によって人々の心を掴み、総統にまでのし上がった人物ですが、作中のアドルフ=ヒトラーも演説について、日々勉強を重ねています。
また「エニグマ」というのは、ドイツの発明家アルトゥール・シェルビウスが開発した、解読不可能と言われた暗号機のことで、第二次世界大戦時にドイツが用いました。
【船坂弘/才能:不死の兵】
真っ直ぐな性格をした、「偉人の杜(記事後半で説明)」の戦闘員。実在した船坂弘は、「不死身の分隊長」の異名を持つ、武術と射撃術の名手だった日本陸軍の軍人です。何度も死の淵から甦ったことから不死身と呼ばれるようになりました。作中では、船坂弘の才能はこう説明されています。
「戦闘意欲が湧き上がり、それを可能にする銃火器が顕現する。痛みを感じるたびに痛みに鈍感になっていく」(『リィンカーネーションの花弁』5巻から引用)
また「不死の兵」は、どんな傷も癒し体力の限界になっても決して死ぬことはありません。しかし、再生とはあくまでも「限界になる前の状態に復元される」ということで、この条件によって、彼は意外な結末を迎えます……。
- 著者
- 小西 幹久
- 出版日
- 2015-05-09
【ジョン=フォイノイマン/才能:予測演算】
実在したノイマンは、他人が理解できないほど頭の良かった人物で、「悪魔」や「宇宙人」と評されていました。現代のコンピューターの生みの親でもある、人類最高峰の数学者です。作中のノイマンは偉人の杜のリーダーで、メンバーへのすべての指示を請け負っています。その才能に関してはこのように解説されています。
「驚異的な計算能力と思考能力が目覚める」
(『リィンカーネーションの花弁』1巻から引用)
「予測演算」は、さまざまな情報を数値化して未来を予測し、その精度はまるで未来予知と言われるほど正確なものです。それに本人は「予知という、あやふやなものではない」といいます。
【アインシュタイン/才能:空間転移】
空間を1秒未満で自由に移動できる才能で、その領域は国内だけではなく世界中に該当します。自分だけではなく他者の転移も可能ですが、アインシュタインの知らないところへは行くことができないというデメリットも。
5巻では、ナイチンゲールに操られたニュートンによって殺害されたかと思われましたが、実際はニュートンが一瞬正気を戻したところで食い止め、空間転移していました。
また7巻では、右足を失いながらも東耶にメッセージを送り再会しています。ただ、7巻ではもうひとり「アルベルト」という少女が登場し、不穏な空気が漂っています。
実在するアインシュタインの本名は、アルベルト・アインシュタイン。少女も「アインシュタインはふたりもいらない」と発言していることから、紛れもなく同じアインシュタインを指しているので、この先の展開が気になるところです。
【ニュートン/才能:重力の実】
顔がリンゴという特徴的なスタイルで、思慮深く情に厚い人物。4m以内の重力を自在に操ることができ、2m以内が即死範囲と決まっています。
実在したアイザック・ニュートンは自然哲学者であり、数学者、物理学者、天文学者。庭仕事をしている際に木から落ちるリンゴを見て、重力の発想を得たことは有名でしょう。
本作のニュートンについての詳細はまだ不明ですが、4巻でポル=ポトの視覚を的確に突いていたことから、才能は重力だけではないようです。
【ナイチンゲール/才能:癒の天使・クリミアの赤い影】
どんな傷でも治すことができる癒しの才能の他に、傷を治した者を操ることができる「クリミアの赤い影」という才能を持っています。これは、「傷病兵が献身的に看護するナイチンゲールの影にキスをした」という逸話からきているものでしょう。
彼女はこの才能を使って治療した偉人の杜の廻り者を操る、人間滅亡計画の黒幕でした。さらに、自身が操ることのできない廻り者は邪魔者だとして、操った仲間に排除させています。
他にもたくさんの偉人や犯罪者などが登場していますので、ぜひ本編で確認してみてください。
【アルバート・フィッシュ/ 才能:食人累加】
数少ない罪人格の1人。実在したアルバート・フィッシュはシリアルキラーとして知られており、多くの子供が彼の犠牲となりました。また、殺人後には人肉を食していたようで、食べるために人を殺していたと言われています。
作中のアルバートも彼とまったく同じ嗜好を持ち、人肉を食している描写が多いです。また罪人格の特徴として、能力のみでなく趣味や嗜好までもが甦ってしまうことが挙げられます。もちろん彼もその1人であり、元々は一般的な食生活を送っていました。偉人の能力を求め、首を切った結果、罪人になってしまったアルバート。挙げ句の果てにカニバリズムにまで目覚めてしまったのは、不幸としか言いようがありません……。
彼は基本的に、食人累加により身体能力を上昇させ、釘を打ち込んだベルトを武器として戦います。サディズムに溢れる彼の戦闘は展開がとても早く、目を離すことができません。
- 著者
- 小西幹久
- 出版日
- 2015-10-10
【エド・ゲイン/才能:忌むべき創作技術】
罪人格の才能を保有する男、エド・ゲイン。こちらも実在したシリアルキラーをモチーフとして作られたキャラクターです。大量の人間を殺した上で、死体の肉は冷蔵庫に保存、皮はストッキングにと、常軌を逸脱したサイコな人間でした。
『リィンカーネーションの花弁』のエド・ゲインもサイコな才能を保有しており、その才能名は忌むべき創作技術(ダーククリエイター)です。前述の現実世界のエド・ゲインが人間の体から物をつくったように、ナイフで人を切りつけるだけで人体を解体し、新しい物を製作することができます。実際に彼はボロボロの服を着ており、もしかしたらその服も人の皮からつくられた物なのかもしれません……。
人体によって物を作る描写は出てきてないものの、もしその能力により武器等を生成することができたらと考えると、末恐ろしい能力です。 他にもたくさんの偉人や犯罪者などが登場していますので、ぜひ本編で確認してみてください。
【ノストラダムス/才能:大予言】
黒い服を纏い、かつて黒死病が蔓延した時代に医師がつけていたペストマスクを着用しているため、素顔は不明です。実在したノストラダムスもまた医師で、当時はペストの治療に尽力していました。
預言書を使っておこなう大予言は100%の的中率を誇り、銃撃されても傷を負うことはなく、自分に掛けられた手錠すらも外すことができます。また予言書に記入することで、未来を作りだすことも可能です。
- 著者
- 小西幹久
- 出版日
- 2016-03-10
この作品では「凡人が輪廻返りをすることで才能を引き出す」というのが物語の軸となっています。つまり、登場するのは「凡人」か「廻り者」のどちらかです。
首を切るまでどんな才能を得るかわからないなんて、ある意味無謀な賭けといえるでしょう。また、たとえ才能を引き出せたとしても、自分が願わない凶悪犯の才能を受け取る可能性だってあります。しかし輪廻返りしてしまった者は、前世の人物の内面まで引き継いでしまいます。剣術者の才能を受け取れば剣術を極めたくなるし、殺人鬼の才能を受け取れば殺人衝動に駆られてしまうのです。
ただ、輪廻返りをした者の持てる才能は決してひとつとは限りません。基本となる才能の次は「第2の才能」と呼ばれます。
「廻り者一人にひとつの才能だなんて誰が決めたんだ?全員が手の内を見せてると思ったら大間違いだ」
「偉人が複数の分野で功績を残したように 廻り者にも複数の才能を有する奴もいる」(『リィンカーネーションの花弁』6巻から引用)
主人公の東耶は、多才な兄に比べ平凡で何も無い自分が悔しくて溜まりませんでした。子供の頃からピアノやサッカー、油絵、水泳など、とにかく多くの習い事をしていましたが、何をやっても平凡で、自分の程度の低さを痛感していたのです。「何でもいいからとにかく何かの才能が欲しい」と渇望していましたが、何をやっても、才能が開化されることはありませんでした。
ただ、廻り者になった人物たちはみんな、東耶と同じ気持ちを持っていたに違いありません。才能を引き出すための「首を掻き切る」という行為は、普通のひとであれば恐怖でできません。しかし、そんな恐怖に勝るほど、才能を欲する気持ちが人一倍強かったのでしょう。
主人公の扇寺東耶は、「神童」と呼ばれた兄に強い劣等感を持っている高校生。兄に近づきたい、兄を越えたいという欲求が強く、どんな才能でもいいから欲しいと願っていました。将来を期待される兄とは違い、無才の東耶は親族から虐げられ、しまいには家を追われたのです。そんな東耶が灰都と出会い「輪廻返り」を知ってからは、自分を見下してきた奴らに、そして何の反論もできなかった自分にも、「一矢報いてやろう」と報復を決めました。
才能への執拗な願望から輪廻の枝を手にした東耶でしたが、たとえ前世を引き出しても、それが本人の希望するようなものとは限りません。しかし、彼は報復への欲求を抑えることが出来なかったのです。
首を掻き切った東耶が手にしたのは「天下の大泥棒 石川五エ門」の才能でした。他の廻り者からも「何の役にもたたない」と笑われましたが、東耶は「何もなかったよりはマシだ」と、才能を見極めることにしたのです。東耶は灰都に連れられ、偉人のみで結成された組織「偉人の杜」というグループを紹介されました。彼もその組織に迎えられることになりましたが、そこにいたのは東耶が羨むような才能を引き継いだ廻り者ばかり……。
- 著者
- 小西幹久
- 出版日
- 2016-09-10
しかし東耶は、自分の才能は「盗む」だけではないことに気づきます。それを実践に移したのは2巻の、犯罪者狩りに同行した時です。相手はかつて、「吸血鬼」や「串刺し公」と呼ばれた「ウラド」の才能を引き出した人物。偉人の杜が束になってかかっても、倒すのは難しい相手でした。そして戦いの最中、ウラドが壁に寄りかかったとたん、後ろからウラドの体内に盗人の右手を忍ばせた東耶。誰もが「心臓を盗んだ」のだと思いましたが、ウラドは生きていました。
そう、東耶が盗人の右手で盗んだものは、心臓ではない「何か」。それはまさしく相手の「才能」だったのです。東耶は、「廻り者の才能も盗める」ということに気づいたのでした。そして左腕では、奪った才能を使うことも出来たのです。しかし東耶は、左手の能力のことを仲間に明しませんでした。才能を奪う能力を秘密にしたまま、いつかは偉人の杜の仲間たちの才能も奪ってやろうと考えていたのです。東耶には仲間意識などまったく無く、とにかくあらゆる才能を手にしてやろうという野心ばかりがありました。
また、偉人の杜には敵対勢力がありました。それは「罪人軍」という組織で、双方は考え方の違いから反発しあっていたのです。近いうちに偉人の杜VS罪人軍との交戦があると知った東耶は、心の中では「最高のタイミングだ」と交戦に感謝していました。それもそのはず、偉人だろうが罪人だろうが盗めるものは全て盗み、歴史を総括するほどの才能を得ようと思っているからです。仲間だけを見ていても喉から手が出るほど欲しい才能ばかりなのに、交戦ともなれば盗み放題というわけですね。
「乱戦になれば好機 敵なら腹から 仲間なら背中から 偉人も大罪人も関係ない 欲しい才能なら盗る!!盗って盗って盗りつくす!!」
「最後に笑うのは「偉人」でも「罪人」でもない この僕だ」(『リィンカーネーションの花弁』2巻から引用)
普段は弱々しさや頼りなさを全面に押し出している東耶。しかしその裏では、仲間も仲間とは思わないゲスな作戦を練っていました。あまりにも邪道な性格ですが、「才能」を使いこなす才能では、兄をも越えたかもしれません。
東耶が廻り者となり、偉人の杜に加入。ウラドの「串刺し公」の才能を手に入れ、仲間のふりをしながら彼らの才能を奪う機会を伺っている間に、罪人軍との交戦が始まりました。偉人の杜は拠点防衛隊、森侵入隊など複数の隊に別れて罪人軍のアジトを目指します。というのが、5巻までの大まかな流れです。
東耶は「不死の兵」という才能を持つ船坂弘の希望で一緒に行動します。しかし、交戦が激化するとともに船坂は敵の攻撃に倒れてしまいました。命尽きる前の船坂は、東耶に自分の才能を託します。こうして新たなる才能を手に入れた東耶でしたが、彼の中にも才能や人との繋がり、仲間への思いが徐々に積み重なり、「才能を奪うこと」への目的が薄らいでくるのでした。
船坂を失った東耶は、ひとりで罪人軍のリーダー項羽のもとに向かいます。項羽を目の当たりにした東耶でしたが、項羽も、東耶の兄・西耶も、かつて偉人の杜の初期メンバーだったことを知ります。また西耶は、偉人ではなく「弟に恥じない兄になりたいだけだった」と知らされるのです。
まだ東耶が幼かった頃西耶は、「偉人格も罪人格も、分け隔てなく暮らせる世界平和」を掲げ、それに賛同する者たちで偉人の杜を作りました。しかしある時、東耶が罪人格の廻り者に傷つけられ、怒りに我を忘れて暴走。西耶を止めるために、項羽が彼を殺害したのです。
- 著者
- 小西幹久
- 出版日
- 2017-06-09
その後、項羽は偉人の杜から抜けましたが、当初の西耶の思いをそのまま継いで結成したのが罪人軍でした。さらに、東耶がこれまで所属していた偉人の杜が「罪人格の全滅」を目指しているという、非道な計画を聞きます。そして項羽は、目的を達成した後の偉人の杜が何をするかについて、こう語るのです。
「ノイマンが何かを企ててやがるのは明白だ そしてそれは西耶が掲げた「世界平和」を盾に進められている」
「だとしたら次に何をする?現存する罪人格を殺しきったら 次は何を殺す?」(『リィンカーネーションの花弁』6巻から引用)
罪人格を処分しきったら、次に牙を向けるのは平凡な人間だということです。項羽はそれを止めようとして偉人の杜と戦っていました。全てを知った東耶は、偉人の杜の非道な計画を阻止するために、今度は項羽たちに手を貸すことになります。
すると項羽が恐れた通り、ノイマンによる「偉人類計画」が進められました。この計画は、「全人類を対象に自分たちで管理できるだけの数を残し、残った人類を養殖して、その一部に輪廻の枝を使用。無才は死に至らしめ、偉人の才能が目覚めれば仲間にする。罪人格の場合は処分する。」というのを繰り返すものでした。
いずれは偉人格だけが存在する新しい世界を創ることが「人の歴史の集大成」になると言うのです。すべての人類を全否定した無茶苦茶な計画を打破するため、東耶は策を練りますが、どうにも太刀打ちできません。しかしここで、東耶がノイマンの「違和感」に気がつきます。
「何かが…おかしい」(『リィンカーネーションの花弁』6巻から引用)
合理的なはずのノイマンに、東耶だけが感じた「違和感」。ノイマンを深く知っているわけではなくとも、そのやり方に関して東耶は不審に思ったのでしょう。東耶が感じた「違和感」の正体とは、一体何なのでしょうか?そして、すでに偉人格たちによって壊されはじめている世界を救うことはできるのでしょうか?
廻り者が集まった偉人の杜を率いるノイマンは、実はナイチンゲールに操られ、廻り者だけの世界を創るために人間を滅亡させる計画を実行させられようとしていました。人類に与えられた猶予は3ヶ月です。
罪人軍のリーダーであり最強の廻り者だった項羽の死をはじめ、多くの廻り者たちが命を落とした現在、ナイチンゲールの思うがままとなっています。
- 著者
- 小西幹久
- 出版日
- 2017-12-09
そこに立ち向かうのは、東耶やアインシュタインなど、まだナイチンゲールに治療されておらず操られていない少数の廻り者と黒鋭隊です。
東耶は、ノイマン、オリジナルが動けない時のために作っておいたAIを携帯を通じて起動。ナイチンゲールの才能がおよんでいないため、彼らのサポートにまわることができました。
さらには、本来ひとりしか存在しないはずのアルベルト・アインシュタインが、「アルベルト」と「アインシュタイン」に分かれてふたり存在してしまうという異常事態が発生。残るのはアルベルトでしょうか、それともアインシュタインなのでしょうか。
暴走しはじめる偉人の杜を止めるため、動き出す東耶たち。
8巻に収録予定の話では、新たに廻りものに宿るパワーや、エネルギー源がどこであるのかが明かされました。それは、廻りものの周囲のものすべてだったのです。例に出されたのが、アルバート・フィッシュが現れたときのこと。彼が現れた場所のコンクリートが、非常に脆くなっていたことから、彼が物体を分解して、自分自身のエネルギーに変換していたのではないか?と考えられたのです。
この説が正しければ、周囲にものが存在する限り、廻りものを倒すことは不可能なのではないか、とも考えられるでしょう。
ただ、7巻の終盤で、東耶は偉人の杜を止めるためには、「輪廻の枝」の大元となる「輪廻の樹」を探す必要があるのではないか、と仲間たちに問いています。
すべての元である「輪廻の樹」を破壊することができれば、廻りものを倒すことができると考えたのです。ただ、それは自分たちを含む廻りものすべてが消滅するということになります。それでも東耶は、「輪廻の樹」を破壊することを選ぶのでしょうか?
伏線が回収されていき、徐々に物語が終盤へと向かっているようです。はたして東耶たちは、世界を征服しようとしている者たちを食い止めることができるのでしょうか。
物語が意外な方向に向いてきました。罪人格だから、偉人格だからという目で見ていても、まったく違う展開がくり広げられていくのも『リィンカーネーションの花弁』の魅力ですが、どの偉人が、その罪人が何をやった人物なのか、その才能の解説が入るので、勉強にもなるし理解できて楽しく読むことができます。