「週刊少年マガジン」のボーイミーツガール系漫画『星野、目をつぶって。』。冴えない主人公が、美少女ヒロインのメイクをすることに!?さまざまなコンプレックスを抱えた登場人物による青春群像劇です。今回は最新11巻までの見どころを紹介します。
「週刊少年マガジン」で連載中の永椎晃平によるボーイミーツガール系青春漫画『星野、目をつぶって。』。地味な顔をメイクで隠しながら高校生活を送る、クラスの人気者のヒロイン星野と、彼女のメイク担当になってしまった冴えない主人公の少年、小早川が、学校中の悩みを抱えた生徒を助けながら成長していく青春物語です。
登場人物たちが抱えるコンプレックスが等身大で、思わず「わかる」と共感してしまう場面がたくさんあります。いじめというセンセーショナルな話にも真正面から切り込み、コンプレックスと戦う彼らがこの作品の魅力になっています。
この記事では本作の魅力と、最新11巻までの見どころを徹底的にご紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2016-07-15
休み時間は寝たふりをし、クラスメイトに名前すら憶えられていない主人公の小早川。彼は、群れることで自分の居場所を確保する学校の生徒たちを、バカにしながら高校生活を送っていました。
そんなある日、クラスメイトでスクールカースト上位の美少女ギャル、星野海咲が、メイクをとると友達でさえ気づかないほどの地味顔だという秘密を知ってしまいます。自分ではメイクのできない星野のために、絵がうまく秘密を知ってしまった小早川がメイクをすることになり……。
正義感の塊で、考えなしに人のために動いてしまう星野と、それに付き合わされる小早川。自分とは住む世界が違うと思っていた彼女と一緒にいるなかで、卑屈でネガティブだった小早川の世界が少しずつ変わりはじめます。
この物語のヒロインである星野海咲は、メイクをとると誰だかわからないほどの薄い顔になってしまいます。中学時代に初めてメイクをして人気者になったことがきっかけとなり、メイクをしていないと友達が離れていってしまうと思っています。
その結果、メイクをしていない素顔の自分を人にさらけ出すことができなくなっていました。無理やり人に合わせて自分を変える生き方は辛くないのか、と問う小早川に彼女はこう答えます。
「ほんとの自分じゃないかもしれないけどみんなもあの私を好きになってくれるんなら私はあの姿で居続けたい
誰になんと言われようとこの生き方を変える気はないから」(『星野、目をつぶって。』1巻より)
小早川からすると、星野の生き方は周りに合わせて自分を殺しているように感じてしまいますが、星野は確固たる自分の信念を持ってその生き方を選んでいました。その強い思いに感化され、小早川は彼女のメイク担当を引き受けたのです。
しかし星野は、困っている人を見ると放っておけない正義感の塊のような性格をしています。自分にコンプレックスがあってメイクで武装しているのに、誰かを助ける時にはメイクが崩れることもお構いなしで全力疾走してしまうのです。
一見、ギャルで人生楽しそうなリア充JKの星野。しかし見た目からは想像もできないコンプレックスを抱え、それでも困っている人を見捨てない優しさと強さを持っているところが魅力なのです。
この物語の主人公である小早川は、クラスに友達がひとりしかおらず、群れて馴れあう学校の生徒を見下すような卑屈な性格の持ち主です。ネガティブで自分に自信がないため、傷つくような出来事があるとすぐに自分の殻に籠ってしまいます。
そんな彼ですが、自分とは住む世界が違うと思っていた星野と行動し、いろいろな人を助けていくなかで少しずつ変化していきました。
明るくて活発な女子バレーボール部員、野球部エースの爽やかイケメン、元幼馴染の顔黒ギャル、人気絶頂のアイドルグループに所属する後輩、見た目から怖いヤンキーの先輩……。
今までの小早川では絶対に関わることがない人たちに出会い、彼らにも彼らなりの悩みやコンプレックスがあることを知ります。そんな彼らが抱える問題を星野と解決していくなかで、自分の弱さと向き合い、時には逃げ、時には立ち向かいながら、本当に少しずつ人との関わりを恐れなくなっていくのです。
小早川自身は気づいていないけれど、彼は星野と出会ってから、多くの人たちにとってのヒーローになりました。きっと今後も、彼がポジティブで明るく卑屈でなくなることはないでしょうが、思慮深くて誰のことでも見捨てられない不器用な小早川だからこそ、みんなのヒーローになれるのです。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2016-07-15
メイクをとると別人のような地味顔になってしまうという星野海咲の秘密を知ってしまった、冴えない主人公の小早川が、彼女のメイクを請け負うことになる第1巻。見どころは、すっぴんでジャージ姿の星野がいじめっ子をドロップキックで撃退するシーンです。
小早川と同じ美術部に所属する松方いおりは、隣のクラスの加納愛那果というギャルたちからいじめを受けていました。ある日小早川と星野は、松方がトイレで水を掛けられているところに遭遇します。彼女を助けたいけれど、あるトラウマがきっかけで何もすることができない小早川。そんな小早川の葛藤を吹き飛ばすかのように、星野は加納にドロップキックを2発お見舞いしたのです。
グダグダ考えず困っている人を助けることができる星野の姿に、小早川は衝撃を受けました。星野はスクールカースト上位のギャルで、クラスの人気者。休み時間は寝たふりをして過ごすような小早川とは正反対の世界に住む人間です。
小早川は違う世界に住む人間だと決めつけて、星野のことを知ろうともしていませんでした。ですがコンプレックスを抱えながらも、困っている人がいれば見捨てない彼女の素顔に少しずつ魅了されていきます。
神回と言っても過言ではない11話が収録された2巻。いじめという扱いにくい題材を通じて、小早川が人と深く関わることを避けるようになった理由がわかる回です。
小学生の頃、彼には人気者の友達がいました。引っ込み思案で友達の輪に入れない小早川をいつも仲間に入れてくれた友達は、小早川にとってヒーローのような存在でした。
しかし、ある日突然、その友達がいじめの対象になってしまったのです。クラス全体からいじめを受ける友達に自分だけは味方だと言っていた小早川でしたが、いじめをするクラスメイトに対し強い嫌悪感を抱き、卒業まで家から出られなくなってしまいました。
それまで仲良くしてたかと思ったら急にハブいてみたり
周りに合わせてヌルヌルと自分を変えて
変わらない奴はまたハブいたり
日陰から憧れて見ていた景色はその実薄気味悪いクソ空間で
ソレに気づいた時から卒業するまで俺が家を出ることはなかった
気持ち悪い
気持ち悪い何もかも
俺も(『星野、目をつぶって。』2巻より)
この回想から、彼がいじめをする人たちにどれほど強い嫌悪感を抱いたか、そして、助けることができなかった自分に劣等感を抱いているかがわかります。
こんなことになるのなら、ヒーローから差し伸べられた手なんて取らずに、初めから人と関わらなければよかった……そうした考えが彼のなかで正当化され、人と深くかかわることを避けるようになります。そして、自分が助けることができなかったという劣等感と、ヒーローのように人を助けても後に辛い思いをするだけだという認識が、脳に焼き付いてしまったのでした。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2016-09-16
そんな彼の過去を描く2巻の見どころは、トラウマを蹴散らして自分らしさを貫く星野を見て、小早川が変わっていく過程です。
謹慎明けで学校に戻ってきた加納が再び松方をいじめます。それを見て助けるどころか、スマホで写真を撮る生徒たち。小早川は、彼らに嫌悪感を抱きながらも見て見ぬふりをしようとする自分は、あいつらと同じだと絶望します。
しかし星野だけは違いました。実は彼女もいじめられた経験があったのですが、見て見ぬ振りをされるのが1番辛かった、だから自分は見て見ぬふりをしないと言い、松方を助けにいきます。
一番キツかったのは見て見ぬ振りをされたこと
誰も何もしてくれなかったこと
だから決めたの
私は絶対に見て見ぬ振りはしない
私の目に困ってる人が映ったなら絶対に一人にしない
どうにかできるかどうかは置いといて とりあえず走るって
これが理由 あたしの自分ルール(『星野、目をつぶって。』2巻より)
メイクが崩れることもお構いなしに星野が困っている人を助けるのには、いじめられた過去があったからなのでした。再びすっぴんジャージ姿で加納にドロップキックを決める星野。しかしそれを見た生徒たちは、スマホで写真を撮り、もっとやれと煽ります。そして、加納にゴミを投げつけはじめたのです。
そんな野次馬を見て、小早川は立ち上がりました。ヒーロー気取りをして非難されることを恐れていたあの小早川が加納を庇って、生徒たちの視線の真ん中に立ったのです。「元はと言えば加納が悪い」と言いながらゴミを投げる生徒に向かって、小早川は叫びます。
「何が元はといえばだ テメェが正しいみたいに言ってんじゃねぇ!!
間違ってんのはどいつもこいつも同じなんだよ
それを…横見てせーので間違えてんじゃねぇ気持ち悪い!!!」
「テメェこそ偉そうにガタガタ言う前に誰か一人でも…
黙ってドロップキックを出来んのかっつってんだよ!!!
他人の正しさに間違いに乗っかんじゃねぇ
死ね!!!」(『星野、目をつぶって。』2巻より)
野次馬に吐いたセリフでしたが、それは小早川が自分自身に言いたかった言葉だったのではないでしょうか。いじめという辛い経験をしても、卑屈になって殻に籠るのではなく、同じ思いを人にさせないために身体を張る星野を見て、彼は変わることができたのです。
松方をいじめていたギャルの加納に、衝撃の事実が発覚する3巻。これまでいじめる側にいて、読者がまったく共感できない悪役だった加納にスポットライトを当てたところがこの巻の見どころであり、この作品の魅力でもあります。
夏休みに入り、小早川に穏やかな日常が戻ってくるかと思ったのも束の間。さらなる事件が起こります。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2016-11-17
あの加納が小早川に、頬を赤く染めながら「夏休みちょっと付き合って」と言ってきたのです。まさかの加納フラグ。何か酷いことをされると思った彼はフラグを一瞬でへし折りますが、彼女が期末テストで学年8位だったことを知り、「補習となった星野たちに勉強を教えること」を交換条件に出かける約束をしました。
こうして加納と少しずつ会話するようになるなかで、彼女があの騒動以来、仲間から孤立していることを知ります。加納のことを気に掛ける小早川ですが、ある日衝撃の事実が発覚します。
なんと素顔の加納は肌が真っ白の超絶美人であるにも関わらず、化粧で肌を黒くしてギャルメイクで自分を偽っていたのです。
さらに小学生時代の小早川のヒーローであり、いじめから助けてあげられなかったあの親友が加納だと判明!物語は急展開へ突入します。
加納は小学生の頃、服装や言葉遣いが男っぽく、休み時間は男子とボール遊びをし、バレンタインは男子よりもチョコを貰っていたことから「加納くん」と呼ばれていました。あまりの変わりようにまったく気が付かなった小早川は、どうしてそんな格好をしているのか問います。
「どうしてこんな格好してるかだって…?
お前が…!手を差し伸べてくれなかったからだろうが…!」(『星野、目をつぶって。』3巻より)
そのひと言で小早川のトラウマが蘇ります。いじめられて孤立した加納が転校してしまった時、自分は耳をふさいで家に引きこもり、助けることができなかった……。
憔悴する小早川の背中を押したのは、星野でした。彼女は、小早川は助けを求めてきた人間を見捨てなかった、うまくはできなくてもやれることはすべてやっていた、だから過去じゃなくて変わった今の自分を見るようにと促します。
勇気を出して加納に謝ることができた小早川は、今度は加納をひとりにしないと約束しました。いじめる側にもスポットライトを当て、どうしてそちら側の人間になってしまったかまで丁寧に描くところがこの作品の魅力だといえます。
美術部メンバーに加え、星野や加納なども参加した波乱しか感じさせない夏合宿編がスタート!4巻の見どころは、いままでの大人しいイメージを覆して松方が反撃に出るところです。彼女は地味で大人しく、控えめな女の子というイメージが定着している分、読者にかなりの驚きを与えました。
小早川はまた友達になった加納に、松方をいじめたことを謝るように伝えます。若干上から目線ではありましたが、自分から謝りに行った加納に対し、松方はこう返します。
「嫌だ 死んでも許さない」(『星野、目をつぶって。』3巻より)
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2017-02-17
人に反抗なんて絶対しなさそうな松方が真顔で放ったひと言に、盗み聞きしていた小早川と星野も絶句します。水をかけられたことも、ノートを捨てられたことも、別に何とも思っていない、でも、絶対に許さない。胸ぐらを掴まれても松方は譲りません。
どうやら加納が小早川に頼まれたから謝りに来た、という部分が気に入らない様子です。松方は小早川に恋心を寄せているので、ここで同じく彼に気がある加納の謝罪を受け入れて、加納がちゃんと謝罪したと小早川に思わせるわけにはいかないのでしょう。
譲れないものができて少し強くなった松方ですが、当の小早川は何も気が付かずに、事態が悪化したと焦っていました。自分を巡って水面下で火花が散っているなんて、思ってもいないのでしょう。
ですがその後、加納が海で溺れる星野と松方を助けたことで、少しずつ事態は変わっていきます。メイクが落ちてしまった加納は松方に、自分は女子大生の「まなピー」だと名乗ってしまいました。
まなピーに心を開いていく松方と、複雑な心境の加納。今後、まなピーとして偽った姿ではなく2人は歩み寄ることができるのでしょうか……?
新学期が始まり、文化祭編がスタートします。ここで新たに登場するのは、同じ高校に通いながら、「スターリリーズ」というアイドルグループで活躍する「こはるん」こと鍔生木春です。5巻の見どころは、彼女のために奔走する小早川の唯一の友達、西村の成長です。
鍔生はストーカーから、文化祭でライブをしなければ事件を起こす、という脅迫の手紙を受け取り、星野たちの元に助けを求めやってきました。
そんな彼女のストーカーを突き詰めるために動き出す小早川ですが、そこで彼の唯一の友人である西村が、すでにストーカーを見つけるためにひとりで動いていることを知ります。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2017-04-17
西村は小早川と同じように、周りを見下して自己を保っているような卑屈な部分がありました。人に点数をつけ、自分と同じくらいだと判断した小早川と一緒にいることで、孤立を避けています。人にケチをつけ、口だけは達者で実際に行動しない自分に、強いコンプレックスを抱いているのです。
そんな西村はある日、大好きな鍔生がアイドルであるがために友達から孤立して、辛い思いをしていることを知ります。その時、自分も変わって鍔生を守れるような男になりたいと思ったのでした。
西村は彼女を守るために、ひとりギターを抱えて文化祭のステージに立ちます。大勢の観客に笑われて、罵倒されても、彼は大好きな「スターリリーズ」の曲を鍔生を守るために、鍔生が辛い思いをしないために歌い続けます。冷汗が止まらず、足元が覚束なくても、ここで鍔生を守れなければ男じゃないと自分に言い聞かせて逃げない西村の姿は、どこかかっこよささえ感じさせるでしょう。
主人公の友達としてモブで終わるのかなと思ったキャラクターでしたが、自分を守るために人を見下したり、自分と同じレベルの人を探して群れたりと、現実的で等身大なコンプレックスを持った西村の成長ぶりに感動を覚える5巻です。
文化祭が終わってからなぜか学校に来なくなってしまった、松方が中心に描かれる6巻。4巻で本性を少し見せた彼女でしたが、6巻ではそのすべてがさらけ出されます。悩みの渦中にいる松方が絞り出す言葉のひとつひとつが、この巻の見どころになっています。
彼女が学校に来なくなってしまった理由は、思うように漫画が描けなくなってしまったからでした。6巻では、松方が中学時代にデビューしたプロ漫画家であることが判明します。漫画を読んでアドバイスをくれた加納が扮する「まなピー」のおかげで学校に来られるようになった松方。
そんな彼女を待っていたのは、所属する漫画研究部のメンバーでした。リーダーの城戸はプロの漫画家を目指しているといいます。松方がプロの漫画家だったことを知ったことで、これまで自分たちのことを馬鹿にしていたのかと問い詰め、漫研をクビにしてしまったのです。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2017-06-16
小早川の説得により城戸は「同じプロを目指すもの同士、切磋琢磨しよう」と謝罪しますが、それに対し松方は激昂します。
「うるさい 黙れって言ったのザコ」(『星野、目をつぶって。』6巻より)
プロになりたいと言いながら本気を出さず、ぬるま湯に浸かっている城戸に怒りを隠さない松方。プロになりたいなら、なぜ相応の努力をしないのか。努力不足で漫画家になれないのに、なぜ自分に八つ当たりするのか。そんな人たちに足を引っ張られたくない。今までの大人しいイメージとは真逆の、ドス黒い感情が溢れ出します。
何年も努力してプロの世界で勝負している松方の目線で考えると、これだけ怒ってしまっても仕方がないのかもしれません。小早川は、ひとりで戦っていた松方を「かっこいい」と言います。
そのたったひと言で、松方は救われました。好きな人が言ってくれた言葉だからという部分もあるとは思いますが、努力をちゃんと評価してくれたことが本当に嬉しかったのではないでしょうか。
さらに、6巻にはもう1つ外せない見どころがあります。それは、加納から告白されて逃走する小早川の心境です。
「好きになられたからなんだ…!?
俺にどうしろっていうんだよ…!!
俺は…根暗でチビで…愚鈍な…ただの日陰者だ!!
俺に返せるものなんて無い…!
好意なんか向けられても…返せるモノなんて何も……無い…!!
俺は…
誰かを好きになれるほど…自分が好きじゃない…」(『星野、目をつぶって。』6巻より)
小早川は自分に自信がなさすぎて、人の好意への答え方がわかりません。どうすることもできなくて、彼が選択してしまったのが逃げることでした。せっかく勇気を出して想いを伝えてくれた加納には残酷すぎる仕打ちです。
ですが、自分のことを好きになれない人は、他人に好きになってもらう資格なんてないし、自分から好きになるなんてそんなおこがましいことはできないと思ってしまうのです。加納は可哀そうですが、小早川にも少し同情してしまう回でした。
加納の告白から逃げ、さらに自分に自信がなくなった小早川を変えるために、星野は彼を応援団の副団長に推薦します。なりたい自分になりたい、その思いが小早川を動かし、彼は立候補しました。
7巻は、副団長になって小早川の価値観が少しずつ変わっていくところが見どころです。
各クラスの人気者が集まる応援団。小早川は今まで縁のなかった世界に最初は馴染めなかったものの、徐々に団員の信頼を獲得し、副団長らしくなっていきます。
しかし、ひとつ大きな問題がありました。根っからのヤンキーである団長の小野寺篤が、素顔の星野に惚れていたのです。ちなみに団長は、化粧をしたギャルの星野とすっぴんのジャージ女が同一人物であることに気づいていません。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2017-08-17
煮え切らない態度で応援団への集中力も散漫になっていた団長に対し、小早川は騎馬戦でタイマンを挑みます。応援団の練習をするなかで馴れ合いをあれほど嫌っていた小早川が、応援団を優勝させたいという強い思いを持つようになりました。
さらに、団長の星野への真っ直ぐな思いを知って、自分も星野に恋心を抱いていることに気が付きます。
「俺が勝ったらアイツに告白しないでください
先輩が勝ったらキチンと告白してください
そして…応援団に集中してください」(『星野、目をつぶって。』7巻より)
半ば宣戦布告ともいえる強気な発言。あの卑屈な小早川から出た言葉とは思えません。副団長として団員に頼られるようになるなど、これまで避けていた人との関わりができるようになったことで彼は少し自分に自信がついたのでした。
加納と松方に想いを寄せられながらも、星野への恋心を自覚した小早川は、今後どういった行動にでるのでしょうか。彼がこれからどんな成長をしていくのか、そして、4人の恋の行方はどうなるのでしょうか。今後の展開に目が離せません!続きが気になった方はぜひ読んでみてください。
体育祭、その後の試験が終わり、待ちに待った修学旅行。体育祭で副団長として活躍した小早川は、以前よりずっとクラスメイトとの距離が縮まったと思っていました。しかし、やっぱり班決めではうまく立ち回れず、ぼっち状態になってしまいます。
結局まったく喋ったことのないような陰キャラメンバーと一緒になった小早川。正直、変なやつらと一緒になってしまったなぁ……と感じていました。その不甲斐なさは、他のメンバーも同じ。班行動の際に、他の人たちから変な目で見られるのでは、と気にしているふしがありました。
しかしともに行動するにつれて小早川は、たしかに変なところはあるけれど、彼らの価値観や良いところを尊重していくのです。あんなに卑屈な性格だった彼が、一歩成長した姿を見せてくれるシーンです。
- 著者
- 永椎晃平
- 出版日
- 2017-11-17
夜、松方は小早川に「少し話しませんか?」と声をかけます。そのとき、見回りの先生の声がして、2人はとっさに暗がりの部屋に隠れます。松方はそこで、なぜか絵しりとりを始めようと提案。美術部員同士、白熱した戦いになっていきます。
途中から、松方はあるストーリーを語りはじめます。次回描く漫画の構想だよ、と微笑みながらも、まるで自分自身を投影したかのような物語です。
いいタイミングで、見回りの先生の気配がまた……。青春時代の学生たちをそっとしておいてくれ!と叫びたくなりますが、そこは青春漫画のお決まりパターン。
そして、逃げるときに松方はとっさに小さなメモを小早川のポケットに忍ばせて……。小早川、早くメモに気づいて!
次の日、小早川は加納と行動することになります。たまたま見かけた舞妓体験に興味を示し、いつもの黒ギャルメイクから舞妓さん姿になった加納。こんなに色白美人なのに、普段のギャルメイクが残念すぎ!という心の声はさておき、小早川は加納の想いに対する返事をついに決めます。ポケットに手を入れるといいタイミングで、松方の手紙が……。
それぞれの想いが交差する波乱万丈の修学旅行。小早川は、最終的に誰を選ぶのでしょうか?
星野と付き合えることになったものの、学校での対応がギクシャクしてしまう小早川。しかし色々あっていつもどおりでいいのだと開き直ることができました。
ところがそこからがまた大変。初デートでは、女子の無軌道な動きに体力を奪われ、予定していたデートプランの紙を星野に見られ、と散々な結果になってしまいます。
しかしそこで星野が自分たちのペースで歩もうと言ってくれたことで、当初のように今までどおりでいいのだと思うことができます。しかし頭でわかっていても、つい小早川は自分たちと他のカップルと比べてしまいます。
女子と普通に過ごすということの難しさを感じる小早川。特にデートをするのにもお金ががいるのだということに気づいた彼は、ひとまずバイトから星野のために行動することにしました。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2018-01-17
無事面接に合格するものの、そのバイト先にいたのは、お局のような厳しい先輩・小宮。しかも実は同級生だった彼女には、あるエッロイ秘密があり……。
星野との恋がうまくいったかと思いきや、すぐにまた新しいキャラ・小宮が登場します。彼女のタイプは真面目ビッチ。今までにない方向性の人物です。
小宮は普段は仕事に妥協しない真面目なタイプなのですが、仕事が終わると一変。これぞ、というくらいの男好きなビッチに早変わりするのです。
さらに9巻では松方と加納の青春なやりとりも収録されています。小早川と漫画をめぐってややこしいことになっているふたり。しかし互いにまっすぐな気持ちがあり、つい心を動かされてしまいます。
本筋の星野と小早川の恋ももちろん、松方と加納の展開も胸が熱くなる内容となっていますので、ぜひ作品でご覧ください。
10巻は、かなりシリアスな展開にシフト。見た目というものに対し、世間一般の目がどのようなものなのかを考えさせらえる内容となっています。
そのことを考えさせられる1人目は、加納。彼女はガングロのメイクをやめてから、周囲に人が集まってくるようになり、そのせいで松方に複雑な気持ちを抱かせ、距離を置かれていました。
しかし加納は諦めず、その見た目だけにすり寄って来る人々よりも、松方を優先します。そしてそのことが原因で、今までいじめていた立場から、いじめられる立場に変わってしまうのでした。
そのことをきっかけにぶつかり合う松方と加納。ふたりの言葉は、本心からの叫びだということを感じ、胸が熱くなります。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2018-03-16
そして見た目によって周囲からの影響を受けた2人目は、やはり星野。彼女は今まで自分の見た目をごまかすことによって、本当の自分もごまかしていたことに気づきます。
このままではだめだ、と意を決してすっぴんで登校するのですが、そこでの反応はあまりに残酷なものでした。
そして小宮から、小早川と友人時代から何も変わっていないではないか、自分の弱さを理由にしてそんな関係に押さえつけておくくらいなら、別れてしまえばいいのに、という言葉をその通りだと思ってしまいます。そして心配してくる彼とも距離を置いて……。
本当の自分に向き合う、ということを容姿から描くシリアスな方向性になってきた本作。星野の努力する姿、現実に向き合った時の恐怖心などに心が揺さぶられます。
そして小早川から逃げた彼女は、ある人を訪ねていくのでした。詳しい内容はぜひ10巻本編でご覧ください。
星野を追いかけて東京までやってきた小早川ですが、泊まる場所がない!
と、困っているところに、ホテルでカンヅメになって原稿を仕上げようとしていた松方と加納が現れ、3人は1つの部屋に泊まることになります。
そこの後、キャッキャウフフな展開はなく、夜が開けます。1人徹夜で作品を仕上げていた松方は、小早川に思いを寄せる加納に気を利かせて朝になるといなくなっていました。
2人はそのまま星野を探すという名目のもとデートのような散策をすることに。しかし、もちろん加納は彼が星尾の一筋だということを分かっており、星野を探すことに一生懸命になってくれます。
- 著者
- 永椎 晃平
- 出版日
- 2018-05-17
フラれた相手にも関わらず、こんなに優しくしてくれるなんて……と、熱いものが込み上げる小早川。しかも加納は弱気になっていた彼に頭突きをかまして励まし、何でも言いたい事を言え、と促すのです。彼は、意を決してこう言うのでした……。
「金…貸してくれ」
(『星野、目をつぶって』11巻より引用)
良い顔で、ゲスい(笑)
こんなギャグ展開を挟みながらも、物語はシリアスな方向へ。ちょうどこのやりとりの後にかかってきた電話が、星野の姉である彩乃からで……。
ここから、彩乃と星野の、強いというよりも依存度の高い絆が明かされるのです。そして小早川に突きつけられたのは、この長年の思い、繋がりよりも強い思いがあるのかという難しい問題でした。
10巻も超えてくると展開がダレるという物語も多いですが、本作はどんどん熱い展開でヒートアップしていきます。加納のエール、松方の涙ながらの後押し、星野と小早川、彩乃の気持ちなど、11巻は、それぞれのキャラクターの本音が溢れた内容で、読者の涙腺を崩壊させにかかってきますので、ぜひ作品でご覧ください。